もう、OPERA本誌で読んでた時からスゴイ、これはスゴイと思ってたので単行本が出た日には
書かないワケには行きませんよ。
まず、この大きさにビックリ。OPERA本誌と同サイズ(笑)。なぜこの大きさ!・・・なのかは、
恐らく縮小の関係だと思うんだけど、あまりに細かい文字をたくさん書いてるからこれ以上縮小を
かけられないとか(笑)そういう・・・。
モノローグがとにかく多いんですよ。多いとかいうよりも、一人称の小説を漫画と組み合わせて
進行してるような、かなり新しい前衛的な空気をバリバリ持ってます。
で、これはワタシ的には特筆しないワケにはいかない。NUMBER GIRLの匂いがしまくってます。
実際、「鉄風 鋭くなって」の歌詞がそのまま使われてるシーンもありました。(JASRACのマークが
入ってます)
全編に渡ってNUMBER GIRLちっくな文章が結構あって、相当好きなんだろうなというのはよくわかる
感じです。頭の中でNUMBER GIRLの曲が流れまくりでしたよ私。
この作品の内容ですが、高校生の男子3人の恋模様、というのが最もわかりやすい言い方になると
思います。が、とにかくフツーのアプローチで描かれていないので、読み手を選ぶ気がします。
苦手な人は苦手だろうな、というか。ハッキリ好き嫌いが分かれるカンジ。
(比喩や暗喩が多く、読み手が咀嚼して反芻してその意味を自分なりに解釈しなければならないという、
かなり難解な書き方)
男同士だけじゃなく男×女もあるし、かなり変態テイストで性暴力的な描写も多いので、苦手な人には
ススメません。
開高先輩と、メガネの痛々しい受キャラ(笑)深沢くん、二人は互いに光と闇を感じ合う、強烈な惹かれ
合い方をして関係を結ぶ。恋愛感情というものが持つ、互いを侵食していくような感覚、依存、
自分の中の何かが失われてしまうような恐怖感(8割9割、相手のことしか考えられなくなるような
ことなのか)に耐えられなかったのか、先輩は深沢くんから逃げてしまう。唐突に拒絶してしまう。
何から何まで先輩の言いなりで、世界のすべては先輩であるとまで思い込んでしまう、これまた
歪んだ深沢くんはショックのあまり、なりふりかまわず先輩に対して感情をぶつける。先輩しか
いらないとまで言い切る深沢くんにとって、その他すべてはどうでもいいもの。自暴自棄で奇行に
走る彼を救ったのは埴谷くんだった。しかし彼もまた歪んでいて、自分が手に入れられない相手に
しか興味を持てない。はたしてこの3人はどうなるのか・・・。
深沢くんがもう少し頑張って、先輩に負けを認めさせてほしかった。先輩がまた柔和なS(笑)って
いうの?これがなんとも言えず私好みのキャラだもんで。変態だしな。
二人が最初に互いの想いを告白しあうシーンが好きです。
「違いました?」「違わないです」
先輩がいきなり深沢くんにキスしたあとに交わすこのやりとりがたまらない。何この簡潔なセリフ。
全体としては青春残酷物語っていうカンジではあるんですが、とにかく作風に作者のほとばしる
才能、ただならぬ才能を感じます。好き嫌いは分かれるでしょうが、とりあえず一読して損はないと
言っておきます。
※だいぶわかりやすく紹介したつもりですが、いつものごとくボキャブラリーの無さ(笑)ゆえに伝わり
づらいと思いますがお許し下さい。
追記です。↓内容に詳しくふれるので作品を未読の方はなるべく読み終わってから読んで下さい。
開高先輩と深沢くんは運命の相手だったんだろうと思う。だから、先輩が逃げてしまわなければ互いに
死が二人を分かつまで互いしか見えないくらい深く関係できた気がする。相手に真剣に向き合うことは
心の半分を明け渡すのと同じこと。ゆえに失う時は半身を失うも同じ。それは怖いし、最初から無ければ
その方がきっと楽だろう。ずっと浅い、薄っぺらくぬるい関係を何度も人生の中で繰り返す方が多分、
楽だと考える男は多いんだろうと思う。
埴谷くんも最初は逃げようとしたけど、結局は向き合う決心をする。自分よりも相手を取る、ということが
おそらく真剣に相手と向き合うことなんだろうと私は解釈しました。開高先輩と埴谷くんの選択の対比が
ハッキリ描かれていたのが、印象的です。
墓場でのイニシアチブ交替(深沢くんのお願いをきいてしまう先輩がそう見える)から、このままでは
ヤバイと、彼の存在が大きくなってしまう不安にかられた先輩が、多分深沢くんの方から離れて行く
ように仕向けたくて色々ムチャなことを(笑)エスカレートさせていくけど、結局それををすべて受け入れて
従ってしまう深沢くんにストレートに別れを突きつける。
だけど「もう飽きたんです」でもなく、「もう嫌いになったんです」でもなく、何一つ理由も言わずに斬り捨てる
のは、とてもズルい、ヒドい人だなと。なぜ引導を渡してやらないのかと。
だから深沢くんは理由を求めてひたすら追いかけ続けてしまう。(思慮深ければそこで気づくけどね)
先輩はどうでもいい嘘(六花さんと結婚するとか)は平気でつけるけど、心を偽る嘘はつけないんでしょう
ね、きっと。そしてとても臆病なんでしょう。
心の奥まで入れそうだったからこそ先輩はシャットアウトしてしまったんだって気づけば良かったですよね。
気づいてそれを突きつければ逃げられなかったかもしれない。観念したかもしれない(笑)。
それでも、「捨てなさい」なんて言いながら第二ボタン(笑)を渡すほどには、その日のうちに街から
失踪してしまうほどには、先輩は深沢くんに未練があったのではないかと思うのだ。手放したことを少し
後悔したのではないかと思うのだ。(だって深沢くんが絶対捨てられないってわかってると思う 笑)
それともう一つ。
「埴谷くんと」っていう言葉を2回言っている点。わざわざ2回も名前を言うあたりが未練を思わせているし、
同時に完全な決別を自分自身に促すようにもとれる。
ちょっと小難しい部分の解釈(笑)↓私なりの解釈なのでそれをふまえて下さい
最初に開高先輩は他者からナニガシと呼ばれて成り立つ自分自身という存在をいくつか持っていて、その
いくつかが失われることを怖がっていた。制服を着て「学生」と呼ばれる自分、「部長」と呼ばれて成り立つ
自分、その二つはあと1年で失ってしまう。残るのは「店長」と呼ばれて成り立つ自分という存在と、家族との
関係性だけ。そこに新たに加わったのが深沢くんとの関係性だった。
でも深沢くんとの関係性はあまり深くならないうちに自ら捨ててしまうことによって、失うことから逃れたかった
のだろうと思う。けれど深沢くんの「あなたで完成した俺はあなたなしでは何者なのか」という問いに、自分
自身のそれを重ねたのではないだろうか。開高十三とフルネームで呼ばれ、自分は一体なんであるのかと
問われた瞬間に、もしかしたら全てを悟ったのではないか。
失いたくなくて捨てたはずのそれが、結果的には失っていた事実を知ったのではないか。
だからこそ、「学生」である自分と「部長」である自分の存在を失ったその日に、「店長」である自分と、家族
との関係性までも一度に捨て去ってしまったのではないか、と思うのだ。
恐らく最も深い関係性だと思い知らされたが故の選択。(つまり、深沢構三との関係性によって与えられた
自分という存在が、開高十三そのものだった)
結局、触れられたくなかった魂に、触れるどころか深く突き刺さってしまったのだと思う。開高十三という人間
として存在し続けることが困難であるほどには。
だからきっと、開高先輩は名を捨てて別の土地でまったくの別人になり生きているのだと思う。
普通ではない環境で育ったがゆえに、きっと普通の愛し方・愛され方を知らずに来てしまったのだろうな、と。
だから「母に愛されたかった そうして彼を愛したかった」という言葉の前に、
”ごく普通に”という言葉が隠れている気がする。
「ごく普通に母に愛されたかった そうしてごく普通に彼を愛したかった」
↓開高先輩に真剣を突きつける深沢くん。真剣を白刃どられちゃってる(笑)のが、深沢くんの真剣な想いに
対してあっさりとあしらってる先輩、という図式がよくあらわれてますよね。こっちの方を表紙にしたら
良かったのになぁ。インパクトすごいし。

我、狂気を以って 凶器と化す。 ってカンジでしょうか。