【ワシントン=望月洋嗣】オバマ米大統領は5日、核兵器を持たない国に対し核攻撃をしない方針を、米紙ニューヨーク・タイムズとの会見で明らかにした。米国は通常兵器や生物・化学兵器による攻撃に対し、原則として核による報復攻撃をしないことになる。「核なき世界」に向けて、安全保障上の核兵器の役割を縮小する大きな方針転換と言える。
6日に発表する米国の「核戦略見直し(NPR)」に、こうした方針を盛り込むとみられる。同紙によると、核不拡散条約(NPT)を順守する核兵器の非保有国に対しては、生物・化学兵器による攻撃やサイバー攻撃を受けた場合でも、核兵器による報復攻撃を原則としてしない。核兵器使用の条件を明らかにしない「あいまい政策」をとってきた米国が、使用条件を限定するのは初めて。一方で、オバマ大統領は、NPTに反する形で、核開発を続ける北朝鮮とイランは例外扱いとする考えも明らかにした。
オバマ大統領は核の役割縮小を決断した理由について、「核兵器を重視しない方向に動き続けることを確かにしたかった」と述べた。また「極限の状況以外では、米国の通常兵器の攻撃能力は効果的な抑止力を発揮できる」とし、核兵器の削減や役割の低下を、通常兵器で補う考えを示した。
また、ホワイトハウスの複数の高官は、今後の開発で化学兵器などの破壊力が大幅に増した場合などは、核による報復攻撃を再検討する余地を残すとの方針を、同紙に示した。米国が核を先制使用する方針も維持されるという。同紙はこうした方針が、核戦力の維持を求める保守勢力と、「核なき世界」に向けて大胆な方針転換を求めるリベラル勢力の双方で議論を呼ぶと指摘している。
核兵器の非保有国に対して核兵器の使用を禁じる考え方は「消極的安全保証」と呼ばれ、日本とオーストラリアが主導する「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の報告書にも盛られ、岡田克也外相も3月末の主要国(G8)外相会合で各国に支持を求めていた。岡田氏は日本時間6日朝にクリントン米国務長官と電話で協議し、NPRの内容について説明を受けた。
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