遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

函館焼?色絵山水奈良茶碗(五客)

2022年09月12日 | 古陶磁ー国焼

今回は、幕末期の奈良茶碗です。

径 10.3㎝、高台径 4.6㎝、高 8.8㎝。幕末期。

幕末に作られた色絵の茶碗です。

奈良茶碗は、飯茶碗の一種です。江戸時代、お茶をいれて炊いた奈良茶飯(粥)が流行し、それをよそう茶碗に付けられた名称です。普通の飯茶碗との違いは、はっきりしません。少し上手で、少し大振りの飯茶碗をそう呼ぶ事が多いように思われます。

今回の品が入っていた箱に「なら茶碗」と書いてあったので、タイトルにしました(^^;

本体、蓋の両方、内と外に、同じ絵が描かれています。

蓋部内側:

本体内側:

外側には、山水が雄大に描かれています。

なかなか味わい深い絵付けです。

金で書かれた詩文「柳枝経雨重松色带烟深」は、唐代の詩人、張謂の漢詩、郡南亭子宴の一節です。
亭子春城外 朱门向绿林。
柳枝経雨重 松色带烟深
漉酒迎山客 穿池集水禽。
白云常在眼 聊足慰人心。

文人趣味の茶碗ですね。

この品物には、角印が朱で書かれています。

調べてみると、似たような書印の器がありました。

函館八景紋盃(『土と炎の芸術〜ふるさとに息づく技と心〜』岐阜県博物館、1993年)

函館焼については詳しいことはわかっていませんが、安政五(1858)年、函館奉行所が、美濃国岩村藩から陶工を招き、陶磁器生産を行ったのが始まりとされています。北海道初の陶磁器生産でしたが、原料を美濃から運ぶなど、採算がとれず、わずか3年で閉窯となりました。

函館に因んだ絵付けの品が代表的な物ですが、美濃焼風の品も多かったと思われます。美濃からの半製品に函館で絵付けをして、焼成した品です。

今回の品は、このような、函館焼の名目で焼かれた美濃焼ではないでしょうか。

遠く離れた美濃と北海道函館を結んだ焼物・・・ロマンがありますね。しかし、現実は厳しく、本当に短い命でした(^.^)


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4 コメント

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遅生さんへ (Dr.K)
2022-09-12 15:06:59
幕末になりますと、磁器も各地で焼かれるようになりましたね。
函館焼というのもあるんですね。
函館焼には、素地から函館で焼かれたものと、函館で絵付けだけをしたものもあるのですね。
或いは、「函館焼の名目で焼かれた美濃焼」もあるのですね。

古九谷には、有田で焼かれた素地を九谷に移入し、九谷の地で絵付けが行われたものもあるとの説もありますよね。
函館焼なるものを見ていて、そのようなことを思い起こしました。
そのようなことを思い起こしますと、ロマンを感じますね(^-^*)
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Dr.kさんへ (遅生)
2022-09-12 16:16:13
激動の時代には、陶磁器世界も動くのですね。
函館焼は、北海道で目論まれた殖産興業の一つだと思います。てっとり早く、美濃から陶工を招いたのでしょう。
ところが、そうは問屋がおろさず、宛がはずれてしまいました(^^;
でも、何かが起こりそうであった時代の雰囲気は感じます。

古九谷、素地有田説は、初歩的なこじつけだなあ、と思っていましたが、案外、あり得るのかも知れませんね(^.^)

韓国産のアサリを日本の海につけておいて日本産はないですよね(^^;
それと、伯方の塩は、原料塩をオーストラリアから輸入していますが、一度溶かしてから塩にするから良い?(^^;
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遅生さんへ(その2) (Dr.K)
2022-09-12 19:10:01
「伯方の塩」のことは知りませんでした。
私も、ネットで調べてみましたら、

「メキシコまたはオーストラリアでつくられた「塩」という結晶を日本で「かん水(濃い塩水)」という状態に戻した後、再び「塩」につくり直していた」

のですね。
しかも、そのことは、ちゃんと、伯方塩業株式会社のホームページに書いてあるんですね。

このようなことを考えますと、仮に、伊万里の素地に九谷で色絵付けをされたものがあるならば、その物は、やはり、古九谷というのでしょうかね、或いは、伊万里の後絵物というのでしょうかね、、、?
ちょっと、そのようなことを考えてしまいました(~_~;)
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Dr.Kさんへ(弐) (遅生)
2022-09-12 21:38:51
岩塩ですね。値段は激安、味も良い(^.^)
でも、♪♪ハカタのしお♪♪の小気味良いコマーシャルが流れる度に、これでいいのかなー、と疑問がわきます(^^;
「伯方の塩」がOKなら、伊万里素地に上絵付の品は、堂々たる「古九谷」でしょうね(^^;

回転すしでお馴染みの人工イクラ、見かけも味も本物顔負けです。おまけに激安。ところが、これを釣りの餌にしても、お魚さんは全く相手にしてくれません。本物だとパクリ。
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