Days of Dragonflies & Moths

トンボや蛾に関わる記事中心。
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写真集「関東甲信越のトンボ2010plus」

憧れのベニイトトンボ

2007年07月06日 | トンボ


ベニイトトンボは子供の頃からの憧れだった。
身近な田んぼでキイトトンボを見ることは出来たが、ベニイトトンボを
見ることは出来なかった。

埼玉に限っても、1970年頃までは県内のあちこちで見られたらしい。
その頃までは身近に適度な茂みのある水辺がたくさんあったことだろう。
ベニイトトンボは水際の茂みを住処としている。近似のキイトトンボが
明るい場所へ積極的に出てくるのに対し、本種は茂みの奥へ奥へと潜り
こむ習性がある(そのために綺麗な写真を撮るのが難しい)。
環境整備の為に茂みのある水環境が減ってしまい、必然的に数を減らし
たのかもしれない。

身近な水辺で思い当たるのは、昔至る所の農家で見られたカワドや裏庭の池
である。1970年頃までは、こういった場所でハグロトンボやカトリヤンマが
発生していたと考えられる。よく人家に飛び込んできたというヤブヤンマも
屋敷毎にあった小さな水辺で発生していたと考えられる。農家の裏庭の小さ
な池でヤブヤンマが産卵している光景を思い浮かべただけで、何だかワクワ
クしてしまう。。。

          閑話休題

それが70年代後半あたりから急激に産地を減らし、気がついたらベニイトは
日本全国でも希少種となってしまっていた。
ベニイトトンボは自分にとっても実質的になかなか出会えない存在になって
しまっていたが、嬉しいことに最近は少しずつ復活しているという話もきく。



茂みをかき分けて水辺に出たとたんにこんなカップルに出会ってしまった。
勿論写さないわけにはいかない。
しかしアシの葉がじゃまをしてなかなか写させてもらえない。
しかも、かなり低い位置に止まっていて、精一杯しゃがみ込んで狙っても、♂♀に
ピントを合わせることは出来なかった。



そうこうしているうちに交尾を終え、いよいよ産卵体勢に入った。
イトトンボの♂が連結体勢で立ち上がる格好は何とも絵になるが、うまいこと写し込む
のは難しい。



そばではぐれ♂が羨ましそうにこの光景を眺めていた。

ベニイトトンボの棲む水辺には、他にも色々なトンボが棲んでいる。
懐かしい平地の池沼に棲息する種類だ。



オオセスジイトトンボはその特殊な生活環境故、全国的に希少種である。
ベニイトトンボと生息域が重なることも多い。鮮やかな青い♂はなかなか
写すことが出来ない。



大食漢で知られる本種の♀。他のイトトンボを食べている。
大型種で色も鮮やかなだけに、連結は絵になる。


オオセスジイトトンボと同じような分布をするオオモノサシトンボだが、
なかなかオオセスジとセットで見ることはできない。



水辺の茂みから何かヤンマが飛び上がった。運良くすぐ近くに止まってくれたのを
見るとアオヤンマだった。低湿地の定番種だが、近年なかなかお目にかかれない。
体色は迷彩色として十分以上に機能し、茂みにいる姿をこちらが先に見つけるのは
至極至難の業だ。

イトトンボの中には見分けの難しい種類も多い。
その資料集めにイトトンボの宝庫へと出向く訳である。
しかし、なかなかそうは問屋が卸さないものだ。
ムスジイトトンボは水面にクロモやマツモの生えるような池を好む。
意外とセスジイトトンボとおおっぴらに混成することは少ないが、
よく探すと両者を見つけることが出来る。



ムスジイトトンボ♀の標識は、水色矢印で指し示した背中のくぼみ。
セスジイトトンボ♀とある画像だが、どうも怪しい。ハイブリッドだったりして???



アオモンイトトンボの♀も実はなかなかに出会う機会が少なく、資料を
集められないでいたが、ちょうど狭い空間にアオモンとアジアの♀を
見つけることが出来た。



アオモンイトトンボ♀ 成熟するとかなり地味で、一見アジアイトトンボとの区別が
難しいが、並べてみると一回り大きく、色もどす黒い感じがする。