もとなりくんの「今週の政治 ‘とんでも’」

日本の経済、安保危機を打開する力は、国民の結束と強い政治しかない

普天間の嘉手納暫定移設案_日本の防衛が第一! 日米同盟・安保は主体的なものであり、対米従属に非ず! 

2012-04-11 20:05:57 | 政治
民主党幹部の石井参院予算委員長ら有志議員が、米軍普天間飛行場の移設先をめぐって、日米合意の名護市辺野古は実現困難として、将来的な県外、国外への移転を前提に米空軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)へ暫定移設する案をまとめ、6日に発表した。石井氏らは今後、民主党のみならず各党からも賛同者を募り、政府に検討を働きかける方針という。野田首相は10日、石井氏と官邸で会談し、この暫定移設案について説明を受け、一定の理解を示したとされる。この案は議員有志が提案しているものであるので、これだけならとりたてて議論するまでもないが、一部の論者が、可能性のある妙案として評価する向きもあるので、これがおかしな方向に行って、普天間問題を混乱させる可能性も無しとしない。そこで今回は、この暫定移設案の問題と、このことに関連する日米安保の捉え方の問題について述べてみたい。

<普天間暫定移設案>
石井氏は普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を当面凍結した上で、将来的な県外・国外移設を前提に、嘉手納基地や沖縄県外の基地に暫定移設する案を発表。嘉手納基地への移設を主張する米民主党のジム・ウェブ上院議員と会談し、実現に向け連携して日米両政府に働きかけることで一致したとされる。この案については、米側でも昨年5月に、米国上院軍事委員会のカール・レビン委員長(民主党)、ジョン・マケイン筆頭委員(共和党)、ジム・ウェブ外交委員会東アジア太平洋小委員長という有力3上院議員が、名護市辺野古への移設は「実現不可能」として、国防総省に対し、嘉手納基地への移設を検討するよう求めた経緯がある。したがって、米政府が受け入れる可能性が無いとは必ずしも言えない。しかし、日米両政府は今のところ、日米合意、つまり名護への移転計画の見直しには否定的である。
石井氏らは、日米両国が平成22年5月に合意した普天間飛行場の名護市辺野古への移設は、沖縄県や名護市が強く反対していることから「実現困難で、普天間飛行場を固定化させる」との判断から、嘉手納基地への移設を検討すべきだとしている。そのうえで、移設は沖縄県や嘉手納町など地元の理解を得る観点からも、あくまで「暫定」と位置づけ、「近い将来に県外、国外への移設を追求する」とし、移設の際には訓練や機能の一部を県外に分散したり、騒音を軽減したりして、負担軽減をはかることを提案している。

<普天間暫定移設案は、日本の防衛を第一義とすべき>
この案について私が疑問に思うのは、こんなことで済むのなら、名護に新たな基地を作りそこに移転するという必要はないわけだから、最初からこのストーリーで進んだはずである。そうでなかったのは、嘉手納移設では海兵隊の機能が十分発揮できない、そして嘉手納の空軍の機能が阻害されるということではないのか。つまり、海兵隊、空軍双方の機能、戦闘力を損なうこと、それはすなわち日本の防衛力を低下させることになるわけである。とは言え、最近のアメリカのアジア戦略は以前よりもかなり変化しているので、実際どうなのかは、当事者である米軍の意見を聞いてみるしかない。

この暫定移設案は普天間基地の危険性除去、普天間基地の固定化の排除の観点から発想されているように思える。私は、もしこういうことが可能であれば、これに越したことはないので、検討に反対するつもりはないが、次のことはしっかり押さえられる必要があると思う。それは、移設の可否はあくまでも日本防衛の観点から決められなければならず、これが第一義的なものになるということである。間違っても、自分達(民主党)が沖縄県民への約束を破り、怒らせ、その結果、普天間の名護への移設が難しくなった問題を穴埋めするため、また、現在の移設案が難しいとは言え、沖縄の理解を得る努力をほとんどしていない中で、その努力を今後強力に推進する手間を厭うがゆえに、とりあえずより簡単に問題を解決できそうに見える方向として、この案が提案されるようなことがあってはならないということである。そもそも普天間の名護への移転そのものが、最善の危険除去策として構想されたものであることを思い起こすべきであり、普天間の安全と日本の防衛機能の両方を成立させるものが名護への移転なのである。また、この暫定案のような部分的な安全策は、過去にも学校の移転などとして検討されたにもかかわらず、本土の反対勢力と連携した地元反対勢力が、「普天間の固定化につながる」として反対して実現しなかったという経緯もある。これは、取りあえずの安全を犠牲にしてでも、恒久的な基地移転を目指そうとするものであった。今回の提案も抜本的な案ではなく、取りあえずのものだから、これまでの経緯からして、この案の位置づけは極めて曖昧なものであると言わざるを得ない。
また、本格移転に当たっては、「県外、国外への移設を追求する」とし、「移設の際には訓練や機能の一部を県外に分散したり」として、地元住民の負担軽減をはかることを提案している。しかしこのような分散は、海兵隊の日本周辺地域の抑止力を維持する観点、万が一の有事の際の即応態勢を維持する観点から、現実的であるようには見えない。
石井氏は首相との会談で、「在沖縄海兵隊のグアム移転計画の見直しや普天間飛行場の大規模補修について日米両政府間で協議されていることを踏まえ、「それらが決まると、嘉手納基地への暫定移設は時機を逸する」と強調。5月上旬に予定する首相訪米までに嘉手納基地への暫定移設案を本格検討するよう求めた。」とされる(10日 産経)。これを見ると、検討期間は長くて一年程度と考えられているようであるが、そもそもこれまで約15年間も費やして、政治的、環境的、技術的、戦略的検討および交渉を行ってようやくたどり着いた現行案に対して、わずか一年程度の検討、交渉で結論が出るようには思えない。結論が出るとすれば箸にも棒にも掛からない場合だろう。いずれにせよ、いかにもその場しのぎの案という感じを受けるのは私だけだろうか。沖縄の県民のために、一生懸命やっているというポーズとりのためなら、こんなことよりも本来の名護への移転が進むように、県民への説得に努力してもらいたいものだ。

日本を取り巻く安全保障上の環境はますます厳しさを増している。中国、韓国、北朝鮮、そしてロシアなど、これらの国の台頭と日本の軍事予算の現象によって、日本の防衛力は、相対的にどんどん低下している。財政の破綻の危機もささやかれている状況の中では、防衛力の強化も十分には望めず、米軍と協調した防衛体制を取るのが最も効果的で、経済的な戦略であることが理解されるはずである。下記関係記事_1には北ミサイル関連ではあるが、米軍がいかに頼りになる力を持っているかを示す一例であるので、参考までに読んでみていただきたい。このようなわけで、日本は米軍の基地機能を損なって、作戦、展開範囲を狭め、日本自身の防衛・安全体制を弱めるような愚行をしないよう、自らの頭で十分考え、主体的に判断していく必要がある。

<日本は、主体性を持って、沖縄基地問題を捉えるべき! 日本はアメリカに無条件依存すべきではないし、またアメリカの被害者としての認識も持つべきでない>
そもそも、沖縄に米軍がなぜ駐留しているのか? 沖縄県民が望んだからではないだろうし、米国が望んで武力で進駐しているわけでもないだろうし、日本がだらしないからでもないし、米国が政治的に日本に圧力をかけているからでもないだろう。それは日本政府、日本国民が日本の防衛のために、アメリカと同盟関係を結び、その一環として米軍が駐留しているということである。日本は主権国家であるので、望めば沖縄に限らず、日本各地の米軍基地を日本から撤去させることも出来る。それは安保条約を廃棄すればよい話だ。現にフィリピンは90年代初頭に、クラーク空軍基地とスービック海軍基地を撤去させた(もっとも、これでは安全が守れなくなって、今まさに米軍を呼び戻す交渉がなされている)。日米安保の廃棄を日本が選択したからといって、さすがのアメリカも、民主主義の雄を自認している以上は日本に武力侵攻することはできないだろう。だから結局、沖縄に普天間基地があるのは、日本の意思によるものなのである。

普天間の名護への移転計画も、これは安保条約の精神に沿って、アメリカの意向も踏まえて、お互いの合意として決めたものである。これは決してアメリカから押し付けられたものではない。言い換えれば、米軍の作戦、戦略を日本が理解して、最終的には日本が日本の安全を確保するために自分で決めたことである。ここでは、お互いに合意内容を履行する義務がある。この履行義務を果たさず、移転問題を迷走させたのは日本側である。アメリカで出ている嘉手納移設案も、それがベストということではなく、普天間問題の迷走、混迷を踏まえてのものであり、いわば日本の不誠実の後始末を、アメリカ側が考えると、こういう案になるということなのだろうと理解する。だから、このように本筋の責務を果たすことに力を注ぐのではなく、本来のものから後退した案をもって、新たな案とするような発想では、米国の日本への不信感は強まるばかりであり、日米安保体制をますます弱体化させ、米軍による日本の防衛力はどんどん低下するだけであるだろう。もっと主体的で、積極的、建設的対応が求められるはずである。

ともあれ、この案はアメリカと打ち合わせる(交渉する)ことではあるが、最終的には防衛上の観点から日本が決めることであって、アメリカが決めることではないということになる。つまり、もしこの案をアメリカが拒否したとすれば、「アメリカがダメだというからダメだ」ということではなく、彼らの説明を日本自身が納得してこの案を取らないことに決めるということである。どうしても、この案を実現させたいのであれば、アメリカが受け入れられるような具体的で実現可能な代案を示すべきである。また、もし彼らが受け入れるとしたとき、「アメリカが良いと言っているから、良い」ということではなく、本当にそういうことで日本の防衛が出来ることを日本自身で確かめるということである。もし、こういうことでは、沖縄の海兵隊と空軍の戦力、作戦範囲が損なわれ、日本の防衛に悪影響があると判断されるなら、アメリカがこの案で良いといっても、「是非、名護に移って欲しい」ということを積極的に要請すべきである。なぜなら、これは日本にとっては、日本の防衛の問題だから、アメリカ任せにすることは出来ないということである。いかに同盟とは言え、日本には日本の利害、アメリカにはアメリカの利害があるわけだから、「アメリカの言う通りにしておけば、日本の国防は大丈夫だ」とは必ずしも言えないということである。このことの北ミサイル問題における一例を、下記関係記事_2に示すので是非参照願いたい。
日米同盟はお互いに果たすべき責務と、行使できる権利を持った対等な同盟関係であるので、この中における交渉がアメリカの温情に期待するということであってはならず、また逆に、これが、アメリカへの隷属からの解放のための要求闘争だと理解されること、つまりアメリカを敵対視することがあってもならないだろう。これは、日本が、日本の防衛のために、主体的に行う、同盟国・友好国アメリカとの交渉なのである。

【関係記事_1】_4月10日 産経 _
■【北ミサイル予告】米軍偵察機が沖縄に集中 ミサイルに備え嘉手納に
 米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)に10日午後、弾道ミサイル観測能力を備えた電子偵察機RC135S(通称コブラボール)が2機、相次いで飛来した。
嘉手納には昨年末から既にRC135S1機が一時配備されている。米軍が保有するRC135Sは3機のみで、北朝鮮が12日以降に予告する「衛星」打ち上げと称した弾道ミサイル発射に備え、全機を沖縄に投入した格好だ。
RC135Sはいずれも米ネブラスカ州のオファット基地所属。嘉手納には現在、このほかに電子偵察機RC135U(通称コンバットセント)も一時配備されており、態勢が強化されている。

【関係記事_2】_4月9日 産経 _
■【北ミサイル予告】迎撃、日米に「温度差」…東シナ海照準、緊張感薄い米
 北朝鮮の「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルの発射に備え、自衛隊は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載イージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の展開をほぼ完了した。2006年7月と09年4月の弾道ミサイル発射時と同様に日米の連携が不可欠となるが、今回は照準が東シナ海に向けられただけに米側の緊張感は薄く、日米の「温度差」は否めない。(半沢尚久)
米イージス艦どう展開
「過去のいくつかのケースを踏まえる」
北朝鮮によるミサイル公開を受け、藤村修官房長官は9日の記者会見でこう強調した。06年と09年の例を参考に官邸の警戒態勢を敷くとの認識を示したようだが、過去2回の発射時と比較すると米側の対応に明白な違いがあることへの危機感は乏しい。
「どこに米側がイージス艦を展開させるか説明がない…」
 今月初旬、ある自衛隊幹部は不安を隠そうとしなかった。自衛隊には先月30日に破壊措置命令が出され、イージス艦とPAC3の展開場所もすぐに固まったが、米軍は日米協議でも米海軍イージス艦の配置など手の内を明らかにしようとしなかった。米海軍は06年には日本海に2隻、09年は日本海と太平洋に2隻ずつイージス艦を展開させることを早々に決めたのに比べ、対応は明らかに異なる。
6日には佐世保基地(長崎県)に米イージス艦が入港したが、展開海域はなお定かでない。米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に神経をとがらせる米軍はミサイルの性能確認に躍起であり、ミサイル観測艦をデータ収集に最も適した海域に展開させることしか眼中にないとの指摘もある。

防衛方針のメッセージなし
北朝鮮が初めて東シナ海に向け発射することも米軍の「本気度」を低下させたようだ。06年はハワイ周辺海域に照準を合わせ、09年のミサイルも3千キロ以上飛び、太平洋に着弾した。米軍が太平洋にイージス艦2隻を配置したのは国民に米本土を守る姿勢を鮮明にする必要があったからだ。
それでもゲーツ国防長官(当時)は09年の発射1週間前に「何らかの対応をする用意はない」と述べ、ミサイルが米領土を標的としない限り迎撃しない方針を表明した。今回は発射予告期間の12日が3日後に迫っても迎撃方針について何のメッセージも発しない。
オバマ大統領も、栄養補助食品援助で合意直後の発射予告だけにあまりメッセージを発したくないようだ。融和路線の失敗は共和党の格好の攻撃材料となる。迎撃方針を強調すれば北朝鮮に翻弄されたとの印象を深めかねない。

PAC3指揮系統に不安
米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)に配備されたPAC3の運用も鳴りを潜める。このPAC3はハワイの米太平洋陸軍司令部傘下にあり、部隊指揮官に迎撃判断が委任されたとみられるが、詳細は明らかにされていない。
今回の対応は、空自の作戦中枢「航空総隊司令部」が米軍横田基地(東京都)に移転して初の共同運用となるが、嘉手納のPAC3は指揮系統は異なることもあり成否に保証はない。逆に日米の「温度差」と「相互不信」が浮き彫りとなることも十分ありえる。