セミとの切ない別れ

うちのベランダは幹線道路に面しており、
近くに大きな木はないのですが、
お花が多いせいか、いろいろな虫がやってきます。

こちらは、クレマチス



週末、とうとうセミがやってきました。しかも２匹。


とうとう、というのは、
ここに住んで６年半、セミの訪問は今までなかったからです。


１匹目は、元気に鳴いていました。


夕方帰宅して、お花の水やりのためにベランダに出ると、
「ヂヂヂヂヂヂヂヂ・・・・」というか
「ギヂギヂギヂギヂギ・・・」というか、
「キョリキョリキョリ・・・」というか、
とにかく聞いたことのない、不思議な声がしました。


最初、エアコンの室外機が壊れたのかと焦りました。
それくらい、機械的な音でした。


ビックリしてエアコンを切っても、音はそのまま。
エアコンの音じゃない。じゃあ、何だろう・・・。
目を凝らして探しましたが、
音の主の姿がどうしても確認できません。


ネットで『セミの声』を検索し、
関東にいるセミの声を聞いてみましたが、
同じ鳴き方のものは見つかりませんでした。


窓を閉めても、不思議な音はずっと聞こえました。
一瞬、音が途切れることもあったので、
何かの虫なのだろうなとは思いましたが、
結局、夕方から翌朝まで、
１２時間以上、ずーっと鳴いていました。


朝になり、元気に声は聞こえていましたが、
姿はやはり見えません。


どこに何がいるのか、さっぱりわからなかったのですが、
「どこのどなたか知りませんが、お花にお水をやりますよ。
お水がかかったらごめんなさいね」と言ってから
私はお花に水をやり始めました。


すると一瞬、今までで一番大きな声で
「ジジジジジジジジッ！！！」と言ったかと思うと、
鉢の間からセミが飛び出して、彼方へと飛び去りました。
あまりにも突然で、私はベランダでのけぞってしまった


ビックリさせる気はなかったのに。
出ていかなくてもよかったのに。
ううううう、ごめんよう
私はセミにものすごく悪い事をした気になり、気分はどんより



で、その翌日の夕方遅く、
今度は彼方から「・・・ジジジジジジジ！」という音が
どんどん近づいてきたかと思うと、
うちのベランダに着地したのがわかりました。


２匹目のセミは、着地してから静かなままでした。
うちのベランダで息絶えたのだなとわかりました。


その翌朝、ベランダに出てすぐのところで、
セミは亡くなっていました。


最期の力を振り絞って飛んできて、
うちで力尽きたのだと思うと、
その亡骸をゴミとして片づけるのは忍びなく、
チリトリに乗せ、近くの空き地の草むらに運びました。
あとは虫たちが土に還してくれるでしょう。


みんないずれ土に還るのだ。
人間にとっては短い命でも、
セミにとっては、それが普通の長さなのだ・・・。


そう思っても、
ちょっと切ないお別れでした。


今、土の中にいる幼虫たちも
いずれ無事に大人になり、大空を飛べますように。

幼虫たちが地中にいる間に、
愚かな人間が地球を破壊するようなことがありませんように。
私は心からそれを祈ります。




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