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第474話「私的とかちの植物嗜考・イヌエンジュ」

―こっちへおいで!!―

目が覚めるとすっかり陽は高くなっていた。

昨日「明るくなる頃には肉をもって来る」と約束したのに―。

急いでキャンプ地に着くと、燻る焚火を囲む三人は神妙な面持ち何か妙だ。焚火の煙もあやしくたなびく。

「ギョウジャニンニクを採ってジンギスカンをやろう。」

社員もわたしも若く元気で春定番の行事、鍋とコンロを車に積み出かけた。

ところが二人はなんか落ち着きがない。わたしは別に気にも留めなかったが…。

遠方から来た仲間三人「キャンプして釣りがしたいね!ギョウジャニンニクは…」と。で、その場所へ案内した。この山間は、奥深くの温泉宿へ行く旧山道の中継地。見通しが良くなる春と秋口、平に均した所に井戸のような痕跡も見られ、生活物資を運ぶ商人や豊富な樹木を伐りだす杣不が休む、駅逓があったようだ。

此処をベースキャンプに釣りキャンプをすることに決める。

側を雪解け水が流れ、朽ち果てた一時の生活跡の横にフクジュソウが咲き乱れている。

ここいいね!人も来ないし」泊る準備をする三人は浮き浮きで、楽しそうだ。

わたしは薪を集めて火を興した。春、秋は日の暮れるのが早い。ましてここは深い谷間、見上げると裸の木々の間から青黒い空は見えるが、あたりはもう暗闇に近い。

わっはっは。カップに酒を注ぎ飲み交わす。赤々と燃え盛る焚火に照らされて、皆一様に赤鬼の顔、おや…!?彼らの背後の暗闇で、何かが盛んに上下している。

何人もの掌が、おいでおいで、こっちへおいでと手招きをしている。えぇぇ!!

気づかれないように目を凝らす。と、焚火に照らし出された木の葉で、勢いのいい火炎で揺れていたのだ。

細い枝先に何枚もの楕円の葉が並び、木の名前は分からなかった。

猛暑で、森の木々は花の開花が半端なく多く枯死するかもしれない」

仲間の林業者が云うので森へ行くと、どの木も花や実で枝がたわわで、今にも折れそう

シャッターを切っていて<あれこの葉は>図鑑で調べるとイヌエンジュとあった

あぁぁこれだ!!後ろの闇で手招きをしたのは。

もうずうっと昔、此処で取材キャンプをした。

深夜にふと目が覚める。と、テントのすぐわきで話声が聞こえる。何を話しているのかは分からないが「な、な、そうだ」と、複数の人が話している。

何となく、その話をしてみる。

そ、それだよ!!昨夜後ろの闇から聞こえたのは」。と、真顔で口をそろえる三人

これでその声を聴いたものは、5人目だな

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第473話「私的とかちの植物嗜考・オオワライタケ」

―試さないと分からないけれど―

食べると笑い死にする!(笑いながら死ぬのか)

楽しく、嬉しくて面白いと笑いがこみあげてくる。だけれど笑いも止まらなくなると、苦しくなってくる。

子供が悪さをすると、くすぐる。 “やめてぇ”と、叫んでもつづけると、笑うのと泣くくりかえして、母親に助けを求めていた。

ぐえー

ほんの少しだけれど、もとてもとても齧れるものではない。

口が曲がるほどの、とんでもない苦みというかえぐみが・・・。すぐに吐き出したのに、口の中に張り付いていつまでも残って、げぇげぇとつづくのだ。

ひょろっとして、どう見ても食べる気にはならないワライタケ。それと比べて、草藪の倒木など朽木によく見られるオオワライタケは整ったキノコらしい形で、手に取るとずしっと重くしっかりしていて、見様によっては旨そうに見える。

私も初めて見たときは「オッ!旨そ!!食べられるかも」

師匠から教わったキノコの判別法に「まず齧って見ろ!!すぐに吐き出せば何ともない」。

恐る恐るほんの少しだけ齧ったのだが、うぇーとなったのだ。

現物を持ち帰って調べるとオオワライタケであった。

古くから知られる毒キノコと云われるが、それにしても食べられるか!?最初に試した人はすごい。

苦しみもがく顔が笑ったように見えるのでその名がついた」師匠は言っていたが。

“美味い”と感じることは考えられないので、多分「良薬苦し!!薬効がある」と思い食べつづけたのかもしれない。

ただあの苦いものを、少しでも食べつづけることができるのか―ちょっと理解できない。

欲集りな我らは、自分の都合のいいように物事を考えその方向へ持っていこうとする。たまたま当てはまると、やっぱり!!

意図した訳ではなくそのまんまが自然界だとすると、考える必要などない。

現状を受け入れる―が自然なのだが、心中はそう簡単にはならない

「お父さんはそうやって考えるからダメなの!考えることじゃないの!!

更年期障害真盛りの女房に、激しく言われた。で、今もしっかり耳に残っている。

我々にも毒はある。

どうなると毒変じて薬になるのか!?

なんとなくあれか!?あのことか!?思いつくが、一様でもない気がするし、ずうっとあとで分かるので、意図はできない。大分考えられなくなってきたが。

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