地理人レポート

展示や新グッズ作りに向けたコラボレポートと、空想地図&地図グッズ紹介をお届けします。

川のある路線図に、乗り入れグラフィティ(超・路線図)

2020年05月25日 | コラボレポート
先日より連投で紹介している超・路線図。
最初の記事ではJRと私鉄、地下鉄を全部載せする話、次の記事では運行間隔を太さで表現する話をしましたが、一番やりたかったところをまだ言っておりませんでした。

乗り入れはグラデーションだ・・・

東京の地下鉄は、世界的に見てもなかなか珍しい「乗り入れ」を行っています。首都圏在住者は日本の4分の1だけで、それ以外の地域に住む人のほうが多数派。何やら意味不明の単語が出てきたかと思うので、説明致します。首都圏の人は灰色の文字を読み飛ばしましょう〜

京急線の羽田空港駅のホームに「青砥(あおと)行」の電車が止まっていることがあります。この電車、終点の青砥に着くまでに、いくつかの会社の路線を通って行きます。品川までは京急電鉄の線路、品川からは都営地下鉄の線路、押上からは京成電鉄の線路を通ります。

羽田空港…〈京急線〉…品川…〈地下鉄浅草線〉…押上…〈京成押上線〉…青砥

このとき、乗り換えはなく、さきほどまで京急線だった電車は、気づいたら地下鉄になり、気づいたらまた別の会社の線路を走っています。地下鉄は都心部を縦横無尽に結ぶもので、都心近縁から郊外まではJRや私鉄が伸びています。都心、とりわけ山手線内は地下鉄(以前は路面電車)で網羅する方針だったので、JRや私鉄は(中央線を除いて)路線が作れない状態でした。地下鉄は郊外に延伸することもありましたが、私鉄線とつなげて、郊外から地下鉄線に直通したほうが双方良いだろう、ということで、相互乗り入れ(私鉄、地下鉄の各社が相手方の線路に乗り入れる)流れが生まれます。東京では、地下鉄13路線のうち、9路線が他社線とつながる「乗り入れ」を行っています。

この「乗り入れ」を路線図上で表現したい…
同じ電車に乗っているうちに気づいたら他社線に入ってた感じ…を表現したい

渋谷駅は、東西を結ぶ東急田園都市線(緑)⇔地下鉄半蔵門線(紫)と、南北を結ぶ東急東横線(赤)⇔地下鉄副都心線(茶)と、2つの乗り入れがありますが、その他にも多々、乗り換えを実施している駅があります。そのためにはグラデーションだ・・・スーッと変わっていく感じが、スーッと表現できていれば幸いです。



押上は2路線あるのだが、見にくかったか・・・クーッ…クヤシイ…

心の境界、川を描く

今回、超・路線図には大きな川を必ず入れるようにしました。というのも、地上を走っている限り、車窓を見ようとしなくても、大きな川を渡っていることには気づきます。都市部では、建物がずっと続く車窓が、突然広い空が現れ、ガタンゴトンの音も大きくなります。そして、川の向こう側は心理的に遠く感じる、といった、行動範囲の壁になっています。川と川に挟まれた範囲内は心理的に近い気がするように、川は地図に記すべき大きな境界になっています



上の路線図は、東京23区の東側です。一番左の川が隅田川、真ん中は荒川、右の川は江戸川です。隅田川より西(左側)はオフィスビルの多い都心部です。隅田川と荒川の間は、古い家屋と新しいビルがひしめき合う、古くからの下町です。そこから江戸川までの間は、マンションや戸建て住宅が増え、下町と郊外の間、といった印象です。江戸川より東(右側)は千葉県です。川はこうした、地域の雰囲気の境界でもあるのです。


こちらは東京都多摩地区の、多摩川中流部です。左上から右下に続く川は多摩川ですが、このあたりに住んでいたとしたら、自分が川のどちら側かはすぐに思い当たるはずです。川は自分の居るところを指し示す座標になっているのです。



そういえば、前記事で紹介した「運行間隔を太さで表す」件で言い忘れてたことがありました。ピンクで描かれた京王線や水色で描かれた小田急線は、何本も太い線が重なっています。各駅に止まる便の他、特急、急行、準急や快速等、さまざまな停車パターンの列車がいます。この路線図には、それぞれ特急か急行か快速か、ということは書いていません。そこまで書ききれないのもありますが、詳しくは経路検索や、各社の路線図で調べてもらえれば、と思っています

ここで伝えたいのは、ほとんどの電車が止まる主要駅か、各駅停車しか止まらない駅か…その程度の情報提供にとどまりますが、その程度の駅の違い、温度感…を伝えたいのです。多くの電車が止まる駅は、付近に住んでいたら覚えていた方が良いでしょすい、大きな街でもあるでしょう。逆に家賃を抑え、こじんまりした街に住みたい場合は、各駅停車しか止まらない駅を選ぶのもオススメです。そんな駅や街の規模感が、なんとなく一目で一望できる路線図を目指しております。


最後に、首都圏版の超・路線図を作り終わったら…京阪神版に着手してみたんですが、途中まで作ってやめてしまうという私の悪い癖…。京都、神戸方面を作る前に中断しております。阪急、阪神、京阪、近鉄、南海…と、関西私鉄のダイナミズムを感じさせられます。ちょっと前に作ったので、梅田→大阪梅田の駅名変更や、おおさか東線等が未反映のまま時が経ち…。阪急梅田、本当は北から南に刺す感じで配置したかったけど、これだけの太さを刺すスペースがなく、なくなく横に…。


なお、アレンジ版で、京都のバス路線図も作ってみようと試みました。というのも、京都の路線バスは、市バスだけの路線図をよく見るのです。でも市バスだけじゃない…京阪だってあるし他のバスもある…ということで色々載せようと試みます。が、これもまだ途中。一体いつできるのでしょうか。こうして放置している間に路線網や本数も変わってくるんですよね…。汗


超路線図、まだまだ在庫あります。売り切ったら、羽沢横浜国大、高輪ゲートウェイ、虎ノ門ヒルズ駅開業を反映した新版を印刷しようかと思います(現在販売中のものは昨年春印刷のため、薄く印字されています)。それではまた〜

運行間隔を路線図で表現したい…(超・路線図)

2020年05月22日 | コラボレポート


さて、路線図の限界を超えた、超・路線図を作ってみたい、という衝動を、前回の記事からお送りしていますが…本日は、鉄道の運行間隔と、バス路線についてお話します。

鉄道路線は、運行間隔が大事

都心部にいると、電車は便利なものです。しかし地方においては、車がメインで、鉄道は車が使えないとき、仕方なく乗る乗り物になりがちです。電車が便利かどうか、その差を決める大きな要因は、運行間隔です。前の電車を逃しても、次の電車が5分で来れば、その路線はあてになりますが、1時間来なかったら、容易く電車に乗れる感じではなく、時刻を調べて、狙って乗りに行く必要があります。


平日日中、上のようなルールと色で、何分間隔で運行されているかで色を塗り分けてみました。



山手線とその周辺は5分間隔(地下鉄が5分間隔)、その外側の首都圏は10分間隔です。ときどき20〜30分間隔の路線もあります。

全国、これまでの数十年で、各都市でどのくらいの頻度で運行されてきたか、まとめられていた方がいます。これは圧巻・・・

これまでの都市の人口増と、鉄道(国鉄→JR)がその中でどのような役割を果たしてきたかの変化も読み取れます。これはいくらでも見ていられる・・・

線の太さで描き分ける

さて、しかしこれ、路線図を作るとなると、運行頻度で色分けする訳にもいかないのです。もうすでに、路線ごとに色分けしてしまっているので、別の方法で描き分ける必要があります。そこで、線の太さで描き分けてみます。ちなみに本数や運行頻度を線の太さで描き分けるのは、バス路線図では割と一般的になってきています。私もよく訪れているバス路線図サイト、Bus Service Map路線図ドットコムの路線図を見ると、バス路線の太さで、どのくらい便利かが一目でつかめて便利です。

さて、こうした描き分けは、鉄道路線図ではなかなか見ませんが、やってみましょう…



首都圏のJR線でも、相模線や成田線といった路線は本数が少なく、大きな差が見て取れます。ところでみなさん、次の便が何分来ないと「不便」と感じるでしょうか。10分は多くの人にとって許容範囲だと思います。12分?15分?20分?30分…?それとも1時間くらいは待てる…?このあたりは人によって間隔が違うでしょう。

私は大都市にいると20分来ないと不便に感じますが、地方にいると20分なら便利だなと感じます。いる場所によって感覚が変わってしまうのは不思議なものです。

大都市に住んでいて、都心まで電車で通勤・通学することを考えると、この太い沿線に住んだ方が良いでしょう。そういう意味では、住まい選びの参考にもなりそうです。

バス路線も淡く載せてみる

さて、さきほど路線バスの話をちらっと出しましたが、今回の鉄道路線図にも載せてみたい…と思うに至りました。全部載せたら大変です。ただ、所によっては鉄道よりバスで行ったほうが速いところもあるのです。



このように、東西(左右・横)を結ぶ鉄道路線が多いところでは、南北(上下・縦)の移動はしにくくなります。ここで使えるのがバス。吉祥寺や荻窪、中野から、西武新宿線、西武池袋線沿線に行こうとすると、電車で2回乗り継いで遠回りするより、バスで行ったほうが速いことがあります。JR総武線の錦糸町駅から、都営新宿線、東京メトロ東西線沿線に向かうときも同様です。

そこで、淡い線を入れてみました。色は会社別につけてあります。都営バスは緑色、関東バスは赤色、西武バスは青緑色…と、その会社の色(なるべくバス車体の色)で描いています。ただ、こここそ本数が重要。必ずしもたくさんの便が来る訳ではありません。ええ、もちろん、バス路線こそ鉄道と同じルールで、運行頻度と太さで表現しています



しかし一体どのバスに乗ればいいか分からない…行先も番号も分からない
はい、そうなのです。そのあたりはバス路線図を見るか、経路検索していただければと思っています。路線図だけで経路が分かるようにサポートしようとすると、情報の洪水になって大変です。

100%ではないが0%でもない、20〜30%の情報を、ここでは載せています。「ここは行けそうか、行けなそうか」という、やんわりした情報です。そういう判断材料があるだけで、遠回りせず、バスの可能性に気づければ本望なのです。隣の駅からだと南北に移動しやすい…と気づけば、買い物に行く用事を、隣の駅でしてしまえば楽だ…と判断がつくこともあります。そこからは、バス路線が検索できる経路検索を使ってみる、バス案内所に行って聞いてみる等、取れる手はあります。


これは東京都多摩北部から埼玉県南西部にかけての、西武線沿線のあたりです。茶色の路線はJR武蔵野線ですが、武蔵野線の内側(右下)はバス路線が多く、運行頻度も高めです。外側(左上)は、バス路線が少なく、運行頻度も低くなっています。

バスで縦横無尽に移動できるところは、すなわち「車がなくても生活できる」こととニヤリイコールです。武蔵野線の内側なら、車がなくても縦横無尽に動けますが、外側だと、人口の多い住宅地から最寄り駅までの路線しかなく、縦横無尽に動けません。

やはりこれも、住まい選びの参考にしたいですね〜。私は車を運転できないので、武蔵野線の内側でないと難しそうです。ただ、同じ埼玉県でも京浜東北線沿線や、多摩地区だと八王子、立川周辺はこの限りではありません。

(余談ですが、ここが一番調べるのが大変でした…路線や本数、よく変わるので、これは更新も大変そうです。次はいつになるやら…系統番号、載せたほうが良い気もしましたが、都心部で情報の洪水となり載せられなく鳴ったので割愛しました)



今日もモリモリ書いたけど書き終わらなかった…。

(↓超・路線図、昨年春印刷のため、羽沢横浜国大駅と高輪ゲートウェイ駅は予定駅として表記しています)

鉄道網のきめこまやかさをきめ細やかに表現したい…(超・路線図)

2020年05月21日 | グッズトーク
おはようございます。地理人です。
市外局番地図の反応が想像以上に大きく、マルシェルでも多くの人にお買い求めいただきましたが、昨年、リアル物販のマニアフェスタで、市外局番地図以上に売れていたものがあります。それは…「超・路線図」。

「駅と路線」以上のものが読める?

路線図と言えば最近、日本の鉄道各社が作った路線図をまとめた本「日本の路線図」(宮田珠己/井上マサキ/西村まさゆき著)が出まして、いやはや何気なく見ている路線図、デザイン、見せ方はこうも多様なものかと思わされます。

こうして見ると、ただ、駅名と駅名を線で結び、経路や停車駅が分かるものではない、それ以上の何かが見えてくるものだと思ってくるんですが、その「何か」を最大化できないだろうか…そんなことを昔から考えておりました。

そこで新たな路線図を作ってみようと思い立ちました。



新宿・渋谷付近だけ切り出してみました。こんな感じの路線図です。
「空想地図作家」が作る割には、まったく空想性もなく、ただ現実を映した路線図…なのですが、案外、

・日本語&ローマ字表記
・駅ナンバリング表記

の路線図が、これまでなかったのです。
いやはや、日本語ネイティブなら気にしないんですけどね〜。海外に行くと、現地語表記&ローマ字に、駅ナンバリングにありがたさを感じます。とはいえこの記事は日本語、これまで売っていた物販も海外からのお客さんはほとんどいなかったので、このメリットは届かない気もしますが…

JR・私鉄・地下鉄全線を描く難しさ

そもそも、JR・私鉄・地下鉄を全部載せた路線図、ってなかなかないのです。
きれいにデザインされた路線図は、地下鉄のみのものが多く、各鉄道会社が作る路線図は、各社の路線だけが描かれます。全部載せの路線図は、全JR線が黒色で描かれたり、そもそも路線別に色分けがなされてなかったり、かなり簡易的なものが多いのです。

いやはや、これはなかなかむずいのです。
なにしろ、23区内だけで56路線あるのです。36色の色鉛筆を想像しただけでも、似た色が混在し、なかなかごっちゃになります。ここで大事なのは、表現を際立たせること…



都心の大動脈であるJR線は、幹線っぷりが分かるよう、他路線より際立って強調される表現に、都心を縦横無尽に結ぶ地下鉄網は、きめこまやかな網目感と、地下感を感じられる表現に。郊外と都心を結ぶ鉄道路線は、JR線が幹線でありながら私鉄のほうが多く、このダイナミズムを漏れなく表現することとしました。



こんな感じです。
JR線、よーく見ると影がついているの、お気づきでしょうか…
「言われたら気づくけど、言われなかったら気づかない」くらいの影を目指しました。果たしてどうだか…。

なぜこういう表現が必要かというと・・・



JRと地下鉄で似た色が重なるのです。
神田駅で、JR中央線と地下鉄銀座線が(オレンジ色)、市ヶ谷駅でJR中央総武線各駅停車と、地下鉄有楽町線が(黄色)重なります。

もっとも有楽町線は、最近黄色からゴールド色にシフトチェンジしたので、そっちの色に寄せてますが、線の種類を変え、JR線を浮かび上がら、地下鉄を淡い点線にすることで、この2つをちょっとは描き分けられたのではないか、と思います。

さて、問題は私鉄です。



私鉄は各社ごとに路線網を持っており、東急は東急のかたまり、小田急は小田急のかたまり、京王は京王のかたまり…それぞれのカタマリ感を表現するためには、各社の色で塗った方が良いのです、が…

東急全部を赤で塗ると、どの路線がどうつながってるのか、わかりにくいのです。


同じ会社でも、路線ごとに色分けをすると、このように見やすくなります。
東横線、田園都市線、目黒線、大井町線…なるほどこういうふうに網目が織り込まれてるんですね。

そして、これでいて各社のカラーが分かるよう、その路線に沿って淡〜い背景が入れられています。気づくでしょうか、気づかないでしょうか・・・

それより、謎の淡い線が気になってきている人もいると思いますが、追って説明します・・・

なんか全然うまいことPRできてないゾ感がありますが、


さて、そんな超路線図の全貌を見渡したい…という方に、大判の路線図はいかがでしょうか。



ただ、昨年春に作ったものなので、羽沢横浜国大駅、高輪ゲートウェイ駅が未開業で、薄い表記のままです。今年開業予定の虎ノ門ヒルズ駅も同様です。


※超路線図、500円+税…なんですが、マルシェルだと送料(250円)込みになるので、800円での販売となります。

<コラボレポ>時代とデザインの変化を読み取り、百貨店の包装紙を空想する

2020年05月20日 | コラボレポート
こんにちは、地理人です。

空想地図で描かれている中村市を、あらゆるクリエイターによって再現するコラボ企画。鉄道車両、コンビニ店内音楽に続く続いてのコラボは……

百貨店です。

今回、ホンダノホンダナさんのデザインで、中村市の百貨店の包装紙を再現します。ホンダノホンダナさん、包装紙や紙袋等、ゴミとして捨てられることもあるものの、とても凝ったデザインのものもある、ゴミのようでゴミでないものに着目し、ZINEを作っています。マニアフェスタBOOTHその他のイベントで発売中です。

そんなホンダさんの趣味活動ですが、本職はデザイナーで、そのインプットのためにも始めたのだとか。

実は私、百貨店をはじめとした大型商業施設好きで、全国の百貨店はほとんど行ったかと思います。商業施設マニアって、いそうであんまりいないんですよね。

ホンダさんに包装紙作ってもらう前に、やっつけで作ったロゴを整えておこう…と思いつつ、ちょうど良いことに、中村市の空想地図は過去最大級の大幅な修正をしておりました(一昨日終了)。
この機会に、店名やロゴも一部修正しています。

市内に百貨店が4店ありますが、うち2店は店名やロゴが変わります。

旭丸(中心部の平川に立地)
浅岡屋→太田屋(中村駅前に立地)
森橋(旭田に立地)
中電百貨店→中電フィリオ(平川駅前に立地)※百貨店から専門店ビルへ



百貨店ロゴの変更秘話

3店とも地方百貨店ではなく全国チェーンのつもりでした。しかし問題は旭丸。元のデザインがどこか垢抜けず、地方百貨店っぽい…いつか変えようと密かに思っていたのです。

上のロゴ変更画像を見ていただけると分かりますが、元の雰囲気を変えず、多少スマートにしております。

次に、中村駅前の浅岡屋は、ロゴだけでなく店名そのものが変わっています。
浅岡屋、時々ファンがいたんですが、青いAで旭丸と被る…というかあさひまるあさおかや、って語感が似てもいました。似すぎる大手が共存することってなかなかないので、少々外そう…ということで、浅岡屋には太田屋になっていただきました。

旭丸ファンとか聞いたことないのでそっちが譲れよという話もあるかもしれません。いや、それは大いに検討しました。どう…にもうまい名称が浮かばず、浅岡屋のほうに引き下がってもらいました。スンマセン(誰に)

これは本題じゃありません。本題はここからです。

リアル百貨店の包装紙から、空想百貨店の包装紙を解く

さて、ホンダさんから突如、「百貨店の包装紙」の資料が送られてきます。
こんな資料があるのか…と思ったら、なんとホンダさん作。なんて下準備のよろしい…



こうして見ると、案外意味の類推できない、シンプルな幾何学模様が多いことに気づきます。大手はシンプルで堅く、地方百貨店はちょっと自由でデザインの幅も広め…なのは、大手銀行/地方銀行の違いと通じるものがあります。

なるほど、そうなるとシンプルな幾何学模様を考えてみたくなりますね。
続いて今回の旭丸の包装紙の方向性についても資料を作っていただきまして。


(プロって頼もしいなぁ…)

おっと吐息が漏れました。右上が1960年代、左下が1980年代、右下が2000年代。
1960年代はイラストや模様も自由です。自由で楽しそうだけど、なかなかテーマを絞り込めず、0→1を作るのは逆に難しそうです。2000年代はシンプルに削ぎ落としていく現代のデザイン。まず最初にどこに手をつけるのか、ですが、その両者の間となる、1980年代の包装紙から着手することにしました。丸善ってこんな包装紙あったのか…しっかし色がキレイだ…。

ホンダさんの推測によると、1980年代まで、筆文字の旭を○が囲む古風なロゴだったのだそうな。なるほど、大丸も一部店舗では大を○が囲むロゴが残っていたり、今でも三越は○越だったりしますが、このタイプでしょう。(写真は下関大丸、松山三越)



それにしても極度にハネて、強めの文字の多いこと。なんででしょうね、とホンダさんと話していたのですが、その謎はあとで解けます。

しかし問題は、このロゴはPCのフォントでは作れないということ。
試しに○の中に旭の文字を入れてみましょう。



うーむ。楷書体、勘亭流、ひげ文字のフォントで作ってみても…かなり「パソコンで作ったな」感が出ます。このままではうまくいくまい…。

手書きでないと書けない「大入文字」に迫る

そこで、硯コレクターでもあり、ときに書道講師、マニアフェスタでは書道マニアとして出店する丸山曄涯さんに書いていただくこととしました。コラボに次ぐコラボです。

丸山さんによると、こうした百貨店のロゴは大入文字(おおいりもじ)と言って、大相撲や歌舞伎で使われる文字です。枠いっぱいに、隙間なく文字を埋める大入文字は、千客万来を招く縁起の良い文字でもあります。当時の百貨店はこの演技の良さを取り入れたのでしょう。百貨店にとっても千客万来は縁起の良いことです。そう言われるとなるほど、抑揚のある強めな文字で、○いっぱいに埋めてくるあの文字になるのも納得ですし、旭丸さんもそうするでしょう。

そこで、丸山さんにあらゆる「旭」を書いていただきます。


これはパソコンで出せないし、自分では書けない…
遠慮がちに無理を言って、さらに何種類も「旭」を書いていただき…
その後、ベスト文字を書いていただけたので、少々こちらで整えて、この形に収めました。旭の字のうち、ノの部分と乙の部分にハネがあり、ささくれたヒゲのようになっていますが、その個数はそれぞれ3、8と縁起の良い数にしております。

1980年代の包装紙案、現る

さて、これを受けて、このロゴが入った包装紙の案が4つ、各2色で合計8パターンできてきます。おおお…!

こちらがA案。
なんかどこかで見た模様…いやいや、旭丸のロゴに登場する葉っぱをモチーフに、6枚並べて花びらのようにも見えるもの、ですね。なるほど、青も赤も良いですね。A〜Dのどれかで迷う前に、Aは2色で迷う…

次いでB案。
波打つ規則的な模様に星の輝き。右のカラー版は昔っぽさを感じつつ、左の青版は今でもいけそうな色合いですが、なんだろう、洋菓子屋さん寄り…?(って、何が「洋菓子屋」を思わせるのか分からないまま言っているので、何がそう思わせるのか追って考えたいと思います)

続いてC案。
こちらも波打ってはいるけど、長方形に近い形で、交差部分のみ波打つパターンです。これも右は時代を感じますが、左は今の時代でも使えそう。これは角丸の角度や模様の太さ(細さ)のバリエーションも見てみたいところです。


最後にD案。
おお、完成されている…一番推したくもあるが、しかし西武百貨店感もある…(既存の元ネタがわかりやすいものよりは、「元ネタがわからないが百貨店らしい、ありそう」を狙う側からすると、西武っぽいと言われると悔しいところ)
でも完成度が高い。

いやはや迷う・・・ひぃ〜今日のところは決められなさそうだ・・・

しかし絞らなきゃ次に進まぬので、少し反応を見つつ、言語化できていない部分は言語化して考えつつ、絞り込み、話し合い、次へ進めたいと思います。
楽しみです。(お楽しみに〜)

<コラボレポ>架空コンビニのサウンドが突然現る

2020年05月14日 | コラボレポート
こんにちは。久々の地理人レポートです。
ここ1ヶ月ほど電車に乗らない珍事で、打ち合わせはリモートに、そして製作は自宅に(それは元から)。
そんな中、あの、架空CMソング作者キシリ徹さんと打ち合わせをしました。
(と言っても打ち合わせは1ヶ月前、4月13日でした。遅くてスミマセン)
(リモートミーティングのキャプチャ撮り忘れた…)

コンビニ「アルファマート」店内で流れている音楽やBGMを再現

前回の打ち合わせで、アルファマート店内音楽を再現しよう、ということになりました。
しかし、難しい…

ちょっと前なら、各コンビニで
「セブンイレブン、いい気分」
「あなたとコンビに、ファミリーマート」
「マチのほっとステーション、ローソン」

という、キメ・キャッチフレーズが定番で、それをメロディーに乗せたサウンドロゴをよく聞きました。

しかし、いつしかセブンイレブンは、「いい気分」が弱まり、忌野清志郎「Day dream believer」が流れるようになりました。最近また変わったとか変わってないとか。

ローソンも「マチのほっとステーション」というフレーズはほとんど聞かない代わりに、「ローソンCSほっとステーション」という店内のラジオ番組がメインです。ファミリーマートはむしろあの入店音が目立ちます。そうか、うーむ。
 
元ネタをそのままコピーしたり、原型が分かる形でアレンジしたりするのは比較的容易ですが、ここでしたいのは、今の時勢を捉えながら、現状に囚われないものを再現すること。ひとつ、サウンドロゴは作りつつ、店内で流れてそうな放送(告知内容)と、BGMを用意し、店内BGMを再現しよう、ということになります。
 
突然、アルファマートの音ができている!

そして早速!!
アルファマートのサウンドロゴが4案上がってきます!びっくり!

A:シンプルな感じ

B:男性っぽい強い感

C:やさしい感じ

D:少しひねりの効いたやさしくてシンプルな感じ


おおおお。
これは…Dだ…Dがいい…

と思いましたが、キシリ徹さんもD推しでした。よし決定。
 
さらに、シンプルなサウンドと、キメキャッチフレーズを加えたアレンジもできます。

「あ、あった!アルファマート」

おおお、一気にキメキャッチフレーズまでできてしまっている。いいですね。
 
さて、あとは他の放送。
唐揚げやおでん、パンといったオリジナル推し食品か、銀行やペイの案内か、はたまたバイト募集か。いずれにしても文面を考えねばなりません。
 
 
こうしたコンビニ店内の放送を参考にしながら放送内容を考えていければと思います。
それでは続きをお楽しみに・・・