ガスマスク 購入時の注意

さて、ガスマスクを紹介する上で絶対に注意しておかなければならないことがある。
これはコレクターの端くれの一人として決して外すことにできない注意事項であるので、
「俺も買ってみようかな」と少しでも思った人は必ず目を通しておいて頂きたい。

長くなるので要点だけを最初にまとめておこう。
「市販されている軍用のガスマスクは実用不可である」
ということ。

先ず初めに有効期限の問題。
ガスマスク本体やフィルターには作業用の防毒マスク同様、有効期限が設定されており、
これを過ぎたものが放出されている。
有効期限が切れたからと言って即座に使用不能ではないだろうが、
貴方は「有効期限切れ」と書いたロープを装着してバンジージャンプをしたいだろうか？
私は願い下げである。

次いで装着の問題。
この手のマスクは装着に慣れが必要であり、日頃から訓練する必要がある。
有毒ガスというものは髪の毛一本の隙間からでも侵入すると命の危険がある。
慣れないマスクの装着に手間取っているくらいなら息を止めて一刻も早く現場から離れた方が無難だろう。

火災に関して
よく勘違いされている事実であるが、一般的な「ガスマスク」のフィルターでは火災に際に何の役にも立たない。
火災の時には有毒ガスが発生するが同時に大量の一酸化炭素が発生する。
一酸化炭素は他の有毒ガスと吸着のメカニズムが異なるため、一般的なフィルターでは吸着不能であり、
ごくごく一部の特殊なものを除いて軍用でも対応しているものはない。
隣の家が火事になったからと言って手持ちのガスマスクを装着して助けに行こうものなら自分も苦しむことになる。
自ら死地に飛び込むようなマネは絶対に止めよう。

国内で毒ガス事件があった頃だろうか。
市販のガスマスクを輸入した業者がやはり「火災の際にも」みたいな売り文句で売っていたが、
これも同様に一酸化炭素で苦しむことになる。
新品で実用可能なものではあったが、高価な上に火災には無力な物であるのは間違いないものだった。
あれで実際に煙に巻かれて死んだ人が出たらどうするのだろうかと気になったものだ。

それより少し後だったか、ミリタリーショップの店頭で面白い話を聞いた。
置いてあったガスマスクを見て「買う人いるの？」というカップルの質問に対して店主はこう答えていた。
「サリン事件とかあった時は普段店に来ないような人、会社の役員とかそういう人が何人か来て買っていった。
　期限切れてるから使えないよ、って何度行ってもダメで買っていった。
　ああいう人は自分だけでも助かりたいんだろうね。」
というのを今でも思い出す。

以前、ネット上で「万一の硫化水素対策でガスマスクを・・・」と言っていた人がいたので軍用はやめとけ、
と注意しておいたが耳を傾けてくれなかったようである。
国内の複数の業者さんが火災避難用、NBC避難用のマスクを出しています。
高価ではありますが、本当に使うつもりならそういうのを買いましょうね。

最後にもう一度繰り返します。
「一般的に売られている軍用のガスマスクは実用できません。」

大事なことなので2度言いました。
つまりは「本製品はジョークグッズです～」ってのと同様、あくまでコスプレ、インテリア、コレクション用です。
ここを絶対に忘れないでくださいね。

花粉症対策なら有効かもしれませんが街中で着用していて職務質問されても私は責任をとりませんので悪しからず。