遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

禁裏御用品? 伊万里菊菱紋小皿

2021年03月11日 | 古陶磁ー全般

先回のブログで、平戸焼の禁裏御用下賜品を紹介しました。

実は、先回の品を入手した時、もう一枚、皿を購入しました。

それが、この今回の品です。

 

この皿も縁に多くのほつれがあり、金蒔絵で補修してあります。

 

径 16.0㎝、高 2.3㎝、底径 8.9㎝。江戸後期。

 

 

裏模様の唐草や圏線は、先回の皿とよく似ています。

皿の底面が少し分厚く、端に行くにしたがって薄くなっています。これは古伊万里の皿の一般的な特徴です。先回の平戸皿では、全体がほぼ均一な厚さ(薄さ)でした。

呉須の色や描写のタッチからも、この皿は伊万里で焼かれた品と考えてよいでしょう。

 

表には、2種の草花と菱形紋がセットになり、ぐるッと3セットが配置されています。

 

これは菊でしょう。

 

この草花も、やはり菊のようです。

 

2種類の菊模様が描かれているのですね。

 

先回の御用品のブログでは、12弁の菊花ともう一種類の植物の花か葉が描かれていました。

今回の菊花の一方は丸っこい花、もう一方は尖った花弁の花です。

両方の皿を比較してみると、12弁菊花とともに、先回の皿で描かれていたのは、葉ではなく尖った花弁の菊花であることがわかります。つまり2種類の菊花が描かれていたのですね。

今回の皿も、2種類の菊を描いたものなのです。しかも、それらを3セットぐるっと配置しているのも共通しています。

違うのは、今回の皿では、さらに菱形の幾何学紋が3個配置されていることです。

これはちょうど、Dr.Kさんの皿の亀甲紋に相当します。

ですから、今回の皿は、先回の平戸皿とDr.Kさんの皿、両方の図柄を合わせた様式の物ということになります。

 

では、この皿は何なのでしょうか。

考えられるのは、禁裏御用品、それも比較的初期の品です。

御用品と言っても、最初の頃はかなり自由に絵付けがなされていたとすれば可能性があります。確かに、御用品では十六弁の菊花紋がお決まりですが、これが黄門様の印籠の葵の御紋のようになるのは、幕末、薩長新政府が天皇を利用して中央集権国家を打ち立てようとした時からです。日の丸も同じです。わかりやすいシンボルを設定した訳です。

ですから、18世紀、御用品としての納入が始まった頃は、禁裏御用御品とはいっても自由度が高く、十六弁菊花を散らした典型的な品に限ることなく、いろいろな菊模様や亀甲紋、菱紋などの吉祥紋が使われたと考えられます。

もう一つは、禁裏御用品の納入元が、そのデザインを応用して、一般向けの皿を製造したという可能性です。確かに今回の皿は、膨大な種類の伊万里焼の中にあって、少し晴れの席で使うのに格好の上手品だと思います。

今回の皿が、二つの可能性のうち、どちらの物であるかはわかりません。今後多くの御用品を比較検討する必要がありそうです。

 

 

 

 

 

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禁裏御用 平戸十六弁菊紋小皿

2021年03月09日 | 古陶磁ー全般

昨日の古伊万里コレクター、Dr.Kさんのブログで、「染付 家紋文 小皿」が紹介されていました。

よく似た皿がウチにもあったはず・・・・故玩館の格納庫を捜しまわり、一番奥の隅にダンボールに入っているのを見つけました。Dr.Kさんの記事がなければ、故玩館の闇に埋もれ果てる運命の品でした(大げさ(^^;)

この皿は、30年ほど前、行きつけの古民芸店で入手したものです。

「デザインは素晴らしいが、伊万里ではないかも・・・」と、店主もどこの陶磁器かわからないようでした。

家へ連れて帰って、そのままになっていましたが、今回、ひょんな事で日の目をみることになった次第です(^^;

 

薄造りのボディに、瀟洒な絵付けがなされています。

 

径 14.0㎝、高 2.7㎝、高台径 8.0㎝。江戸後期。

 

よく生成された胎土を用いています。

 

十六弁菊花紋が3つ描かれています。謹厳実直という感じで、大変精緻な染付です。

もう一種類の模様は、葉か花かわかりません。菊紋の間に散りばめられています。Dr.Kさんのブログの品とは、菊紋の形と数、配置がほぼ同じです。もう一種類の模様については、Dr.Kさんの皿が家紋様の模様であるのに対し、私の皿の方は、植物の葉か花です。

 

裏面の唐草模様も、この時代の品にしては、きちんと描かれています。

 

この手の皿は、禁裏御用下賜品と言われている物です。

禁裏御用とは、今でいえば、宮内庁御用達です。宮中で使われていた器が下賜され、それが市中へ出回った訳です。

陶磁器の禁裏御用は意外に古くからあり、江戸時代18世紀初頭には、平戸(藩窯)、有田(辻家窯)の磁器が納められていました。

その特徴は、染付で描かれた16花弁の菊紋です。また、多くの場合、中央に圏線が一本きっちりと引かれています。

今回の品も、平戸焼か伊万里焼か、どちらかです。

よく生成された肌理の細かい胎土の薄い器体の上に、細い筆で瀟洒な絵付けがなされています。

これは平戸焼ですね。淡い呉須の色も平戸の特徴です

 

せっかく奥から引っ張り出した皿です。

故玩館への来訪者に、ティーブレイク時にお菓子をのせて、さりげなく出してみましょう。

「おお」と襟をただせば、「おぬしできるな」となるでしょう(^.^)

 

 

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ガラス31 球体ガラス絵

2021年03月07日 | ガラス

先回のブログで、糸ガラスを使ったガラスの枕屏風を紹介しました。

極細のガラスを組み合わせて平面とし、そこへ絵を描いた一種のガラス絵です。しかし、これはあまりにも特殊な物です。

そこで、もう少し分かりやすいガラス絵がないか探しました。

それが今回の品です。

 

木の台の上に、ガラスの球が置かれ、内部に絵が描かれています。

 

台の上で、くるくると回ります。

中華料理によくある皿と同じです。

この品も中国製です。土産物に毛が生えたほどの品でしょう。

上品さに欠けるので、当然、故玩館では日陰者あつかいです(^^;

 

高 16.0㎝。

ガラス球:径 10.2㎝、重さ 1.6㎏。

 

 

ガラスの塊ですからずしッとくる重さです。

これに穴を開け、内部はきれいな球形にくりぬいてあります。

 

そこへ、鉤型の筆で絵を描いていくわけです。

 

中国には、鼻煙壷などにもガラス絵が多くあり、こういう技法はお手のものなのでしょう。

 

ガラス絵ですから、鑑賞者の向こう側から描くことになります。

したがって、描き順は普通に描く場合の逆になります。

こちらから見て、手前にある物から描いていきます。

この絵の場合、黒色の鯉が最初に描かれ、次に緋鯉、そして茶色の鯉となります。頭がごちゃごちゃしてきますね(^^;

一般的なガラス絵は、板ガラスに描かれていますが、その場合も一緒です。

ガラス絵は乱反射がガラスで抑えられるので、キャンバス上よりも色が冴えます。その結果、妙に生々しい感じがします。この品では、それがよくわかります。上品さにかけるのもそのためです。

染色工芸家、芹沢啓介は、ガラス絵も多く手がけています。凡百のガラス絵と異なり、落ち着いた色彩の作品です。さすがですね。

 

雅味には欠けていますが、こうやって重いガラス玉を手にすると、何だか世界を手に入れた気分になります。

中華思想もこれなら平和(^.^)

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ガラス30 糸ガラス枕屏風

2021年03月05日 | ガラス

ガラスの紹介も、いつのまにか30回目になりました。

わざわざブログにのせるのも憚られるようなガラス器がほとんどでしたので、30回記念にあたり少しマシな品を出します(^.^)

 

糸ガラスの枕屏風です。

元々の品を切ってバラバラにして(その方が儲かる)売られていた物です。が、悲しいかな、財布の関係で、そのうちの2枚しか買えませんでした。自分で蝶番を取り付けて屏風にし、ボロボロの枠をカシューで黒に塗って何とか様になりました。

 

木枠の上側、下側には溝がきってあるので、これに上、下一段ずつ加わっていたと思われます。したがって、元々は三段の屏風だったのでしょう。

 

高 19.5㎝、幅(全開) 89.3㎝。明治時代。

ガラス部の大さ:縦 10.8㎝、横 40.8㎝。

 

内海の風景が描かれています。

 

 

 

拡大すると

 

 

縦方向、横方向に、糸のように細いガラスが張ってあることが分かります。

 

糸ガラスの直径は、約 0.7㎜。

内側に縦方向、外側に横方向に、細いガラス棒がぎっしりと木枠に差し込まれています。縦480本、横140本程です。

当然、そのうちの何本かは折れて歯抜けになっています(^^;

 

絵は、外側に描いてあります。

内側から見ると、微小なガラス格子を通し、おだやかな風景が浮かび上がります。

明治になって、ガラスが一般に使えるようになり、ガラス細加工技術も向上すると、いろいろな物に応用されるようになりました。今回の屏風では、極細のガラス棒を組み合わせてキャンバスとしています。そこへ絵を描くは、日本ならではのセンスではないでしょうか。

透明な板ガラスに絵を描く、いわゆるガラス絵は、ヨーロッパや中国では昔から、日本では幕末からあります。しかし、ガラスを通して観る絵は妙になまなましく、ガラス素材を生かした意味がほとんど感じられません。

一方、今回の品では、極細格子を通して、描かれた絵がぼんやりと浮かび上がり、幽玄の世界が広がります。

 

 

故玩館の窓際、テーブルの置いてみました。ふと気が付くと、窓の下には瀬戸内の海が広がっているような錯覚を覚えます(岐阜は海なし県です^.^)

 

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ガラス29 ガラス雛徳利

2021年03月03日 | ガラス

今日は桃の節句。

ちなんだガラスがないかと捜したところ、この品が見つかりました。

雛飾りのガラス徳利です(だと思います(^^;)。

 

高 18.9cm、径 10.0cm。大正~戦前。

 

かわいらしい絵付けがしてあります。

ペイントかエナメルかはわかりません。

 

花に鴛。

 

 

 

摺り合わせの栓の中に、大きな気泡が一個。

 

本体の底にも、小さな気泡の中に大きなのが一個

 

底は、ポンテ跡を研磨してあります。吹きガラスですね。

おそらく、1対だったのでしょう。

離れ徳利ではありますが、雛飾りにしては大振りです。

白酒をいれて、桃の花を眺めながら徳利を傾けるのも一興。

下戸の私には無縁ですが(^^;

 

 

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