goo blog サービス終了のお知らせ 

獲得された絶望感(盲人ウエカジ @ウエカジハローセンター 公式ブログ)

~網膜色素変性症と司法試験とモー娘。と全盲ヘルパー事業所と・・・~

視覚障害者の立候補 選挙活動にかかる同行援護不支給決定 裁判 大阪地裁 令和5年(ワ)6622事件 判決添付資料

2025-03-15 19:26:24 | 全盲視覚障害者と選挙
大阪地方裁判所 令和5年(ワ)6622事件
視覚障害者の選挙活動にかかる同行援護不支給事件裁判の資料

                                  別紙1

関係法令等の定め

1 障害者総合支援法及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(以下「障害者総合支援法施行規則」という。)並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(以下「障害者総合支援法施行令」という。)等
(1)定義
   障害者総合支援法4条1項は、同法において「障害者」とは、身体障害者福祉法4条に規定する身体障害者等をいう旨規定する。身体障害者福祉法4条は、同法において、「身体障害者」とは、同法別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう旨規定する。
   障害者総合支援法4条4項は、同法において「障害支援区分」とは、障害者等(障害者又は障害児をいう(同法2条1項参照)。以下同じ。)の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして主務省令で定める区分をいう旨規定する。
   障害者総合支援法5条1項は、同法において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護等をいい、「障害福祉サービス事業」とは、障害福祉サービスを行う事業をいう旨規定する。
   障害者総合支援法5条4項は、同法において「同行援護」とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう旨規定する。
障害者総合支援法施行規則1条の5は、同法5条4項に規定する主務省令で定める便宜は、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行して行う移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等の外出時に必要な援助とする旨規定する。
(2)介護給付費等の支給決定
   障害者総合支援法19条1項は、介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない旨規定し、同条2項本文は、支給決定は、障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする旨規定する。
   障害者総合支援法20条1項は、支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない旨規定する。
   障害者総合支援法21条1項は、同法20条1項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害支援区分の認定を行うものとする旨規定する。
   障害者総合支援法22条1項は、市町村は、同法20条1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の主務省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下「支給要否決定」という。)を行うものとする旨規定する。同法22条4項は、市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要と認められる場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、同法20条1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者に対し、同法51条の17第1項1号に規定する指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めるものとする旨規定し、同法22条5項は、同条4項の規定によりサービス等利用計画案の提出を求められた障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定める場合(身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合又は同法第20条1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者がサービス等利用計画案の提出を希望する場合、障害者総合支援法施行規則12条の4)には、同項のサービス等利用計画案に代えて主務省令で定めるサービス等利用計画案(指定特定相談支援事業者以外の者が作成するサービス等利用計画案(障害者総合支援法施行規則12条の5)であり、利用者本人等が作成する支援計画(以下「セルフプラン」という。)を含む。)を提出することができる旨規定し、同法22条6項は、市町村は、同条4項及び5項のサービス等利用計画案の提出があった場合には、同条1項の主務省令で定める事項及び当該サービス等利用計画案を勘案して支給要否決定を行うものとする旨規定する。障害者総合支援法施行規則12条は、障害者総合支援法22条1項に規定する主務省令で定める事項は、①同法20条1項の申請に係る障害者等の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況、②当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況、③当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況、④当該申請に係る障害児が現に児童福祉法6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援又は同法24条の2第1項に規定する指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況、⑤当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況、⑥当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(上記③から⑤までに係るものを除く。)の利用の状況、⑦当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容、⑧当該申請に係る障害者等の置かれている環境及び⑨当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況とする旨規定する。
   障害者総合支援法22条7項は、市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として主務省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない旨規定し、障害者総合支援法施行規則13条は、同法22条7項に規定する主務省令で定める期間は、1月間とする旨規定する。
(3)介護給付費等の支給
   障害者総合支援法29条1項は、市町村は、支給決定障害者等が、支給決定の有効期間内において、都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者(以下「指定障害福祉サービス事業者」という。)又は障害者支援施設から当該指定に係る障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)を受けたとき等は、主務省令で定めるところにより、当該支給決定障害者等に対し、当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス(支給量の範囲内のものに限る。以下「指定障害福祉サービス等」という。)に要した費用(食事の提供に要する費用、居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち主務省令で定める費用(以下「特定費用」という。)を除く。)について、介護給付費又は訓練等給付費を支給する旨規定する。
   障害者総合支援法29条3項は、介護給付費又は訓練等給付費の額は、1月につき、①同一の月に受けた指定障害福祉サービス等について、障害福祉サービスの種類ごとに指定障害福祉サービス等に通常要する費用(特定費用を除く。)につき、主務大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)の額を超えるときは、当該現に指定障害福祉サービス等に要した費用の額)を合計した額(同項1号)から②当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が上記①に掲げる額の100分の10に相当する額を超えるときは、当該相当する額)(同項2号)を控除して得た額とする旨規定する。
   障害者総合支援法29条4項は、支給決定障害者等が指定障害福祉サービス事業者等から指定障害福祉サービス等を受けたときは、市町村は、当該支給決定障害者等が当該指定障害福祉サービス事業者等に支払うべき当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)について、介護給付費又は訓練等給付費として当該支給決定障害者等に支給すべき額の限度において、当該支給決定障害者等に代わり、当該指定障害福祉サービス事業者等に支払うことができる旨規定する。
   障害者総合支援法29条5項は、同条4項の規定による支払があったときは、支給決定障害者等に対し介護給付費又は訓練等給付費の支給があったものとみなす旨規定する。
   障害者総合支援法29条3項1号にいう「主務大臣が定める基準」である「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)」(乙18)は、同行援護について、外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。)時において、別に厚生労働大臣が定める基準を満たしている利用者に同行し、移動に必要な情報の提供(代筆・代読を含む。)、移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該利用者の外出時に必要な援助を行うことをいう旨規定する(別表第2の1イ、第3の1の注1(乙18の7頁及び11頁)参照)。
(4)障害福祉サービス費負担対象額に係る都道府県及び国の負担
障害者総合支援法施行令44条1項は、都道府県は、障害者総合支援法94条条1項の規定により、毎年度、障害福祉サービス費等負担対象額の100分の25を負担する旨規定し、同施行令44条2項は、国は、障害者総合支援法95条1項の規定により、毎年度、障害福祉サービス費等負担対象額の100分の50を負担する旨規定する。
障害者総合支援法施行令44条3項本文は、障害福祉サービス費等負担対象額は、各市町村につき、その支弁する同項各号に掲げる費用の区分に応じ、当該各号に定める額の合算額とする。
同項1号は、障害福祉サービス費等の支給に要する費用について、①介護給付費等(居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援及び常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして内閣総理大臣及び厚生労働大臣が定める要件に該当するものが利用する障害福祉サービスに係るものに限る。)の支給に要する費用については、当該介護給付費等について障害者等の障害支援区分、他の法律の規定により受けることができるサービスの量その他の事情を勘案して内閣総理大臣及び厚生労働大臣が定める基準に基づき当該介護給付費等の支給に係る障害福祉サービスを受けた障害者等の人数に応じ算定した額又は当該介護給付費等の支給に要した費用の額(その費用のための寄附金その他の収入があるときは、当該収入の額を控除した額)のいずれか低い額と②介護給付費等(①に掲げるものを除く。)及び特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費の支給に要する費用については、当該介護給付費等、特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費の支給に要した費用の額を合算した額とする旨規定する。
そして、「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める障害福祉サービス費等負担対象額に関する基準等」(平成18年厚生労働省告示第530号。乙33)において、障害者総合支援法施行令44条3項1号に規定する厚生労働大臣が定める基準(以下「国庫負担基準」という。)としての、障害福祉サービス費等負担対象額に関する基準が定められている。
2 各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長宛て厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「介護給付費等の支給決定等について」(平成19年3月23日障発第0323002号。以下「本件通知」という。乙20)
  本件通知は、地方自治法245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であるとされているところ、本件通知には、以下の記載がある。
「第4 支給決定及び地域相談支援給付決定の際勘案すべき事項その他の基本事項
  5 支給決定基準等の作成
  (1)障害福祉サービス
     市町村は、勘案事項(障害者総合支援法施行規則12条に規定する支給決定の際に勘案すべき事項及び障害者総合支援法施行規則34条の35に規定する地域相談支援給付決定の際に勘案すべき事項をいう。)を踏まえつつ、介護給付費等の支給決定を公平かつ適正に行うため、あらかじめ支給の要否や支給量の決定についての支給決定基準を定めておくことが適当である。
     その際、国庫負担基準は、あくまで国が市町村の給付費の支弁額に対して国庫負担する際の一人当たりの基準額であり、当該基準額が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないことに留意すること。
     一方、個々の障害者の事情に応じ、支給決定基準と異なる支給決定(いわゆる「非定型」の支給決定)を行う必要がある場合が想定されることから、市町村はあらかじめ「非定型」の判断基準等を定めておくことが望ましい。
     なお、「非定型」の支給決定を行うに当たっては、支給決定案について市町村審査会の意見を聴いた上で個別に適切な支給量を定めること。」
3 豊中市障害福祉居宅介護サービス等の支給に関するガイドライン(以下「本件ガイドライン」という。乙19(令和4年4月版))
  本件ガイドラインは、被告が本件通知を受けて作成したものであるところ、本件ガイドラインには、同行援護サービスについて、次のとおりの記載がある(乙19の104頁)。
(1)同行援護サービスとは
   視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等が外出する際に必要な援助を行うサービスをいう。
(2)同行援護サービスの具体的な項目
  ① 移動時及びそれに伴う外出先において必要な視覚的情報の支援(代筆・代読を含む。)
  ② 移動時及びそれに伴う外出先において必要な移動の援護
  ③ 排せつ・食事等の介護その他外出する際に必要となる援助
(3)支給量の基準
   1か月当たり50時間を上限とする。(障害者・障害児)
4 公職選挙法
  公職選挙法197条の2第1項は、衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動(衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党が行うもの及び参議院比例代表選出議員の選挙において参議院名簿届出政党等が行うものを除く。以下同項及び同条2項において同じ。)に従事する者に対し支給することができる実費弁償並びに選挙運動のために使用する労務者に対し支給することができる報酬及び実費弁償の額については、政令で定める基準に従い、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)が定める旨規定する。
  同条2項は、衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動に従事する者(選挙運動のために使用する事務員、専ら同法141条1項の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者、専ら手話通訳のために使用する者及び専ら同法142条の3第1項の規定によるウェブサイト等を利用する方法による選挙運動のために使用する文書図画の頒布又は同法143条1項の規定による選挙運動のために使用する文書図画の掲示のために口述を要約して文書図画に表示することのために使用する者に限る。(以下「選挙運動のために使用する事務員等」という。))については、同法197条の2第1項の規定による実費弁償のほか、当該選挙につき同法86条1項から3項まで若しくは8項、86条の3第1項若しくは同条2項において準用する同法86条の2第9項又は86条の4第1項、2項、5項、6項若しくは8項の規定による届出のあった日からその選挙の期日の前日までの間に限り、公職の候補者一人について1日50人を超えない範囲内で各選挙ごとに政令で定める員数の範囲内において、一人1日につき政令で定める基準に従い当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)が定める額の報酬を支給することができる旨規定する。
                                   以上 
別紙2
(原告①の別紙をコピー) 
別紙3

支給決定を受けた障害者の延べ人数(人)(a) 支給決定がされた支給量の年間総時間数(時間)(b) 各人の1か月当たりの支給量の平均時間数(時間)(b÷a) 受給者の述べ人数(人)(c) 利用量の年間総時間数(時間)(d) 各人の1か月当たりの利用量の平均時間数(d÷c) 平均利用率(%)(d÷b)
平成24年度 1,995 65,830.0 33.0 1,426 33,698.0 23.6  51
平成25年度 2,205 80,137.0  36.3 1,583 39,615.0  25.0  49
平成26年度 2,276 88,834.0  39.0 1,619 43,746.0  27.0  49
平成27年度 2,370 93,845.0  39.6 1,685 47,018.5  27.9  50
平成28年度 2,311 95,879.5  41.5 1,738 49,578.0  28.5  52
平成29年度 2,348 100,119.0  42.6 1,808 51,610.5  28.5  52
平成30年度 2,377 102,878.0  43.3 1,786 49,926.5  28.0  49
以上
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

視覚障害者の立候補 選挙活動にかかる同行援護不支給裁判 原告盲人ウエカジ 被告豊中市長 大阪地裁 令和5年(ワ)6622事件 判決 全文 障害者はどうすれば選挙活動ができるのか?

2025-03-15 19:23:52 | 全盲視覚障害者と選挙
令和7年2月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和5年(ワ)第6622号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和6年11月20日

判決
  

原告      
上鍛治公博
     被告      
豊中市 
同代表者市長       
長内繁樹
同訴訟代理人弁護士      
畑村悦雄

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
  被告は、原告に対し、30万円及びこれに対する令和5年8月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
  視覚障害があり、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)4条1項にいう障害者に該当する原告は、令和4年7月1日、被告に対し、同法20条1項に基づき介護給付費の支給申請(うち、同行援護に係る介護給付費の支給量を1か月当たり212時間とするもの。以下「本件申請」という。)をしたところ、被告は、令和4年7月27日付で、本件申請について、令和4年9月1日から令和5年8月31日までの間の介護給付費を支給する旨の決定(うち、同行援護に係る介護給付費の支給量を1か月当たり50時間とするもの。以下「本件決定」という。)をした。
本件は、原告が、本件決定が違法である旨主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年8月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 1 関係法令等の定め
   別紙1「関係法令等の定め」記載のとおりである。なお、同別紙において定める略称等は、以下においても用いることとする。
 2 前提事実(争いのない事実並びに後記の証拠(枝番号がある書証については特に明記しない限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、争いのない事実には証拠等を掲記しない。)
(1)原告
    原告は、重度の視覚障害があり、令和4年7月当時47歳で、大阪府知事から級別1級の視覚障害の身体障害者手帳の交付を受けたものである。
    原告は、肩書住所(大阪府豊中市)に居住している。
(2)原告に対する従前の介護給付費の支給決定等
原告は、本件決定前の令和3年9月から令和4年8月までの期間については、1か月当たり50時間の同行援護の支給決定を受けていた。
原告に対する令和3年9月から令和4年3月までの同行援護の支給時間は合計356時間であったのに対し、未利用時間は合計94時間であった。また、原告の同年4月の利用時間は36.5時間であった。
 (3)本件申請及び本件決定
原告は、令和4年7月1日、被告に対し、介護給付費の支給申請(本件申請)をした。その際、原告は、本件申請に係る申請書に添付する、原告自身が作成した「サービス等利用計画案(セルフプラン)」において、同行援護に係る1か月当たりの介護給付費の支給量につき、希望時間数を月212時間とし、その内容を、①スポーツジム・買物(月47時間)、②ボランティア活動としての点字ブロックルート調査(月16時間)、③裁判・審査請求出席(月5時間)、④旅行(年1回、60時間)、⑤市議会議員立候補後選挙活動(2023年4月)(選挙活動期間7日間、1日12時間、合計84時間)とした。なお、上記⑤の市議会議員立候補後選挙活動(2023年4月)とは、原告が立候補する予定の、令和5年4月23日執行の豊中市議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)の選挙活動であった。
豊中市長は、令和4年7月27日付で、本件申請について、次の内容の支給決定(本件決定)をして、原告にその旨通知した。本件決定は、同行援護については、本件ガイドラインの同行援護サービスの支給量の基準(1か月当たり50時間を上限とするもの。以下「本件支給決定基準」という。別紙1「関係法令等の定め」記載3(3)参照)に基づいてされたものである。
   ア 支給決定年月日 令和4年9月1日
イ 障害支援区分 区分3(有効期間令和3年9月1日から令和6年8月31日まで)
ウ 利用者負担上限月額 3万7200円(適用期間令和4年9月1日から令和5年8月31日まで)
   エ 支給決定内容
   (ア)介護給付
サービスの種類及び有効期間 支援の内容及び支給量
居宅介護
令和4年9月1日から令和5年8月31日まで 居宅家事援助 72時間/月
同行援護
令和4年9月1日から令和5年8月31日まで 同行援護基本 50時間/月
   (イ)特記事項
      セルフプランによる支給決定者
ただし、同行援護については利用に関するニーズ等を勘案した上で、同行援護支給決定(支給量)基準を踏まえ、上限の月当たり50時間とする。
      ただし、居宅家事援助については1回あたり4時間とする。
    (乙7の1~3、弁論の全趣旨)
 3 争点
 (1)本件決定の違法性の有無(争点1)
 (2)損害の発生の有無及び金額(争点2)
 4 争点に関する当事者の主張
(1)本件決定の違法性の有無(争点1)
  (原告の主張)
   ア 国庫負担基準に合わせて支給基準を設定していないこと
     被告作成の「全国中核市まとめ 56市」移動支援、同行援護調査票(令和2年8月27日)(乙13)によると、山形市、越谷市、福井市等多数の市が国庫負担基準単位をもとに、同行援護の1か月当たりの支給基準を定めている。
     被告は、同行援護の支給基準について、平成23年度及び平成24年度は月36時間、平成25年以降は月50時間と定めている。そして、平成23年度ないし令和4年度の国庫負担基準及び各年度の同行援護報酬単位(3時間)を踏まえて計算すると、各年度の月当たりの支給基準の最低水準は、別紙2の「A/C」欄のとおりとなる。
別紙2に照らせば、被告は、平成30年度までは国庫負担基準単位に合わせて同行援護の支給基準を設定していたのであるから、平成31年度(令和元年度)以降も、国庫負担基準単位に合わせて、同行援護の支給基準を、少なくとも1か月当たり62時間以上に設定しなければならない。
また、平成29年度の同行援護にかかる国庫負担基準単位が1万2550単位であり、一人当たり約13万円の国庫負担金(補助金)が支払われている。同補助金を前提とすれば、同行援護の支給量の上限は1か月当たり約64時間になるはずである。
したがって、被告が、支給基準において同行援護の支給量の上限を1か月当たり50時間とすることは、その裁量権を濫用するものであり、違法である。
   イ 補助金を不正に流用していること
     被告は、平成29年度に同行援護の国庫負担基準額が1万2550単位に引き上げられたにもかかわらず、同行援護の支給基準を引き上げることなく、重度訪問介護の支給基準を1日17時間から1日24時間に引き上げるなど同行援護以外の福祉サービスに補助金を不正に流用している。当該不正な流用がなければ、同行援護の支給量の上限が月50時間を超えて引き上げられるべきであり、被告が、支給基準において同行援護の支給量の上限を月50時間とすることは違法である。
   ウ 全盲視覚障害者の参政権及び選挙に立候補する権利等の侵害
   (ア)全盲視覚障害者が一人で選挙活動をすることは不可能である。ポスター貼り、街頭演説などの選挙活動は、まずその目的の場所に行かなければならないが、全盲視覚障害者は一人ではそれができない。
したがって、全盲視覚障害者の参政権、被選挙権、立候補をする権利を保障するには、同行援護の利用が必要不可欠であり、投票権を行使する場合に同行援護が追加支給されるのと同様、全盲視覚障害者が立候補して選挙活動をするには、選挙活動に係る同行援護の支給が必要である。
それにもかかわらず、被告は、全盲視覚障害者の選挙活動に係る同行援護の支給を一切認めない。これは、全盲視覚障害者の参政権を実質的に侵害するものであり、憲法違反である。
(イ)また、視覚障害者が選挙で投票をするための外出ないし選挙権の行使のための外出は、同行援護の対象とすべき外出であることは明らかであり、被告もそのような取扱いをしているのであるから、視覚障害者の被選挙権の行使に係る外出についても、選挙権の行使に係る外出と同様に同行援護の対象として保障すべきである。
被告は、原告から被選挙権の行使ないし選挙活動に係る外出のために同行援護の支給を求められたにもかかわらず、これを拒んだ。これは、障害者総合支援法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)、憲法14条、17条に違反する。
エ 国に対する問合せをしなかった不作為の違法
     同行援護は、国の制度であるから、どのような外出を同行援護の対象とすべきかの最終決定権は国にある。
     視覚障害者の被選挙権の行使に係る外出という極めてまれな事例については、被告にはその外出が同行援護の対象となるかについて知識がないのであるから、被告は、支給不支給の判断をする前に国に問合わせをすべきであったにもかかわらず、問合せを一切しなかった。
     このような被告の不作為は、憲法25条、31条、障害者基本法、行政手続法等に反する。
   オ 特定の視覚障害者に対する非定型の支給との関係で不平等な取扱いであること
     被告は、原告以外の特定の視覚障害者に対し、平成27年9月から平成28年5月までの9か月分について、視覚障害者の遠足(野外歩行訓練)などのため、合計630時間の同行援護の支給決定をした。これは、定型基準に基づく450時間に、180時間を上乗せして支給したものであり、未利用時間の繰り越し利用も認めている。上記支給決定は、月単位で支給決定すべきと規定する障害者総合支援法等に反するものである。
     一方で、被告は、原告に対し、選挙活動という非定型な外出について、非定型の支給基準による支給決定をしない点で、原告を不平等に取り扱うものであり、本件決定は、地方自治法、憲法に違反する。
   カ 本件決定の手続等の違法
     被告は、同行援護の支給量を月50時間に制限する本件ガイドラインを制定しているが、このような重要な基準については、市長決裁が必要であるにもかかわらず、被告はその決裁を受けていない。したがって、本件ガイドラインの制定過程には瑕疵があるため、本件ガイドラインは違法無効であり、このような本件ガイドラインに基づいてされた本件決定は、違法である。
     また、被告は、非定型基準の支給について内規を定めているが、この内規は適正な手続によって制定されたものではなく、内部決裁もとられておらず、違法不当なものである。したがって、本件申請について、この内規に基づき、非定型な外出に当たらないとして同行援護の支給をしないとすることは不合理である。
     さらに、本件ガイドラインによれば、定型基準を超える同行援護の申請があった場合、第三者機関である介護給付費等支給審査会に意見を聞かなければならないが、被告は、これを怠り、本件決定をしたものであり、本件決定の手続に違反がある。
   キ 結論
     以上によれば、本件決定は、違法不当なものであり、国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
  (被告の主張)
   ア 本件決定が違法ではないこと
   (ア)支給決定について市町村に合理的裁量が認められること
      障害福祉サービスの支給に係る障害者総合支援法及び障害者総合支援法施行規則の規定からすれば、障害者総合支援法は、障害者について障害福祉サービスを支給するか、支給する場合にどのような種類の障害福祉サービスをどのような支給量をもって支給するかについての判断について、市町村長の合理的な裁量に委ねているものと解される。
      市町村長の支給量の決定に関する裁量判断は、支給申請をした障害者に係る障害者総合支援法施行規則12条所定の勘案事項及び当該障害者から提出されたセルフプランを勘案した上で、当該障害者に対して特定の支給量を決定した場合における、当該障害者が日常生活又は社会生活を営むに当たって被る制約の性質、内容、程度等や、当該市町村の財政事情への影響、指定障害福祉サービス事業者のサービス提供体制への影響、介護給付費等を受給する障害者相互の公平等への影響等の諸般の事情をも総合考慮した上で、障害者ごとに個別具体的に判断されるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断内容が、事実の基礎を欠くか、又は考慮すべき事項を考慮しないこと等により、社会通念に照らし妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法となると解される。
   (イ)同行援護の趣旨
      同行援護は、視覚障害者に対する自立支援給付の一つであり、その目的は、外出のための支援を行うことにより、地域における自立生活及び社会生活を促すことであり、その実施内容は、社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等の社会参加のための外出の際の移動を支援するものである。そして、その制度の趣旨や人員・財源の制約などから、同行援護の利用の範囲は、「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。」とされている。
   (ウ)本件ガイドラインの同行援護の支給基準の合理性
     a 被告は、本件通知を踏まえ、障害福祉サービスの支給の要否や支給量の決定の基準指針であるガイドラインを定め、その支給量を基準に、個々の利用ニーズ、実情に合わせ支給量の決定を行ってきた。
       被告において、障害者自立支援法の改正により移動支援(地域生活支援事業)が同行援護(自立支援給付)に移行する形で同行援護が創設された平成23年10月1日においては、従前の移動支援の支給量の上限が1か月当たり36時間であったことから、同様の基準とする取扱いをしていたが、障害者総合支援法の一部施行の平成25年4月に向けて改定作業を行い、原告も所属していた障害者団体である豊中市身体障害者福祉会からの要望(同行援護について1か月当たり50時間への増加の要望)等を踏まえ、平成25年4月以降、1か月当たり50時間に上限を増加することとし、本件ガイドラインにも明記した。
     b 被告が平成25年9月に実施した全国の中核市に対するアンケート調査の結果では、被告と同じ中核市のうち同行援護の支給量について支給決定基準を設けている30市における1か月当たりの支給量の上限は平均45.29時間であり、被告の支給決定基準はこれをやや上回っている。また、被告が令和2年7月に実施した調査の結果でも、同行援護に係る支給量につき上限時間もしくは基準時間を設定している中核市の設定時間の平均は42.44時間であり、被告の支給決定基準はこれを上回っている。中核市における上記支給量の平均辺りが障害福祉サービスに係る人的物的な諸条件や財政負担を含め、中核市のおおよその共通認識となる支給量の水準を示すものと理解される。
       また、被告が平成30年10月に実施した近畿の中核市及び北摂の市町村に対する照会への回答結果によれば、近畿の他の中核市及び豊中市の周辺市のうち同行援護の支給量の上限の定めがある市における1か月当たりの支給量の上限は平均50.43時間であって、被告における上限の基準とほぼ同じであり、近畿地区においても50時間辺りが共通認識となる支給量の水準を示している。
       さらに、豊中市において同行援護の支給決定を受けている者の平成24年度から平成30年度までにおける1か月当たりの支給量の平均時間数は30時間台から40時間強までにとどまり、平均利用率も50%程度にとどまっている上、被告が平成26年7月に実施した障害福祉サービスについての当事者に対するアンケート結果においても、同行援護の支給量が「足りない」と回答した者の割合が16.7%にとどまっているのに対し、「足りている」と回答した者の割合は68.8%であった。このことは、1か月当たり50時間という同行援護の支給量は、これを利用している多くの視覚障害者にとって、不足が懸念される支給量ではないことを示している。
     c 以上によれば、本件ガイドラインにおける1か月当たり50時間を上限とする旨の同行援護に係る支給量の基準は、合理的なものであり、その基準が障害者の日常生活又は社会生活を営む上での妨げになるとか、そのことによって障害者の生存権が脅かされると評価されるものではない。したがって、基本的には、視覚障害者は、上限50時間の支給の範囲内での同行援護の利用によって、日常生活又は社会生活を営む上で大きな支障は生じないものと考えられる。
       また、被告の限られた財源において、障害福祉に用いることのできる財源には一定の限度があるという当然の前提があり、また、同行援護サービス提供事業者数及び同行援護従事者数が同行援護に係る社会資源としては十分とはいえない状況の下、視覚障害者同士が障害の程度やニーズに応じて有効かつ公平に同行援護サービスを活用することができるように上限基準を設定し、その上限基準の中で障害者の事情に応じた支給量の決定を行うものとしている。
   (エ)同行援護の非定型の支給決定について
      被告においては、非定型の支給決定について、本件通知の内容を踏まえつつ、様々な場合があることからあらかじめ一定の基準を設定することは困難であり、個別具体的な事案ごとに総合的に判断すべきものであることから、本件ガイドラインで公表すべき明文の基準は設定していない。もっとも、前記(ウ)cに鑑み、被告においては、本件支給決定基準に基づく支給量では、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急性、逼迫性のある場合、又は、公の役務に従事する場合等の本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情がある場合に、同行援護について、本件支給決定基準と異なる支給決定(非定型の支給決定)をする運用(以下「本件非定型支給決定運用」という。)を行っている。
(オ)本件決定の理由について
      本件申請のうち、本件選挙の候補者としての選挙活動のためという理由については、本件支給決定基準である50時間/月を超える追加支給がないと、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急・逼迫した事情があるために本件支給決定基準を超える支給量を支給する必要があるという判断には至らなかった。また、本件申請におけるその他の同行援護の利用用途であるスポーツジム・買物、点字ブロック調査、裁判、審査請求、旅行についても、本件支給決定基準である50時間/月を超える同行援護の利用ができないと、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急・逼迫した事情がある場合、又は、公の役務に従事する場合等という特段の事情が認められなかった。
      豊中市長は、以上に基づき、原告に対し、同行援護の非定型の支給決定をする必要がある場合に当たらないと判断したのである。したがって、本件決定の判断は不合理なものではない。
   イ 原告の主張について
   (ア)前記(原告の主張)ア(国庫負担基準に合わせて支給基準を設定していないこと)について
      本件通知において、「国庫負担基準は、あくまで国が市町村の給付費の支弁額に対して国庫負担する際の一人当たりの基準額であり、当該基準額が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないことに留意すること」とされており、被告においても、国庫負担基準をもって同行援護の支給基準(支給量)を定めていない。
      なお、被告は、平成29年度における居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援等にかかる国・府費対象経費25億8307万4371円のうち11億6919万1857円を実際に負担している。
   (イ)前記(原告の主張)イ(補助金を不正に流用していること)について
国庫負担基準の考え方(乙38の5枚目)や障害者総合支援法施行令44条3項1号イにおいて、介護給付費について、複数のサービスが一つの費用の区分にまとめられていることからすれば、国庫負担基準は、居宅介護、重度訪問介護等の複数のサービスの中で調整することが可能なものであるから、複数のサービスの中で国庫負担基準を用いることは、不正な流用ではない。
   (ウ)前記(原告の主張)ウ(全盲視覚障害者の参政権及び選挙に立候補する権利等の侵害)について
     本件決定は、原告が選挙に立候補することや選挙活動すること自体を制限するものではなく、原告の参政権や被選挙権を侵害するものではない。
また、前記ア(オ)で述べたとおり、本件決定においては、本件申請の申請理由のうち、本件選挙の候補者としての選挙活動について、上限時間を超える非定型の支給を認める特段の事情が認められないと判断して決定したものであり、豊中市長の合理的な裁量の範囲内の判断として、何ら違法ではない。
    (エ)前記(原告の主張)エ(国に対する問合せをしなかった不作為の違法)について
     同行援護の利用範囲は「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く」とされている以外に、国において同行援護の対象となる外出の範囲を示しているものはない。
     したがって、被告は、同行援護が、選挙活動に利用できないという根拠はなく、公職選挙法上の制限がないのであれば利用は可能であるという認識であったが、念のために、大阪府に確認したところ、大阪府が国(厚生労働省)に確認したにすぎない。
   (オ)前記(原告の主張)オ(特定の視覚障害者に対する非定型の支給との関係で不平等な取扱いであること)について
      被告は、原告のいう特定の視覚障害者に対し、平成27年9月1日から平成28年5月31日までの期間の同行援護サービスについて月を単位として80時間/月の支給決定をしたが、上記の特定の視覚障害者については、例外的な取扱いをする必要性、合理性があったため、上記支給決定をしたものである。また、同行援護の支給について、未利用時間を次月以降に繰り越して追加するという仕組みはなく、上記支給決定も、80時間/月の上限の支給時間を定めて支給するものであり、障害者総合支援法等に反するものではない。
     一方、本件申請については、非定型の支給を認める特段の事情がなかったため、非定型の支給を認めなかったのであって、上記支給決定との関係で、不平等な取扱いではない。
   (カ)前記(原告の主張)カ(本件決定の手続等の違法)について
      本件ガイドラインの制定は、豊中市事務決裁規程に基づいて、福祉部長の決裁を受けてされたものであり、制定過程に瑕疵はない。(同規程4条参照)。
      また、非定型の支給については、非定型基準内規としての文書は存在せず、前記ア(エ)のとおり、事案ごとに判断の上、本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情がある場合に、非定型の支給決定を行う運用(本件非定型支給決定運用)を行っている。
      さらに、本件ガイドラインにおいて、審査会に意見を求めるのは、市が本件支給決定基準と乖離する支給決定案を作成した場合であり、本件決定は、本件支給決定基準と乖離しないため、審査会に意見を求める必要はなく、手続違反はない。
(2)損害の発生の有無及び金額(争点2)
  (原告の主張)
    原告は、違法な本件決定により、3万2200円を自費で負担して、同行援護ガイドヘルパーに支払って、選挙活動を行った。同行援護サービスの利用者負担は原則1割であるから、上記3万2200円のうち、少なくとも2万8980円は支払う必要がない支出であり、違法な本件決定による損害である。また、原告は、被告による差別的取扱により、精神的苦痛を受けたものであり、その額は、27万1020円である。
    したがって、違法な本件決定により生じた損害の合計額は30万円である。
  (被告の主張)
    否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
 1 本件決定の違法性の有無(争点1)
(1)支給量に係る決定の適法性の判断枠組みについて
   ア 障害者は、介護給付費等の支給を受けようとするときは、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をし、支給決定を受けなければならず(障害者総合支援法19条1項、20条1項)、上記申請があったときは、市町村は、当該障害者の障害支援区分の認定を行う(障害者総合支援法21条1項)とともに、当該障害者の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況、当該障害者の介護を行う者の状況、当該障害者に関する介護給付費等の受給の状況、当該障害者に関する保健医療サービス又は福祉サービス等の利用の状況、当該障害者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容、当該障害者の置かれている環境、当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況、サービス等利用計画案(サービス等利用計画案の提出があった場合。なお、サービス等利用計画案にはセルフプランも含まれる。)等の勘案事項を勘案して、支給要否決定をし(障害者総合支援法22条1項、6項、障害者総合支援法施行規則12条)、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として1月間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(支給量)を定めなければならない(障害者総合支援法22条7項、障害者総合支援法施行規則13条)。
   イ 以上のような障害者総合支援法及びその関係法令の規定の内容に照らすと、市町村長(市町村における支給決定の処分権者)が介護給付費等に係る支給量を定めるに当たっては、個々の障害者に係る勘案事項を勘案すべきこと以外には何ら具体的な基準が定められておらず、この勘案事項は、個々の障害者ごとに個別具体的な事情を様々に異にする性質のものであり、多岐にわたる各事項に係る諸事情の勘案の在り方も、支給決定障害者等間の公平性の確保や、市町村等の財政事情への影響、指定障害福祉サービス事業者等の指定障害福祉サービス等の提供態勢の状況等も踏まえた総合的な考慮と判断を要するものといえるから、個々の障害者に係る勘案事項を勘案し、当該障害者に対していかなる種類の障害福祉サービスをいかなる支給量をもって行うかについては、勘案事項の勘案の結果を踏まえた市町村長の合理的な裁量に委ねられているものというべきである。
     したがって、市町村長がその裁量権の行使としてした障害者に対する支給量に係る決定は、その判断の内容が事実の基礎を欠くこと又は考慮すべき事項を考慮しないこと等により社会通念上妥当性を欠くものであり、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものと認められる場合に、違法となるものと解するのが相当である。
(2)検討
   ア 同行援護について
同行援護は、視覚障害により移動に著しい困難を有する障害者等について、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等の外出時に必要な援助を行うサービスをいう。そして、その目的は、当該障害者等の社会参加の促進や地域での自立した生活を支えるためというものであり、その制度の趣旨や人員ないし財源の制約等から、上記の外出については、通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出は対象外とされており、社会生活上必要不可欠な外出、社会参加のための外出を対象とするものと解される。
   (別紙1「関係法令等の定め」記載1(1)及び(3)参照。乙18、20参照)。
   イ 被告における同行援護サービスの支給量の基準等について
   (ア)被告は、本件通知を受けて本件ガイドラインを作成し、本件ガイドラインにおいて、同行援護サービスの支給量の基準として、1か月当たり50時間を上限とすると定めている(本件支給決定基準。別紙1「関係法令等の定め」記載2及び3参照)。
      また、弁論の全趣旨によれば、被告において、本件支給決定基準に基づく支給量では、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急性、逼迫性のある場合、又は、公の役務に従事する場合等の本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情がある場合に、同行援護について、本件支給決定基準と異なる支給決定(非定型の支給決定)をする運用(本件非定型支給決定運用)を行っていることが認められる。
   (イ)証拠(乙21ないし23)及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、同行援護が創設された平成23年10月においては、同行援護への移行前の制度である移動支援事業の支給量の上限が1か月当たり36時間であったことから、同行援護についても同様の基準とする取扱いをしていたが、障害者総合支援法の一部の施行時期である平成25年4月に合わせ、同月以降、同行援護の支給量の上限を見直して、1か月当たり50時間に増加させることとしたこと、②同行援護の支給量の上限の見直しにあたり、被告は、豊中市身体障害者福祉会から同行援護の支給量について1か月当たり50時間への増加の要望を受けていたことや、他の中核市への聞き取り調査を行った結果、同行援護の支給量の基準の平均時間が1か月当たり約47時間であったこと等を踏まえて、上記の1か月当たり50時間という支給量の上限が決定されたことが認められる。
      また、証拠(乙13、24ないし乙27)及び弁論の全趣旨によれば、①被告が、平成25年9月20日付けの書面を全国の中核市に送付し、地域生活支援事業等に関する調査を依頼したところ、30市が同行援護の支給量の上限がある旨とその支給量を回答し、その回答結果によれば、これらの30市における同行援護の1か月当たりの支給量の上限の平均が45.29時間であったこと(ただし、一部の市につき身体介護ありの場合であるなどする。)、②被告が、平成30年10月17日付けの書面を近畿の中核市及び北摂の市町村に送付し、同行援護の実施状況について照会したところ、7市が同行援護の支給量の上限を設けていると回答し、その回答結果によれば、これらの7市における同行援護の1か月当たりの支給量の上限の平均が50.43時間であったこと、③被告が、令和2年7月、全国の中核市に対して、移動支援事業及び同行援護事業についてアンケート調査を行ったが、39市が同行援護の支給量の上限時間若しくは基準時間を設定している旨とその支給時間を回答し、その回答結果によれば、これらの39市における1か月当たりの支給量の設定時間の平均が42.44時間であったこと④豊中市における平成24年度から平成30年度までの同行援護の支給決定を受けた障害者の年間延べ人数、支給決定がされた支給量の年間総時間数、各人の1か月当たりの支給量の平均時間数、受給者の年間延べ人数、実際に利用された同行援護(利用量)の年間総時間数、各人の1か月当たりの利用量の平均時間数及び平均利用率(利用量の支給量に占める割合)が別紙3のとおりであること、⑤被告が平成26年7月に実施した障害福祉サービスについての18歳以上のサービス利用者に対するアンケート調査の結果によれば、同行援護の量について、「足りている」と回答した者は66人(68.8%)、「足りない」と回答した者は16人(16.7%)、無回答が14人(14.6%)であったことが認められる。
   (ウ)以上を踏まえると、本件ガイドラインにおいて、同行援護サービスの支給量の上限を1か月当たり50時間とする本件支給決定基準については、被告が、障害者団体(豊中市身体障害者福祉会)の要望や、他の中核市への聞き取り調査の結果を踏まえ、平成25年4月以降、支給量の上限を1か月当たり36時間から50時間に増加させた経過に加え、その後、被告が行った、全国の中核市に対する調査結果や近畿の中核市及び北摂の市町村に対する調査結果によれば、本件支給決定基準が他の中核市等における支給量の上限と同じ程度であるといえることからすれば、被告が、前記アの同行援護の制度の内容や目的等を踏まえ、豊中市における障害者間の公平、その財政事情等も踏まえつつ定めたものとして、合理性があるものと認められる。
      そして、豊中市における実際の支給量や利用量等をみると、支給量の上限が1か月当たり50時間に増加された平成25年度から平成30年度まででみても、支給量の平均時間数は1か月当たり40時間弱ないし40時間強に、利用量は1か月当たり30時間弱にとどまっており、平均利用率は50%前後にとどまっていることに加え、障害福祉サービスの当事者に対するアンケート結果によれば約68%が「足りている」と回答していることを踏まえると、上記の被告の支給量の基準は、大半の障害者にとっては、十分な支給量であり、基本的には、障害者等が日常生活又は社会生活を営むなどの点で支障が生じていない状況にあるものといえる。
      このように、本件支給決定基準に基づく同行援護の支給により、基本的には、障害者等の日常生活又は社会生活を営むなどの点で支障が生じていないという状況を前提とすると、被告において、本件支給決定基準を上限として支給量の決定を行うことを原則としつつ、本件非定型支給決定運用において、本件支給決定基準に基づく支給量では、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急性、逼迫性のある場合、又は、公の役務に従事する場合等の本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情がある場合に限って、同行援護について、本件支給決定基準と異なる支給決定(非定型の支給決定)をすることとしていることについても、合理性があるものと認められる。
   ウ 本件決定について
   (ア) 本件決定は、本件支給決定基準及び本件非定型支給決定運用に基づき、本件申請において、①スポーツジム・買物、②点字ブロック調査、③裁判・審査請求出席、④旅行、⑤市議会議員立候補後選挙活動(2023年4月)という原告が同行援護の支給(月212時間)を求める内容(前記前提事実(3))を踏まえて、上記①から⑤までのいずれの理由についても、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急性、逼迫性のある場合、又は、公の役務に従事する場合等の本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情があるとは認められないとして、同行援護の支給量を本件支給決定基準の上限である月50時間とする旨決定したものである。
      原告は、上記①から④までについて、本件支給決定基準による支給量を超える支給がされなかったことが違法である旨の主張をしておらず、上記⑤について本件支給決定基準による支給量を超える支給がされなかったことが違法である旨主張している。そこで、以下、上記⑤について本件支給決定基準による支給量を超える支給がされなかったことが違法であるか否かを検討する。
   (イ)上記⑤について本件支給決定基準による支給量を超える支給がされなかったことについて
公職選挙法の規定(別紙1「関係法令等の定め」記載4参照)によれば、「選挙運動に従事する者」については選挙運動に従事する事務員等を除いて報酬の支給が禁止されるため(同法197条の2参照)、選挙活動のために同行援護を利用する場合、同行援護を行う者が同条所定の「選挙運動に従事する者」(選挙運動に従事する事務員等を除く)に当たる場合には、報酬の支給について問題が生じることから、このような場合に同行援護を支給することは、同法との関係で問題が生じることとなる。そして、同行援護を行う者が、「選挙運動に従事する者」(選挙運動に従事する事務員等を除く)に該当するか否かは、当該同行援護を行う者の活動の具体的内容によって判断されることとなる。
前記前提事実(3)によれば、原告は、本件申請に係る申請書及びセルフプランにおいて、令和5年4月23日執行の豊中市議会議員一般選挙(本件選挙)の候補者としての選挙活動を行うため選挙活動期間の7日間、1日12時間の合計84時間の支給が必要である旨記載していたにとどまり、本件申請がされた令和4年7月時点において、原告が想定する選挙活動の内容は必ずしも判然としなかったものである。そのため、原告が想定する選挙活動について、同行援護を利用する上で、公職選挙法との関係で問題が生じるか否か判然としなかったものといわざるを得ない。加えて、選挙期間中の、選挙運動の内容や方法、選挙運動に係る外出の頻度や選挙運動に要する時間等は、候補者によって多種多様であることをも併せ考慮すると、本件申請や本件決定がされた令和4年7月時点において、原告が想定する選挙活動について、同行援護を利用する上で公職選挙法との関係で問題が生じるか否かという点のみならず、同行援護の利用の必要性の有無や程度も判然としない状況にあったものといわざるを得ない。
さらに、原告は、本件選挙において選挙活動のため自費でガイドヘルパーを利用した旨主張しているものの、本件訴訟においても、本件選挙における選挙活動の具体的内容は明らかにしておらず、ガイドヘルパーを利用していた活動の内容やガイドヘルパー費用の支払を裏付ける証拠も提出していない。そして、原告が、これらの証拠については、公職選挙法上グレーな部分があるなどとして、これ以上明らかにすることはできない旨陳述していること(第2回弁論準備手続調書参照)からすれば、現時点においても、原告の本件選挙における選挙活動の具体的内容やガイドヘルパーを利用していた活動の内容等は判然としない。
また、前記イのとおり、被告においては、大半の障害者については、基本的には、本件支給決定基準に基づく同行援護の支給により、当該障害者等の日常生活又は社会生活を営むなどの点で支障が生じていないという状況にあったことが認められる。そして、原告についても、前記前提事実(2)のとおり、令和3年9月から令和4年8月まで本件支給決定基準の上限である1か月当たり50時間の同行援護の支給決定がされていたところ、原告の令和3年9月から令和4年3月までの同行援護の未利用時間は合計94時間(支給時間は合計356時間)あり、同年4月の利用時間(36.5時間)も50時間に満たないものであったことからすれば、本件支給決定基準に基づく同行援護の支給により、基本的には、その日常生活又は社会生活を営むなどの点で支障が生じない状況にあったものと認められる。
これらの事情に照らすと、被選挙権や参政権の重要性を踏まえても、豊中市長が、本件申請のうち本件選挙の候補者としての選挙活動のためということを理由とする部分について、本件支給決定基準に基づく支給量では、生命・身体に対する危険性が生じるとか日常生活又は社会生活を営む上での大きな支障が生じる等の緊急性、逼迫性のある場合等に当たるとはいえず、本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情があるとは認められないと判断したことに不合理な点はない。
   (ウ)以上によれば、本件決定に係る豊中市長の判断は、その内容が事実の基礎を欠くこと又は考慮すべき事項を考慮しないこと等により社会通念上妥当性を欠くものとは認められず、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとは認められない。
      したがって、本件決定は適法であるから、豊中市長が本件決定をしたことについて、国家賠償法1条1項の適用上違法があるということはできない。
 (3)原告の主張について
   ア 原告の主張ア(国庫負担基準に合わせて支給基準を設定していないこと)について
(ア)原告は、被告が、国庫負担基準に合わせて支給基準を設定していないことが違法であり、国庫負担基準を前提とすれば、別紙2のとおり、平成29年度以降の同行援護の支給量の上限は1か月当たり約62時間ないし64時間となる旨主張する。(前記争点に関する当事者の主張(1)(原告の主張)ア)
(イ)別紙1「関係法令等の定め」1(4)及び証拠(乙20、38)によれば、①国庫負担基準とは、障害者総合支援法では国の費用負担を「義務化」することで財源の裏付けを強化する一方で、「義務化」といっても 無条件ですべて負担することは困難であり、障害福祉に関する国と地方自治体間の役割分担を前提に、限りある国費を公平に配分し、市町村間のサービスのばらつきをなくすために、市町村に対する国庫負担(精算基準)の上限を定めたものであること、②国庫負担基準は、利用者ごとのサービスの上限ではなく、市町村に対する国庫負担(精算基準)の上限であり、介護の必要度が高い者が多い市町村にはその人数に応じて国庫負担を行うことができる仕組みであるとともに、同じ市町村の中でサービスの利用が少ない利用者の分を多い利用者の方に用いるというような調整を可能とする柔軟な仕組みとされていること、③障害福祉サービスについては、各市町村は、あらかじめ支給決定基準を定めておくことが適当であるが、支給決定基準を定めるにあたって、国庫負担基準は、あくまで国が市町村の給付費の支弁額に対して国庫負担する際の一人当たりの基準額であり、当該基準額が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないことに留意することとされていることが認められる。
以上の国庫負担基準の趣旨等を踏まえると、国庫負担基準が支給決定基準を定める際の勘案事項の一つであるといえるとしても、市町村において国庫負担基準に合わせて支給決定基準を定めなければならないとは認められない。
(ウ)また、証拠(乙33)及び弁論の全趣旨によれば、被告が同行援護の支給量の上限を増加させた平成25年度には同行援護の国庫負担基準の引き上げは行われていないことが認められる上、被告が、平成25年4月に同行援護の支給量の上限を月36時間から月50時間に増加させたことやその検討経過については、前記(2)イ(イ)、(ウ)のとおりであるから、被告においても、国庫負担基準に合わせて本件支給決定基準を定めていたとは認められない。そして、被告が、本件支給決定基準において、同行援護の支給量の上限を1か月当たり50時間としていることに合理性があると認められることは、前記(2)イのとおりである。
      さらに、原告は、国庫負担基準単位を前提にサービス所要時間を3時間と仮定して、別紙2のとおり、3時間の報酬単価に基づき利用可能時間を算出しているが、上記のとおり、国庫負担基準に合わせて支給決定基準を定めなければならないとは認められない上、そもそも報酬単価はサービス所要時間によって異なる(乙18参照)ところ、同行援護を利用する人の生活様式や1回当たりの利用時間は異なるものであり、サービス所要時間を一律に3時間と仮定する根拠もないから、別紙2の「A/C」欄記載の利用可能時間の計算は、その前提を欠く。
(エ)したがって、原告の上記主張は理由がない。
   (オ)なお、原告は、被告に国庫負担金(補助金)が支払われていることなどからすれば、財源の問題を理由に同行援護の支給ができないとの被告の主張には理由がないとも主張するが、証拠(乙36)及び弁論の全趣旨によれば、被告における平成29年度の居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援等にかかる国・府費対象経費は、①25億8307万4371円であるところ、基準額である②18億8517万6686円と比較し、低い方が実際の国・府負担の対象(国庫負担基本額)として、その4分の3を国・府が負担することになるから、被告は、平成29年度における上記対象経費(①)のうち、11億6919万1857円(①25億8307万4371円-②18億8517万6686円×4分の3)を実際に負担していることが認められることなどからすれば、被告が同行援護の支給基準の上限の設定や本件非定型支給決定運用に際し、財源の問題を考慮することができないということはできない。
   イ 原告の主張イ(補助金を不正に流用していること)について
(ア)原告は、平成29年度に同行援護の国庫負担基準額が1万2550単位に引き上げられたにもかかわらず、同行援護の支給基準を引き上げることなく、重度訪問介護の支給基準を引き上げるなど同行援護以外の福祉サービスに補助金を不正に流用していると主張する。(前記争点に関する当事者の主張(1)(原告の主張)イ)
   (イ)証拠(乙40)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、令和4年4月、居宅介護・重度訪問介護支給量の支給基準(非定型の支給基準)について、1日当たり最大21時間を1日当たり最大24時間に引き上げたことが認められる。したがって、原告の主張する平成29年度の同行援護の国庫負担基準額の引上げと令和4年4月の居宅介護・重度訪問介護の支給基準の引上げとの関連性は判然としない。
      その点を措くとしても、原告の上記主張は、同行援護に係る国庫負担基準は、同行援護についてのみしか利用できないことを前提とするものであると解されるところ、前記ア(イ)のとおり、国庫負担基準は、利用者ごとのサービスの上限ではなく、市町村に対する国庫負担(精算基準)の上限であり、介護の必要度が高い者が多い市町村にはその人数に応じて国庫負担を行うことができる仕組みであるとともに、同じ市町村の中でサービスの利用が少ない利用者の分を多い利用者の方に用いるというような調整を可能とする柔軟な仕組みとされている。
そして、①障害福祉サービスの費用に関する国等の負担について定めた障害者総合支援法施行令44条3項においても、介護給付費等として居宅介護、重度訪問介護、同行援護等が一つの費用として定義されていること(同項1号イ)、②市町村によって、障害者の人数やその障害の内容・程度、必要とされる障害福祉サービスの種類、内容等は異なると考えられること、③厚生労働省の作成した国庫負担基準についての考え方を示す資料(乙38の5枚目)においても、参考例として複数の障害福祉サービスの間で、サービスの利用が少ない利用者から多い利用者に用いることにより、複数の障害福祉サービス全体で支給量が国庫負担基準の枠内に収まっているケースを挙げていることからすれば、ある特定の障害福祉サービス内でのみ国庫負担基準を調整しなければならないというものではなく、重度訪問介護や居宅介護等の複数の障害福祉サービス全体の中で、国庫負担基準の配分を調整することも可能であると解すべきである。
   (ウ)したがって、同行援護に係る国庫負担基準については、同行援護の枠内のみでしか調整できないことを前提とする原告の上記主張は採用できない。
   ウ 原告の主張ウ(全盲視覚障害者の参政権及び選挙に立候補する権利等の侵害)について
(ア)原告は、①被告が全盲視覚障害者の選挙活動に係る同行援護の追加支給を一切認めなかったことは、全盲視覚障害者の参政権を実質的に侵害するものとして憲法違反であり、②選挙権の行使に係る外出は同行援護の対象となっているにもかかわらず、被告が、原告の被選挙権の行使に係る外出のための同行援護の追加支給について、具体的な調査を行うことのないまま、これを拒んだことは、障害者総合支援法、障害者差別解消法、憲法14条、17条に違反する旨主張する。(前記争点に関する当事者の主張(1)(原告の主張)ウ)
   (イ)しかし、上記(ア)①について、被告は、本件決定において、同行援護の支給量について本件支給決定基準の上限を超える支給を認めなかったが、このことは、原告が選挙に立候補することや選挙活動をすること自体を制限するものではなく、原告の参政権ないし被選挙権を侵害するものであるとは直ちにはいえない。
      また、障害者に対していかなる種類の障害福祉サービスをいかなる支給量をもって行うかについては、勘案事項の勘案の結果を踏まえた市町村長の合理的な裁量に委ねられており、本件決定に係る豊中市長の判断は、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとは認められず、本件決定が適法であることは、前記(2)のとおりである。
   (ウ)上記(ア)②について、前記(2)ウ(イ)によれば、被選挙権の行使に係る外出のための同行援護については、想定される選挙活動によって同行援護の必要性の有無や程度等も様々であるから、単純に選挙権の行使に係る外出の場合と比較することはできない。また、前記(2)ウ(イ)のとおり、本件申請がされた令和4年7月時点において、原告の想定する本件選挙における選挙活動の内容等が判然としないものであったことからすれば、被告において、本件決定に際し、原告が想定する本件選挙における選挙活動の内容やこれを原告が単独で遂行することができるかなどについて具体的に調査すべきであったともいえない。そして、本件決定は、前記(2)のとおり、本件選挙の選挙活動に係る同行援護について、本件支給決定基準及び本件非定型支給決定運用に基づく検討がされた結果として、本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情があるとは認められないことを理由として、本件支給決定基準の支給量の上限を超えて支給を認めなかったものである。
   (エ)したがって、原告の上記主張は採用できない。
   エ 原告の主張エ(国に対する問合せをしなかった不作為の違法)について
原告は、同行援護が国の制度であること等からすれば、被告は、本件決定前に、国等の関係機関に問い合わせるべきであったにもかかわらず、そのような問合せをしなかったものであり、憲法25条、31条、障害者基本法、行政手続法等に反するなどと主張する。(前記争点に関する当事者の主張(1)(原告の主張)エ)
     しかし、同行援護の支給量に係る決定は市町村が行うものとされており(障害者総合支援法19条1項)、その決定に当たり、市町村が国等の関係機関に対し問合せをすべき旨を定めた関係法令の規定は見当たらないことからすれば、被告が本件申請に対する判断をするに当たり、原告に対し、国等の関係機関に問い合わせるべき法的義務を負うものとは解されない。
     したがって、原告の上記主張は採用できない。
   オ 原告の主張オ(特定の視覚障害者に対する非定型の支給との関係で不平等な取扱いであること)について
(ア)原告は、被告は、原告以外の特定の視覚障害者に対し、平成27年9月から平成28年5月までの9か月分について、合計630時間の同行援護の支給決定をした一方で、被告は、原告に対しては、選挙活動という非定型な外出について、同行援護の支給決定(非定型の支給決定)をせず、未利用分の繰り越し利用も認めておらず、不平等である旨主張する。(前記争点に関する当事者の主張(1)(原告の主張)オ)
(イ)証拠(乙12)及び弁論の全趣旨によれば、被告が、原告以外の視覚障害者に対し、平成27年9月1日から平成28年5月31日までの期間について、同行援護の支給量を80時間/月とする支給決定をしたこと、同決定において、1月当たりの利用可能時間は80時間を上限とするが、上記期間の各月の総合計630時間(70時間×9か月)以内で利用可とするとされたこと、当該視覚障害者については、公の役務に従事する場合で本件支給決定基準による支給量(上限50時間/月)を超える支給が必要であるとして、70時間/月の支給決定がされていたところ、各種団体の事業や会議等に出席するためには、支給量を80時間/月に増加することを求める旨の支給量の申請があったため、被告において検討した結果、一律に80時間/月への増加を認めるのは適切ではないが、80時間/月の支給が必要な場合もあることから、支給量を80時間/月とするが、従前の70時間/月による年間支給量にとどめるため、上記期間の各月の総合計を630時間とするという利用制限を付したものであることが認められる。
   (ウ)上記(イ)の認定事実によれば、上記視覚障害者については、被告において、本件支給決定基準及び本件非定型支給決定運用に基づいて検討した結果、公の役務に従事する場合等の本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情がある場合に当たると判断し、上記視覚障害者の公の役務に従事する状況等を踏まえて、上記利用制限を付した上で支給量を80時間/月とする必要があると判断し、上記の支給決定をしたと認められるところ、同決定に係る豊中市長の判断は、合理的といえる。
      これに対し、原告については、公の役務に従事する場合に当たるものではなく、前記(2)のとおり、被告において、本件支給決定基準及び本件非定型支給決定運用に基づいて本件申請を検討した結果、本件支給決定基準による支給量を超える支給を行う必要がある特段の事情があるとは認められないことを理由として、本件決定がされたのであって、上記視覚障害者の場合とは事情を異にしている。
      また、上記視覚障害者に対する支給決定は、総合計時間の利用制限を付しているが、これは、未利用分の繰り越し利用を認めたものではない。
   (エ)したがって、原告の上記主張は採用できない。
   カ 原告の主張カ(本件決定の手続等の違法)について
(ア)原告は、①被告は、本件ガイドラインについて市長決裁が必要であるにもかかわらず、被告はその決裁を受けておらず、本件ガイドラインは違法無効であり、非定型基準内規も適正な手続によって制定されておらず、違法不当であるから、これらに基づいてされた本件決定は違法であり、②本件ガイドラインによれば、定型基準を超える同行援護の申請があった場合、第三者機関に意見を聞かなければならないにもかかわらず、被告はこれを怠っており、本件決定の手続に違反があるなどと主張する。(前記争点に関する当事者の主張(1)(原告の主張)カ)
   (イ)しかし、上記(ア)①については、証拠(乙29、30)によれば、豊中市事務決裁規程は、専決者は、同規程20条等に定めるところにより、事務を専決する旨、ただし、重要又は異例と認められるもの等については、豊中市長の決裁又は上司の専決を受けなければならない旨規定し(同規程4条)、自立支援給付に関する事項は、豊中市福祉部障害福祉課長が専決する旨規定している(同規程20条37項2号)こと、本件ガイドラインの制定(一部改正)については、自立支援給付に関する事項に当たるところ、上記規定に基づき、豊中市福祉部障害福祉課長のほか、その上司である豊中市福祉部長の決裁を得てされたことが認められる。
      また、前記(2)のとおり、被告において、同行援護について、本件非定型支給決定運用に基づき、非定型の支給決定をするか否かなどを決定していることが認められるところ、本件非定型支給決定運用は、本件ガイドラインのように明文で定められたものではなく、被告の内部の基準にすぎないが、その内容には合理性があるものと認められる。そのほか、本件非定型支給決定運用が違法不当であることをうかがわせる事情は見当たらない。     
   (ウ)また、上記(ア)②については、本件ガイドライン(乙19)13頁において、「市は、作成した支給決定案又は地域相談支援給付決定案が市の定める支給決定基準等(本ガイドライン含む。)と乖離するときは、いわゆる「非定型の支給決定」等として市介護給付費等支給審査会に意見を求めることができる。」と規定されている。したがって、そもそも市介護給付費等支給審査会に意見を求めるか否かは任意である上、本件決定は、本件支給決定基準の上限である一か月当たり50時間の支給をする旨の決定であって、本件支給決定基準と乖離する場合という要件にも当たらないから、本件決定の手続に違反があったとは認められない。    
(エ)したがって、原告の上記主張は採用できない。
   キ 原告のその余の主張も、前記(2)の認定判断を左右するものではない。
第4 結論
  よって、その余の点(争点2(損害の発生の有無及び金額))を判断するまでもなく、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官      
横田典子
裁判官                 
太田章子
裁判官      
橋本康平


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

豊中市議会銀選挙立候補に必要な供託金30万円がやっと、返ってきた。

2023-05-31 21:59:17 | 全盲視覚障害者と選挙
おもわぬ入金

先月4月23日の豊中市議会議員選挙に立候補した私、豊中の85年の長い歴史のなかで、はじめての全盲立候補者、盲人ウエカジ。当選に必要な票数は1900票、私は、力及ばず652票で落選。

でも、この651人(私をのぞく人数)の人が、盲人ウエカジに市議会議員になってもらいたいとおもってもらったのは、とてもびっくり、そしてうれしい。ありがたい。

そして、さらにびっくりなのは、選挙に立候補するために供託金30万円を支払った私、てっきり、この30万円はもどってこないとおもっていたら。392票以上獲得した人には、全額もどってくるとのこと。

うれしいね、うれしいね。放蕩息子がかえってきたような喜び。
その入金が今日あった、大阪法務局から私の銀行口座に振り込み。一度、供託所におもむいて、直接現金をもどしてもらおうとおもったけど、そして実際に谷町四丁目の合同庁舎にいったけど、必要処理がたりなくて、やむなく退散。でも、そこでおしえてもらったのが、供託金の返還は、書面、郵送、銀行口座振替でできますよということ。便利だね。目の見えない私、網膜色素変性症な私、盲人ウエカジ。大金をもちあるくのはこわいので、こうやって振り込んでくれるのはありがたい。

さて、この30万円をなににつかおうか。
あそうだ、今日の夕方、佐川急便からの宅急便が。なんだろうとおもったら、福祉専門学校の介護福祉士実務者研修のテキスト一式、ずっしりと重たい段ボール。いよいよ私の通信通学がはじまるね。受講料はなんと15万円もする。

供託金30万円がもどってきたので、それでしはらおうっと。のこり15万、もう4ねん以上つかっている、NECのデスクトップパソコンを買い替えようかな。最近、なんかレスポンスがおそいのよね。

さて、今日で5月もおわり。明日から6月、7月16日はいよいよ、司法しけの予備試験。生活のリズムを一定にたもって勉強をすすめていかねば。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私が立候補した豊中市議会議員選挙の開票結果は発表された。深夜2時ごろに結果が確定したよう。

2023-04-24 21:51:29 | 全盲視覚障害者と選挙
980と392

豊中市議会議員選挙の投票日が昨日。立候補した無所属の私。投票の開票結果が判明するのは深夜なので、昨日は、その結果発表をまたずに、早めに寝る。当選者には選挙管理委員会から、当選の電話がかかってくるとのことで、寝ていても、その戦艦の電話でおきるだろうとおもう私。

結局、朝7時までぐっすり眠る。電話はかかってこなかったよう。今朝、8時から、YOUTUBEの私のチャンネルでで、結果報告配信をするということを、2日前の土曜日の生配信でお話していたので、7時に起きて、シャワーをあびて、昨日、なんばのドンキで買った、リングライトというユーチューブ用の顔をきれいにうつすライトを開封。それをセット。生配信で、はじめて、開票結果を確認しようとおもう私。そのことを、土曜のお話配信でもいっていたにもかかわらず、ラインでだれかからのメッセージが届く。それを、自然によみあげる設定にしていたので、私のアイフォンが読み上げる。発達障害のガイドヘルパーさんからのライン。
49位、652票。残念でしたね。

短い内容のライン。それで、結果をはじめて知る私。ということで、その後の朝8時の生配信は、実は、すでに結果をしっての配信。まるではじめて知るかのような配信になってたらいいな。
その配信の中で、私は、供託金30万円は、950票以上得票しないと、かえってこない、没収されるといっていたけど、その後、選管にに確認すると。980票以上が法廷有効票であって、供託金を没収されない得票数は392票とのこと。私は、この法定得票数980票と、供託金が没収される得票数を「勘違いしていたのね。392を超える得票、393票をとれば、供託金はもどってくるし、ポスター、ビラ、事務員、自動車などの選挙にかかった費用は上限の範囲内なら、すべて補助される。知らなかった私。だから、みんなあんなに選挙運動員がいるのね。あの腕章をつけた運動員は、おそらくほとんどが報酬をもらっているんだろうね。15人までお金を払えるのよね。そして、392票以上の票をとれば、豊中市の場合、それらの費用も補助さえる。このことを知らなかった私。

つまり、393票以上とれば、ほぼ選挙費用は返ってくるのね。つまり、立候補による費用はほぼ回収できるのね。だから、みんな、あんなに街宣カーや、運動員をつかっているのね。

豊中市40万人で、有権者は35万ぐらい。その市議会議員選挙で392票をこえる得票があれば、供託金はもどってくるし、選挙運動費用にも補助金がでる。とてもめんどくさい事前申請が必要だけども、この公金補助請求申請はちゃんとやるべきだったな。

ということで、豊中市議会議員選挙、定数34、立候補者数52人。私は、49位の652票。最低当選得票数は1901票。1300票ほどたりなかったけど、考えてみれば、652人もの人が、のら無所属候補者の私によく投票してくれたね。ありがたい。

ということで、投票してくださった豊中市民のみなさん、また、投票をよびかけてくださった豊中市民以外のみなさんありがとうございました。

今朝の生配信をおえて、おせわになった人へのあいさつまわり。商店街をあるくと、なんか、きまずい、だれかに、落ちましたねと、いわれそうな感覚。でも、だれも私のことなど気にしていない。自意識過剰。帰りにその商店街をとおったら、対面朗読のボランティアの人とばったりあって、ねぎらいの言葉をかけてくれた。また、元議員の人にも声をかけてもらった。ありがたいね。
その後、午後から、年金事務所へ。国民年金の加入と、免除、不納付申請。障害年金をもらっていると、国民年金の支払いをしなくてもいいとのことで、歩いて、年金事務所で。

途中、歩道から車道にとびだし、車道のまんなかをあるいている私。しかも国道。ひとりの運転手が車をとめて、私を補導にもどしてくれた。あぶないあぶない。黄色の盲人上着を着ていてよかった。というか、点字ブロックを補導につけておくれよ。

結局、2時間、年金事務所にいて、必要書類離職票がないということで、受け付けてもらえなかった。年金情報はオンライン化されているはずなのに、まだ、そのデータがあがってきていません。なので、離職票の紙が必要ですとのこと。それならば、この申請書は、そちらであずかって、データ更新されたら、この申請書を受け付けてくださいとお願いする私。それはできませんと職員。押し問答。

あきらめて、家にかえる私。泣く子と役所にはかてないね。

その後夕方から、ボランティアさんと、選挙の開票結果について話し合う。供託金がもどってくるのはよかったねとのこと。ほんとよかった。選管からなにか書類がおくられてくるのかな?気長にまとう。こちらからいっても、門前払いされそう、今日の年金事務所のように。

PS
652票は当選には遠くおよばなかったけども、その1票1票は、ひとりの人間が、私に投票してくれたのよね。顔も名前も知らない652人の投票。よくよく考えてみれば、ありがたい、すごいこと。この経験ができたので、週末4月30日、ジェイコムホール八王子でのハロプロ研修生テストの投票。その1票を、どれだけ、研修生がありがたいと感じているか、それを感じることができた。その研修生の気持ちを知ったので、こちらも、1票に願いをこめて投票しよう。私の1票がベストパフォーマンス賞につながらなくてもいい。勝ち馬にのろうとする投票だけはしないでおこう。それは、私に投票してくれた人への、わたしのありがとうの気持ちのあらわれでもある。自分がよいと思う研修生に投票してこよう。

緊急月曜朝8時 ライブおはなし配信 盲人ウエカジ 豊中市議会議員選挙 当落発表 みなさんの1票に感謝します 供託金が帰ってくる得票数は392票??

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街頭演説に必要なもの、それはコールアンドレスポンス

2023-04-22 21:53:19 | 全盲視覚障害者と選挙
夜空に響く声

市議会議員選挙に立候補した私。目の見えない私。網膜色素変性症の私デスペア。いよいよ今日が選挙戦最終日。

朝から、昔、ハローがよくリリイベをやっていた場所の最寄り駅での街頭演説スタート。ひとりだけの街頭演説。ガイドヘルパーさんは、時間が守れない発達障害があるガイドヘルパーさなので、1時間おくれで合流。その間ずっと1人で街頭演説の私。

街頭演説も7日目ということで、だいぶなれてきた私。特に、ハンドマイク、拡声器に声をのせる方法。ラッパ型の直系20センチぐらいの拡声器からのびたマイクに声をのせる。このマイクを口にもってきてしゃべると、声が大きくなる。このマイクを唇にくっつける、そうすると声がよくのって、大きな声が響く。

たしか、ハロメンも、マイクにアゴをつけたりするメンバーがおおかった。マイクに唇をくっつけているメンバーもいたんだろう。その意味がやっとわかった。マイクと口がはなれていると、声をマイクがよくひろわないのよね。

駅前陸橋で、2時間ほど街頭演説。今日は寒くて12度しかない。きのうおとといと、最低気温が17度ぐらいあったのに、いっきに寒くなる。その寒空の下での2時間街頭演説。体がさむくなってきたので、すぐ目の前のマクドナルドへ。コンボセット、チキンクリスプマフィンとホットコーヒー250円。ホットコーヒーはアツアツにしてくださいといって注文すると、ほんと唇がやけどするぐらいあつかった。このぐらいの熱さが私のさめた体にちょうどいい。

30分ほど求刑して、ボランティアさんも合流して、場所をかえての街頭演説。百貨店とバスターミナルの間のフリースペース。そこで1時間ほど街頭演説。

12時すぎると、でっかい街宣車が私の目の前。共産党の若者サポーターがこれから演説をしたいとのこと、やすやすと、その場所をあけわたす私。30分ほど、その演説を聞く。演説区長ではない、おねえさんおばさんが、普通にしゃべっているような口調。その演説の間に、サポータースタッフに私の選挙ビラをわたし、しばらくして、このあと、私もこの街宣車の上にのりたい。そうお願いする私。
すると、サポータースタッフは、いいですよ、どうぞどうぞといってくれた。どんな考えをおもちなのか先ほどの選挙ビラで確認しましたので、どうぞどうぞとのこと。
これにはびっくり。女性の演説がおわって、さっそく、私一人、その改選者の中に乗り込む。大きな街宣車だけども、中は窮屈。ただ、腰をかがめていないと天井に頭がぶつかるという天井が低い字乗用車ではなく、大きなバスぐらいの天井。その街宣車に階段を3段ぐらいのぼってはいりこみ、さらに、そこから、街宣車のおくじょうのうえに、はしごでのぼる。急なはしご、いちおう、ステップは足をのせられる板ぐらいの幅があるけども、テスリは左側にしかない。
こんな急なはしごなのね。びっくり。そして、屋上にあがると、ここもまたせまい。屋上は、4つの大きな痛手四方をかこまれている。そして、足元にスピーカー。このスピーカーは自動で、屋上からさらに3メートルほど上にあがる。すごいスピーカー。
のぼりきって、足元にあるスピーカーを確認し、これをまたのばして、私にぜひスピーカーで話させてくださいとお願いする。

いや、それは、申し訳ありません。と断られる。選挙ビラだけでは、さすがにスピーカーで声を出すことまではゆるさないのね。
でも、屋上脳上で、バンザイをして、一応、下にいるガイドヘルパーさんが動画でとってくれた。貴重な経験だった。

はしごをおりて、車をでるときに、今度はぜひ、共産からでてください、そうすれば、この街宣車のスピーカーもつかえますととスタッフ。リクルートがうまいね。

それから、別のバスターミナルおりばにいって、街頭演説をしていると、公明党の人が30人ぐらいやってきて、1330から街頭演説をするので、場所をあけてください。もちろん、あけわたす私。公明党の街宣車のスピーカーはとtめお大きな音がでる。ビルの1階がピロティになっていてそこがバスおりばになっていて、声が反響するのね。その街頭演説の声がおおきすぎるのか、はげあたまのおじいさんが自転車にまたがりながら、やかましい、音がおおきすぎると、スピーカーの大きな声にまけないぐらいの怒声をあげる。すぐに公明党のスピーカーの音量さげられる。この対応の速ささすがだね。

その街頭演説を見学して、その後、百貨店と駅の渡り廊下通路のようなところで、街頭演説。反対側の渡り廊下通路では別の陣営が、生こえで、あいさつをずっとしている、通行人にあいさつをしている。

私は、反対側でハンドマイクをつかって、空にむかって演説。1時間ほど演説。演説していると、どんどん気分がのってくる、まるで、マラソンランナーのランナーズハイのよう、なんか、この世界が自分のたために存在しているような錯覚におちいる。どんどん、言葉が口からでてくる。いつの間にか、私の頭の中では、夜空の下、私がたったひとり空にさけんでいるというイメージ。まだ、まっぴるまなのに、なぜかそういう錯覚、時間の感覚がわからなくなるほどのハイ。障害者のいない市議会に障害者を、ぜひ、この目の見えない私を市議会に、1時間ほどのの演説、15時をすこしまわって、そろろやめようと、しめくくる私。すると、拍手がおこる。そして、また、1階のバスのりばからも拍手、そして、がんばれよーの声。うれしいね。てっきり、ボランティアさんが拍手をしてくれているのかとおもったら、そうじゃなく、通行人とバスをまっている人が拍手をしてくれた。7日間街頭演説をしていて、拍手をもらったのははじめて。これが、ステージにたつアイドルの気持ちなんだな、とても気持ちがいい、自分のコールにちゃんとレスポンスしてくれる、これが一体感というものなのか。これは
やみつきになるね。この拍手をもらったことだけで、また次回の選挙にも立候補して、また街頭演説したいとおもわせる。

ほんとは、20時まで街頭演説はOKなので次にまた場所をかえてやるつもりだったが、これで、私は街頭演説終了。この拍手をもらえて、ここで、おわったほうがいいなという判断。自分の考え、それを受け取り、そしてそれに賛同してくれる、それをしっかりこちらに伝えてくれる、このとき、私は、まるで、ハロプロのコンサートのステージにたつアイドルになれた。宮本佳林になれた。いい経験だった。顔も名前もしらない、通行人の人がたちどまって、私の演説をかくれてきいていて、最後に拍手をしてくれる。これほど、ありがたい、はじめての経験はなかった。

その後、、近所のサイゼリヤで食事。ジンジャエールとコーラ、アイスコーヒーがとてもおいしかった。

食べ終わって、ガイドヘルパーさんともわかれて、ひとり、バスで自宅にもどる。私の自宅の近くの駅では、いつも朝、駅だちしていた人が、声をガラガラにして、生こえであいさつをしている。駅の利用者に無差別あいさつ。その声がガラガラでだれかはじめはわからなかった。

その人にあいさつをして、私は歩いて家にかえる。家のまわりも、まだ街宣車が声をはりあげている。

18時すぎ、家にもどる。めずらしく、家のまわりをすこしまよってしまう。つかれのせいかな。でも、なんか、心はハイ、すがすがしい。自分の考え、気持ちを大声でさけぶということがこんなに気持ちがいいものだとはおもわなかった。家にかえって、ツイッターをみると、たまたまあなたの演説を聞きました、よかったです、投票しますというものもチラホラあった。うれしいね。コールにたいするレスポンス。コールアンドレスポンス。うやっぱり、この2つは2つで1つだね。

さて、いよいよ来月からハロプロのコンサートは声だし解禁。やっと、コールアンドレスポンスが復活するね。いかに客席のレスポンス、雄たけびが、舞台の上のメンバーにとってありがたいものか、市議会議員選挙に立候補し、街頭演説をしてそれがよくわかった私。大声で、また、カリーーンとさけびたいね。

つかれたけども、よい選挙戦だった。もっとネットや、専用ホームページをつくればよかったけど、そこまで手がまわらなかった。そこは、次回へもちこしだね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする