Kittyが入院した初日の夜に私たちは担当医と話し合いました。一番知りたかったのはICUを出たあとどう治療を進めていくかということでした。
「残念ながらこの病院からは去らなければなりません。摂食障害を専門に扱うクリニックに入院して頂く事になると思います」
彼女は冷たくそう言いました。
ほとんどの入院患者は数ヶ月そのクリニックに入院することを知ったのですが、問題がありました。まず自宅から一時間以上の距離であること。そして、一日の入院費用が1,000ドルすることでした。しかも、摂食障害の治療ではHMO(Health Maintenance Organization=保険維持機構。最も有名な民間保険)は使えないと知ったのです。
ICUを去った後、私たちは大人のための摂食障害プログラムに参加しました。まるで「One Flew Over the Cuckoo's Nest(カッコーの巣の上で)」の映画の中にいるような気分でした。8年生のKittyには全く合わない場所でしたね。
それから私たちは拒食症について猛勉強しました。薬の一覧表やガイドラインを作成して治療のためにがんばったの。アマゾンで調べたら嫌になる位拒食症関連の書籍がありました。でも、そのゴミだらけの中から宝物を探し出すのは困難でしたよ。それに専門的な本はごく僅かでしたし、どの本も私の娘がどうすればいいのか教えてくれる本はありませんでした。皆書いてあることは同じで「拒食症の15%は死ぬ。約30%は治る。すぐに治療をしなければならない危険な病気だ。拒食症の50%は未婚。うつの併発率が極めて高い。10代で治療をしなかったら完治するまで5年~7年かかる」ってね。Kittyに当てはめて想像しましたよ。今14歳だから、治るまでに7年として21歳…絶望のあまり泣いちゃいましたよ。
さらに調べ続けましたよ。諦めたら終わりですから。ようやくたどり着いたのが1997年の文献でした。イギリスので、アメリカでは全然知られていない療法について書かれていたんです。「Maudsley approach」という家族療法が基盤の治療法について詳しく書かれていたんです。随分勉強したからしっかりまだ覚えていますよ(笑)1980年代にロンドンのMaudsley病院(ヨーロッパ最大の精神医学研究機関)に勤める医者Christopher DareとIvan Eisler先生が考案した療法。基本は単純ですよね。看護士がベットの脇に座って拒食症患者に食べるように励ましたりサポートしたり。食べるための「文化」を作りあげるのが重要なんですよ。病院ではそれが看護士の仕事だけど、家では家族がその役割を担うと。怒ったり無理やり食べさせるんじゃなく「文化」を作ってあげるの。
それらの文献は10代後半~20代前半の拒食症患者が被験者だったけど、90%が改善されてるの。多少の改善ではいの。数年かかってるけど、皆完璧に克服してるのよ。私は「これよ!」と思いました。
多くのセラピストは家族を部外者扱いします。治療に関しては素人ですけど、家族を交えての治療は重要ですよね。でも診療中は参加出来ないですし「私たちに任せなさい」という態度ですから…でもMaudsley approachは全然違いました。家族が一番重要なんだと。子供が出来る「選択」は食べることだけ。チューブは無しよ。他の人はどう思うか分からないけど、私たちには一番良いアプローチだと思いました。