制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

審査支払機関の在り方に関する検討会、開催予定が明らかに

2010年04月01日 21時09分02秒 | 情報化・IT化
このブログで何度か取り上げているが、日本の審査支払機関には、47都道府県ごとに1つずつの国保連とそれらを中央で取りまとめている国保中央会(国民健康保険分)、47都道府県ごとに支部を置く支払基金(被用者保険分)の2種類がある。
後期高齢者医療制度の廃止に向けて、市町村国保を広域化・都道府県単位化すれば、全国で保険者数は47となる。被用者保険は、健保組合がどれほど残るかわからないが、解散して協会けんぽに加入する傾向が続けば、残る健保組合と共済組合をすべてをくっつけて協会けんぽを47の支部にわけることも視野に入ってくる。
医療保険者を都道府県単位でまとめていくとすれば、国民健康保険分と被用者保険分の2種類ある審査支払機関は1つにしても十分ではないかということになる。

現状は、そこまで至っていないが、厚生労働省は「審査支払機関の在り方に関する検討会」を立ち上げ、

・審査支払機関の組織の見直し
・審査支払機関の競争の促進
・審査支払業務の効率化、民間参入の促進

の3点について話し合うことにしたようである。

審査支払機関の在り方に関する検討会の開催について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000005hil.html

組織の見直しについては、これまで紙が大半を占めていたレセプト(請求書)は、オンライン請求の原則化によって電子化が進んでおり、ITシステムによる審査(機械的に実施できる単純なもの)が増えている。今後も電子化を進めていくことになれば、審査支払機関はかなりスリムな組織となる。これは、隣の国=韓国の医療ITの取り組みをみれば明らかである。

次の競争の促進については、これまでも支払基金が市町村国保から審査支払を受託できるようにしようとか、その逆もできるようにしようといった話はあり、法的にはできるようになっているが、実際に委託先を変えたというニュースはみたことがない。2種類の審査支払機関はあるけれども、両者間で競争はないといえるのではないか、という指摘から議論が始まると思われる。

最後の効率化や民間参入の促進については、なかなか簡単ではないだろう。単純な効率化は、電子化を進めてITシステムで行う審査を増やす、専門的な判断を必要とする疑わしいレセプトから順番に並べるといったことが考えられるが、これまでのように日本医師会が反対にまわるだろう。効率的に審査をしている国保連や支払基金の支部がもつノウハウを展開するといったことはすぐにできそうだが、その程度では効率化に入らないと指摘されそうである。
また、民間参入の促進については、少々無理があるだろう。レセプトには診療科や病名などが記載されているため、センシティブな個人情報と位置づけられる。いくら審査のノウハウがあり、請求支払の間にはいる財務力があるとしても、民間企業がレセプトを処理することは、そう簡単には認められることではないと思われる。「規制・制度改革に関する分科会」のテーマとしてあがってもおかしくないと思うが、個人情報であることを疎かにはできないだろう。

4月8日(木)に第1回、22日(木)に第2回が開催される。その後は月に1度程度の開催で、年内に提言をまとめる予定。国保連や支払基金は、国民にそれほど知られている組織でない。事業仕分け・第2弾で大々的に取り上げられるぐらいのことがなければ、新聞各社はそれほど報じないだろう。厚生労働省のホームページに公開される情報をしっかり追いかけていきたい。

レセプト請求の審査の効率化も協議―厚労省が検討会
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-27049.html

社会保障・税に関わる番号制度に関する第3回検討会で住民票コードの利用の可能性が高まる

2010年03月31日 23時26分39秒 | 情報化・IT化
春休みの間に、社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会の第3回会合が開催されていた(3月15日)。
議事録は公開されていないが、総務省と内閣官房IT担当室へのヒアリングのため、技術的な議論が多かったものと思われる。社会保障と税の共通番号を国民に付与するのかといった本質的な議論が待たれる。

第3回会合・配布資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokkasenryaku/image/20100315_syakaihosyou_3_haihu.pdf

総務省の資料から、いままで見落としていたことに気づいた。第2回会合の後に、このブログで外国人をどうするのかと書いたが、訂正しなければならない。
具体的には、昨年の7月に成立していた「住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成二十一年七月十五日法律第七十七号)」と「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」である(この頃は麻生政権の行く末が気になって、成立した法案を一つひとつチェックしている余裕はなかった)。

外国人住民に係る住民基本台帳制度について
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu.html

これらの法律は、従来の外国人登録の制度を見直して、外国人住民も住民基本台帳に登録しようというもの。2009年7月15日に公布されており、2012年7月までに施行されることになる。施行後は、日本に居住する外国人に空港などで在留カードが公布されるようになり、そのカードをもって居住する市町村に住民登録することになる。転入・転出などの手続きは、日本人と同様となるため、現行制度のようにいつの間にかどこかに行ってしまったということはなくなる。

住民票コードは、日本人に加えて日本に居住する外国人にも付与されることになり、2013年度には納税者番号として使うことができるようになると考えられる。内閣府IT担当室の資料にあるように、住民票コードから生成される一意の番号を「本人と関係行政機関以外の第三者も容易に知りうるような性格の番号」である納税者番号として使い、住民票コードを医療保険者・介護保険者・年金保険者などが名寄せなどの目的で使う「本人と関係行政機関のみが知りうるような性格の番号」として使えるということである。

巨大なネットワークシステムの構築が必要になるが、技術的な課題は、それほど苦もなく解決できるだろう(セキュリティを担当する技術者は別の見方をするだろうが)。
最大の課題は、これらの番号の必要性を国民が納得できるように説明することである。内閣府IT担当室の資料にあるような「引越しポータル」では納得できない(年中引っ越している人でもないかぎり、利便性を享受できない)。国民から社会保障制度への信頼を取り戻すために必要な「国として備えておくべき社会基盤=インフラ」だと説明しないと迫力はでないし、納税者番号を導入する目的においても民主党が掲げる様々な政策を実現するために必要になるものだと説明すべきだろう。

個人的な意見だが、社会保障番号は、国民にとって意識することのない番号になるだろう。この番号を使うのは行政機関であり、たとえば、子ども手当の支給額を一律にするのではなく世帯の所得に比例させたり、真に困っている人たちの給付に使ったり、医療と介護の自己負担額を世帯で合算できるようにする(所得に比例させた限度額を上回る分を償還する)といった説明をする。医療や介護、年金の番号は現行どおりとすれば、国民にとって「プライバシーの侵害」や「国による管理(国民総背番号制)」といった見え方にはならないのではないだろうか。

行政刷新会議の「規制・制度改革に関する分科会」、初会合が開催される

2010年03月30日 23時51分13秒 | 予算・事業仕分け
29日に、政府の行政刷新会議の下に設置された「規制・制度改革に関する分科会」の初会合が開催された。
枝野大臣は、「これまでの規制改革は、厚い壁に阻まれて緩和されていないところと、逆に緩和だけが進んで弊害が生じた両面があった」と指摘し、「消費者であるとか、患者さんであるとか利用者の観点で規制を見直していただきたい」と求めた。

規制改革分科会が初会合=鳩山政権で論議スタート
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100329X578.html

「消費者、患者の観点で規制見直しを」-行政刷新会議分科会が初会合
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26981.html

規制の見直しには相当な抵抗が予想される。例えば、「混合診療の解禁」や「レセプト病名統一」などは、話題になるたびに大きな反発を招いてきた(いささか感情的で、これらを許せば「医療崩壊」につながるなどの脅しを加えて)。いくら枝野大臣が頑張って旗を振ったからといって、簡単に実現できるとは思えない。ゆえに、大塚分科会長が「委員でまとまらない場合は、関係者を集め、公開の場で『規制仕分け』をする」と述べるなど、「国民」を味方につけるしかない。この分科会においても「国民の声」を受け付けての開催だけに、ホームページに資料がアップされている。

規制・制度改革に関する分科会(第1回)議事次第
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/0329/agenda.html

今後の予定は、

4月
 ・3つのWGの立ち上げ、各WGでの関係者ヒアリングと論点整理など
5月
 ・各WGでの方向性の確認、各省での調整、分科会への報告
6月
 ・行政刷新会議への報告

となっている。
検討テーマは、規制改革会議の提言、「国民の声」の集中受付期間に寄せられた規制改革提案、新成長戦略関連重要検討テーマとしての提案のなかから抽出済で、WGは、ライフ・イノベーション、グリーン・イノベーション、農業の3つとなっている。
なお、ライフ・イノベーションの検討テーマは、

・保険外併用療養(いわゆる「混合診療」)の原則解禁
・一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和
・医行為の範囲の明確化(診療看護師資格の新設)
・医行為の範囲の明確化(介護職による痰の吸引、胃ろう処置の解禁)
・再生医療の推進(適用法令、臨床研究の在り方、PMDA審査体制)
・レセプト等医療データの利活用促進(傷病名統一、診療年月日記載など様式改善等)
・ICTの活用促進(遠隔医療、特定健診保健指導)
・医療ツーリズムに係る査証発給要件等の緩和(医療ビザ、外国人医師の国内診療)
・特別養護老人ホーム等への民間参入拡大(運営主体規制の見直し)
・介護施設の総量規制を後押ししている参酌標準の撤廃
・訪問看護ステーションの開業要件の緩和(一人開業の解禁)
・各種介護サービス類型における人員・設備に関する基準の緩和(サービス提供責任者の配置基準、ユニット型施設の入所定員比率目標等)
・高齢者用パーソナルモビリティの公道での使用
・EPAに基づく看護師、介護士候補への配慮(受験回数、試験問題の英語表記or漢字へのルビ等)

となっている。
このブログでも取り上げている項目がいくつか入っているし、ここ数日の間に動きが出てきている。
例えば、

介護福祉士の在留資格検討=歯科医師らの就労制限撤廃-出入国計画
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100330X765.html

<EPA>来日研修生、看護師に 254人中3人…超難関、日本語が壁
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100327ddm041040144000c.html

で報じられているように、難しい漢字にルビを振ったり簡単な言葉に言い換えたりする、日本語の支援を充実させる、日本の大学を卒業して国家試験に合格した留学生には国籍にかかわらず介護福祉士として活動を認める、といった検討が進められている。

高度情報通信ネットワーク社会推進本部(IT戦略本部) 鳩山政権下で再始動

2010年03月20日 09時33分13秒 | 情報化・IT化
鳩山政権が発足して半年、ようやくIT戦略本部の会合が開かれた。
半年もの間、何の動きもなかったために、これまで民主党はITのことがよくわかっていないのではないかなどと噂されてきた。しかし、鳩山首相が「半年たつまで戦略的なことを決めていなかったが、やはり戦略性が重要だと認識し、遅ればせながら立ち上げた」と述べるなど、これから数ヶ月で大きく動きそうである。関係省庁の副大臣・政務官からなる企画委員会が新設され、「政治主導」で政策の立案が進められる。具体的なスケジュールは、

4月
・新IT戦略を決定
5月
・必要な法整備や予算措置、目標年次や担当省庁党を明記した工程表を策定
6月~
・新成長戦略に反映

で、ITの利活用を阻む既存制度などを徹底的に洗い出して抜本的に見直すとのこと。前政権との違いは、「政府・提供者主導から、国民主導の社会への転換のためにITを活用する」ことにあり、そのためにITが果たす役割が大きいとの認識。多少の焼き直し感はあるが、今後の詳細化に期待したい。
新IT戦略は、「国民主権」の観点から、次の3つの柱=重点戦略に絞り込むことになる。

(1)国民本位の電子政府の実現
・政府CIOを設置して、行政の効率化を推進するとともに業務を見直し、共通基盤を整備する
・行政が保有する統計情報を匿名化して、インターネットで容易に入手できるようにする
・行政が保有する情報の公開を進め、民間部門の新事業を創出する
・便益の高い行政サービスをオンライン/オフラインでいつでも利用できるようにする
・国民ID(共通番号)制度、自己の情報活用を本人が監視できる制度等を整備する

(2)地域の絆の再生
・市民メディア(地域SNS)の全国展開など、地域主権をITで実現する
・双方向でわかりやすい授業の実現など、21世紀にふさわしい学校教育の環境を整備する
・国民が自らの健康・医療情報を電子的に活用可能な全国レベルの情報サービスを創出する
・独居高齢者の安否確認や在宅医療・介護などでITを積極活用する

(3)新市場の創出と国際展開
・ITの研究開発を重点的に推進し、早期に市場に投入する
・デジタルネイティブの能力を活かし、新事業を創出する
・クラウドコンピューティングサービスを推進する
・スマートグリッドや人やモノの移動のグリーン化などにより低炭素社会を実現する
・戦略分野についてオールジャパン体制を整備し、国際標準を獲得する


診療情報活用、全国で受診可能に…IT戦略案
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100319-567-OYT1T01037.html

共通番号制のシステム整備 政府の新IT戦略骨子
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031901001004.html

政府のIT戦略本部が始動 企画委新設、5月に工程表
http://www.asahi.com/politics/update/0319/TKY201003190530.html?ref=goo

診療履歴をデータベース化=IT新戦略骨子を決定-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100319X995.html



なお、政権交代後の初会合となった第52回の資料は、すでに公開されている。詳細は、配布資料をご覧いただきたい。

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(第52回)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai52/gijisidai.html

事業仕分け・第2弾の公益法人選定、最終フェーズに

2010年03月19日 21時16分41秒 | 予算・事業仕分け
4月下旬に実施予定の事業仕分け・第2弾の公益法人の選定が進められている。
9日から実施していた公益法人に関する省庁ヒアリングは18日には終わり、19日から独立行政法人に関するヒアリングが始まる。公益法人の数は331。独立行政法人の数は98。それらから100程度に絞り込む予定。

<事業仕分け>公益法人に関する省庁ヒアリング終了 第2弾
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100318-00000096-mai-pol

リストとして発表された50の法人では、常任役員186人のうち、天下りが128人で約7割。総務省・経済産業省の両省が所管する日本情報処理開発協会では天下りの常勤役人が5人で、年報は1380万円から1800万円(役員報酬規定)などと報じられていることからは、事業仕分けの場で、公益法人への天下りと高額な役員報酬を追及していくものと思われる。

「仕分け」候補の公益法人、常勤役員7割が天下り
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100313-567-OYT1T00057.html

天下り在籍法人、高額報酬は5倍 事業仕分けでも追及へ
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031901000577.html


枝野大臣は、閣議後の記者会見で、公益法人・独立行政法人に加えて、特別民間法人を仕分けの対象に加えることを発表した。特別民間法人は、日本消防検定協会や自動車安全運転センター、社会保険診療報酬支払基金など38。特別民間法人は、公的な業務にあたるために法律に基づいてされている法人で、公的な権限が与えられていたり補助金が支出されていたりする。

仕分け、特別民間法人も対象=枝野担当相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100319X869.html

特別民間法人も仕分け対象に…刷新相
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100319-567-OYT1T00977.html