村上龍氏のエッセイ集を読んだ。個人の思考の結果なので、書いてあることは「確かに」とか「なるほど」と思うこともあるが、「そうかなぁ?」とか「それは違うな」と私は考えることも多い。そして6割方は「当たり前だな」と思う内容。そういう題材でも、取り上げ、わかりやすい文章にしているところが良い。中には簡潔な文章の向こう側に積み上げられた思考がうかがわれるようなものもある。■
仕事、人の創作というものは、 . . . 本文を読む
ヘニング・マンケルのクルト・ヴァランダー・シリーズ「白い雌ライオン」読了。スウェーデンの田舎町で女性が殺害されることから話が始まるが、その殺人犯を追うヴァランダー刑事と、要人暗殺計画が進む南アフリカでの話が二重螺旋を描いていく。文庫ながら700ページあるのだが、話の奥行きが深くなっていて、なかなか最後に行く着く先が読めない。■
何度も書いているが、このシリーズは世界中で翻訳されているベストセラ . . . 本文を読む
姜尚中氏と宮台真司氏のトークセッションを本にまとめたもの。戦争と暴力、右翼と左翼、国家とナショナリズム、メディアなどについて議論というよりもそれぞれが短い講義をしているような構成。私は社会学や政治学にほとんど学術的な知識がないため、前半は言葉を追っていくだけでも精一杯だった。正直言ってもう一度読まないとちゃんと理解はできないだろうと今、思っている。■
しかし、社会学・政治学が何百年も練られてき . . . 本文を読む
昨年の国内ミステリ作品で各方面からNo.1の評価を得た作品「ゴールデンスランバー」を読み終わった。この作者の作品を一度読んでみたいと考えて、どうせならなるべく新しくて評価の高いものを選んだのだ。巻き込まれ型、逃亡ストーリーはサスペンスの定番で面白いの読みやすいのが当たり前だが、私としてはかなり速く読み終えることができた。■
ミステリで高評価を得るには、いくつかのパターンがある。圧倒的に濃密なス . . . 本文を読む
ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズ4作目「石の猿」読了。先ほどネットでいろいろな人の批評を読んだが、賛否両論。でも少なくとも「読む価値なし」と書いている人はいないように、多くの人が楽しんでいるのが分かる。私は(人には薦めないが)結構気に入った。物語の展開も良いし、ヒーロー物・友情物としても好感が持てるし(中国から来た刑事の話)、ミステリとしての出来も悪くない。重苦しい精神的葛藤 . . . 本文を読む
「クリスマスのフロスト」読了。年末に出版されるミステリのランキング本の上位に来る作品は、確かに面白いことが多い。分かってはいるのだが、何となく読んでいない本も非常に多い。この作品(シリーズ)もその一つで、今回やっと読むことができた。■
伊達に1位ではない。いわゆる推理小説としての謎解き要素もしっかりしつつ、登場人物の魅力、物語の構成・プロットがしっかりしている。圧倒的な物事の量が濁流のように進 . . . 本文を読む
隆慶一郎 著「吉原御免状」読了。宮本武蔵の養子である超剣士が吉原を訪れ、幕府の密命を負った柳生と吉原の闘いに巻き込まれていく・・・というような話だが、主人公の出生、吉原の真の存在理由、家康の影武者に与えられた御免状など謎が葡萄の房のようになっていて、その一粒一粒をランダムに食べさせるように、ストーリーが展開される。■
他の歴史小説と違って、著者の作品はモチーフ(主人公)として歴史的な大物があま . . . 本文を読む
ヘニング・マンデルの「リガの犬たち」読了。スウェーデンで人気の警察小説の第2段だが、スウェーデンの片田舎にラトヴィアからゴムボードに乗った死体が流れ着くところから話が始まる。主人公のヴァランダー刑事がソ連から独立していない頃のラトヴィアで命からがらで活躍するのだが、冷戦前のスパイものそのもので、暗く冷たい街の中で息の詰まる物語が展開する。
今回も推理は鋭いが、全然格好良く無い刑事が、半ば「巻き . . . 本文を読む
今年読んだ本は約35冊。毎年、コレはすごいなぁとか、自分はこの本で成長したなぁという本は余り浮かばないが、今年は特にそんな感じがする。
思い起こしてみるとヘニング・マンデルと隆慶一郎に出会ったことはラッキーで、紹介してくれた友人には感謝している。来年はこの二人の本を読み進もうと思っている。新しい本でも素晴らしいものはあるが、名作と呼ばれるものをを越えるものはそれほど多くはない。来年は名作も含め . . . 本文を読む
マイクル・コナリーの「天使と罪の街」読了。比較的単純な殺人犯の追走劇だが、一人称で語る主人公ボッシュと三人称で主にレイチェル捜査官という構図で物語が進むところが一つの特徴。ボッシュは従来三人称で語られていたが、警官から私立探偵になってからは一人称になっている。フィリップ・マーロウも、リュウ・アーチャーも一人称だったので、作者の私立探偵に対する何らかの主義があるのかもしれない。
これはハリー・ボ . . . 本文を読む