中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

楽天快進撃の秘密

2008-06-04 12:10:49 | Weblog
 今「多賀城」というところにいる。昔からの相撲ファンなら「ああ、あの多賀城

ね」とピンと来るかもしれない。多分、あの関取の出身地だと思う。仙台からJR仙

石線に乗り、約20分で多賀城に着く。球場に行くまでの時間を利用して、フラリ

とやって来た。

 目的は古城跡を見ることにあった。平安の昔、ここに政庁が置かれ、東北一帯の

監視をしていたという。京の都から使わされた役人が常駐し「蝦夷(えみし)」の

反乱を防ぐと同時に、この地域で産出される金などを都へ持ち帰る。その中心的な

役割を果たしていたところが多賀城だった、と記憶している。大好きな作家・高橋

克彦氏の「火怨」や「炎立つ」などの小説にもよくこの地は登場する。歴史好きの

ものにはたまらない地名なのである。

 駅からブラリと歩いて多賀城跡に着いた。はっきり言って、何もない。江戸時代

の城ではないから、天守閣などない。きのう登った仙台城跡の伊達政宗公の銅像と

いったものもない。周りは野原で、小高い丘に碑がある。その丘を、保育園児の遠

足だろうか、子供らが占領し、昼飯を食べていた。だが、こののどかな光景がい

い。今でこれだから、その当時は一体どんな感じだったのだろうか。

 さて、きのうの試合。まあ、阪神は派手にやられた。今季初の2ケタ失点。さす

が交流戦首位の楽天だと褒めざるをえない。一回裏の攻撃でもう勝負あった。1点

をリードし、阪神先発・下柳がスイスイ行くかと思いきや、先頭・渡辺直にヒット

を打たれ、犠打と四球で一死一、二塁とされた。続く打者は4番・山崎武。ここで

楽天・野村監督は初球から二塁走者・渡辺直を三盗させるのである。参った。10

0%の自信がなければ、走れない。まして打者は4番なのだ。データに裏付けされ

た確信があったからこそ走ったわけで、これは見事の一語。これで下柳はグラッと

なった。

 試合後、旧知の楽天関係者に聞いたら「あれ、よくやるんだよ。知らないの?」

と言われてしまった。確かに、他球団との試合で三盗するシーンを見たことがあっ

たが…。弱者が強者を倒すには、知恵を絞り、工夫を凝らすしかない。ノムさんに

すれば「してやったり!」だっただろう。

 今年の楽天はいいところまでいくと思う。岩隈、田中、永井、朝井と若い4人の

投手が腕を競い合い、切磋琢磨している。ノムさんもいい環境を作っている。敵な

がらあっぱれだ。きょうの試合、阪神は負けられない。面白くなりそうだ。