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オー、捨てないと!

隠れオタクな会社員の買い物や感じた事

陸奥爆沈

2016-06-15 00:07:18 | 
陸奥爆沈
新潮文庫
吉村 昭:著




日本海軍の戦艦の中で大和型が進水するまで最大級の戦艦だった長門型、
その二番艦の「陸奥」は太平洋戦争中、柱島で謎の爆発を起こし、爆沈してしまう。

その原因に当時の資料・関係者の話を集めてその原因に迫ったのが本書である。

敵の潜水艦による攻撃、新兵器・三式弾の自然発火、無煙火薬の自然発火という数々の疑惑を潰していって最後に残ったのが人為的・故意的なものというのが、意外ではあるのだけど、
日本海軍における過去の事例を辿っていくことで、その真実味が増してくる。
船の火薬庫に火をつける人間多すぎ。
非常に人間臭いというか、人間関係の裏側にある後ろ暗い、ドロドロとしたものを感じてしまう。

原因だけでなく事故後の対処、民間人に知られないように遺体や遺品を即座に回収して人目につかないところで焼いたり、
その作業に当たる人間にも爆沈の事実を言えなかったり、
さらには陸奥の生存者すらも隔離された後に激戦地に回されてしまうあたりにも後ろ暗さを感じてしまう。

戦時中、軍隊という特殊な環境における話と片付ければそれだけだが、果たしてそうだろうか。
現代においても似たような事があるような気がしてならない。


火薬類危害予防週間の関連記事だとかなんとか。
まあ実際、火薬類の事故も管理や安全がずさんな場合が多かったりするしね。
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狙うて候

2012-08-22 21:35:36 | 
狙うて候 上・下巻
東郷 隆 著
実業之日本社文庫
ISBN978-4-408-55010-7
ISBN978-4-408-55011-4



明治時代、日本初の国産小銃を設計した村田経芳、その生涯について書かれた長編。
村田氏については西南戦争に従軍している、
ヨーロッパに派遣されて諸外国の黎明期の小銃を視察している、といった程度の知識しか無かったのですが、
この本を読んで知る事が多くありました。

幼少の頃、銃器(当時は火縄銃だ)に興味を持って砲術に道に進み、
射撃の腕と知識を買われて薩摩藩公認の銃器開発家となり、
戊辰戦争、鳥羽伏見の戦い、西南戦争などを経験。
そして遂に村田銃の開発へとつながる。

村田氏の生きた時代は幕末という動乱の時代であり、
また銃器的にも後装銃が誕生し始める時期ということもあり、
氏の類稀なる射撃の腕と相まってまさに
「あの時代に生まれるべくして生まれた」というべき感想を持った。

決して幸運続きという事ではなく、砲術を始めた際も高価な火薬の入手に苦労し、
銃器の発明家として地位を築いてからも
新政府軍の軍人としてかつて幾度となく世話になった西郷隆盛を討伐する立場となり、
薩摩藩士時代に訓練方法を確立させた旧薩摩藩の武士に狙撃されるという目に遭っている。


読んでいて色々と感じる部分はあったのですが、
薩英戦争の後、藩主に手製の元込め銃を見せた際、それほど精巧ではないとの感想を言われて、
戦場は泥あり埃あり、嵐の中でも撃ちあわねばならないので機構を単純にして壊れないようにしなければならない、
と答える部分は兵器製造の重要にしてもっとも忘れやすい部分であると感じました。

その他、新政府軍の銃器を輸入にしようと声が上がると
海外を敵に回すと武器の輸入が止まるので国内製造するべきだ、と唱えたり、
洋銃の輸入当初、戦闘の形勢が不利になると重い銃を捨てて逃げてしまうので、
それを防ぐために国章を刻印する事を考えたり(ドイツで見た事を参考にしたようだ)、
後世あるいは現代にも通用する部分があって大いに勉強になりました。

明治の新しい産業の遺産として当時の建物や機械が語られることがあっても、
村田銃について語られる機会はあまりにも少ないように感じます。
少し残念な気がするのは私だけでしょうか。
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現代文 肉弾

2012-07-03 22:23:32 | 
現代文 肉弾
国書刊行会
桜井忠温 著
ISBN978-4-336-05330-5



―今日用いられる「肉弾戦」という言葉はこの本に由来する―

日露戦争について書かれた本としてもっとも有名なものがこの「肉弾」である。
気にはなっていたものの、今まで読む機会が無かったので、今回読んでみました。
もっとも、数年前に再版されるまで絶版だったようですが…。

内容的に最初に驚いたのが何と言ってもその独特の難しい言い回しが多用されている点。
それはともかく、日本側の士気の高さに驚かされる。
予備隊となって戦地に行けなくなったある兵士は「魂だけでも戦地にいち早く赴いて忠義を尽くそう」と自らを傷つける。

日本側の強硬な突撃に対し、ロシア側も激しく抵抗するが、
ロシア側将兵は上からの命令に従って戦うのみで、
将校は自らは楽をするのみで兵士たちは飢えていた。
一方日本側は将校と兵士との結束が高く、一丸となって戦っていたと分析する。

戦闘経過を通して思ったのは現在の目を通してみると
ただただ突撃を繰り返すのみで、ロシア側が新兵器となる機関銃を装備している事もあり、
多大なる犠牲を払っていました。
南山の戦いでは一度の突撃で4000名からの死傷者を出し、大本営が「1ケタ違うのではないか」と問い合わせる状況。
歴史的に考えると後の第1次世界大戦でも塹壕を掘るだけで基本的には歩兵の突撃を繰り返すだけだったので、これも仕方がなかったのかも。

繰り返しにはなりますが、そんな圧倒的に危険な状況でもものともせずに突っ込んで行く
士気の高さは今の時代を生きる私には若干理解できないものの、
今の我々は何かを失ってしまっている様な気がしてならない。


余談ではありますが、これを読んだ有名人の中にアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領がいますが、
感化された彼が当時、アメリカ陸軍に採用されていたスプリングフィールドM1903ライフルに装備されていた
クリーニングロッド兼用のロッド式銃剣を「貧弱で使い物にならない」と反対し、
ナイフ形のM1905銃剣に変更されたのは有名な話。
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決断できない日本

2011-11-10 19:35:30 | 
決断できない日本
ケビン・メア著
文春新書
ISBN978-4-16-660821-8




「沖縄はゆすりの名人」という問題発言をしたとされ辞任した元米国務省日本部長、
ケビン・メア氏の著書。
氏の姿は最近はテレビでも時々目にしますね。

私はテレビをあまり見ない人なのでどんな事を言っている人なのかよく知らなかったのですが、
アメリカの政府当局者から見た日本の姿というのがどういうものなのか気になったので買ってみました。


冒頭に今回の震災とトモダチ作戦の舞台裏について述べられる。
特に気になるのはやはり福島原発にまつわる部分。
日本政府からもたらされる情報の少なさに苛立つ米政府。
しかしそれは情報を隠しているのではなく日本政府自体が碌に情報を得ていないのだろうという鋭い見方と
有効な対策を打ち出せない当時の政権に対する不信感。
支援品目を送ったら感謝と受け入れの連絡ではなく「破損、汚染したらどうするのか?」といった緊張感に欠ける質問が帰ってきたという信じられない事実。
この件に関してはいち早く支援を提案したものの断られた日航123便事故の際と重ねて書かれている。
何も学んでいないのか…。

また、当時話題となった在日アメリカ人の退避勧告についても触れられている。
自国民(ここではアメリカ人ね)の安全を考えたら最悪の事態を想定して東京から退避させる必要がある。
だが、そんな事をすれば日本人はパニックを起こし、日米同盟が崩壊してしまう。
この本には幾度となく日米同盟について書かれているが、
これを見た際に感心してしまった。
ヨーロッパ各国は早々に東京から自国民を退避させ、
国によっては大使館も大阪に避難させてしまっていたからだ。


2章では「ゆすりの名人」報道について書かれている。
詳しくはここで書かないが、
全て事実としたら濡れ衣以前の報道した側の大きな問題となるだろう。

その他、氏の外交官としての経歴や普天間問題に絡む沖縄の現状、
米国から見た日本の重要性について書かれる。

個人的には米国側から見た各総理大臣・政治家の印象が興味深かったですが、
それよりも興味深かったのはやはり日米同盟について。
アメリカから見て日本はアジアにおけるもっとも重要な国であってこれは今までもこれからも変わらない。
米中関係の改善を図っているが、日本との関係をないがしろにしているわけでは無く、
それはまた別の次元の問題である。
当然、今回の震災が起きた際に即座に助けたのは当たり前の事だと思っている。
などなど、「なるほど」と思って閉まった部分が多数。

逆に「今までなぜ気づかなかったのだろう」と思ったのは日米同盟の不平等さ。
アメリカは日本の憲法を理解しているので今の形になっているという点。
すなわち日本が攻撃を受ければアメリカは日本を支援するが、
アメリカが攻撃を受けても日本は支援をする必要がない(というか憲法でそれを否定している)という点。
我々は日米同盟というものについてあまりにも知らなさすぎる気がしてしまった。

最近も「わたしたちの同盟」というコミックで日米同盟について解説したコミックを在日米軍が公開しましたが、
これは本来、日本側が国民に教えるべき内容なんですよね。

また、国民性の違いというか、物の見方の違いには少々苦笑してしまった。
アジア歴訪で日本より中国に先に行ってもルートの問題でそれ以上の意図はアメリカ側は意識していないのに、
日本側は「我々より中国を優先した」と報道してしまう、っていう…。

あくまでメア氏個人の見方という部分もあるのだろうけど、
日本とアメリカの関係が気になる人は読んでみる価値のある1冊です。
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沖縄 シュガーローフの戦い

2011-08-26 22:23:06 | 

沖縄 シュガーローフの戦い 米海兵隊地獄の7日間


(通勤の際、鞄に入れていたら雨の酷い日に濡れてしまった)

ジェームス・H・ハラス 著
猿渡 青二 訳
光人社NF文庫
ISBN978-4-7698-2653-8


以前の「沖縄」に続き、沖縄戦の本。
今回はその中でも激戦地とされる「シュガーローフの戦い」に焦点を絞り、
当時戦った海兵隊員たちの証言をまとめて書かれたもの。
ゆえに内容は生々しく、実際にどうだったのかが手に取るように分かる。

実際のところ、沖縄戦と言うと日本の最後の戦場として、
単なる負け戦だったというイメージが浮かびがちなのですが、
硫黄島の戦い同様、沖縄でも堅固な陣地で待ち伏せし、
敵の出血を強いると言うやりかたがいかに成功していたのかが本書からは伺えます。

装備の貧弱な日本軍に対して米軍は戦車を繰り出すものの次々と破壊され、
支援を失った歩兵には次々と銃弾が降り注ぐと言う地獄絵図。

しまいには丘全体が日米双方の戦死体で埋まり、それらを踏まずに進む事が困難になり、
多くの兵士、ベテラン兵までもが肉体的だけでなく精神的に追い詰められていった状況も克明に書かれている。
残念な事に生き残りが少ないため、この戦いにおける日本側の状況が不明ながら、
双方が死力を尽くして戦った事が分かる貴重な一冊と言えよう。

翻訳が適切で意味不明な部分が無いほか、現在のシュガーローフについて書かれている点も評価したい。

シュガーローフの現在に関する個人的な話は改めて書いてみたい。

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脱出山脈

2011-05-11 19:35:39 | 
脱出山脈
トマス・W・ヤング 著
公手成幸 訳
ハヤカワ文庫
ISBN978-4-15-041231-9



場所は現代のアフガニスタン。
アメリカ空軍のパースン少佐が航空士(航法士?)として乗り込むC-130輸送機の今回の積荷は、
荷物ではなく捕虜となったイスラム法学者・ムッラーだった。
簡単な任務だと思ったのも束の間、離陸したばかりのC-130は攻撃を受け・・・。

まあ、ハリウッド的な急にピンチな状況に放り込まれる主人公、しかもパイロット、という構図ではあるのですが、
著者が実際にイラクやアフガニスタンの上空で航法士として従軍した経験があるというだけに、
現地の地形や兵士の心理、装備などの描写が実に細かい。
MBTIRの読み方とかこの小説で知る事になるとは夢にも思いませんでしたよ。

また、空軍のパイロットということで敵との戦いに極端に不利になってしまうのではないかと思いましたが、
パースン少佐は幼い頃から山でのハンティングを経験しているのだった。

少々敵側がムッラー確保に拘る部分の描写が薄いというか突拍子も無い気がしましたが、
それを補って余りある作品でした。

ぜんぜん期待していなく、店頭で「まあ、暇つぶしになればいいか」程度の気持ちで買ったのですが、
思いがけない良作でした。
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兵士に告ぐ

2011-02-16 20:00:11 | 

兵士に告ぐ
杉山隆男 著
小学館文庫
ISBN978-4-09-408471-0



本屋で何かいい本はないかと探していたら見つけました。
杉山氏の兵士シリーズ最新刊。
「~見よ」「~聞け」「~追え」でてっきり終わったのかと思っていましたが、ちゃんと続いていたようです。
このシリーズ、全て読んでいるにも関わらず紹介していませんでしたので、
概要を書いておきますと著者の杉山氏が自衛隊に密着取材し、
そこで体験した出来事から自衛隊とは何なのかを見つめるシリーズ。

陸・空・海と来て今回は再度陸に戻ってきました。
主な題材は「西部方面普通科連隊」!!。

この島嶼防衛のために新設された、普通科という看板を掲げながらも一般の普通科とはかけ離れた部隊に密着する。
そこから見えてきたのは意外にも背後に聳える「アメリカ」という大きな力だった。
島嶼防衛のための部隊なのにボートからの上陸訓練をやらせてもらえず、
陸地の演習場に「ここからが海」と地面に線を引いて演習する日々。
アメリカに渡っての訓練にそんな裏話があったとは。

また、新設された部隊とは逆に廃止される事になった北海道の第29普通科連隊も採り上げ、
自衛隊が北方重視から南方重視へと変わりつつある部分も描き出す。

それと併せてある意味泥臭い、人間らしい部分にも触れられる。
手癖の悪い隊員。
隊員として役に立たない隊員とそれを支える仲間。
地方に赴任し、孤独を味わった中隊長の妻。

だが、何よりも印象的だったのは中には強力な指揮官がいたということ。
災害派遣を受けた29連隊では寒い冬の北海道でひとりエアコンの効いた車の中で休む警察の高官を尻目に、
自衛官のみならず警官や消防官にも指示を出す連隊長がいた。
西部方面普通科連隊には一度も官舎に帰らず、任期の間じゅうを中隊長室で過ごした中隊長がいた。
ある部隊では伝令が持つはずの無線機を自ら背負い、
自分でやらなくてもいい身の回りの事を全て自分で済ませてしまう中隊長がいた。
自衛隊と言う戦後の日本の生んだ「軍隊ではない軍隊」の中でこんなにも武士の魂を持った人々がいるとは。
改めて自衛官と言う人々のすごさを認識させられた一冊でした。

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沖縄 日米最後の戦闘

2010-11-24 22:15:51 | 
沖縄 日米最後の戦闘

米国陸軍省 編
外間 正四郎 訳

光人社NF文庫
ISBN4-7698-2152-2



太平洋戦争最後の戦場となった沖縄戦についてアメリカ側がまとめたものを翻訳したのが本書である。

沖縄戦と言うと太平洋戦争の末期も末期であり、
日本側は大して反撃もできないまま押されていった、という印象を勝手に持っていた。
しかしそれが大きな誤りである事を本書で知る事ができた。

日本軍は必死で抵抗し、米軍は各所で何日も足止めされ、
多大な犠牲を払ってやっと前進しても反撃を受けて後退を余儀なくされてしまう。
そんな描写ばかりであった。

また、末期の日本軍といえば物資・弾薬が常に底をついている印象を受けるが、
実際に戦闘に参加した米軍側から見れば「猛烈な銃砲火を受けた」ということも少なくなかったようである。
日本でよく言われるような「米軍の猛攻撃になすすべも無かった」と言うのも事実ではあるのだろうが、
米軍側は「ありったけの地獄を1ヶ所にまとめたような死闘」と感じたのも事実である。
不利な状況下で最後の最後まで果敢に戦った、そういった印象を受ける。

ただ、悲惨な状況には間違いなかったようで、
特に伊江島における戦闘の様子、民間人多数が斬り込み隊に参加し、
中には乳飲み子を抱えた婦人までもが米軍陣地に突っ込んできたというのは悲劇でしかない。

現在、沖縄というとリゾート地、観光地としてのイメージが強いのではないだろうか?
しかし、遠くない過去にこのような戦いがあった場所であるという事を決して忘れる事はできない。


ただ、この本の欠点は図版が少なくて(特に最初の方)地形が分からないので状況が把握し難い点と、
翻訳に少々気になる点がある。
「〇〇中将は」と書いた次の行で「将軍は」と書かれている。
そのまま「中将は」が無難では。

また兵器名称。
「自動操縦砲」という単語は「自走砲」なんだろうと理解してましたが、
「MI七型自動操縦砲」と出てきてやっと「M7"プリースト"自走砲」であると理解できました。
ちなみに読み終わってから「自動操縦砲」を検索したらこの本に関する評判以外は単に「自動操縦」でヒットしてました。
本来が昭和43年と古い出版であるから仕方ないのかな?
こういう点は直しておいてほしいものです。
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小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡

2010-11-19 23:09:10 | 
小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡
     挑戦と復活の2592日
的川泰宣 著
PHP研究所
ISBN978-4-569-79234-7




今年の6月に7年間と言う宇宙での長旅を終えて地球に帰還した探査機「はやぶさ」の
生い立ちから帰還までを間近で見ていたJAXAの名誉教授、的川先生の著作。

数々の練りに練りあげられて開発された探査機は順調に飛行していくも、
想定外のトラブルが起きはじめ、ついには通信途絶に。
この際もさっさと予算を打ち切ってしまおうとするお偉方に対し、
上手いことはぐらかしながら通信回復の日を今か今かと待ちわびる。
いかに一日一日が長く感じたのだろう、想像もつかない。

ただ、プロジェクトチームと言う直接携わる仕事とは一歩離れているため、
先生が度々口にする降下の際に一度目は誰もが恐々とやっていたが、
2度目には誰しもが手馴れた感じで作業を進めていて、
その成長の早さに驚いた、といった感想を述べられている。

個人的に印象に残ったのは最後の試練とも呼べる2009年11月のスラスタD故障の際のやりとり。
「だってAとBはつないでないだろ?」
「いや、実はつないであるんです。」
俗に言う「こんなこともあろうかと」といった感じですが、
イオンエンジン担当・國中先生の技術者としての誇りのようなものに感動せざるを得ませんでした。
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実戦NBC災害消防活動

2010-07-16 20:19:15 | 
編集 全国消防長会
編集協力 東京消防庁
発行 財団法人 全国消防協会
東京法令出版株式会社
ISBN978-4-8090-2291-3



近年、消防は単なる火災や救助活動だけでなく、
様々な薬品などの絡む災害にも対応する必要が出てきた。
それだけでなく95年の地下鉄サリン事件など、
かつては考えられないようなテロ事件にも対応しなければならなくなってきた。
そんな消防におけるNBC災害対応を分かりやすくまとめたのが本書である。

大まかに2部構成となっており、1章ではNBC各災害における活動の注意事項を、
2章では実際の災害事例について述べられている。

NBC災害は原因物質が目に見えない場合が多く、
いかにして通常の災害ではなくNBC災害であると認識するか、
頭のスイッチを切り替えるかが重要ではあるのだが、それがいかに難しいのかは災害事例から透けて見えてくる。

また、読んでいてなるほど、と思ったのは化学災害の場合に安全区域を設定するのは
検知器に頼るよりも人間の五感を使った方がよい、という点や
通常の災害と異なり、呼吸器の残圧を通常災害と同様、
警報が鳴動した時点で退避していては除染中に空気が空になってしまう、
など常に頭に入れていなければうっかり忘れてしまうような事項もあり、
いかにしてこれらを身につけるかがカギになるのではないかと思った。

近年で印象に残っているのこの種の災害としては、
先日も再び話題に上った2009年6月に山口県のホテルで発生した一酸化炭素中毒事故が挙げられるが、
あの事故では発災から3時間してやっとCOの濃度測定を実施し、
救助活動中の隊員も被害を受けるなどNBC災害の難しさを露呈することとなった
(余談ではあるが、この件に関しては当時ネット上で議論になった)。
消防にも格差があるとはいえ、いかに対応が難しいかが窺い知れる。

また、消防の検知資機材にJCADなどの軍用検知器が導入されているのは、
いかに世の中が危険なものとなってしまったのかを暗示していると言える。
地下鉄の事件の際、化学機動中隊が危険排除で出場したが、
散々調べてやっと検知できたのは単なる溶剤でしかなかった・・・。

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