Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

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ウィキペディア丸写し、町側事実誤認 奈良妊婦死亡訴訟

2009-12-26 21:30:54 | ウィキペディア記事
ウィキペディア丸写し、町側事実誤認 奈良妊婦死亡訴訟
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200912220003.html
 (asahi.com 関西 2009年12月22日)

奈良県大淀町の町立大淀病院で2006年8月、出産中の妊婦が19の病院に転院の受け入れを断られた末に死亡した問題で、遺族が町と担当医師に約8800万円の損害賠償を求めた訴訟で、被告の大淀町側の代理人が事実と異なる経緯を準備書面に記載していたことがわかった。
誰でも書き込みができるインターネット上の百科事典「ウィキペディア」からそのまま引用していた。今後、大阪地裁に上申書を提出し、この部分を訂正するという。
長男の出産後に脳内出血で亡くなった女性(当時32)の夫の原告(27)が、大阪地裁で21日にあった陳述で明らかにした。

被告側の第7準備書面は訴訟に至る経緯を「07年2月に検察が立件を断念すると、検察審査会に不服申し立てをし、不起訴不当議決を得て検察が再捜査を始める中で、当初民事訴訟はしないと言っていた原告らは07年5月に本訴を提起した」とした。
しかし、立件を断念したのは奈良県警で、検察審査会にはかかっていなかった。被告側代理人の米田泰邦弁護士は「書面作成にあたってウィキペディアを参照した。具体的な日付まで書いてあったので、間違いがあるとは思わなかった。争点に関係ないので、被告の大淀町に刑事告訴の有無などの事実経過は確認していない」と話した。
(後略、原文の一部氏名伏せる)

またですか。
ネットリテラシーのなってないゆとり学生と同レベルじゃないですか。www
> 被告側代理人の米田泰邦弁護士


えーと、ウィキペディアを参考にしてくれるのは一向に構わないです。
しかしウィキペディアは「既存の研究を集成した」だけのサイトですから、記述内容には必ず出典があるはずなのです。
ウィキペディアの公式方針には「検証可能性の担保」というのがあり、そして実際、出典を明記することは、ウィキペディア内の全記事において全執筆者に対し、事あるごとに口を酸っぱくして要求されています。

ですから、何かの研究の参考にウィキペディアをご利用される際は、必ずその文章に付された出典を確認し、その出典をこそご自分の研究にてご利用されるべきなのです。
(まれに虚偽の出典が付されている悪質な事例もありますが、それも出典をご自分で再確認される作業を経ていれば、容易に見破れるものです)

ですが現実問題として、現在のウィキペディアには適切な出典が付されていない記事や記述がまだまだ多数存在します。
これはウィキペディア黎明期から少し前まで、執筆者に対する書誌学的な知識・素養の普及が遅れていたことが一因であろうと私は考えています{{独自研究}}。
ともかく、出典の付されていない記述については鵜呑みにすべきではない……というのは、ウィキペディア情報の利用の仕方の基本であります。

「ウィキペディアは俄かには信用できない」というのは、残念ながら事実です。
しかしその信用できない理由は、「まだまだ未完成であるから」であり(ウィキペディアは永遠に未完成だ…とも言いますが)、具体的には出典明記や検証可能性担保の基本方針の遵守が未了の部分が多いからであります。
決して(上記新聞記事にある)「誰でも書き込みができる」からではないことをご理解ください。
細かい部分まで多くの出典が付されたまともな記事も、最近では徐々に増えてきています。


それと、ウィキペディアから「そのまま引用していた」件の是非ですが、
これも一向に構いません。但し「ライセンス要件に従っていれば」ですが。
具体的には CC-BY-SA-3.0GFDL の両ライセンスを満たす形であれば、ウィキペディアのコンテンツを二次利用することは自由です。

本件における被告代理人の準備書面の記載書式はこの報道からはわかりませんが、
もし「参考資料: 大淀町立大淀病院事件 - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/大淀町立大淀病院事件」などと書いていたのであれば、(→本エントリの冒頭文言へ戻る
もしそれさえも記していなかったのであれば、それはもはや著作権法32条1項に基づく適法引用ではなく、剽窃となります。

なお、ウィキ・システムを利用しているウィキペディアの記事内容は静的なものではありませんので、編集が入れば時々刻々変わってゆくものです。
ですので、ご自分の研究においてウィキペディアを出典としてご利用される際は、ご自分が参考にされた特定の版を指定して明記されることを強くお勧めします(書誌学的に考えて)。
ページのサイドバーにある「この版への固定リンク」という所の URI がそれで、ここを踏みますと、ページタイトルの下に版の日時(と最終編集者の利用者名)が表示されます。


ところで、ウィキペディアの記述がたとえ誤っていたとしても、それを利用したことによる責任はすべて利用した側にあり、ウィキメディア財団およびウィキペディアの各執筆者が責を負うことはありません。情報内容は無保証であり、利用は自己責任です。
このことは、全ページのフッタからリンクされているウィキペディアの免責事項に明記されているとおりです。

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