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chuo1976

心のたねを言の葉として

「けしゴム」     まど・みちお

2012-05-18 03:39:09 | 文学
「けしゴム」     まど・みちお





自分が 書きちがえたのでもないがいそいそと けす

自分が書いた ウソでもないがいそいそと けす

自分がよごした よごれでもないがいそいそと けす

そして けすたびにけっきょく
 
自分がちびていってきえて なくなってしまう

いそいそと いそいそと 正しいと 思ったことだけを

ほんとうと 思ったことだけを美しいと 思ったことだけを

自分のかわりのように のこしておいて



誰だって失敗したり、うっかりしたりする。

そんな人の失敗を、そっと消せる人になりたいな。


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「もうすんだとすれば」  まどみちお

2012-05-17 03:45:18 | 文学



「もうすんだとすれば」  まどみちお




もうすんだとすれば これからなのだ

あんらくなことが 苦しいのだ

暗いからこそ 明るいのだ

なんにも無いから すべてが有るのだ

見ているのは 見ていないのだ

分かっているのは 分かっていないのだ

押されているので 押しているのだ

落ちていきながら、昇っていくのだ

遅れすぎて 進んでいるのだ




一緒にいるときは ひとりぼっちなのだ

やかましいから 静かなのだ

黙っている方が しゃべっているのだ

笑っているだけ 泣いているのだ

ほめていたら けなしているのだ

うそつきは まあ正直者だ

おくびょう者ほど 勇ましいのだ

利口にかぎって バカなのだ

生まれてくることは 死んでいくことだ

なんでもないことが 大変なことなのだ
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「世はさまざま」      山之口獏

2012-05-16 05:46:45 | 文学
「世はさまざま」      山之口獏



 人は米を食っている
 僕の名と同じ名の
 獏という獣は
 夢を食うという
 羊は紙も食い
 南京虫は血を吸いにくる
 人にはまた
 人を食いに来る人や人を食いに出掛ける人もある
 そうかと思うと琉球には
 うむまあという木がある
 木としての器量はよくないが詩人みたいな木なんだ
 いつも墓場に立っていて
 そこに来ては泣きくずれる
 かなしい声や涙で育つという
 うむまあ木という風変わりな木もある
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「わだすの大学」     吉田啄子

2012-05-15 05:44:05 | 文学
「わだすの大学」     吉田啄子

高校も落ぢでまったし
看護学校も落ぢでまったし
青森の山田学校さも行げながった
中学校も卒業したんだが
中退したんだが
でぎのわりいわだす
泣ぎながら
千円札四枚持って汽車に乗ったの
着いだのは上野
たったひとりで入った
わだすの大学
試験もねば授業料も要らぬ

みんなしていいゴッタなあ
親がらゼンコもらって
学校さ行って マージャンやって
パチンコやって よだれたらして昼寝しているうぢ
卒業できるんだもんなあ
いいゴッタなあ
卒業してしまうんだもんなあ

わだす
わだすの大学で本読んだの
古本屋に行ったり 図書館に行ったり
伸子 も読んだし
或る女 も読んだし
チボー家の人々 も読んだ
リルケにハイネにヴェルレーヌ
プーシキンにボードレール
いろんだ本 ずっぱど読んだ
頭わりィして文章の書ぎがだも知らね
漢字も知らね なんもわがね
ほんだして勉強しているの
20年たっても卒業でぎね
できるわげねぇ 頭わりィんだもん
わだすの大学



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「沖縄風景」    山之口獏

2012-05-13 05:47:45 | 文学
 「沖縄風景」    山之口獏
 

 そこの庭ではいつでも
 軍鶏(タウチー)たちが血に飢えているのだ
 タウチーたちはそれぞれの
 ミーパーラーのなかにいるのだが
 どれもが肩を怒らしていて
 いかにも自信ありげに
 闘鶏のその日を待ちあぐんでいるのだ
 赤嶺家の老人(タンメー)は朝のたんびに
 煙草盆をぶらさげては
 縁先に出て坐り
 庭のタウチー達のきげんをうかがった
 この朝もタンメーは縁先にいたのだが
 煙管がつまってしまったのか
 ぽんとたたいたその音で
 タウチー達が一斉に
 ひょいと首をのばしたのだ
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「シェーナウの想い~自然エネルギー社会を 子どもたちに~」

2012-05-11 05:01:05 | 映画
“Das Schönauer Gefühl”
「シェーナウの想い~自然エネルギー社会を 子どもたちに~」





この映画は、ドイツ南西部、黒い森の中にある小さなまちシェーナウ市の住民グループが、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「自然エネルギー社会を子どもたちに」という想いから、ドイツ史上初の「市民の市民による市民のための」電力供給会社を誕生させるまでの軌跡を綴るドキュメンタリーです。
<映画詳細>
製作:Fuss e.V. (Der Förderverein für umweltfreundliche Stromverteilung und Energieerzeugung Schönau im Schwarzwald e.V.; シェーナウ・環境にやさしい電力供給のための支援団体)
製作年:2008年 上映時間;60分
監督:フランク=ディーチェ / ヴェルナー=キーファー 
日本語翻訳;及川斉志
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『アラスカ 風のような物語』 星野道夫

2012-05-10 06:34:11 | 文学
『アラスカ 風のような物語』 星野道夫


 どうしてこんな荒涼とした場所に人間の生活があるのかと、写真の持つ背景に心を奪われていった。この村を訪ねてみたいと思った。写真のキャプションにShishmarefと書いてある。地図の中にその文字を見つけた。
 しかし訪ねようにも方法がわからない。手紙を書こうにも住所がわからない。辞書でmayorという単語を見つけた。“代表者”・・・きっと村長のような意味だ。これでいこう。

Mayor
Shishmaref
Alaska U.S.A

 それから半年がたち、何の返事もないまま、僕は手紙を出したことさえ忘れかけていた。
ある日、家のポストに、外国郵便の封筒が落とされた。
                        
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「見えないもの」   金子みすゞ

2012-05-09 06:19:45 | 文学
「見えないもの」   金子みすゞ
 

 ねんねした間になにがある。
 
 うすももいろの花びらが、
 お床の上にふりつもり、
 お目めさませば、ふと消える。
 
 だれもみたものないけれど、
 だれがうそだといいましょう。
 まばたきするまに何がある。
 
 白い天馬がはねのべて、
 白羽の矢よりもまだ早く、
 青いお空をすぎてゆく。
 
 だれもみたものないけれど、
 だれがうそだといえましょう。
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「岬」   山之口獏

2012-05-08 05:31:03 | 文学
「岬」   山之口獏

 
 操ではないのよ と女が言ったっけ
 ひらがなのみさをでもないのよ カタカナで ミサヲ と書くのよ と女が言ったっけ
 書いてあった宛名の 操様を ミサヲ様に書きなおす僕だったっけ
 ふたりっきりで火鉢にあたっていたっけが
 手が手に触れて そこにとんがっていたあの 岬のようになった恋愛をながめる僕だったっけ
 またはなんだったっけ
 もはや二十七にもなったこの髯面で
 女の手を握りはしたんだがそれでおしまいのはなしだったっけ
 

 

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「地面の底の病気の顔」    萩原朔太郎

2012-05-07 05:28:04 | 文学
「地面の底の病気の顔」    萩原朔太郎


 
 地面の底に顔があらはれ、
 さみしい病人の顔があらはれ。

 地面の底のくらやみに、
 うらうら草の茎が萌えそめ、
 鼠の巣が萌えそめ、
 巣にこんがらがってゐる、
 かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、
 冬至のころの、
 さびしい病気の地面から、
 ほそい青竹の根が生えそめ、
 生えそめ、
 それがじつにあはれふかくみえ、
 けぶるごとくに視(み)え、
 じつに、じつに、あはれふかげに視え。

 地面の底のくらやみに、
 さみしい病人の顔があらはれ。
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札幌国際芸術祭

 札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf