5番の刺繍糸

趣味の針仕事・庭仕事・料理を中心に、日々のあれこれを綴ります。

ヨーロッパ・アンティークの手仕事展に行ってきました

2008年04月21日 | 針仕事のあれこれ


( 長文になりましたので、お急ぎの方は青文字部分↓をお読み下さい。 )

昨日、カレンダーを眺めていて、改めて時間の早さを実感していました。
「あぁ...もう4月の20日だよ。あっという間だね......」
ふぅーっと小さな溜息をつこうとして、ハッと視線を戻しました。
「もう20日って... 確かヨーロッパの手仕事展は、23か4で終わりだったんじゃない!?」
慌ててチケットを取り出し確認します。
4月23日までだよ。これはいかん!( ゜▽゜;)

忘れていた訳じゃないのですが、急遽このような経緯で、
ヨーロッパ・アンティークの手仕事展に出掛けてきました。(^ー^*)/

久し振りに電車に乗り、開館の10時を4~5分過ぎたところで受付に到着。
貰いものの招待券で無事入場しました。
平日、しかも月曜日の朝一番。
それでも、最初のブースだけでざっと20人近くはいたのかなぁ...
美術館とはいえ“展示室”くらいの規模なので、結構、人の密度は高かったですね。

私ぐらいの若手(!)は2割ほど、あとは熟年の女性ばかりばかりばかり...。
お耳が遠いのか、興奮してらっしゃるのか、声の大きな熟年グループが2つ3つありました。

最初の展示は、クロスステッチでした。
紅茶で染めたように変色したサンプラー、なんとも言えない迫力です。
( 1700年代のものからありました。 )
細かい細かいカウントでびっしりと埋められたものもあります。
とにかく細かい!とにかく心も手も行き届いている!

黒一色の自由刺繍で女性の姿を表したもの。
髪の毛より細い絹糸での、エッチングのかすり傷のようなステッチは、
とても針仕事とは思えない代物でした。筆記具で書くのもなかなか難しそうだ。
( これは、手の荒れる心配のない身分の女性の作品でした。 ) 

館内ではカメラはもちろん、携帯電話も筆記具も一切使用禁止でしたが、
展示されているテーブルクロスやナプキン、クッション、ティーコゼーなどは、
覆いのないまま直に展示されていましたし、額に飾られているものも、
グッと目を近づけて見ることができましたので、とっても豊かな気分になれました。
「どうぞ、存分にご覧ください」という心意気が感じられるというものです。

その昔、ヨーロッパでは5歳でも見事な運針をした女性はいたようで、
そんな中から、針仕事で身を立てることも可能となり、
特別に手の器用な女性は、2メーター四方のクロスをつくって、
履歴書代わりに持ち歩いたという...

また、白刺繍が発達したのは、
汚れを落とすために煮沸することもあったからで、
( 色落ちの心配がないものですね。 )
逆に、中国には白刺繍がなかったであるとか...

リネン類にイニシャルや番号を刺繍したのは、
共同洗濯場での混同や紛失を防ぐ為で、
また、いろんな手仕事の技法がヨーロッパに伝わったのは、
交易と戦争によってであるとか...

ヨーロッパの石造りの家では、寒さを防ぐ為に壁飾りやマットが盛んに作られ、
また、女性たちは自分たちの腕を誇る為にも、壁に作品を飾ったであるとか...

要所要所に掲げてあるパネルには、そんなことも書いてあり、
その頃の女性の価値観や立場、生き方や暮らし方を窺い知ることもできました。

展示品のほとんどは、自由刺繍とヒーダボーなどの白刺繍、レースの数々。
ある物は、清楚にしか宿らないある種の迫力を湛え、
ある物は、数百年の時を越えて尚、増しているのではないかと思われる絹の光沢を放ち、
ある物は、お行儀良く並んだ少女合唱団の笑顔のような花が楽しそうに咲き、
本当にどれも神々しいほどに美しい、手仕事の数々でした。
( 宝石にたとえられるのも納得です。 )

そんな中でも私が一番素敵だと思ったのは、
1800年後半、スウェーデンのテーブルクロスです。
確かユキ・パリスさんの本にも載っていたと思いますが、
野の花がロング&ショートステッチで散りばめられているものです。
素晴らしい。本当に素晴らしい。
最後、出口を抜ける前にもう一度戻って眺め直したくらいでした。

とてもとても、私にはこんな刺繍はできないけれど、
折角、こんなに貴重なものを一度に目にする機会を得たのだから、
せめて、この誠実で神々しい佇まいを目標に掲げて、
私もこんな刺繍を刺せるようになりたい!と、心から深く思ったものでした。


出口の先には、本やクロスステッチキット、ポストカードなどを売っていて、
最近知ったRouge du Rhin(ルージュ デュラン)の小さなキットもありました。
( が、いいお値段してたので買わず... )
レジ横のショーケースには、アンティークの刺繍クロスがあって、
参考までにと値段を見てみると、凡そ50,000~110,000円でした。
ユキ・パリスさんのコレクションを計算することはできませんが、
しかしこれだけのコンディションで、この数です(展示品だけで400点以上)。
蒐集には大変苦労されたでしょうし、その価値はお金には換えられないけれど、
しかし、買うならお金でしか出来ないことですので、
その点でもかなりの力を注いでこられたと思います。
それをこの日本で公開、紹介して頂けるのは本当に嬉しいことだと思います。



私がショップで買った包みはこんな感じ。
あと入場券の半券。



絵葉書は1枚105円で、6枚買ってきました。
あとは「LETTERS」という、イニシャル刺繍用の図案集。

ユキ・パリスさんの本ももちろん販売されていましたし、
今回の手仕事展を記念して新刊本を出されてますが、これもありました。
でも、わざわざここで買わなくても...重いし...で、パスです。
Amazonでも買えますしね。



チラシにも使われていた写真が、そのまま絵葉書になっています。
これに今日見たことを書いて、友達や家族に送ります。



本の中はこんな感じです。小さいものも多く、拡大コピーが必要。
税込で1,365円でした。





“哲学の道”近くにある、私設美術館
ユキ・パリスコレクションのチラシです。
レジ横に置いてあったので、頂いてきました。



たっぷり2時間近く掛け、心行くまで見ることが出来て大満足です。
本物を知った!という幸福感なのかなぁ!! (人´∀`).☆.。.:*・°

この後、四条に出て買い物をする予定でしたが、
自分のものを買うより、美味しいものを買って家で夫と2人で楽しみたいという気になり、
そのまま伊勢丹の地下でお惣菜やケーキ、パンを買い込んで帰ってきました。
もっとゆっくりしてきても良かったんですけどね...
なんだか、早く家に帰って余韻に浸りたいと思ったのかしら。

今晩は、夫と御馳走?食べてます。(笑)





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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ベビー・アイさん (デュー)
2008-04-21 23:31:23
そうなんです!
ただ繊細なだけでなく、力強さと意志みたいなものが感じられ、
これが歴史になってきたんだなぁ...と感動しました。

直径1ミリくらいのオープンワークが無数に散りばめられたカフス飾りとか、
その意味が分からん!というくらいに、失敗なく綺麗に並んでいるんです。
画像が目の裏に焼きついていて、今晩夢に見そうなくらい。(笑)

いつも褒めてくださって、ありがとうございます。
今日は特に、勇気をもらっています。(笑)
またサテンステッチで何かつくりたくなりました。
ロング&ショートステッチもマスターしたいし!
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りぼんさん (デュー)
2008-04-21 23:04:55
本当に、有意義で素晴らしい一日でした。
このアンティーク仕事展が関西をはじめ、全国をまわればいいのになぁと思います。

御馳走はですねぇ、夫の好きな餃子や八宝菜など中華がメインで、
私の御馳走は、筍のゴマ和えや湯葉と水菜のサラダなどのおばんざいでした。
美味しかったです!
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手仕事展 (ベビー・アイ)
2008-04-21 21:12:10
ヨーロッパ・アンティークの手仕事展、という言葉だけで心躍りますね。
素晴らしい作品には歴史があって、女性の強さと気品のようなものがあるのだなと思いました。
デューさんの手仕事は、ヨーロッパの手芸本に載っていそうな作品だなあって思っていました。
心が豊かになって、しばらく余韻にひたれそうですね。
針と糸だけで、人の心をうつような手仕事が出来るって、ほんとにすばらしい。
デューさんの文章も美しいです。
返信する
素敵な一日でしたね。 (りぼん)
2008-04-21 20:40:21
私も、もう少し近かったら、お出かけしたかったんですけど、
京都までは、かなりパワーがいるもので・・・

でも、素敵な一日が過ごせてよかったですね。

ご馳走。。。気になります。
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