勿論、今年はここまでフルームに完敗なので、個人の力だけでは逆転はほぼ不可能だと私も思っている。ただ、コンタドールには闘将と謳われたビャルヌ・リースが付いているのだ。昨年、リッチー・ポートを失ったが、今年はアスタナからロマン・クロイツィゲルを獲得、またニコラス・ロッシュも布陣に加えた。そして、最大の目玉はマイケル・ロジャースの獲得である。1979年生まれのロジャースは33歳のベテランで、2011・12シーズンはチーム・スカイに在籍し、昨年はウィギンスのマイヨジョーヌ獲得の立役者のひとりなのである。ビャルヌ・リースがロジャースを獲得した最大の理由は、まさにツール・ド・フランスのためと言って過言ではないだろう。
今年はツアー・オブ・カリフォルニア総合2位、ドフィネでは総合6位とチームにUCIポイントで貢献していることも確かだが、ツール・ド・フランスは全くの別物のはずなのだ。ドフィネではロジャースの表彰台を守るために、コンタドールがロジャースをアシストするというシーンも見られたが、ツール・ド・フランスでは絶対にありえないし、コンタドールの調子が余程悪くない限り、エースをクロイツィゲルで行くこともないはずである。
今、ビャルヌ・リースの頭の中を覗けたらさぞ面白いだろうなと思っている。ここまで完敗のコンタドールを本場でどう走らせるのか、チームをどこでどう機能させるのか、まさに監督の腕の見せ所なのだ。最大のライバルであったヨハン・ブリュイネールがあのような形でロード・レース界を去ることになった。ランス・アームストロングとヨハン・ブリュイネールのコンビに苦渋を舐めさせられてきたリースとしては、内心複雑なものがあるに違いない。
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャのコンタドールのあの走りを見る限り、総合優勝は誰もが無理だと思っていたはずなのだ。しかし、たった1ステージの劇的な走りで創業優勝をもぎ取った、コンタドールとビャルヌ・リースのコンビは、今年のツール・ド・フランスでもきっと何かを見せてくれるに違いない。
コンタドールは調子がいいと前半からでもガンガン行きたいタイプの選手である。また、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャのような勝ち方はスカイ相手では無理であることはリース自身は百も承知であろう。とすれば、作戦は2つ。序盤から積極的な攻撃を仕掛け、スカイのチームとフルームに徐々にダメージを与えて行く作戦。もうひとつは全てを最終週のアルプスに全てをかけるために、前半はチームの力を温存する作戦の2つである。
しかし、TT能力を考えると、第11ステージのモン・サン・ミシェルではフルームとコンタドールのタイム差がかなり開いてしまうことになる。前半仕掛けず、このステージをフルームに楽に走られては、スカイにさらに楽な展開を与えてしまうことになる。仮に第15ステージのモン・ヴァントゥーの登りでコンタドールがフルームに差を付けたとしても、第17ステージの個人TTで再逆転を許すことは間違いないところだ。
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