遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

『納札 東西名物名所合せ』(4)

2021年01月24日 | 納札・紙物

『納札 東西名物名所合せ』の続きです。縦長の一丁札が2枚ずつ貼られています。

 

最初の納札には、會〇〇〇とあります。

〇〇〇が所属する會とは何でしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

澪標(みおつくし)會が正解です。

澪標(みおつくし)は、船の航路の目安となる道標です。河口付近に開かれた港などでは、土砂の堆積により座礁の危険がある浅場と水深が深く航行可能な場所(澪)との境界に並べて設置され、航路を示しました。水の都、大阪との関連性が強く、明治24年(1891年)、澪標が大阪市の市章等として採用されました。したがって、澪標會は、大阪の納札交換会であることがわかります。

【十日戎方恵駕(ほうえかご)】
今宮戎神社(大阪市浪速区)では、毎年、十日戎(1月9~11日)に、宝恵駕行列が行われ、100万人以上の人出で賑わいます。この行事は、元禄時代に、地元花街関係者が、宝恵駕を仕立てて参詣したことに始まると言われています。現在は、有名人や福娘らを乗せた宝恵駕籠行列が、ミナミ各所を練り歩きます。

【毛馬きゅうり】
 「毛馬きゅうり」は、江戸時代の終わり頃から毛馬村(大阪市都島区毛馬町付近)で栽培されていました。しかし、明治末期になると、台湾種のキュウリに押されて衰退し、昭和30年頃には生産されることもほとんどなくなりました。長い間、幻の野菜であったのですが、近年、種子の増殖が行われ、復活しつつあります。

【なんば人参】
大阪は、江戸時代には野菜の一大産地でした。なにわの伝統野菜と知られている作物には、天王寺蕪、田辺大根、金時人参、大阪しろな、毛馬胡瓜、玉造黒門越瓜、勝間南瓜などがあります。金時人参は、江戸時代から難波、木津、今宮あたりで栽培されており、大阪は金時人参発祥の地といわれています。

 


【奈良鹿と御香水】
奈良鹿: 省略

御香水:3月1日から2週間、奈良・東大寺の二月堂では、仏教行事「修二会」が行われます。「お水取り」「お松明」ともよばれるこの行事では、大きな松明に火が灯され、本行の12日深夜にお水とりが行われます。この「お水取り」でとられた水が、御香水です。御香水は走りの行法のあと、練行衆に喉の渇きを癒すものとして授与され、お相伴として参詣者にも振る舞われるます。

【うつぼ干物造り物】
秀吉の時代、大阪市中央区には海鮮物市場がありましたが、江戸時代に入ってから干物を扱う市場だけが靭(うつぼ)(大阪市西区)に移りました。以来、この地は、江戸、明治、大正、昭和にわたって、全国的な海産物問屋街として栄えました(現在は、ほとんど無し)。この靱の乾物商たちによる造り物が、うつぼ干物造り物です。造り物とは、陶器や金物、野菜など日用品で、人形や物語の場面などを作った物です。納札にあるのは、雪中筍掘りの場面を、干物で作った造り物でしょう。この納札が作られた大正頃には、瀬戸物一式の造り物、道修町薬種商の薬品作り物とともに、大阪三大造り物といわれました。

 


【十日戎小宝と俵蔵】

戎(えびす)は七福神の一つで、財福の神です。えびす神を祀る神社は全国各地にあり、兵庫県の西宮神社が総本社です。十日戎は、毎年1月10日前後に、商売繁盛の神、福の神である戎(恵比寿)様をお祭りする祭礼です。この時授与されるのが子宝で、銭袋・末広・小判・丁銀・烏帽子・臼・小槌・米俵・鯛等の縁起物を束ねたもので、野の幸、山の幸、海の幸を象徴したものです。俵蔵も、同じような縁起物でしょう。但、十日戎は、関西方面の戎神社の行事です。ところが、この納札を出した川正、宮よし、菊菱は、両国、渋谷、麹町など東京の人(店)であり、東西対抗納札にはそぐわないようにみえます。この納札では、おそらく、地域を越えて商売繁盛を願ったのではないでしょうか。

【亀戸のうそ】

鷽(うそ)替え神事は、菅原道真をまつる天満宮やゆかりの神社で行われる神事です。亀戸天神(東京都江東区)では毎年1月24、25日に行われます。
鷽(うそ)は幸運を招く鳥とされ、毎年、新しい木彫りの鷽に取り替えることでこれまでの悪いことが嘘(うそ)になり、幸運を得ることができると、江戸時代から信じられてきました。天神様と「鷽」のつながりは、「鷽」という字が「學」の字に似てることによると言われています。


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4 コメント

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Unknown (miyamaturi)
2021-01-24 13:17:11
昔のよき時代を、彷彿とさせますね。色あせもすくなく、綺麗に残っているものですね。岐阜銅器のコメントありがとうございました。北陸の骨董店より、南蛮人、南蛮船、象などの紅毛伊万里が好きで、その一環として購入したものでした。(笑)
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miyamaturi さんへ (遅生)
2021-01-24 13:48:46
丁度100年前の品ですが、折帳になっていて、光があたらなかったのが良かったのでしょう。自前の札をこしらえて、自慢し合うのは微笑ましいけれど、優雅な遊びです。
有田焼と同じで、別府細工は、地元にほとんど残っていません。家内鋳物の品が全国へ行きわたったのも不思議です。
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遅生さんへ (Dr.K)
2021-01-24 15:07:12
この辺のものになりますと、見ただけではさっぱり分かりません(><)
謎解きみたいですね。
これを調べるのもまた大変ですね(~_~;)
解説していただいて、なるほど、と思いました(^_^)
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Dr.Kさんへ (遅生)
2021-01-24 15:55:14
私も知らないものがほとんどです。本当にパズル解きそのものです。
調べるのに、めちゃくちゃ時間がかかります。
それでも不明のものが残ります(^^;
早くこのシリーズを終えたいです(^.^)
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