地理人レポート

展示や新グッズ作りに向けたコラボレポートと、空想地図&地図グッズ紹介をお届けします。

3冊の書籍刊行見込み情報/地理人振り返り2020 (4)

2020年12月31日 | コラボレポート
「お前の未来はない」空想地図作家の終わりとはじまり/地理人振り返り2020 (3)

大晦日です。振り返りは続きます…が、振り返りというより今回は今後の予定、見込み情報です。
昨年からの方針ですが、新刊は積極的にどんどん出していく方針としました。


昨年の振り返りでも、ほどほどヒットを狙うには本が良いという話は書きました。
要約すると、無報酬の趣味では、定期的にコンテンツを作り続けたり、膨大なコンテンツのアウトプットをする手間と時間を割けない、続かないと思っています。Youtubeやブログでは、しばらく無報酬のまま続け、その後大ヒットすれば収入が入るが、しなければ入らないという結構な博打打ちです。それまで定期的に、マメにコンテンツ出し続ける必要がありますが、その気力と自己管理能力がないので、私には向かないという話でした。その点、本は最初に刷る部数に対して(本によっては売れた部数に対して)何%と割合が決まっていて、契約書で印税の割合を決められます。運営の一存で静かに変わるYoutubeよりは、圧倒的にフェアです。

そんなカネの話は置いといて…誰からも頼まれなくてもマメにコンテンツを出し続ける自己管理力がなくても、どんな構成、内容で作れば良いかを相談する相手(→編集者)がいて、私が営業しなくても全国の書店、あるいは電子書籍マーケットに届き、数年経っても実績として出すことができるというのは、書籍出版の大きな魅力でもあります。また、イベントや取材、テレビ・ラジオ出演では、これまでヒットしたもの、話題になったもののアウトプットが求められます。私であれば空想地図、およびこれまで空想地図作家としての活動、となります。まだヒットしていない、価値も定まらぬ未来のアウトプットについては求められません。

書籍は逆に、前に書いた本と同じ内容では意味がなく、他の本と似たような内容の類書でもあまり意味がありません(ビジネス書や実用書で、類書が大量に出る分野もあるけれど…)。少なくとも、世の中で初めて見るような、そして私も初めてやるようなことが許されるし、場合によっては求められる、ということです。ここが一番大きいと思います。

では私は、新しく何をしたいのか、したほうが良いのか。

1. 空想地図帳(学芸出版社)

ひとつは前記事で書いたような、空想地図キュレーターとしての動きです。
あらゆる空想地図作者が描いた空想地図をもとに、世界、地域、都市のなりたちが見える「空想地図帳」(仮)、学芸出版社より刊行予定です。
こちらは前投稿でたっぷり書いたので、今回の投稿では割愛します。


2. 地理人と全国300都市を回ったら(光文社新書)

タイトルの話は一切しておらず、いま仮題をつけたばかりで明日には忘れるやつですが、企画は進んでいて、既に2万字ほど書き進めています。
こちらはアウトプット手段の新規拡張です。なんと、エッセイ調。書籍刊行そのものも「え?私?」てな感じでしたが、エッセイはさらに…です。新人編集者さんからの依頼でしたが、すんなり企画が通ってしまったとのこと。なぜに…?なんせ、私自身がエッセイをほとんど読まぬのです。読まないし書いたことないしニガテでしかないだろ…と思ったんですが、一回深呼吸し、深く唾液を飲み込んで考えました(誇張が含まれています)。

地図、地理の分野、界隈の中では、私は知識や情報を発信する記事執筆に長けたほうではないが(より優れた人がたくさんいる)、特に前提知識や関心がない人に対して、しゃべって伝えることは比較的長けていると思います。なるほど、そのような感じで、前提知識や関心がな人に語る感じで…主観を交えて私の人間味みたいなものがにじみ出る感じで文章を絞り出すという筋トレをするか、ということで、この企画をOKし、書き進めています。この他にも1〜2冊の本が進み始めると大変なので、こちらは先行して書き始めています。



 2006年9月、大学3年生の頃、私は両親と同居していた。大学生の夏休みは長く、旅にはうってつけの時期だ。東北と北海道を1週間ほどで回る予定を、両親に1ヶ月前に伝えると、母親は「なんでまたそんなところに行くのか」と言う。なんでと言われても…そのときは回答に困った。成人したし、財源は自分のバイト代の収入だし、行くことには変わりなかったのだが、1ヶ月前に報告すると「事前の相談」みたいになってしまい、なぜ行くかの説明が求められるような気がした。名案を思いついた。行く直前に言えばいいのだ。相談ではなく「出かけます」という宣言に近い報告にすればいい。そうやってそれ以降は乗り切った。
 あとで母から聞いた話なのだが、行くのを止めようと思った訳ではなく、ただ単に、なんで行くのか気になっただけだと言う。ねぶたや雪まつりを見たいとか、本場の芋煮やジンギスカンを食べたいとか、東北や北海道に行く人が目的にしそうなことを一切言わないので、その動機が何のかが単純に気になったのだと言っていた。確かに、言われてみればそうだ。私はむしろ混みそうなイベントの時期は避け、回りたい観光地がある訳でもなかった。目的地は各地方都市そのものと、各都市を結ぶ移動手段である普通列車だった。目的地が地方都市と普通列車だ、ということは当時、伝わる気がしなかったどころか、私もそれが主目的地であるということに自信がなかった。この本をもって、当時の質問の回答としたい。
 今でこそ「地方が良い」とか、地方都市の魅力は語られるようになったが、私が全国を回り始めた2000年代は、観光地以外の地域は、特に注目されてもいなかった。京都や金沢等、都市自体が観光地になるような都市を除いては、地方都市に行くと言うと「なんで行くの?」と言われるようなことだった。ただ、地方都市に行くと第二、第三の故郷かつ第二、第三の新生活がみつかる気がして、ただただ追いかけるように回っていたのだ。



こんな書き出しで始まり、やがて北海道から九州、沖縄まで、全国を普通列車と路線バス、フェリーで回る話です。
おもしろい本になるんですかね〜。なるといいんですが。

うまくいかないかもしれませんが、うまくいけば文章表現力の拡張、となります。

3. 歩くだけで世界が見える 東アジア編(未定)

最後に…またまた別のアウトプット手段の拡張です。なんとイラスト
誰からもイラストを描いてほしいと頼まれたことも、期待されたこともありません。そりゃそうだ。でも空想地図も、全国回ることも、もともとそうだった訳です。むしろ誰からも期待されないほうが、新しそうだし縛られず自由にできるという側面もあります。

そして届けるターゲットを広げるとしたら…これまで人文書の版元が続いています(白水社・晶文社)。アカデミックな文系の知的好奇心旺盛な層、およびそのフォロワー(人文書の層)に、地理人の動きは届いてきたような気がします。ではまだ届いていなくて、届きそうな層はどこか。実用書…昨年の方向オンチ本はそうでしたが、希少価値の追求を目指すなら一旦は先送りします。一般書…となると県民性の雑学とか、既にある需要にリーチしていくことが多いと思うので、類書の山の中で埋もれることになります。

そこで目をつけたのがビジネス書や経済誌の版元さん。この層はまだ届いてないけども、届いたらおもしろいだろう、と思っています。例えば日本経済新聞はいかにも社会、経済、会社…の動きを伝える専門紙の面が強いですが、同社の日経MJは、すぐ役に立つことに限らず、新しいカルチャーやトレンドも紹介していて、ライトな心持ちで読んでおもしろい雑誌のような感じです。東洋経済、プレジデント等、他のビジネス書、経済誌関連の出版社も同様です。人文系、カルチャー系に比べると、要点をまとめてスパッと伝えていく…読み手も同様に、要点をまとめてスパッと吸収する…人文系が深くじっくり吸収するのと対照的ですが、広い範囲の知的好奇心が旺盛なため、そしてこうした層の人々に色々な話をしても大抵おもしろがってくれるので、何かここの層にリーチする新しいものを書ければ、と思っています。

そこでとある出版社さんに自発的に提案しました(初)。まだ審議中ということで、決まっていませんが、決まったら進めます。
ところで何の本だ、って話ですよね。

空想ながらその国、その地域らしい典型的な街の一面をイラストで描き、深読みする都市図解本です。



このようなイラストと切り口です。
改札やホームに向かう階段の位置が同じ、日中韓台の架空の駅をイラストで描き、各国、各地方の習慣や考え方の違いを読み解く本です。
駅だけでなく街や店舗、住宅〜等、見過ごしそうだけどよく目に入るものをいくつか挙げるつもりです。ちなみに158という数字は適当で、実際にはこれともうひとつくらいしかできていません。

そして!もうひとつ…共著者、三文字昌也氏を巻きみました。

単著を出したい方が多い中で言うのは躊躇するんですが、私はずっと単著が続き孤独でした。単著沼を抜け出したい…!しかし抜け出す方法はあります。誘えばいいのです。誘うの、何より苦手なんですが…しかし見つけました、都市のスペシャリスト。まだまだ若くして、都市計画という都市のマクロ研究者であり、屋台研究やゲストハウス運営という都市ミクロプレイヤーである、このマクロとミクロの両者を揃えた逸材はなかなかいないのですが、デキる人は大物になる前につかまえないとつかまらない…今しかないのか…ということで誘うに至りました。彼はもともと建築の出なので、イラストは描けます。いろいろ教えて〜〜

(つづく)

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