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ファシズムの大衆心理(ヴィルヘルム・ライヒ)

2018年11月29日 | 書評



「ファシズムの大衆心理」の功績は、可視化されにくく言語化されにくい中産階級・宗教・家族の核心部を暴露したことにある。詰まるところ、それは家父長制であり性抑圧の場であるということだ。中産階級・宗教・家族は家父長制と性抑圧を個人に順応させる役割を果たすことで、階級社会の支柱となってきた。この構造が危機に陥る大不況や戦争前夜という社会情勢を迎えると、中産階級・宗教・家族は温情を投げ捨て家父長制と性抑圧を由来とする神秘的人種主義に硬化し、ファシズム独裁制への道を開く。

中産階級を経済的条件や職業による分類に狭め、宗教や家族は私的なことと、簡単に片づけてはいけない。それでは、なぜ大衆は自己の不利益に際して立ち上がらないのか、むしろ喜んで独裁者に身をゆだねるのか、理解できなくなる。とくに、中産階級は平時において凡庸で主体性に欠けた烏合の衆と軽視されがちなために、中産階級が家族と宗教を介して深層に保持するイデオロギー的一体性と生存戦略、集団戦闘力を見誤ってしまう。その結果がナチスの勃興でありドイツ共産党の瓦解であったことを本書は、生々しい当時の記憶とともに伝える。

また読者自身の階級的精神性が何によって規定されているのか自覚できるという、精神分析の手段としても一読の価値がある。個人的には、心理学と呼ばれるものの種明かしを見せられたような気分になった。



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