中韓による日本批判がエスカレートしている。
「15日の安倍政権の閣僚による靖国神社参拝や、全国戦没者追悼式で安倍晋三首相がアジア諸国への加害責任などを明言しなかったことに韓国と中国では16日も引き続き厳しい批判が続いた。ただ、韓国メディアでは、日韓関係の長期停滞を憂慮する声も出始めた。 韓国の与党セヌリ党の報道官は16日、「日本が見せる極端な右傾化と侵略の歴史を否定し美化する姿はもはや憤りを超えて哀れに思う」と非難。同国メディアは安倍首相が加害責任などを明言しなかったことを「戦犯国の最後の良心すら捨てた」(東亜日報)などと一斉に批判した。 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は16日の社説で閣僚の靖国参拝を批判し、「中国は、中日首脳会談を拒否し続け、安倍首相が耐え難いほど焦らせなければならない」「日本を苦しませる手段をもっとつくり出さなければいけない」などと主張した。」(共同_16日 産経)。
言葉を強くし、強硬な姿勢を見せてはいるが、内容的には二番煎じ、三番煎じのものばかりである。重要なことは、彼らの日本批判が、日本が正義を外れた行動を取っているが故のものではなく、日本の力をそぎ、日本から領土や利権をかすめ取ろうとするためのものだということである。靖国参拝批判は、日本の伝統を壊し、日本を分裂させ、混乱させるための言いがかりでしかない。これは軍国主義や、右傾化、歴史の修正などとは無関係のことであるにも関わらず、中韓は不当で露骨な内政干渉を行っているのである。彼らの日本批判は、自己の利益確保のための、駆引き、いちゃもん付けでしかなく、その程度の低次元の話なのだ。「日本を苦しませる手段をもっとつくり出さなければいけない」という言葉がこのことをよく示している。
なお、今回の安倍首相の追悼文について一言述べておけば、全国戦没者追悼式で戦没者追悼に重点を置くことは本来の姿である。アジア諸国への謝罪はもう既に何回となく行っているので、言うまでもないことだ。また、日本が一貫してアジアと世界の平和に貢献してきたことも明らかなことであり、今年「不戦の誓い」がないからといって、日本の立場が揺らぐようなものでもない。留意すべきことは、これは国の防衛のための戦争の放棄を意味しないと言うことである。日本固有の領土である尖閣に対する中国の領土侵犯が頻発している現在、首相がこれを言わなかったのは当然のことだ。
このような中で、中韓が、日本批判を強めて、日本を譲歩させるべく勝負に出ているのが、日本との「首脳会談」を拒否するという荒業である。これによって、日本を追い詰め、中国は尖閣での、韓国はデッチ上げの「慰安婦」や「戦時強制徴用」などでの日本の譲歩を引き出すことを狙っている。これは、中韓が、自国民そして世界に対して大見得を切ったことであり、後戻りができない大勝負、危険なチキンレースに踏み出したということである。しかしこれは日本そして中韓にとって悪いことばかりではないだろう。と言うのも、当事者が、頭を冷やして、仕切り直しをする千載一遇のチャンスになっているからである。
《自国の経済発展に自信を深めた中国が、これまでの対日外交での成功体験をもとに「首脳会談」拒否という際どい賭けに出てきた》
中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は7月31日付の社説で、次のように言い放っている。以下は、産経新聞、中国総局の川越一氏の記事の抜粋である。
「「中日関係が緊張し続ける中、外交的接触の継続は大変必要だ。しかし、中日首脳会談は一定期間は不必要だ。これは日本に対するぶれないシグナルであるべきだ」 「戦略上、日本を軽視する心境に真に達し始め、中日関係の長期的冷え込みを余り意に介さない自信を得始めた」 「安定的に冷え込んだ中日関係は何年か続いてもよい」
<1世紀の劣勢から逆転>
環球時報は、1世紀余りにわたり、中国が日本に対し、実力面でも心理面でも劣勢にあったことを認めた上で、ここ10数年で「実力」では追いつき、追い越したと主張している。さらに、尖閣諸島をめぐる対立において、中国政府と中国社会が「悠然」としていると述べ、心理面でも日本を凌駕したとのポーズを取っている。 …略… 安倍首相(58)は「前提条件を付けずにお互いの外相、首脳同士が胸襟を開いて対話を進めていく」と述べている。日本は対話の窓を常に開いているというのに、環球時報は「安倍氏が中国首脳と会いたがるのは、完全に自分個人および日本の政治的利益に資するパフォーマンスであり、強硬な対中政策に口実と合法性を与えるためだ。中国側が彼のこのゲームにつきあう必要は全くない」と曲解する。
<正しい選択は「傍観」>
強硬な論調は、さらにエスカレートしている。「中国にとって正しい選択は傍観することだ。安倍政権を勝手に立ち回らせればいい。われわれは座って茶でも飲み、菓子をつまみながら、彼らの汗だくの大立ち回りを鑑賞すればいい」と言いたい放題だ。」(14日 産経)。
どこか、男の子がオモチャの刀を振り回して得意になっているさまを彷彿とさせるのだが…。ともあれ、このように中国は、「首脳会談」をしないという対日‘圧力’によって、やがては日本が譲歩してくるだろうとみており、長期戦覚悟で我慢競べを行う腹づもりなのだ。
《実の無い形だけの「首脳会談」は意味がない! 日本は意味のないパフォーマンスで、国益を損ねることがあってはならない》
この中国側の主張は、かなり的を射ている。そもそも、戦後の日本外交の考え方は、会えば、信頼が生まれ、問題が話し合われ解決するというものだが、これはどちらかと言えば間違いと言うべきものだろう。逆に、問題が解決していく(可能性がある)からこそ、話し合いが行われ、信頼も生まれ、こういう関係においてはどんどん顔合わせをすべきであるというのが本来の、そして現実の過程の進行であるだろう。だから、会っても成果が得られない会談は無意味だとする中国の考えは正しい。また、意味もない会談を呼びかけることは、欺瞞的なパフォーマンスだと言う主張も一理ある。中国が会談をやろうと言って、日本に呼びかけているならともかくも、向こうがいやだと言っているにも関わらず、それをあたかも「頼むから会談をしてほしい」とでも言いたげな、未練たらしい欺瞞的なパフォーマンスはやめるべきだ。
たしかに、「日本は対話を拒否していない」、「いつでも対話のドアは開けている」というメッセージは、重要である。これは、中韓との関係改善を模索する意味で重要であるだけでなく、次のような勢力からの日本批判が起きることを防ぎ、日本の対応に支援を得る意味でも重要である。それらの勢力とは、次のようなものである。一つに、良心的国民_中国や韓国は歴史的つながりからして重要な隣国であり、それゆえ仲良くすべきだと、いわば良心からの、しかしそれだけに素朴な見解の人々、二つに、国内の親中韓、反日勢力からの批判、たとえば、生活の党、社民党、共産党、民主党、朝日などの「反日」メディア、反日知識人などからの、悪意を持った日本の分断と混乱を狙った批判、三つ目に、財界からの関係改善圧力_これは経済活動が悪影響を受けるとの立場からの関係改善要求、四つ目に米国からの関係改善圧力、米国としては、尖閣の日中紛争に巻き込まれたくないし、また北対策上、日韓の反目は米国の戦略に多大な損害を与えるということからのもの、五つ目に、欧州や南アジア諸国の動向_彼らは直接の当事者ではないから、優勢な方に着くだろう、すなわち、結局は上記四つのものの帰結に還元されるだろう。
これらからの批判が出ることを抑え、逆に支持を得るためにも、日本が、関係改善の努力をしていることを具体的に示していくことは重要である。しかし、それも程度ものであって、現在のようにかなり熱心に「会談実現」のための行動(政府や外務省高官、議員団、民間諸団体などの切れ目のない訪中、訪韓)を行っていると、却って逆効果である。「過ぎてはなお及ばざるがごとし」なのであり、「対話のドアは開けている」といった程度のもので済ませておくべきである。と言うのは、日本が「会談実現」に熱心になればなるほど、中韓は、「日本は「会談」を切に願っている、ということは日本は困っている」と思い、却って高飛車に出ることになる。これはここ数十年繰り返されてきた悪いパターンなのだ。もう一つは、日本国民、中韓国民、そして欧米をはじめとする世界は、やはり日本には中韓に対する負い目、引け目があるのだろう、日本には堂々とできない疾しさがあるという誤ったイメージを強く印象づけてしまうことになる。特に、日本国民がそう思ってしまうのが致命的問題となる。上記諸勢力、とりわけ米国に対しては、「靖国問題」、「歴史認識問題」、「慰安婦問題」など、個別の問題での日本の立場を、事実に基づいて説明していけばよいだろうし、またこれ以外に手はないだろう。とにかく「言わぬことは聞こえぬ」のだから、日本の立場の正当性は大きな声で、堂々と主張されるべきである。
《日本は中韓の「首脳会談拒否」を堂々と受けて立つべきだ! 中韓を突き放し、のぼせ上った頭を冷やさせるべきだ! そして日本も、頭を整理して、中韓との外交を仕切り直すべきだ》
さて、このように、中国の主張は正しい側面もあるが、二つの点で大きく読み違っている、間違っていると言えるだろう。一つは、「首脳会談」拒否を続けても、安倍首相、政府は、決して彼らの不当な圧力に屈しないだろうし、国民の多くもそれを支持するだろうということである。また、そうでなければ、そうして行かねばならないのである。日本は中韓を突き放し、時機が来るまで、冷却期間を置くべきだ。上述のように、「安定的に冷え込んだ中日関係は何年か続いてもよい」と言っているのだから、日本がこの状態についてとやかく言われることはないはずだ。
確かに経済活動などの面では、苦しい状況になるだろうが、企業も日本あっての企業なのだから、国と一緒に耐え忍んでもらわねばならないだろう。経済面に限らず全般に、苦しい状況に耐えていかねばならないことになるが、中韓に無節操に譲歩し、領土を奪われ、利権を略奪され続けるよりはましである。
彼らの二つ目の誤算は、自国の力を過大評価していること、そして日本の力を過少評価していることだろう。中国は急激に成金化して、舞い上がって尊大になっているのであるが、近いうちに本当の実力を知ることになるだろう。シャドーバンキング問題、環境問題、人件費高騰、貧富の格差拡大、最先端技術の不在など、足元は既に崩れ始めている。韓国も、サムスンの好調と、日本経済の停滞で、更には中国の見かけの躍進で、急に強気になっているが、これも一部の事柄についての一時的な糠喜びにしか過ぎない。韓国経済は停滞が続いており、産業構造が脆弱だから、得意がっていられるのも今のうちだろう。
ところで、中韓とこういう「安定的に冷え込んだ関係」に入ることは、悪いことばかりではない。こういう困った状況に耐え忍ぶ中でこそ、中国、韓国がどういう国で、日本とどういう関わりがあるのかがより一層鮮明に見えてくるはずである。日本だけでやれると思っていたところが実はできないとか、中韓の協力がないとできないと思っていても、実は日本だけでいくらでもできるとか、中韓がさまざまな手を打つてくるだろうと思っていても、実は、もう彼らは完全な手詰まりになっていたとか、とにかくさまざまなことがわかるであろう。こういうことがわかった時点で新たな関係の構築を進めていくべきである。とにかく、戦後行ってきたような、日本が中韓に一方的にすり寄り、譲歩することで、関係を保とうとする路線は、歴史的にも戦略的にも破綻している。中韓とは新たな関係構築を目指さねばならず、現在の「首脳会談」拒否の状況は、日本そして中韓国民が、冷静に現実を認識し、これからどうあるべきかを見極め、建設的な関係を構築していくための絶好のチャンスと言えるはずである。
「15日の安倍政権の閣僚による靖国神社参拝や、全国戦没者追悼式で安倍晋三首相がアジア諸国への加害責任などを明言しなかったことに韓国と中国では16日も引き続き厳しい批判が続いた。ただ、韓国メディアでは、日韓関係の長期停滞を憂慮する声も出始めた。 韓国の与党セヌリ党の報道官は16日、「日本が見せる極端な右傾化と侵略の歴史を否定し美化する姿はもはや憤りを超えて哀れに思う」と非難。同国メディアは安倍首相が加害責任などを明言しなかったことを「戦犯国の最後の良心すら捨てた」(東亜日報)などと一斉に批判した。 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は16日の社説で閣僚の靖国参拝を批判し、「中国は、中日首脳会談を拒否し続け、安倍首相が耐え難いほど焦らせなければならない」「日本を苦しませる手段をもっとつくり出さなければいけない」などと主張した。」(共同_16日 産経)。
言葉を強くし、強硬な姿勢を見せてはいるが、内容的には二番煎じ、三番煎じのものばかりである。重要なことは、彼らの日本批判が、日本が正義を外れた行動を取っているが故のものではなく、日本の力をそぎ、日本から領土や利権をかすめ取ろうとするためのものだということである。靖国参拝批判は、日本の伝統を壊し、日本を分裂させ、混乱させるための言いがかりでしかない。これは軍国主義や、右傾化、歴史の修正などとは無関係のことであるにも関わらず、中韓は不当で露骨な内政干渉を行っているのである。彼らの日本批判は、自己の利益確保のための、駆引き、いちゃもん付けでしかなく、その程度の低次元の話なのだ。「日本を苦しませる手段をもっとつくり出さなければいけない」という言葉がこのことをよく示している。
なお、今回の安倍首相の追悼文について一言述べておけば、全国戦没者追悼式で戦没者追悼に重点を置くことは本来の姿である。アジア諸国への謝罪はもう既に何回となく行っているので、言うまでもないことだ。また、日本が一貫してアジアと世界の平和に貢献してきたことも明らかなことであり、今年「不戦の誓い」がないからといって、日本の立場が揺らぐようなものでもない。留意すべきことは、これは国の防衛のための戦争の放棄を意味しないと言うことである。日本固有の領土である尖閣に対する中国の領土侵犯が頻発している現在、首相がこれを言わなかったのは当然のことだ。
このような中で、中韓が、日本批判を強めて、日本を譲歩させるべく勝負に出ているのが、日本との「首脳会談」を拒否するという荒業である。これによって、日本を追い詰め、中国は尖閣での、韓国はデッチ上げの「慰安婦」や「戦時強制徴用」などでの日本の譲歩を引き出すことを狙っている。これは、中韓が、自国民そして世界に対して大見得を切ったことであり、後戻りができない大勝負、危険なチキンレースに踏み出したということである。しかしこれは日本そして中韓にとって悪いことばかりではないだろう。と言うのも、当事者が、頭を冷やして、仕切り直しをする千載一遇のチャンスになっているからである。
《自国の経済発展に自信を深めた中国が、これまでの対日外交での成功体験をもとに「首脳会談」拒否という際どい賭けに出てきた》
中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は7月31日付の社説で、次のように言い放っている。以下は、産経新聞、中国総局の川越一氏の記事の抜粋である。
「「中日関係が緊張し続ける中、外交的接触の継続は大変必要だ。しかし、中日首脳会談は一定期間は不必要だ。これは日本に対するぶれないシグナルであるべきだ」 「戦略上、日本を軽視する心境に真に達し始め、中日関係の長期的冷え込みを余り意に介さない自信を得始めた」 「安定的に冷え込んだ中日関係は何年か続いてもよい」
<1世紀の劣勢から逆転>
環球時報は、1世紀余りにわたり、中国が日本に対し、実力面でも心理面でも劣勢にあったことを認めた上で、ここ10数年で「実力」では追いつき、追い越したと主張している。さらに、尖閣諸島をめぐる対立において、中国政府と中国社会が「悠然」としていると述べ、心理面でも日本を凌駕したとのポーズを取っている。 …略… 安倍首相(58)は「前提条件を付けずにお互いの外相、首脳同士が胸襟を開いて対話を進めていく」と述べている。日本は対話の窓を常に開いているというのに、環球時報は「安倍氏が中国首脳と会いたがるのは、完全に自分個人および日本の政治的利益に資するパフォーマンスであり、強硬な対中政策に口実と合法性を与えるためだ。中国側が彼のこのゲームにつきあう必要は全くない」と曲解する。
<正しい選択は「傍観」>
強硬な論調は、さらにエスカレートしている。「中国にとって正しい選択は傍観することだ。安倍政権を勝手に立ち回らせればいい。われわれは座って茶でも飲み、菓子をつまみながら、彼らの汗だくの大立ち回りを鑑賞すればいい」と言いたい放題だ。」(14日 産経)。
どこか、男の子がオモチャの刀を振り回して得意になっているさまを彷彿とさせるのだが…。ともあれ、このように中国は、「首脳会談」をしないという対日‘圧力’によって、やがては日本が譲歩してくるだろうとみており、長期戦覚悟で我慢競べを行う腹づもりなのだ。
《実の無い形だけの「首脳会談」は意味がない! 日本は意味のないパフォーマンスで、国益を損ねることがあってはならない》
この中国側の主張は、かなり的を射ている。そもそも、戦後の日本外交の考え方は、会えば、信頼が生まれ、問題が話し合われ解決するというものだが、これはどちらかと言えば間違いと言うべきものだろう。逆に、問題が解決していく(可能性がある)からこそ、話し合いが行われ、信頼も生まれ、こういう関係においてはどんどん顔合わせをすべきであるというのが本来の、そして現実の過程の進行であるだろう。だから、会っても成果が得られない会談は無意味だとする中国の考えは正しい。また、意味もない会談を呼びかけることは、欺瞞的なパフォーマンスだと言う主張も一理ある。中国が会談をやろうと言って、日本に呼びかけているならともかくも、向こうがいやだと言っているにも関わらず、それをあたかも「頼むから会談をしてほしい」とでも言いたげな、未練たらしい欺瞞的なパフォーマンスはやめるべきだ。
たしかに、「日本は対話を拒否していない」、「いつでも対話のドアは開けている」というメッセージは、重要である。これは、中韓との関係改善を模索する意味で重要であるだけでなく、次のような勢力からの日本批判が起きることを防ぎ、日本の対応に支援を得る意味でも重要である。それらの勢力とは、次のようなものである。一つに、良心的国民_中国や韓国は歴史的つながりからして重要な隣国であり、それゆえ仲良くすべきだと、いわば良心からの、しかしそれだけに素朴な見解の人々、二つに、国内の親中韓、反日勢力からの批判、たとえば、生活の党、社民党、共産党、民主党、朝日などの「反日」メディア、反日知識人などからの、悪意を持った日本の分断と混乱を狙った批判、三つ目に、財界からの関係改善圧力_これは経済活動が悪影響を受けるとの立場からの関係改善要求、四つ目に米国からの関係改善圧力、米国としては、尖閣の日中紛争に巻き込まれたくないし、また北対策上、日韓の反目は米国の戦略に多大な損害を与えるということからのもの、五つ目に、欧州や南アジア諸国の動向_彼らは直接の当事者ではないから、優勢な方に着くだろう、すなわち、結局は上記四つのものの帰結に還元されるだろう。
これらからの批判が出ることを抑え、逆に支持を得るためにも、日本が、関係改善の努力をしていることを具体的に示していくことは重要である。しかし、それも程度ものであって、現在のようにかなり熱心に「会談実現」のための行動(政府や外務省高官、議員団、民間諸団体などの切れ目のない訪中、訪韓)を行っていると、却って逆効果である。「過ぎてはなお及ばざるがごとし」なのであり、「対話のドアは開けている」といった程度のもので済ませておくべきである。と言うのは、日本が「会談実現」に熱心になればなるほど、中韓は、「日本は「会談」を切に願っている、ということは日本は困っている」と思い、却って高飛車に出ることになる。これはここ数十年繰り返されてきた悪いパターンなのだ。もう一つは、日本国民、中韓国民、そして欧米をはじめとする世界は、やはり日本には中韓に対する負い目、引け目があるのだろう、日本には堂々とできない疾しさがあるという誤ったイメージを強く印象づけてしまうことになる。特に、日本国民がそう思ってしまうのが致命的問題となる。上記諸勢力、とりわけ米国に対しては、「靖国問題」、「歴史認識問題」、「慰安婦問題」など、個別の問題での日本の立場を、事実に基づいて説明していけばよいだろうし、またこれ以外に手はないだろう。とにかく「言わぬことは聞こえぬ」のだから、日本の立場の正当性は大きな声で、堂々と主張されるべきである。
《日本は中韓の「首脳会談拒否」を堂々と受けて立つべきだ! 中韓を突き放し、のぼせ上った頭を冷やさせるべきだ! そして日本も、頭を整理して、中韓との外交を仕切り直すべきだ》
さて、このように、中国の主張は正しい側面もあるが、二つの点で大きく読み違っている、間違っていると言えるだろう。一つは、「首脳会談」拒否を続けても、安倍首相、政府は、決して彼らの不当な圧力に屈しないだろうし、国民の多くもそれを支持するだろうということである。また、そうでなければ、そうして行かねばならないのである。日本は中韓を突き放し、時機が来るまで、冷却期間を置くべきだ。上述のように、「安定的に冷え込んだ中日関係は何年か続いてもよい」と言っているのだから、日本がこの状態についてとやかく言われることはないはずだ。
確かに経済活動などの面では、苦しい状況になるだろうが、企業も日本あっての企業なのだから、国と一緒に耐え忍んでもらわねばならないだろう。経済面に限らず全般に、苦しい状況に耐えていかねばならないことになるが、中韓に無節操に譲歩し、領土を奪われ、利権を略奪され続けるよりはましである。
彼らの二つ目の誤算は、自国の力を過大評価していること、そして日本の力を過少評価していることだろう。中国は急激に成金化して、舞い上がって尊大になっているのであるが、近いうちに本当の実力を知ることになるだろう。シャドーバンキング問題、環境問題、人件費高騰、貧富の格差拡大、最先端技術の不在など、足元は既に崩れ始めている。韓国も、サムスンの好調と、日本経済の停滞で、更には中国の見かけの躍進で、急に強気になっているが、これも一部の事柄についての一時的な糠喜びにしか過ぎない。韓国経済は停滞が続いており、産業構造が脆弱だから、得意がっていられるのも今のうちだろう。
ところで、中韓とこういう「安定的に冷え込んだ関係」に入ることは、悪いことばかりではない。こういう困った状況に耐え忍ぶ中でこそ、中国、韓国がどういう国で、日本とどういう関わりがあるのかがより一層鮮明に見えてくるはずである。日本だけでやれると思っていたところが実はできないとか、中韓の協力がないとできないと思っていても、実は日本だけでいくらでもできるとか、中韓がさまざまな手を打つてくるだろうと思っていても、実は、もう彼らは完全な手詰まりになっていたとか、とにかくさまざまなことがわかるであろう。こういうことがわかった時点で新たな関係の構築を進めていくべきである。とにかく、戦後行ってきたような、日本が中韓に一方的にすり寄り、譲歩することで、関係を保とうとする路線は、歴史的にも戦略的にも破綻している。中韓とは新たな関係構築を目指さねばならず、現在の「首脳会談」拒否の状況は、日本そして中韓国民が、冷静に現実を認識し、これからどうあるべきかを見極め、建設的な関係を構築していくための絶好のチャンスと言えるはずである。