cowboy-平松の部屋

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フロンテレーシングKITの シリンダー(ノドチンコ付き)

2020-09-06 17:16:42 | スズキーフロンテのレーシングKIT
SUZUKI フロンテ レーシングKIT  6
フロンテレーシングKITの シリンダー(ノドチンコ付き)

フロンテのBxSは52x56でいち気筒118.8㏄で並列3気筒ですから356.6㏄です。(軽は360cc)
125ccのモトクロスENGは54x54ですから、乗用車用にトルクを重視したロングストローク
なんでしょうね、シリンダーをチューニング(ポーティング)するのに、掃気ポートタイミングを基準に
シリンダーを上方に3mm上げる(ベースパッキンを1枚+6枚=3,.5mm)、エキゾーストタイミング
は5mm研削しますと、ウオータージャケットに穴が開きそうなので注意が必要でした。
シリンダー上面は3mm研削します。シリンダーヘッドガスケットはSTDを使用し、シリンダーヘッド
は圧縮比8,5に合わせ面研します。
このシリンダーは並列3気筒の鋳鉄製です。エキゾーストポートや掃気ポートををポーティング
(リューターで削る)するのには相当な工数がかかります。いちシリンダーをいち日で仕上げるのは
無理でしょう。
KITパーツとして販売する(300台ほど)には、量産ラインで加工してもらわなければなりません
シリンダーの加工基準はボーリング後、EXhポートの上面を治具に当て、チャッキング(固定)し
自動加工するそうです、ですからEXhポートの上面を基準に新EXhポート中子、掃気ポート中子
を新作しました。新EXhポート中子はノドチンコ付きです、そうです5mm高さのノドチンコ面を
EXhポートの上面を治具に当て自動加工すれば良いわけです、ノドチンコはすべて加工後
ハンド加工で研削すれば良いわけです、しかしウオータージャケットに穴あきそうは残って
いますので、量産のウオータージャケット部の焼いた砂型をハンドで削り取り水の通路部を
確保致しました。新掃気ポート中子はチューニング時に合わせ掃気ポートの大きさ、通路太さは
合わせてます、そして、主掃気(左右の2つのポート)の吹き出し角度は90度でトルク型ENGの
基本だそうです。
シリンダーを300個生産するにあたり、工場に鋳造前の型を用意してもらって、掃気ポート中子、
掃気ポート中子の交換、および、ウオータージャケット部の追加工をニレ(2輪レースGr)の若い衆
総出で作業いしました。
自動加工機からおろした後、上面3mmの面研は工場外のメーカーさんで加工してもらいました。
ベースパッキンはSTDは0.5mmで試作時は7枚(1枚+6枚(3mmシリンダーアップ分)〉使用して
ましたが、KITでは3.5mmを販売しました。
ショップさんで、ノドチンコの研削(切り落とし)、および、ポートの面取り加工をお願いしました。
FJ360からFL500になり、HONDA-N360は500ccフルスケールになりますが、フロンテのこの
シリンダーはボア径がΦ54にしかならず、420ccが限度でしたが60PSあり十分だったようです

フロンテレーシングKITの ピストン   Si(ケイ素)を18%

2020-09-06 17:12:06 | スズキーフロンテのレーシングKIT
SUZUKI フロンテ レーシングKIT  5
フロンテレーシングKITの ピストン   Si(ケイ素)を18%

レース用ピストンは当初、STDの素材を使って、リングのみ摺動抵抗の少ない、板厚0.8mmに変更し
出力向上を狙った、3気筒、120度クランクの為、細いリングを曲げずにシリンダーのセットするのが難易
でした、特にミニフォーミューラの実車での組み込みは大変でした。
ベンチでの出力テストやFJ360(車重200Kg台)のレースによる、
ピストン頭部のクラックは有りませんでしたが、セダン(フロンテクーペ、440Kg)のレースでは、1レースでピストン
頭部にクラックが入ってしまいました、駆動する重量が違うようです、とりあえず、クラック部位に裏リブ
を追加しましたが、再レース後、クラックはリブの中央を走り寿命は延びましたが、NGですね
ピストンの表面は黒く、Si(ケイ素)の黒い結晶が見えているようです、Siの含有量は23%以上
で、Siは硬く摩耗しないので、市販車の仕様に合っているようです。半面脆いので高出力の
爆発圧力に耐えられなくピストンにクラックが入ってしまうようです。 GPマシンのピストンをじっくり
観察すると、表面が白くSiの含有量が少ないようです。Siを18%に変更し試作しました
白いピストンが出来てきて、フロンテクーペに組込みレースに投入し確認しました、OKでしたね

ピストンの頂部は燃焼熱により400度近くになります、スカート部は100度程度、燃焼時、ピストンの頭部
ピンボス部、スカート部はシリンダーに均等に当たらないと、首を振ったり、焼きついたりします、熱膨張
違いにより、常温でのピストン形状は釣鐘状になっていて、頭部の径が小さいです
その上、ピンボス部の断面は楕円になっていて、ピン軸の方が小径です、その楕円形状は実走で
ボス部の’アタリ’をメカが目視で確認し’アタリ’をとる作業を丹念に行います
短冊状に切られた耐水ペーパーを親指に挟んでピンボス部に目視される’アタリ’を研削するんです、
ピンボス部が楕円になるように、小僧の我々(私や阿部)はその作業を眼でみてメカ(我々にとって
は神様)の手作業を眼で見て覚える(どの位の指圧で、何回研削するか)んです。

私の次の仕事はそのピストンを図面にします、スズキは”凄いん”です、ピンボス部の楕円形状を
精密測定しデーターを持って試作の旋盤屋さんに、このピストンを作りたいですと相談するとピストンの
加工手順(方法)を教えてくれます、加工する為の適切な寸法の入れ方も、楕円カムの加工方法、
チャッキングの位置(仕方、方法)等等。また楕円測定データーを見て、この形状はRA125
(ワークス・MX125)と同じだと、カムは流用できるそうです、”凄い”ですね、神の手が削った形状が
現ワークスと同じなのと、旋盤屋さんが即判断したのも、熟知してるんですね
そして”凄い”のは、入社そこそこの小僧(自分)をしっかりと現場から鍛えてくれてるんです。

そして、RA125のカムを流用した、フロンテレーシングKITのピストンを出図し加工してもらいました
私は図面を書くときは、基準点(線)を決め、加工するのに必要な寸法を記入し、加工者に計算
させないように心がけています。

フロンテレーシングKITの 4速クロスミッション  

2020-09-06 17:08:20 | スズキーフロンテのレーシングKIT
SUZUKI フロンテ レーシングKIT  4
 フロンテレーシングKITの 4速クロスミッション 

当初のクロスミッションはTOP(4速)のみ3速に近ずけたもので、空冷時代に設定されたものだった
スズカでは、1速でスタートし2速はS字、ヘアピンは2速の半クラ、ストレートは4速だそうです、ワンレースのなか
で、1速は1度しか使わず、レース中は2速、3速、4速の3種類のギヤーのみで走っている事になります
S字(S字のコーナースピードは150Km以上)から立ち上がって、3速にシフトアップした時は10000rpm
から8500rpmと1500rpmも回転数が下がってしまいます、3速から4速へも1500rpmも下がって
しまいます、4速のTOPスピードは200Kmです、144馬力/リッター出てますが、パワーバンドの狭い
2ストですから、1500回転も落ちますとかなり加速は悪いでしょう、(これを3速クロスとする、TOPのみ)
1速をS字に合わせ、4速をストレートに合わせると、2速へのシフトアップ時は1000rpmほどのダウンになり、
9000rpmからの加速になり、この500回転の差は馬力の小さいENGには絶対有利になります。
2速から3速へも950回転ほど、3速から4速へも900回転ほどの落ちで加速にも十分繋がります
スタートは超半クラになりますが、3速クロスと4速クロスのスタートハンディーは1周でチャラになるでしょう
片山さんに相談したら、スタートで置いてかれるからダメでした、が。もともと私はフレーム設計ですが
フロンテのKIT開発図面は一人で書いてました、ミッションの発案も私(自分)で、すでに作るつもりでした
ギヤの計算はSTDのデーターに変更する項目(歯数)と等強度と入力すれば,後は計算機室が即
計算してくれます、アンダーカットがあれば,転位係数を調整します。自分の想定した4速クロスができ
自チームに投入し実走行テストてOK、即KITで販売できました。
FISCO(富士)とスズカのタイヤのセットは異なっていました、FISCOはタイヤの巾を狭くし走行抵抗を小さく
しTOPスピードを上げてタイムを出していました、スズカはタイヤの巾を広くしグリップをあげコーナースピードを
上げてタイムの向上をはかりました。スズカ用にクロスミッションを設定したため、FISCOではストレートで
ENG回転がフケきってしまいました、まして、FJ360からFL500になると、出力も52PSから60PS
に上がりより最高速が出るようになります、よって、1次ギヤをロングにしたO、P、Q、R、タイプを設定
し対応しました、FISCOは当時バンクは閉鎖されてまして、逆回りのショートコース(左回り)で、いわゆる
最終コーナーが1コーナーになり最高速のまま、下りのRの大きなコーナー(ブラインド)に飛び込むのです。
すごく怖かったでしょうね。     その怖いコーナーで
私、雨上がりの1コーナーの次のストレートで乾いてない黒パッチに乗りスピン、そのままガードレールへ、
当時のインフィールドは芝(草)でスリックタイヤではハンドルもブレーキも効きません、氷上と同じ
感じでした。支柱がマシンの左側の前後輪をもぎとり、宙を飛び、土手に張り付いた経験があり
ます。外傷は無かったのですが、言語障害をおこし、声が一週間 出ませんでしたね、
ヘアピンの突っ込みでは、消火器を目標にブレーキングしろと事前にレクチェアーを受けていま
したが、消火器を見落とし、毎周スピン、(よく、エンジンがが逆回転してました)
逆回りのショートの最終コーナーでは、1速と聞いてましたが、オーバーレブしてしまい、2速で
いけそう、次周、2速でトライ、キレイにテールスライドし、スピン、でもいける感じでしたね。

フロンテのレーシングKITパーツの概要

2020-09-06 17:00:13 | スズキーフロンテのレーシングKIT
SUZUKI フロンテ レーシングKIT  3
 フロンテのレーシングKITパーツの概要

シリンダー       360cc(52×56)レース用タイミングにポーティング済み
            420cc(56×56)レース用タイミングにポーティング済み
    詳細はフロンテ レーシングKIT-6, シリンダー(ノドチンコ付きを参照してください)
ピストン        360cc用、φ52、材質変更
            420cc用、φ56
    詳細はフロンテ レーシングKIT-5(ピストン Siを18%)を参照してください
ピストンリング     360cc用、φ52、t0.8、1本リング
            420cc用、φ56、t0.8、1本リング
シリンダーヘッド    360cc用、φ52圧縮比UP
            420cc用、φ56圧縮比UP
(ヘッドガスケット)     STD
ベースパッキン     板厚アップし(t3.5mm)シリンダーポートタイミング調整
キャブレター      φ26、TS125KITの残を追加工、φ24→φ26,
     パーツセンターから喜ばれました
インマニ        キャブ取り付け角度,口径UPの適正化、
リードバルブ      V型、社内ロストワックスで製作、ゴム焼付&研磨はアライ、リードはSTD(2枚)
リードバルブケース   一枚バルブ→V型リードバルブ、バルブを収納するケース、アルミ鋳造品
クランク        STDでもOKだが、クラッチ取り付けサクリップ溝廃止
クラッチ        正、逆転用  チャンファー加工追加、フェーシング材変更(N360)
ポイントケース     茶、黄、黒のポイントケース、これ GPマシン50cc3気筒用です。
OILポンプ       逆転用  OILポンプ
ウオーターポンプケース      逆転用
スターター          逆転用
クロスミッション    (平松SPL、スズカ仕様)1速をヘアピン、2速をS字、4速をストレート、
              スタートは半クラ
    詳細はフロンテレーシングKIT-4(4速クロスミッション)を参照してください
ファイナルギヤー    OPQR,最高速の変更、ロングに(富士スピードウェイ仕様)
チャンバー       EXPチャンバー、200セット後はフォーミュラーのプレス整形に

水冷フロンテのデビュー戦(FJ360)は木製のリードバルブケース、銅板をハンダ付けしたリードバルブだった

2020-09-06 16:49:06 | スズキーフロンテのレーシングKIT
SUZUKI フロンテ レーシングKIT  2
水冷フロンテのデビュー戦(FJ360)は木製のリードバルブケース、銅板をハンダ付けしたリードバルブだった

空冷ENGの冷却不足でレース成績がでなかったが、フロンテも水冷(1971年5月)になり安定した
高出力が得られそうです。BxSは52mmx56mmで3気筒一体鋳鉄シリンダーです。市販車のシリンダー
をレーサーのExhタイミングに削る(5mmほど)と、ウオータージャケットに穴が空きそうなので、掃気タイミングを
加工の基準にシリンダーを厚いベースパッキンでもちあげ、シリンダーのヘッド部を削り、合わせます。それに
しても鋳鉄シリンダーをリューターで削るのは容易ではありません。シリンダーヘッドは圧縮比を合わせる為
に削ります、ピストンはとりあえずTOPリングのみ使う、
このENGはケースリードバルブです、STDは一枚のリードバルブですが、STDx2枚のV型を採用しました。
銅板をハンド加工、ハンダ付け(利一さん手製)のイッピンです。V型リードバルブの構想が決まったら、
リードバルブケースを木型屋さんで作らせるから、説明できる図を書け、それ持って木型屋さん行って
来いと利一さんに指示されました。木型屋さんには話が通っていて、ほんと即、削ってくれました。
キャブレターはTS125KITの余り(売れ残り)、24φを26φにボアUPし採用、インマニはダウンドラフト(STD)
から26φに変更により、中央でカットし取り付け角度変更、クランクシャフトはSTDを使用、
デビユー戦は、FJ360クラスに出場ですから、ENGは逆回転させます、逆転の専用パーツはまずスターター
モーター、クラッチこれはスターターギヤーが飛び込む外ギヤーに逆回転用チャンファー(面取り)が必要です、また
フェーシング材を高ミユーに打ち換えてます。OILポンプ、ウオーターポンプケースも換える必要があります
クランク軸のクラッチと反対側端面に50cc3気筒の点火ポイントケースが装着されます、ポイントの開くタイミング
を各ピストンの上死点前○mmをダイヤルゲージとイヤーホーンでセットします、そうです、チャッキークロ(茶黄黒)
ミッションギヤーは空冷時代の4速のみ3速に近ずいたクロスでした。出力は360ccで52PSほど出ていて
最高速は190Km以上は出たでしょう
なにせ、ベンチで出力テストしたENGそのままで、木製リードバルブケースですから、組み付けるナットの
軸トルクを慎重に掛け、シール剤でケース、ナットを覆い(塗りたくり),洩れないように、緩まないようにしま
した。
レース予選ではタイムは出さず、とりあえず、フロントローに、本レースはぶっちぎっていましたが、PITーIN、
1次線が切れてて、2気筒しか動いていなかった、即修理して再スタート、ラップされていたが最高速
で25Kmの差(4ST勢のTOPの最高速は165Kmぐらい)で TOPをストレートで抜いて同一周回に。
ドライバーは、これだけ最高速の差があると、怖いとも言ってました。なんと奇妙なデビュー戦でした。

補足説明 1:空冷エンジンの冷却不足。正確には高出力空冷ENGを冷却するには出力の30%を
冷却フィン(羽根)を回す力に使ってしまいます、冷却風の強弱により燃焼室内温度も安定せず
又水冷より燃焼室内温度が高温になり安定した高出力が期待出来ないようです
ポルシェ911やHONDAのF1-RA302が空冷から撤退(水冷へ)した理由からうなずけます。

補足説明 2:エンジンの逆回転。フロンテはRR(リヤ)ENG車です、ポルシェ911と同じでRRタイヤ
軸より後方にENG(クランク)がありあす。通常FJ360(360ccのエンジンを搭載したフォーミュラー)
はENG(クランク)をRRタイヤ軸より前、ドライバーの後方に搭載するため、STD車のENG搭載では
前進1速、後進4速になってしまうため、ENGを逆回転させる必要があります、2ストロークエンジン
はそれが出来ます。私のブログの郵政に2サイクルの逆回転の”なんで”が記載されてます
参照して下さい。

補足説明 3:FJ360 フォミュラー・ワン(F-1)の360㏄版です、JAFが制定した軽4のエンジン
を搭載したミニフォーミュラーです。後にエンジン容量が500ccまで可になり、FL500になります
主に、HONDA・N360のENGを搭載したマシンが多かったです。N360のENGはミニフォーミュラーに
スポって搭載出来ます(フロンテみたいに逆転せずに),又、ENGチューナー(ポップ・ヨシムラさん)
が多かったですね。我々2-ストローク勢は水冷になって、やっとレースが出来るようになりました
FL500に、フロンテのレーシングKITはボアをΦ52から、Φ54に変更し420ccで出場しました。
Φ54以上ボアアップすると掃気ポートの壁が薄すぎて、NGです。出力は60PS近くなり、F-1に
匹敵するパワー/ウエイトレシオで俊敏な加速性能やコーナーリングにより、当時のメインレース
になっており、より上級クラス臨むドライバーの登竜門となっており、中嶋悟さんらを輩出しました。