DK大衆食の旅3

路麺好きがそんな感じで巡る大衆食の旅。

一茶宮代@東武動物公園

2015年10月24日 | そばうどん
まず最初に、少し昔にあった出来事を記したい。

知り合いに美食家を気取るソムリエの女性がいる。色々といい物を食って飲んでしているそうだ。
その彼女が、タイに遊びに行ってきた後、自分にこんな事を言うのだ。

タイってハーブや香辛料をたくさん使うから、そのもの本来の味がわからくって美味しくないよね。と。

ボンボクラ!何たるコトかと自分は心の中で憤慨した。

自分の狭い見識に囚われ、その土地固有の風土や文化に培われた味を理解しようとはしないのか。

ならば、わざわざタイなど出向かず、日本で日本人向けに作られた虚構のタイ料理を食べれば良いのだ。




旅の妙味とは、その土地にどうしようもなく溶け込んでいるひとつひとつを、見て聞いて触って味わって、己の心と身体で感じ取っていく事だ。と自分は考えている。

そして旅とは、単なる旅行だけを示すものではない。
日頃から何処ででも、自分の知らない物事や食、人に対して、それを理解しようとする心持ち。それが旅という定義なのだと。

長くなったが、この意見をご理解いただけるであろうか。





さて本題。ここは路麺の源流を探る旅の最初期に訪れて以来、一番リピしてる店だと思う。



そば粉とうどん粉の比率は4対6。
その生地をなんと足で踏んでコシを出すという。
そして出来上がるのは太い細いという概念では語れない、不揃いにも程がある麺。



一般にそば通を気取る輩には到底理解不能なそば。
それを「本気で打った本当のそば」と店頭で唱う。シビれますホント。



そう、これもまた大衆のそばなのだ。



うどんの作法が交じるこのそば、うどん文化圏である埼玉で切磋琢磨して生まれたのだ。



ご主人は茨城五霞の出身、この地域の生まれでないことがまたこの挑戦を生み出したのかもしれない。



そして深みのある汁がいい。これは江戸の汁ともまた違う、醤油とみりんを奢ったうまい汁。4割というそばの香りをぐいぐいと引き立てる。



老舗の蕎麦と大衆そばは異なる歴史の流れを持つ。そして江戸のそばと関東各地のそばうどんもまた違う文化の中で培われてきたのだ。

まずその事をしっかり理解する事が路麺の源流を探る第一歩だと思う。
十割の生粉打ちをもりで、ちょいんと汁につけて啜るだけが蕎麦ではない。
異端と思われがちなこの一茶のそばは、その違いをしっかと舌に伝えてくれるのである。











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