ヘニング・マンケル「めくらましの道」読了。これはかなり良い作品だった。■
スウェーデンの田舎の刑事ヴァランダーは、異国から来た少女が菜の花畑の真ん中でガソリンを被った末にマッチ棒のように燃えてしまうのを見てしまう。息つく間もなく、頭皮を剥ぐ殺人事件が連続で起きる。捜査の方向が間違って、めくらましの道に迷いこんでいないか、何度も振り返るヴァランダー。最終的には自らめくらましの道を進んでいたことに . . . 本文を読む
読了。この作品も科学を知らない素人にも分かるように書かれていることに感心した。書評はいろいろなところで書いてあると思うので、そちらに譲ることしたい。一番感じ入ったことは、本書の中で著者が「勉強する理由」について、人間は本当は無関係なことを関係付けて安心を得ようとするが、分けた結果、見えたと思ったことも実は見えているだけで、真実に至ることはできない。最終の真実などは見ることはできないのかもしれないが . . . 本文を読む
「街の灯」読了。読み始めたきっかけは当然、著者の直木賞受賞ではある。しかし、私は北村薫氏の作品がデビュー当時から大好きで、1年前ぐらいにもミステリでない作品をこのブログでも紹介した。最近は「微妙に本格な」ミステリを敬遠してか、著者のミステリは読んでいなかった。受賞のニュースを見て、久々に手に取った。■
デビュー当時と同じで、やさしく、繊細で、文学的なバックグラウンドを感じさせる作品で、ミステリ . . . 本文を読む
司馬遼太郎の「播磨灘物語」第3巻、第4巻読了。いよいよ黒田官兵衛が歴史の表舞台で活躍し、この世から去るまでの場面が描かれる。ドラマなどでは描かれない部分、例えば、備中高松城を秀吉が水攻めしたことは有名だが、それがどのように準備されたか、また、本能寺の変の後の大返しの様子などが細かく描写されている。何となく手に取った本だが、著者の官兵衛に対する愛情のようなものを感じさせられる面白い作品だった。私がド . . . 本文を読む
アイダホの山奥で姉弟が殺人現場を目撃し、犯人たちに追われる身となる。姉弟が逃げ込んだのは老カウボーイの牧場。いわゆる「巻き込まれ型」で典型的な西部劇チックな物語だが、物語の組み立てが良くできている。先日例えたトランプで言えば、主人公の山、犯人グループの山、サブキャラクタである元刑事の山などを順々に捲って行くことにより物語が進んでいくのだ。■
非常に読みやすいし、ちょっとした映画を見るような感覚 . . . 本文を読む
どんな小説もそういうことが言えるのかもしれないが、ミステリは特にそうなのだが、物語を進めるのに、トランプのカードを積み上げて、一枚一枚めくっていくケースもあれば、積み上げたカードがふた山、凝っている時はみっつあったりして、時間や場所をずらしてカードをめくらせたりするケースもある。さらに、神経衰弱のように裏にしてすべて一枚づつ広げたカードをランダムに捲っていくケースもある。この「川は静かに流れ(ジョ . . . 本文を読む
マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズ「終決者たち」読了。一皮剥けた主人公が着実に事件を解決していく姿が描かれており、初期の作品のような、音楽が聞こえてきそうなシーンは少なく、今までのどの作品よりもプロットがストレートで、ドンパチも、ロマンスもない。ハードボイルド感が強まったと言えば強まったと言えるし、純粋なミステリとも言える。ある意味玄人向きかもしれない。
あと2冊程度でシリーズは終 . . . 本文を読む
外回りの途中、地下鉄のシートに座った時に上司が面白い本を貸してあげようかと言って出したのが、こちら。内容としては表題の通り。■
人生において大成するには、「人として正しい決断をする」「少しづつでも良いので継続する」というのが私の考えで、大抵のビジネス成功指南書でも、この内容は大抵入っている。問題はそれができるかどうかなのだ。
この本のオビ裏にも書いてある言葉で、「雑事を雑にやっている人は、 . . . 本文を読む
私が「グイン・サーガ」を読み始めたのは、高校3年生の時だと思う。加藤君という同級生に紹介され、最初の5巻を借りたのではないかと思う。それから20年以上経ち、浪人になり、大学に入り、就職し、結婚し、子供ができて、転職しても、このシリーズは地道に読んできた。どう考えても、間延びしてしまった物語に文句を言いながらも、やはり毎回次の巻が出るのを楽しみにしていた。しかし、あと3刊でもう新刊が出ることはない。 . . . 本文を読む
新天地を開拓しようと、ネットでいろいろ探した結果、S・J・ローザンの「チャイナタウン」を購入し、読了した。女性作家らしい、やさしい文体。ミステリとしてのプロット、展開、文章、物語の思想的背景などはどれをとっても平凡で、普通の娯楽作品。しかし面白いのは、これはシリーズものになっていて、主人公による一人称の語りで展開するのだが、自作はもう一人の主人公による語りになるということで、1冊、1冊交互に、語り . . . 本文を読む