CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

マイヨジョーヌの行方(5)

2024-07-20 11:50:01 | ツール・ド・フランス
 ツール・ド・フランスのクイーンステージも終わってみればポガチャルの強さばかりが際立つ結果に終わりました。このステージでもタイム差を付けられてしまったヴィンゲゴーは「総合優勝を目指す戦いは終わった」とコメントし敗戦を受け止めていました。言葉だけでなく走りを終え、ハンドルに項垂れかかる姿にも敗戦を覚悟せざるを得ない苦しさが滲んでいたように見えました。

 4月の大きな落車での怪我を乗り越え、第11ステージではゴールスプリントでポガチャルを下し涙していたヴィンゲゴーでしたが、怪我明けのぶっつけ本番で勝てるほどマイヨジョーヌは甘くなかったということでしょう。
 ヴィスマのチーム戦術は予想通り前待ち作戦で、逃げに3名のメンバーを送り込み、その中にはエースアシストのヨハンネセンが含まれていたのです。最初の超級ヴァルス峠(距離18.8km/平均5.7%/標高2,109m)の山頂をカラパスがトップ通過しマイヨ・アポア獲得へ一歩近づきます。最初は逃げに乗れなかったカラパスをEFのチームが懸命に働き、なんとかカラパスを逃げ集団に送り届けた結果でした。

 このステージ最難関標高2,802mの超級シーム・ド・ラ・ボネ(距離22.9km/平均6.9%)を迎え、逃げ集団は4分以上のタイム差を持って登り始めます。ここの頂上でマイヨジョーヌの行方が決まるので、ヴィスマが攻撃するものと思っていたのですが、ヨハンネセンを逃げに乗せたヴィスマは攻撃の手札が無く、アタックの無いまま集団で山頂を越えることになりました。この段階でポガチャルのマイヨジョーヌはほぼ確定となりました。後は安全に長く危険な下りを走り切るだけ。ポガチャルの回りにはアダム、アルメイダを含め4人のアシストがガッチリとガードして下りを終えました。超級でポイントが倍になるシーム・ド・ラ・ボネの頂上はカラパスがトップ通過し、アポア・ルージュを現実的なものにしました。
 3分51秒遅れでイゾラ2000に入ったプロトンは、UAEのソレルからアダムに牽引が引き継がれ、先頭とのタイム差を縮めながら集団を7名まで絞りこみます。ポガチャルはイェーツの他にアルメイダがいる一方で、エヴェネプールランダを残すのみ、ヴィンゲゴーにいたってはチームメイトがひとりもいない戦いを強いられます。この状況でも前待ちのアシストが下りてこないのには驚きました。チームはヨハンネセンでのステージ勝利に切り替えていたのです。
 それを見越したポガチャルが残り9kmでアタック。ヴィンゲゴーはついて行けずエヴェネプールにつきイチ状態でレースを終えることになりました。これでポガチャルの1998年のパンターニ以来のジロとツールのWツールがほぼ確実なものになりました。

 それにしても今年のポガチャルの強さは異次元の感じがします。昨年のヴィンゲゴーの個人TTの走りも異次元でしたが、マイヨジョーヌはポガチャルの失速によるものでした。今年のポガチャルの5分3秒というタイム差はポガチャルが自らアタックして得たものなのです。ジロ・デ・イタリアを調整にしたというのも妄想ではない気がしています。
 加えて、今年のUAEは山岳アシストが完璧な仕事をしています。この日も無理に逃げに乗る事をせず、落ち着いてポガチャルの周囲をガードし、最初のボネット峠でポリッツが速いペースを刻み次々とヴィンゲゴーのアシストを次々と振り落として行きました。最初の逃げに乗っていたラポルトも早々に遅れ、逃げにヴィスマが2人いるものの、イゾラ2000の麓ではUAEのアシストが4枚に対しヴィンゲゴーは丸裸になっていたのです。
 シバコフ、ソレルと牽き切りアダムが牽引を始め、アルメイダを残した状況でポガチャルがアタック。逃げていたメンバーをひとりまたひとりと抜いて行き、ステージ勝利のために送り込んでいたヨハンネセンを一機に抜き去ると余裕のポーズでゴールに飛び込んで来たポガチャル。ソレルを欠くアシスト陣でしたが、アルメイダの脚を温存しても勝ってしまうポガチャルにはもう脱帽するしかありません。

 マイヨ・アポアはこの日の超級の頂上を2つともトップ通過したEFのカラパスがポガチャルから奪い取ることに成功しました。今日も1級山岳が3つ残っているので安心はできませんが、どこかひとつでも山頂を取れればマイヨ・アポアを確実にできるでしょう。落車の怪我が心配されたギルマエもこの日も無事にゴールしていましたので、途中でリタイヤすることはないでしょう。マイヨブランはエヴェネプールで確定です。注目は総合2位に挙がれるか、ヴィンゲゴーがこの調子ならTTで遅れることも十分にあり得ます。TTの世界チャンピオンのエヴェネプールなら2分というタイム差は十分に逆転可能でしょう。
 高地に対する不安や気温の高さに対する不安など、開幕前には不安視されていたポガチャルですが、シーズンインを遅らせ、レース数も絞り、ジロを調整に当て、本番はツールと昨年から決めていたのかもしれません。ただ、計画は出来ても、それを実現できるかは別物なのですが、昨年のツールの敗戦がポガチャルをさらに強くした感じがします。負けず嫌いのポガチャルにとって、昨年のバッドデイがよほど悔しかったのでしょう。今のポガチャルを誰が止められるのでしょう。それほど今のポガチャルの強さは異次元です。
 今日も厳しい山岳が続きますが、安全圏の5分というタイム差を考えながらのペース配分で良いので、戦い方は楽になると思います。逃げは容認しヴィンゲゴーとエヴェヌプールマークでレースを消化するだけで良いのですから。
 




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