昨年末2010年12月13日に、大手保護具メーカーの谷沢製作所がHPで公開したレポートは
今まで深く考えずに使ってきた保護帽(ヘルメット)の経年劣化と言う隠れた危険性について
衝撃的な結果を示した。
今回はこの「
保護帽の経年劣化(その2)」(谷沢製作所HPより)を元に考察してみたい。
なお、私個人の考察なので間違っている点もあるかもしれないが、ご容赦いただきたい。
まずこの「保護帽の経年劣化(その2)」は実際に使われていた保護帽を回収し、
それに衝撃吸収性能試験を実施、その結果をまとめたものです。
先ず3.試験結果の(2)使用年別、材質毎の結果を考察してみましょう。
・FRP製
5年とされる耐用年数に対し、7~9年でおおむね交換されているが、
10年以上、中には20年使用されるものも少なくない割合で存在している。
しかし不合格率は低く、耐用年数を大幅に過ぎたもの、11~19年使用したものでも合格しているものがある。
逆に耐用年数内、4年でも不合格となったものがある。
この資料だけでは判然としないが、取り扱い、保管に問題があったのではないだろうか?
内装の破損が殆どだったとの添え書きがある。
・ABS製
3年とされる耐用年数に対し、3倍以上の11年程度使用しているものが多く見られる。
使用年数に関係なく不合格となるものが発生し、その割合が大きく思える。
耐用年数の限度となる3年でも複数の不合格が発生している。
不合格となるのは帽体の割れが原因との事。
・ポリカーボネート製
3年とされる耐用年数に対し、4年程度で交換されているようだが、
それより長く使われているものも一定の割合で存在している。
耐用年数限度、3年目で複数の不合格が出ているが、耐用年数と不合格の因果関係は薄いようである。
今回の結果では12~20年のものはテストに合格している。
・ポリエチレン製
3年とされる耐用年数に対し、大半が6年以内で交換されている模様。
ただし耐用年数の5倍となる15年以内で不合格はゼロと優秀であり、
18~20年でも不合格はゼロだが、16年のものが半数が不合格となっている。
・総合
以上の結果を見るにポリエチレン製の保護帽は耐久性が高いように見受けられる。
大半において保護帽の交換年数が守られていなく、倍以上、時には数倍の年月使用されている場合もある。
逆に耐用年数以内で交換されているものも一定の割合で存在する。全般的に1~3年。
企業による保護具への関心の差が激しいと思われる。
耐用年数以内であるからといって必ずしも安全であるとは言い切れない。
次に(3)「個別結果(顕著な例)」の写真を参考に考察してみたい。
・① 耐用年数を超えているが、帽体に塗料が付着しているとの事。
塗装業者等でこういった保護帽を多く見かけるが、危険性が高いと認識するべき。
・② 耐用年数以内だが破損したもの。解説を見るに保管に問題か。
材質が劣化するとリブの溝等が弱点になる可能性がある。
・③ 資料の写真からは状況がよく分からない。
耐用年数の倍の6年使用している上に帽体の破損は無くても衝撃加重値が高かったとのこと。
傷だらけであったなら帽体が破損してもいい気がするが・・・。
・④ 帽体が変形している時点で保護帽としての機能が失われ、
「衝撃吸収性は全く無く」との解説で着用している意味が全く無い事が伺える。
納入した業者は、使っている作業者は気にしなかったのだろうか?
・⑤ ②同様、リブの溝が弱点になるのか。
やはり屋外での暴露は劣化を促進させるという認識。
使用期間10年となっているが(2)の表で10年はゼロとなっているので11年の間違いか?
・⑥ 破損が酷い。
説明を見るに屋外での暴露が破損原因か。
まとめ
以下に個人的に感じた事をまとめる。
・保護帽の使用環境、保管環境が不適切であれば耐用年数内でも自身の安全を守れない。
・保護帽の異常、特に傷やヒビだけでなく材質によっては光沢にも注意が必要である。
・保護帽の内装にも注意が必要である。
・保護帽の材質はどれでもいいわけでなく、よく考えて選定する必要がある。
・安全保護具に対する意識の向上が不可欠である(使い物にならない保護具を着用している例が少なからずある)。
最後に貴重なデータを公開してくれた谷沢製作所様に深く感謝します。
もうちょっと鮮明な写真や詳細なデータがあればもっと嬉しいのですが・・・。
無理だわな。