この本はなかなか面白かった。北条早雲に認められた男子が足利学校に通い、やがて2人の若者と出会う。3人の若者はそれぞれ軍師となり、あたかも三国志のように戦うことになる・・・という話。文章も優しいし、なかなか情に訴える語り口があったりして、わくわくする歴史フィクションである(全部が全部という訳ではないが)。わくわくするのは、私の故郷の小田原が舞台の一部になっていたり、普段あまり語られることの少ない北条 . . . 本文を読む
昨年出版された海外ミステリの中でマニアックな話題作だったのがこの「卵をめぐる祖父の戦争」。ミステリの分類に入れて良いものかとも思うが、確かになかなか面白かった。■
第二次大戦下、ドイツ軍による包囲がされているレニングラード。主人公は見方の軍隊に囚われてしまい獄舎で物語の相棒と出会う。そして、二人は銃殺される代わりに、指揮官の娘の結婚式のケーキを作るために卵を1ダース集めるという任務を与えられる . . . 本文を読む
昨年出版された海外ミステリの中で評判が良かった「ファージング1 英雄たちの朝」を読了した。解説はどこかで読んでもらった方が良いのだが、第二次大戦でイギリスがナチスドイツと和平を結んだという時代背景で書かれている歴史改変小説で、ミステリである。前半はある貴族の家で起きる殺人事件を刑事が捜査するというものなのだが、これが実は大きなストーリーの幕開けでしかないことを途中から知ることになる・・・というよう . . . 本文を読む
マイクル・コナリーのハリーボッシュ・シリーズ「死角 オーバールック」読了。後書きにもあるように、「24」を思わせるようなストーリーと展開で一気に読ませるのが一番の特徴。ミステリーとしてのプロットは単純で、ある終着駅に強引に到着させるためレールが何本も敷かれているというような感じ。聞けば連載モノだったようで、あまり複雑な筋書き、ボッシュシリーズ特有の雰囲気を演出することは難しかったのではないかと推察 . . . 本文を読む
たまたま本屋で何となく見つけた本だが、これは面白かった。恥ずかしながらドナルド・キーンなる人がどのような人物か知らなかったし、さらに恥ずかしくなるくらい日本の文化(専門は江戸文学らしいが)について詳しいことだ。この人が司馬遼と対談をするという企画を考えた出版社はなかなか凄い。
この本では二人がそれぞれの史観で、日本の歴史上の人物なり宗教なりを斬って行くのだが、基本的には一方通行の議論で、時に交 . . . 本文を読む
古本屋で見つけたロス・マクドナルドの「ウィチャリー家の女」を読んだ。著者はいわゆるハメット、チャンドラーに続くハードボイルド小説作家である。彼の作品は、登場人物が精神を病んでいるような人が多く、作品全体を狂気に満ちたとまで言わないまでも、暗い仕上がりにしてしまっている。評論家の中には、当時(70年代)のアメリカの病気を写しだしているというような書き方をする人がいるようだが、私は良く分からない。
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今年のミステリを総括するランキング本などが出始めているが、こちらは対象期間から微妙に外れているのかもしれない。催眠療法医師が絡む二つの事件が主題だが、よくよく考えてみると、話の筋自体は非常に単純。ただし、物語の仕方で読者を楽しませている。また一応主人公と見られる刑事のキャラクター設定もちょっと面白い。こちらも(私の中で)今をときめくスウェーデン・ミステリで、確かに女性の人権などに対する思想などが興 . . . 本文を読む
お得意のヘニング・マンケル、ヴァランダー刑事シリーズの最新作「五番目の女」読了。本当はもっと後に読もうと思っていたのだが、勢いで読んでしまった。(以下、いきなりネタバレになります)■
今回は、女性に対する男性の暴力と犯罪に対する私的な暴力による解決という二つの事項が骨となって、物語が出来上がっている。ミレニアム・シリーズでもそうだったが、スウェーデンのミステリというのはそういうものが多いのだろ . . . 本文を読む
ジョン・ダニングの「愛書家の死」読了。書店で見つけ、待ってましたという感じですぐさま購入した。古本屋の主人公が、ある死んだ愛書家の蔵書の整理を頼まれるところから始まる。関係者のほとんどが厩舎や馬主だったりして、主人公も馬引きとして厩舎に雇われたりする少し特殊な展開。蔵書が盗まれていることと愛書家の死につながりがあることが明らかになってきて、物語は二転三転する。
ミステリとしてはまあまあ面白い方 . . . 本文を読む
だいぶ前の話だが、近所の本屋がディック・フランシスの死去を機に、競馬シリーズ全巻の表紙を表にして、棚に飾っていた。それを見て、今一度このシリーズを読み返してみたいと思った。読み返すというと全て読んでいるようだが、そうではない。バラバラと虫食いで読んでいるので、作品によっては読んだかどうかも覚えていないものがある。しかし、そもそも究極的にはどれを読んでも似たような後味なので、過去どれを読んだかなどは . . . 本文を読む