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「安倍政治」の終わり 高市早苗の敗北

2024年10月04日 09時53分16秒 | 社会

総理の椅子に「ほぼ座りかけた」女、高市早苗の敗北は「ガラスの天井」ではなく「安倍政治」の終わり 北原みのり

yahoo news 2024/10/2(水)  AERA dot.  北原みのり

 

自民党総裁選後、取材に応じる高市早苗経済安保相=2024年9月27日

 

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は高市早苗の敗北が示すものについて。

*  *  *

 

 高市早苗総理・総裁がギリギリのところで誕生しなかった。これで高市さんは、土井たか子さん、小池百合子さんに続いて3人目になる「総理の座に最も近づいた女」になった。というより、この3人の中で最も総理の椅子に近づいた、ほぼ座りかけたところまでいった、初めての女である。

 2016 年のアメリカ大統領選、ドナルド・トランプに負けたヒラリー・クリントンは「(大統領という)最高で最も困難な『ガラスの天井』は打ち破れませんでした」と演説した。女性が大統領になるには、まだまだハードルがある、という敗北宣言だった。ヒラリーさんにも「ガラスの天井」ってあるのかぁ~とあの時はモヤモヤしたものだけれど、今回の高市さんの場合はどう考えればよいだろう。

 

 正直、今回の高市さん、「女だから負けた」という感じが一切しない。こんなにもガラスの天井感ゼロだと思わせてくれる女性はいないほどに、「女だから」という悔しさゼロである。座りかけたとたんに、「せーの」と椅子を引かれた感はあるが、不思議に悲壮感はない。

 それは高市さんが女のガラスの天井に負けたのではなく、どちらかといえば、自民党のなかにある「常識的な感覚」に負けたからだろう。憲法改正への強い意欲、メディアへの厳しい姿勢、隣国への挑発的態度など、右寄り過ぎるイデオロギーに、自民党のなかにあるフツーの人のフツーな感覚が勝った。高市さんが“まさかの”逆転負けをしたことで、「自民党って、まともじゃん」と、どちらかといえば反自民だった私が思うほどに、女であることよりも極右であることが警戒されたようだ。

 

 第2次安倍政権が誕生して12年。安倍晋三さんが亡くなって2年。この国は長い間ずっと安倍さんの思惑というものに、うっすらと覆われ続けてきたように思う。安倍さんの思惑のなかで、この国はいろいろと失った。メディアの自由も、社会への信頼も、未来への安心も、隣国との親密な関係も、歴史への知というものも。私たちの社会は全体的に小さく、乾き、狭く、冷たくなったように思う。

 

 今回の自民党総裁選で、「安倍さん」が本当に亡くなったのだと思った。「安倍政治」というものに、ここでいったん本気で区切りがつけられるのではないかと、私は期待したい。新総裁の石破茂さんはさっそく解散を宣言し、「裏金問題隠しか!」などと野党からの攻撃を浴びているが、安倍さんの政治で失った柔らかさ、温かさを、日本社会が取り戻していく、そんな時代になっていければいいと心から願うばかりだ。なんていうか、政治に、とても疲れた。それは安倍さん疲れだったのではないかと、今は思う。

 

 それにしても、日本の男は、怖い女が好きなのだということを、改めて突きつけられた総裁選でもあった。高市さんは、どう考えても「怖い」タイプの女である。蓮舫さんのことを「怖い」という人はいるが、それは本当の怖さというものを知らないのだろう。怖い顔をして怒るのはフツーの人の証拠だ。本当に怖いのは、小池さんのようなしたたかさ(ですよね)、計算高さ(計算、お上手そうですよね)、「排除します」と不敵に笑う冷酷さである。

本当に怖いのは、口角が不自然にあがる張り付いた笑顔(←目は笑ってない)で、「やられたらやり返す」(とか言いそうでしょ)と語る高市さんのほうである。そういう怖さを持つ女に、男は従いたくなるのだろうか。

 

 高市さんが総理の椅子まであと半歩までたどりついた過程は、どういったものだったか。日本の女性のリーダーという視点から、今後深く考察していく価値はあるだろう。サラリーマンの父と警察官の母という一般家庭から出てきた無所属の女性議員が、ここに来るまでの道の険しさはどれほどのものだったか。早稲田大学と慶応大学、2校に現役合格するほど優秀で、それなのに「女の子だから」と上京させてもらえずに地方の国立大学に通った高市さんが歩んできた「ガラスの天井」の道は、どのようなものだったか。32歳という若さで衆議院議員に初当選するほど頑張り、だからこそ自分の氏にこだわっている高市さん自身が、選択的夫婦別姓を率先して否定するのはいったい何故なのか

 

 高市さんが総理にならなくてホッとする半面、高市さんの心の中の何かを成仏させてあげてほしい、どうせすぐに解散するなら(そして高市さんなら自民党は負ける可能性高い)ちょっとだけやらせてあげても良かったかもね……などとどこかで思ってしまう自分もいる。総理への執着が成仏しない限り、高市さんはきっとまた出てくるだろう。「安倍さんの亡霊」を引きずる高市さんではない高市さんならば、どこかで見てみたいな……と思ったりもしてしまうのだ。

 とりあえず、日本の政治は、動きはじめた。ようやく。そんな希望を、私は持ちたい。



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