大学のカリキュラム編成
大学のカリキュラム編成については、平成19年(2007年)の大学設置基準法の改正により、大学の自主性が認められるようになった。
それは、文科省によると、「大学の教育研究については、本来大学の自主性が尊重されるべき事柄であること、また、大学には、社会との対話を通じて、弾力的かつ柔軟にカリキュラム編成し、またそれを不断に改善していくことが求められることなどによる」ためである。
この2007年の改正条文中、カリキュラムに関連する条文は、次の2つの条項である。
第2条の2:大学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとする。
第19条: 大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。
要するに、大学は、①学部、学科等ごとに、教育研究上の目的を定め、公表する義務を負うが、②この目的を達成するために必要と考えるカリキュラムを、自由に編成してかまわないというものである。
なおも存在するしばり
文科省の説明は、カリキュラム編成の「自由」を強調しているが、なおも、しばりをかけていることを見過ごしてはならない。
すなわち、大学は、①自ら掲げる教育上の目的を達成するために、体系的に科目を編成しなければならず、②学部の専門教育をおろそかにしてはならないことである。
このことは、改正大学設置基準法の先の第19条にも示されている。
すなわち、「大学は、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする」と規定されており、
カリキュラム編成にあたっては、単に「学科」または「課程(=コース)」の教育目標ではなく、「学部」の教育目標を達成することを、当然のこととしているのである。(「及び」という語に注意)
スポーツシステムコースの逸脱
さて、我々は、本ブログにおいて、スポーツシステムコースのカリキュラムを検討して、いささかセンセーショナルな表現で、「亜・法学部化」「無・法学部化」を指摘してきた。
すなわち、同コースにおいては、卒業所要単位127のうち、2011年度入学生からは、法律科目の必修単位数はわずか20単位(5科目)に、2013年度入学生からは16単位(4科目)に引き下げられ、法学の勉強は無用のコースと化した。
大綱化(=簡素化)により、大学のカリキュラム編成の自主権が認められたとはいえ、我々の先の検討によれば、「学部教育」から逸脱したカリキュラムは、違法の疑いが濃厚である。
法学部は、やはり法律の専門科目を学ぶ場でなくてはならない。この法学教育を担う法学部のなかに、わずか16単位(4科目)の法学の履修しか義務付けないコースを存在させることは、違法といわざるを得ない。
「亜・法学部」⇒「無・法学部」の正体は、「違法学部」ということであったか?
おそらく、改正の答申を出した大学審議会も、またそれを受けて省令を改正した文科省も、まさか大学が、学部教育から逸脱したこのようなコースを設置するとは、思いもよらなかったことであろう。
文科省や大学審議会は、この事実を知ったら、どう対処するのであろうか!?