douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

サイトウ・マコト展

2008-09-28 | 美術
サイトウ・マコト展:SCENE[0]  @金沢21世紀美術館

デザイナーであるサイトウマコトの新作50点からなる絵画展。
ハッキンカイロだと言われながらも、私がとてもとても気に入って
使っていたケータイ、PENCKをデザインした人だ。

PENCKが本当にすばらしかったので、見ておこうと思ったんだけれど、
まあ、プロダクツとは違いますわな。絵画は。
そして、デザインとアートは似ている気がするけど、やっぱり違うものだからね…

映画から切り取ったシーンを、なんらかの画像処理して出力してる(のだと思うんだが…)
作品なので、なんかこう、血が通ってないっていうか、作品を前にしても来るものがない…
絵そのものはわりとかっこいいと思うのだけれど、絵画といわれるとね。
デジタルが悪いというよりも、表現方法として違う気がするの。
だけど、もし、この表面的で伝わるものがない薄さっていうのが、現代を映し出す表現なんだ、
っていうんだとしたら、そこそこ成功していると思う。

(2008.08.02-2008.11.03)

ロン・ミュエック展

2008-09-28 | 美術
ロン・ミュエック展 @金沢21世紀美術館

シリコンやファイバーグラスといった素材を使って、
それはもうリアルな人間の彫刻をつくりあげる作家。
造形はこのうえなくリアルで精緻なものなのに
サイズはすごく大きかったり、小さかったりして。
見ているとそれがすごく不思議な感覚。

ミュエックを知ったのは2001年のヴェネツィアビエンナーレで。
展示会場に入ってすぐのところにしゃがみ込む、ちょーでかい少年に本気でびびった。
もともとは倉庫だったという会場の、高い天井ギリギリまである大作を
今でもはっきり覚えてる。(もう7年前かってことに軽いめまいが…)

で、金沢での展覧会。
作品数は7点と少なく感じるけれど、この人の制作ペースを考えるとかなりの充実。
全ての工程を自分で行い、今までに制作した数は数十点らしいので。
男の顔や新生児など、どれも微に入り細を穿ち、リアルを追求している。

大体、人間を模した芸術作品っていうのは、理想型に向かう。
そもそも人間自体が自らの身体を理想型に近づけようと努力している。
アニメやフィギュアだって理想型だし、生身でいうならアイドルとかがそう。
そういう指向と全く逆に、人間をどこまでもリアルに表現する。ただしサイズを除いて。
一見、滑らかに見える皮膚には美しさすら感じたりするものなのに、
そこに青く透ける静脈や、ぶつぶつとくぼんだ毛穴や、毛穴から生えるムダ毛の存在を
認めた時点で、なんだかグロテスクに見えるっていうのはどういうことなんだろな…

(2008.04.26-2008.08.31)

シャガール展 色彩の詩人

2008-09-28 | 美術
シャガール展 色彩の詩人 @兵庫県立美術館

20世紀の巨匠の一人、マルク・シャガールの展覧会。
美しい色彩で描かれた幻想的な絵で、好きな画家の一人だ。
約150点の展示とのことだけど、銅版画やリトグラフが多めで、
思ったほど、油彩は見られなくて残念。
おお、これは…! と思うようなのは、数点といったところ。
総作品数が多い画家だし、わりとモチーフが一貫しているから、
初めて見た絵なのか、どこかで見たことがある絵なのか、区別がつきにくかったりして…
とはいえ、長い画業の流れを見るにはなかなか良かったな。

ユダヤ劇場の壁画は見どころ。良かった。
何を描いているか、というより、何を描かないかってところに
シャガールの凄さがあるように思った。
白い空白部分や、線だけで簡略化された部分っていうのが、逆に本質かも。
それにしても、中途半端な「劇場空間の再現」みたいなのが余計だった。

やはり、どんなに幸せな場面を描いていても、
戦時中に描かれた絵は、時代の不穏な空気、生死をも脅かす不安が画面から漂っている。
見ているとこちらにまで不安が伝染しそうなくらい。
とくに、ユダヤ人という出自が、私には想像もできないぐらいに、
この人の内面に大きな影響を与えているのだな、と。

晩年は幻想的な中にも明るい色彩で、安定感のある作品が多かったのだけど、
そうなると、ちょっと物足りなさも感じるという…
制作環境と表現のかねあいの難しいところ…

(2008.09.06-2008.10.15)