制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

事業仕分けで「廃止」になったはずの事業が「看板」を付け替えて公募中

2010年03月18日 22時23分57秒 | 予算・事業仕分け
昨日、事業仕分けで「廃止」となった地域見守り支援システム実証事業を引き継ぐような調査研究事業「平成22年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業(地域見守り創出調査研究事業)」のコメントを頂いた。

地域見守り支援システム実証事業
http://www.nss-med.co.jp/mimamori/index.html

地域見守り支援システム実証事業は、3ヵ年計画の1年目で取りやめとなった。事業を推進するための基礎固めが終わってこれからというときに資金のパイプを締められたのだから、それまでに投じた資金などが無駄になる。そう考えれば、看板をつけかえて継続させるほうがよいとも思える。しかしながら、事業仕分けで、経済産業省が推進する理由がわからないと「廃止」の判断が出されているのだから、継続するなら国民に対して、きちんと説明する必要がある。経済産業省として成果を出すところまで継続させると判断したのだから、大臣自ら、記者会見の場などで正々堂々と取り組む意義を説明してはどうだろうか(コメントで頂いたように、説明できないのなら、自民党が「民主党の事業仕分けは、人気取りのパフォーマンスだったのではないか。枝野大臣が第2弾だといっても国民はもう騙されない」と追及すべき)。

平成22年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業
(地域見守り創出調査研究事業)
http://www.meti.go.jp/information_2/data/20100308094447.htm

そもそも、経済産業省が「地域見守りの仕組み」というものをわかっているとは、とうてい思えない。

地域社会において求められる「見守り」は、実に多様である。

例えば、障害者の自立生活を支えるための「見守り」は、一般の人たちの感覚では「サービス」にはみえないかもしれない。ずっと施設に入所していた障害者が、生まれて初めて施設を出て、アパートを借りて一人暮らし始めるといったときに必要な「見守り」とはどのようなものだろうか。見守りサービスを提供する支援者は、障害者とともに暮らしつつ、ずっと見守っている。ただ、それだけである(これはサービスの一つの例・あり方なので、誤解のないようにしていただきたい)。見守りサービスの利用者が困っているようにみえるからといって、支援者の判断で手を出すようなことはしない。支援者がそのように振舞ってしまうと、それは「見守り」ではなく、利用者がトラブルを起こさないための「監視」となってしまう。意思決定の主体はあくまで利用者であって、支援者ではない。ずっとそばにいることが安心感につながり、地域における自立した暮らしに向けた第一歩を踏み出すことができる。このような見守りサービスには、効率的・効果的という表現は馴染まない。

その一方で、効果的・効率的という表現を突き詰めていくべき領域もある。例えば、地域中核病院から退院して地域のリハビリ施設に移る、自宅に戻るといったときに、それぞれが管理している情報が引き継がれるようにする、在宅療養生活を支えるために医療・看護職と介護職、地域のボランティアなどが連携するといった場合である。多様な主体による多様なサービスを利用できる、それぞれが縦糸と横糸のように組み合わされて常に見守られているという安心感を与えるためには、システマチックなアプローチも必要となる。

これらは極端な例かもしれないが、「地域見守りの仕組み」のあり方は一つでないし、規制改革を考える前に取り組まなければならないことは山のようにあるはず。事業内容(仕様書)の「地域見守りの仕組み」と「産業の創出・活性化」という言葉があまりにも軽く思える。入札書・提案書の提出期限は、3月29日の12時。それほど時間はないが、せめて、推進委員会やワーキンググループの有識者の選定には慎重を期していただきたいと思う。

長妻大臣の指示1000件超 これからは情報のリークにも神経を尖らせる?

2010年03月17日 23時20分46秒 | その他
かねてから報道されていたことだが、長妻大臣からの指示がとうとう1000件を超えたとのこと。指示のなかには、大臣からとは思えないほどの細かいものや「箸の上げ下げまで...」とも受けとめられるようなものまであり、担当する役人らが困るものまであるという。しかし、逆にいえば、そのような細かいところまで指示しないと満足な仕事ができないということなのだろう。

細かすぎる? 長妻厚労相、指示1000件超
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20100317027.html

産経新聞の報道によると、「取材など報道の可能性を察知した場合には政務三役に報告すること」「記者に会った際には話した内容を報告」という指示もあるとのこと。この指示がいつのものかわからないが、先日の第4回高齢者医療制度改革会議では、その前日に共同通信社が「政府案」を決まったことかのごとく報道し、当日は(委員がそれぞれの立場や主張から意見をぶつけあう)議論らしい議論になっていなかった感もある。
意図的に情報を漏らして国民の反応をみたり、世論を「誘導」したりすることもあると思う。しかし、「政治主導」で進めたい政務三役が知らぬところで情報がリークされ、大事な場を白けさせるようなことは避けたいとの思いがあるのではないだろうか。

<長妻厚労相>年金事務所視察、改善要求を連発
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100314ddm041010102000c.html

“ミスター年金”事務所視察で指示連発
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100313-567-OYT1T00702.html

大臣室には、国民から届いた声などが山積になっており、それぞれにどのように対応するかを指示した記録が付けられているとのこと。しかも、それらをきちんと管理しているので、半年間で1000件を超えたことや、期日までに達成できたか否かなどの進捗状況がわかるということなのだろう。
一国民としては、これからも大臣自らが情報を集め、考え、指示を出すことを続けていただきたいし、このブログで書いているようなことも情報源(国民から届いた声)の一つとして加えていただければと思う。

子ども手当法案が衆議院を通過 今月内に成立 6月に向けて追い込み開始

2010年03月16日 22時53分50秒 | 子ども手当・子育て
子ども手当法案が衆議院本会議を通過した。与党3党に加えて公明党と共産党が賛成、自民党とみんなの党などが反対。17日には、参議院本会議で審議入りする予定で、高校授業料の実質無償化法案とともに月内に成立する見通し。

子ども手当法案が衆院通過=公明、共産も賛成、月内成立へ
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100316X148.html

高校無償化法案が衆院通過=子ども手当法案も
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100316X141.html

子ども手当、満額時の財源不透明 参院であらためて争点に
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031601000916.html

また、昨日に取り上げたマイクロソフトの「事務処理支援システム」がダウンロードできるようになった。

プレスリリース
IT利活用による自治体の業務支援
自治体向けに「子ども手当」の事務作業支援ツールとしてExcelテンプレートを無償提供開始
~ 大規模なシステム改修や変更の費用をかけることが難しい自治体を対象にテンプレートを提供 ~
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3826

子ども手当給付に係る作業負担を軽減する自治体向けツール
子ども手当事務支援 Excel テンプレート
http://www.microsoft.com/japan/business/industry/gov/kodomo/default.mspx

プレスリリースの「対象」には、
・子ども手当の制度変更により大規模なシステム改修やシステム変更をかけることが難しい自治体
・子ども手当システムが平成22年6月支給開始に間に合わない自治体
・平成23年度前後に子ども手当システムを含む既存業務システム更改を予定されている自治体
・支給対象者が比較的に少ない人口1万人以下の自治体
と書かれているが、誰でも自由にダウンロードできる。
マイクロソフトのページに画面イメージが掲載されているので、それらをみれば、何ができそうかはだいたいわかる。「Excelテンプレート」の名称どおり、事務処理支援システムではなく、Excelのワークシートとマクロそのもので、窓口担当者1名・パソコン1台で何とか事務をまわそうという町村向け。実際に使う申請書などの様式に合わせて編集し、使ったほうが効率的になる業務にだけ使うようにすれば使えなくはないが、事務処理システムの代わりになるものではない。あくまで、6月支給開始に間に合わない・支給対象者が比較的に少ない町村向けの「緊急用のツール」である。対象に合わない市町村が過度に期待して必要な準備を怠ると大変な目にあうので、実際に使ってみてから採用の可否を判断したほうがよい。

マイクロソフトが子ども手当の事務処理支援システムを無償提供

2010年03月15日 23時24分18秒 | 子ども手当・子育て
マイクロソフトが人口1万人以下・職員100名以下の小規模自治体(町村)向けに、子ども手当の事務を支援するプログラムデータと運用マニュアルを無償提供することが明らかになった。
提供の開始は、明日の16日から。マイクロソフトのホームページからダウンロードできるようにする。

提供するプログラムデータは、マイクロソフトEXCELのワークシート。住民基本台帳データ(ファイル)を読み込み、対象者リストを作成したり、受取資格の有無や支払記録などを管理したり、国や都道府県への報告書作成などの事務に使うことができる。1万人以下の町村を対象としているので、子どもと世帯の数はパソコンと紙の台帳で処理できるレベル。しかも無償提供なので、外字の処理ができない、事務の一部しかできないといったことも許容されると思われる。

子ども手当事務を無料支援 マイクロソフト
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031501000641.html

人口1万人以下・職員100名以下の町村は、全国で約400。そのうち40以上の町村で採用されることを目指しているとのこと。1年間とはいえ、紙の台帳で事務処理をするのは大変。でも、情報システムを発注するだけの余裕はない(国からの補助金はあるが)という町村をターゲットにしたソリューションであり、パソコンとEXCELがあれば、自治体の事務処理支援システムが組めるというわけではないことに注意が必要である(今日のパソコンは、20年ほど前のホストコンピュータやミニコンよりもスペックが上だが)。

なお、2月25日に開催された「全国児童福祉主管課長」で配布された資料をみると、子ども手当の事務処理がかなり簡略化されていることがわかる。準備期間が短いこと、市町村の事務の負担を極力軽減しなければならないことを考えれば、児童手当の受給資格があるか否かを不問にしたことは評価できる。

全国児童福祉主管課長会議資料(平成22年2月25日開催)
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/vAdmPBigcategory60/3F5C1C57D7239EE0492576DD000A8D00?OpenDocument

【別冊】子ども手当について
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/f6910fb7bb416b38492576dd0009f98b/$FILE/20100305_1bessatsu1_all.pdf

上記の資料にて、検討中とのただし書きはあるものの、諸様式が公開されている。事務処理システムは、これらの諸様式の項目を管理できればよいので、それほど難しくないだろう。まだ子ども手当法案は成立していないが、ここまでくれば時間の問題。6月の支給開始に向けて、配布資料を読み込み、大急ぎで仕上げる必要があるだろう。

第4回高齢者医療制度改革会議 資料公開 保険者は都道府県か

2010年03月13日 10時13分37秒 | 高齢者医療・介護
8日に開催された第4回高齢者医療制度改革会議の資料が公開された。
以下のURLからご覧いただきたい。

第4回高齢者医療制度改革会議
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/s0308-10.html

17時20分から19時20分の3時間にわたる議論の様子はわからないが、基礎資料や参考資料などから厚生労働省が考える2013年度の姿がみえてくる。配布資料からの推測になるが、第5回目以降の揺り戻しがなければ、以下のようになるのではないだろうか。

新しい制度の骨格としては、市町村国保と高齢者医療を一体的に運営すること、財政基盤の安定化を図るために市町村国保を都道府県単位化すること、65歳の年齢到達により被用者保険の被保険者は市町村国保に加入すること、になるだろう。
これまでは4案が並列に扱われてきたが、「65歳以上は全員市町村国保に加入し、高齢者の医療給付費を公費・高齢者の保険料・若人の保険料で支える仕組みとした場合の財源構成(平成22年度予算案ベース)・宮武委員御依頼資料」に基づく議論が大きく報じられたり、「被用者保険の被保険者本人及び被扶養者の取扱いについて」の資料に「65歳以上の高齢者の医療制度と国保の一体的運用を図る場合、~」と書かれていたりすることを考えると、他の3案よりも宮武委員案が一歩先に出ている感がある。

そうすると気になるのは、市町村国保の都道府県単位化である。
都道府県が保険者になるのか、後期高齢者医療制度と同様に広域連合が保険者になるのかについての言及はない。しかし、「各委員の主な意見の概要」の「(3)運営主体のあり方」のまとめ方をみると、都道府県が一歩先に出ている感がある。例えば、「都道府県が担うべきとするご意見」には、都道府県はこれまで保険事務を担ってこなかったことに対して、「都道府県と市町村で人事交流をすればよい(安部委員)」、「広域連合は、市町村からの派遣職員で運営しており、人事異動は2年単位であることから、スキルの積み上げが困難(岡崎委員)」などとポジティブな意見が並ぶ。これらと比べて、「広域連合等が担うべきとするご意見」には、「現在の後期高齢者医療広域連合をベースに、運営主体を検討すべき(斉藤委員)」との1行はあるものの、ポジティブ・ネガティブともに取り上げられる意見が少ない(広域連合には、都道府県にはつかない「等」がついている)。

あくまで推測だが、「都道府県が運営主体となるのが理にかなっている(鎌田委員)」などの意見が並んでいることからも、都道府県が市町村国保を束ねる保険者となり、住民との接点を担うのは市町村。後期高齢者医療の広域連合は新制度への移行により解散となるのではないかと思えてくる。これだけ大きな保険制度の運営にはITシステムが欠かせないが、都道府県が住民の情報を管理するITシステムを運用するとはなかなか思えない。国保連合会に委託することになるのではないだろうか。

以上は、前政権下の「高齢者医療制度に関する検討会」でも議論されてきたこと。自民・民主の2つの政権下の検討資料を読み合わせてみれば、厚生労働省が思い描く姿はほとんど変わっていないとわかるだろう。

「高齢者医療制度に関する検討会」議論の整理について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0324-13.html