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ファシズムの大衆心理下巻 (ヴィルヘルム・ライヒ)

2018年12月07日 | 書評



「ファシズムの大衆心理」下巻では、最初になぜ人類解放を目指したソ連が失敗したのか、がライヒの見地から分析される。当然それは、ソ連がプロレタリア独裁をもって性抑圧と家父長制を乗り越えることが出来ず、それどころかスターリンによる一党独裁に変質し性抑圧と家父長制を復活強化させたからだ、ということになる。ここからライヒは、政治そのものが人間を歪曲させる性抑圧と家父長制を内包しているとして、政治活動に見切りをつける。本書の最終章においてライヒは、政党や政治に頼らないで実現する労働者自身が責任をもって運営する自治、とでもいうべき労働民主制を唱えるに至る。労働民主制は、人間が本来持つ自由の欲求に根差した自然過程として基礎づけられる。ナチスや共産党と闘い、最後にたどりついたアメリカにすら否定され監獄の中で死んだライヒ。形式的自由から全体主義が生まれることを見抜き、真実の自由を追い求めた闘士らしい人生であった。

ライヒの限界は、階級社会において中産階級が受け持つ保守的精神性や機能については詳細に解明したのに、中産階級が社会変革の中で果たす積極的役割を位置づけられなかったことにある。その欠点を覆い隠すように、本書下巻においてライヒは、労働民主制の担い手に管理職やインテリ層といった中産階級も含めている。しかし、それは中産階級をなだめすかしたりご機嫌をとったりして革命の味方にしよう、という程度のことでしかなかった。これもファシズムを招いた原因であり、戦後、商品の大量生産を旨とするアメリカニズムの中で、ライヒがフリーセックス肯定本として流行消費された原因でもある。



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