田口ランディさんの小説『アンテナ』は、僕の妹真利江が6歳のとき、ある朝忽然となんの痕跡もなく消えてしまう物語です。その後家族は自殺・病死や精神の病となり崩壊状態となります。増築を重ねた家のドアが象徴的に描かれていて、犯人と疑われたシゲあんちゃんはドアの後ろで首を吊っていたり、用をなしていない奇妙なドアがあったりするのです。
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写真:本部半島の先にある備瀬崎海岸。朝早くから釣り人。
沖縄本島のA民宿で思い出したのはこの小説でした。2階に上がると、両側に部屋が並ぶ真ん中に細い廊下があります。廊下のつきあたりあるドアは部屋ではないようです。そして案内された一番端の部屋のドアを開くと、正面にあったのは? 不釣合いに大きくて、ペンキで青色に塗った金属製のドアだったのです!この鍵がかかっているドアはいったいなんのためにあるのでしょう。
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一昔前には和室を洋室に改造することが流行りましたが、そんな感じの合板の壁、宮付きの旧い型のダブルベッド、普通の布団、赤紫色のシルエットと音だけの小さなTV・・・。さらに困惑したのはトイレです。これも改造した感じで広くて、白いタイルが張りつめてあります。丁度真ん中に洋式便器があり、あきらかに後付のシャワーヘッドと小さな鏡と洗面台が前の方にくっついています。時節柄寒いこともあるけど、どう考えても使いにくい感じです。ここで裸になるのはどうしても抵抗があるのです。確かネットサイトでは「バス・トイレ付き」とあったのに、これでは「シャワー・トイレ付き」の表示にする必要があるでしょう?<o:p></o:p>
こうした奇妙な感じのお部屋に比べると、玄関の?ガラス戸を開けて入ったら子どもたちが遊んでいたり、靴やダイニングがやや乱雑だったりしたのは問題ないことだったのです。よほど帰ろうか(どこに?)と思いましたが、次の朝までがんばる(なにを?)ことにしました。しかしここでも無事に朝は来ました。
写真:夕食も美味しかったけど朝食は特に豪華でした。右上の「はやとうり」を薄味で煮た料理は、とうがんに似ています。あばぁが説明してくれました。
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いつになく朝早く(7:30頃)、すぐに出発態勢でダイニングに下りるとご主人が待っていました。普通の世間話をしたのですが、もしかするとあいよっこを調査員と疑ったかもしれません。最近はお客さんを装った調査が流行りと聞きますが、こんな調査もあるのでしょうか?まあこんな時期に、こんなところ(どんなところ?)に、おばさんがひとりで泊まるのはかなり珍しいだろうし、疑われるのは無理もありません。宮古島で再会したとき、ご主人は「やはりそうか」と思ったでしょうか?それとも?
朝食をとりながらあたりを見ると、ダイニングや玄関周りがなんだかすっきりときれいになっています。昨夜、遅くまでガタゴトしていてそれも気になっていたけど、お掃除してたのね?
写真:備瀬のふくぎ並木。想像以上にたくさんあり良い雰囲気でした。おかげで朝早く訪れたので、人っ子一人いないことも良かった。
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なんだか悪いことばかり書いてしまいましたが、おばぁが作る手作りの沖縄料理はとても美味しかったですよ。そして2食付で5000円というのも安いともいえるのですが・・・。付け加えますが、普通の、人の良い感じのご家族でした。
結局書いてしまったってことは、偶然会ったことが逆説的にきっかけになったってことですね。でもここまで前触れがあると、その後を聞きたくなるのは当然ですよね?
その日お風呂好きのあいよっこは、那覇で「りっかりっか湯」という銭湯に入ることになってしまったのです。<o:p></o:p>
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