今回も金工細工皿です。
雄大な山水図です。
径 20.8㎝
これまでの3枚のうちで一番大きく、手にズシリときます。
この皿の特徴は、大自然のなかでの人物です。
上半部、右側。
岩山の上に小さな庵。その中に2人の人物がいます。
下半部。
右側、滝の下の橋を渡る2人と、左側の庵の中に、3人の人物がいます。
右上の庵のなかの2人。
左下の庵の中の3人。
まず、ふたつの庵をくらべてみます。
上の庵の屋根。
下の庵の屋根。
下の庵の屋根は、鋳型の凸で表されていますが、
上の庵の屋根には、極細の線が彫られています。
ほとんどが鋳型の模様の中に、さりげなく、「こんな彫りもできるんだぜ」というような感じで、入れ込んであります。
さて、2つの庵の中の人物を、もう一度見てみましょう。
どうも、表情があるような気がするのですが?
まさか・・・!
念のため、拡大して見ると・・・・
上の庵の2人。
目、口らしきものが見えます。
左側の人物。
右側の人物。
下の庵の右端の人物。
これらの人物の顔は、0.8-1.2mmほどの大きさしかありません。米粒よりずっと小さい。
こんな所へ、極小の道具で針先ほどの穴を開ける!
熟練の技とはいえ、すごい腕です。
裏側はいたって簡素。
「信情」の銘があります。
おそらく、幕末の刀装工でしょう。
この皿に込められたのは、心意気というより、職人の意地ですね(^.^)
そんな大きなものに、全面的に繊細な鋳型と彫金を施してあるんですね!
これを作るには、大変な手間がかかっていますよね。
確かに、生きるためにやむを得ずやっているだけではなく、職人の意地さえ感じられますね!
鍔、鞘などの限られた大きさの中で、技巧を凝らしてきた職人たちには、どんどん大きくと言われても、やはり違和感があったんだと思います。それと、自負心(^.^)