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中橋怜子の 言の葉ノート

自然、人、モノ、そして音楽…
かけがえのない、たおやかな風景を
言の葉に込めて

浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)…『じごくのそうべえ』の世界

2017-03-05 | 絵本
人は死ぬと、まず閻魔(えんま)様の前で裁判を受けることになります。
天国行きか地獄行きか、閻魔様のお裁きを受けるというわけです。

閻魔様は手元のメモ帳を見ながら死者の罪状を述べます。これが閻魔帳です。
閻魔帳には罪ばかりでなく、善行も書いてあります。

ここで嘘をつくと舌を抜かれてしまうわけです。
それが嘘かどうか、なぜ閻魔様に分かってしまうかと言うと、閻魔様は、その人の生前の行動をそのまま映し出す水晶でできた大きな鏡を持っています。
これが浄玻璃(じょうはり)の鏡です。
この鏡は、その人の行動が周りの人をどれほど喜ばせたか、悲しい目に合わせたか、それまで映し出すのです。



閻魔様の後ろで光っているのが「浄玻璃の鏡」です。
『じごくのそうべえ』(田島征彦 作/上方落語 地獄八景より)の中で、大人も子供もみんなが一番ドキドキする場面です。


「あれが閻魔大王や」
「えらい顔しとんのう」
「後ろにあるのが浄玻璃の鏡や。あの鏡に今までやった悪いことが全部映ってしまうんやさかい嘘言えへんで。嘘言うたら舌抜かれるぞ」
「ほんまに生きとる間に、もうちっと善いことしといたらよかったな」


ここで自分の生き様を客観的に見せられ、自分の人生の意味や、己の罪を知るわけです。
そして反省したり後悔したり…。

でも、もう少し早く、そう、生きている間にこの「浄玻璃の鏡」を見ることができたらいいと思いませんか?

浄玻璃の鏡って、だれもが心の中に持っているものじゃないかな、と最近思うのです。
自分のしていること、しようとしていることを時々この鏡に映し出して客観的に眺めてみたら…歩むべき道が自然に見えてくるような気がします。

『じごくのそうべえ』子どもが小さいころ何度も何度も読み聴かせした絵本を、朗読会の読本に取り上げて、今、仲間たちと味わって読んでいます。


「こりゃ、ごちゃごちゃすなよ。川にはまったら生きるぞ」
「生き返るんや言うてまっせ。はまりたいなあ」
「これこれ何を言う。こんなところで生き返られたら、わしの責任になる。もっと中の方に入っとれ」




この三途の川を渡り切ると、いよいよ地獄の入り口です。
閻魔様の浄玻璃の鏡が待っています。
川にはまりたい人の気持ち、ようわかります(笑)

さすが上方落語!軽妙な関西弁が気持ちよくて楽しくて、笑いが止まりません。

ハラハラドキドキ、大人も子供も楽しめる上方落語がもとになった絵本『じごくのそうべえ』、人生やり直せるものならやり直したい…なんて大人もちょっと反省する本。

一家に一冊あって損しない絵本、です!


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