制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

障害者自立支援法の廃止と新制度の創設、改めて明言

2009年11月02日 10時29分49秒 | 自立支援法・障害
障害福祉サービスの利用を原則1割自己負担とする障害者自立支援法の廃止などを求める大集会が開かれ、「政権1期の4年間で新しい制度を創設する」ことが改めて明言された。このタイムスケジュールは、年金制度改革と同じ。生活がかかる問題だけに、安易に「廃止」できないことから、応益負担から応能負担への変更などの自立支援法の改正・改題に取り組んでから、しっかり議論しましょうということだろう。

障害者に「新制度創設」と厚労相 1割負担廃止集会で
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2009103001000870.html?C=S

民主党は、障害者の範囲や定義を見直すとしてきた。ここ十数年の間に、障害の概念が大きく変わった。その変化に制度が追いついていないために「制度の谷間」が大きくなっている。今日では一般化しつつある「注意欠陥・多動性障害(AD/HD)」や「学習障害(LD)」、対人関係の障害などが自分にもあったのではないか、子どもの頃に支援があればもっとうまくやっていけたのではないか、と思う人たちも増えている。

新たな障害を制度に取り組んでいくにつれて、様々な制度やサービスにほころびが生じる。

例えば、障害年金には、20歳までに医師の診断を受けていて20歳に到達するか、20歳以降で年金保険料を納付していて障害の状態になるか、といった受給の要件がある。「制度の谷間」を埋めるために新たな障害が取り込まれたらどうなるのだろうか。一例だが、社会に出て働こうとしているが、うまくいかない。ひょっとして自分は「学習障害」だったのではないかと思ったとしても(学習障害がありながら社会人になった人たちへのサービスが整備されていなければ)何の支援も受けられないし、生活費に困ったとしても障害年金を受給できない。
「制度の谷間」は埋まったとしても、何の支援もサービスもないのでは意味がない、ということである。

子どもの頃は、障害として一般化していなかったために、医師の診断書がない。障害年金の受給要件を充たしていない。けれども、新制度において「障害者」として認められた人たちをどう支援すればよいだろうか。

一つの解決方法として、障害年金を新たに創設する最低保障年金に取り込むことが考えられる。障害認定を受けていれば、年齢に関わらず、最低保障年金を受給できるようにし、障害の程度に応じて上乗せの給付も得られるようにするのである(医師の診断書があれば、最低保障年金=月7万円と上乗せ額が受給できるとなれば、ちょっと怪しいのではという人たちも出てきてしまうだろう。不正受給を防止するために、本人はもちろんのこと、偽りの診断書を出した医師への罰則規定を設ければよい)。
未だ「新しい制度」の姿は見えてこないが、「所得の保障をした上で、生活を支援するサービスを利用する」ようにすれば、「応益負担」の考え方のままでもよいのではないだろうか。実質的には、「応能負担」になるような調整は必要だが、サービスを利用し、自立した生活をおくるために必要な年金を受給できるようにする(応益負担=自己負担額相当額を上乗せする)。サービス事業者とは対等の立場で契約し、利用したサービスの自己負担分を支払うようにする。こうすることで、契約に基づき、質が担保されたサービスを提供するように求める権利が明確になる(応益負担に変更して自己負担額が少なくなると、利用する権利の意識がどうしても弱くなる)。

自立支援法をいかに改正・改題するかを手始めに、障害者の生活をいかに支えるか、人として当然の権利をいかに守るかを大きな視点で考え、議論を尽くすべきだろう。