新年の喜びもつかの間に、またもや耳を疑い目を覆う事件が
起きています。
兄が妹を殺害し、その遺体をバラバラにする。
書くのもおぞましいこの事件ですら、私達はもうそれほど
驚かなくなってしまった。
この麻痺した感覚にも戸惑いを禁じえないのです。
近親者による殺人はかつて「尊属殺人」とされ
刑法においては、死刑か無期懲役刑しかありませんでした。
しかし、平成9年の刑法改正により尊属殺人の規定は削除されました。
親の命・子の命それと第三者の命の重さを量刑によって差別される
べきではない、という解釈によってであるそうです。
同じ家に住み暮らし、血を分けた妹をかくも残忍に死に至らしめたのか。
これには、この兄だけが抱えているのではない、現社会にじっとりと
はびこった問題の本質があると思います。
それを私は『孤独』と言う事が出来るのではないかと考えます。
この兄は、恵まれた家庭に育ち、おそらく経済的には何不自由なく
と言ってもいい環境にあったことが覗えます。
かつて、凶悪犯罪の背景には、思わず胸が締め付けられるような
悲しい家庭環境や生育歴がありました。
なのに、彼にはそれが見当たらないのです。
兄は、将来の希望を思い描きつつも、何度も受験に失敗した。
妹は、将来の希望を胸に、自分の生きる道を見出し始めた。
兄が、自暴自棄になっていた・・・このように言うことも出来るでしょう。
しかしそれにもまして、兄が恐れて不安という深遠に迷い込んだのは、
「将来に大きな希望をもちたいという願いと、それが次々と断ち切られていく
絶望の現実とにはさまれた故の、孤独」ではなかっただろうかと思うのです。
青白く、精気を失っていく彼に家人は気づいたのでしょうか。
希望と言う漠然に、行動をもって歩き始めたばかりの妹に兄の
孤独を受け入れる事は、困難だった事でしょう。
「~でなければ、必要とされない」
この「~」に「歯科医にならなければ」と自らを追い込んだ兄は
子の呪縛とも思える思考から、もう自分では逃れられなかった。
『孤独』がさらなる『孤独』を誘い込む。
自分の存在意味を見失った時、人は孤独に耐え切れなくなり
爆発し暴走し、人間の姿をした獣と化すと思えてならないのです。
人が人である限り、支え合う他者を求めるのではないでしょうか。
孤独の果てに、滅びがあるのなら、
合い和すの果てには、希望の興りがあると信じたいと思います。
起きています。
兄が妹を殺害し、その遺体をバラバラにする。
書くのもおぞましいこの事件ですら、私達はもうそれほど
驚かなくなってしまった。
この麻痺した感覚にも戸惑いを禁じえないのです。
近親者による殺人はかつて「尊属殺人」とされ
刑法においては、死刑か無期懲役刑しかありませんでした。
しかし、平成9年の刑法改正により尊属殺人の規定は削除されました。
親の命・子の命それと第三者の命の重さを量刑によって差別される
べきではない、という解釈によってであるそうです。
同じ家に住み暮らし、血を分けた妹をかくも残忍に死に至らしめたのか。
これには、この兄だけが抱えているのではない、現社会にじっとりと
はびこった問題の本質があると思います。
それを私は『孤独』と言う事が出来るのではないかと考えます。
この兄は、恵まれた家庭に育ち、おそらく経済的には何不自由なく
と言ってもいい環境にあったことが覗えます。
かつて、凶悪犯罪の背景には、思わず胸が締め付けられるような
悲しい家庭環境や生育歴がありました。
なのに、彼にはそれが見当たらないのです。
兄は、将来の希望を思い描きつつも、何度も受験に失敗した。
妹は、将来の希望を胸に、自分の生きる道を見出し始めた。
兄が、自暴自棄になっていた・・・このように言うことも出来るでしょう。
しかしそれにもまして、兄が恐れて不安という深遠に迷い込んだのは、
「将来に大きな希望をもちたいという願いと、それが次々と断ち切られていく
絶望の現実とにはさまれた故の、孤独」ではなかっただろうかと思うのです。
青白く、精気を失っていく彼に家人は気づいたのでしょうか。
希望と言う漠然に、行動をもって歩き始めたばかりの妹に兄の
孤独を受け入れる事は、困難だった事でしょう。
「~でなければ、必要とされない」
この「~」に「歯科医にならなければ」と自らを追い込んだ兄は
子の呪縛とも思える思考から、もう自分では逃れられなかった。
『孤独』がさらなる『孤独』を誘い込む。
自分の存在意味を見失った時、人は孤独に耐え切れなくなり
爆発し暴走し、人間の姿をした獣と化すと思えてならないのです。
人が人である限り、支え合う他者を求めるのではないでしょうか。
孤独の果てに、滅びがあるのなら、
合い和すの果てには、希望の興りがあると信じたいと思います。