Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

「二次元版権モノ」記念切符の類例(2)信濃大町駅

2010-12-06 23:49:06 | 陸上交通
前回から、「二次元版権モノ」鉄道記念切符の事例を幾つか振り返って考察しています。
今回はその2回目。

(1)近江鉄道


■case 2-a. 信濃大町駅×『おねがい☆ティーチャー』(第1次発売・2008年9月)
2002年放映の『おねがい☆ティーチャー』と翌2003年放映の続編『おねがい☆ツインズ』(ともに監督: 井出安軌、アニメーション制作: 童夢)の舞台となった長野県大町市木崎湖周辺は、このアニメ作品の "聖地" としてすっかり定着し、放送からかなり経った今でも多くのファンが訪れています。
"巡礼" のブームが大林映画などと同じようにロングテールとなっている点で、日本におけるコンテンツツーリズム史上に特記すべき重要事例の一つであるといえます。

劇中にはJR東日本大糸線とその複数の無人駅も登場して名シーンの舞台にもなり、それらは "聖地" の一つとなるとともに巡礼者たちの足ともなっています。
そこで、これらの駅を管理する信濃大町駅(*f)にて、本作の版権絵を用いた『アニメのなかの大糸線入場券』が2008年9月1日から発売されました。

 ▼体裁: 2つ折台紙1枚中に切符4枚綴り
 ▼券種: 入場券
 ▼発売額: 560円
 ▼発売数: 1,000枚
 ▼発売期間: 1ヶ月(30日)間
 ▼有効期間: 発売開始日から1年内の1回限り有効
 ▼通信販売: なし



この切符の他の類例と異なる一大特徴は、背景美術(有限会社草薙による。美術監督: 堀 壮太郎、美術基本設定: 須江信人)のみが用いられ(*6)、キャラ絵が一切ないところです。
近江鉄道さんもこれを見倣い、校舎の内外装の絵でいくべきだったのでは……というのは私見。)

なお地元では時を同じくして、2008年9月1日から30日まで複数会場において『草薙背景原画展2008 ~アニメのなかの木崎湖~』(主催: 木崎湖観光協会・木崎湖温泉開発株式会社)が開催されていました。
地元としてはあくまで、地域の風景こそが主役(最優先事項)というスタンスなのかもしれません。


ちょっと面白いのは、この切符の企画発案は地元の観光協会さんやNPOさんなどではなく、信濃大町駅員の発案だったこと(*7)。
どんだけクオリティ高いオタ鉄道員が揃ってるんだ、長野県にはw

話が逸れますが、2009年秋にネットに出回った有名な鉄道系ネタ画像(初出・著作者とも不明)に、「特急あずさ meets 中野あずさ」(*g)というものがありました。
写真の手提げ袋が置かれているのは乗務員室の中であり、鉄道員によって持ち込まれたのでなければ実現し得ない光景です。
これもJR東日本長野支社所属の乗務員による "プロの犯行"(笑)であると推定されています。


(原写真 (640 × 480 px) からの部分切取)


この切符の売れ行き推移を、劇中に「縁川(へりかわ)商店」として登場した店のモデル店の店主さんが定期的に信濃大町駅に問い合わせてブログに載せておられました。

 9月1日 17:16 現在で202枚
 9月3日 16:30 現在で416枚
 9月4日 17:00 現在で514枚
 9月5日 10:00 現在で555枚
 9月6日 午前 現在で約710枚
 9月6日 15時台頃 850枚完売

なお残りは、9月21日に開催された有料清掃イベント『みずほプロジェクト2008 ~2017年の木崎湖も美しく~』(主催: みずほプロジェクト実行委員会)の参加者向けに取り置きされていました。
取り置き分は当初200枚でしたが、後に150枚に変更されました。1,000枚発売でありながら850枚で完売となったのはこのためです。

購入者のほとんどは外来の旅行者であると思われるのに、この勢い。
彼らの鉄道利用の運賃収入や地元での飲食・宿泊等、切符代以上の結構な経済効果があったものと思われます。


■case 2-b. 信濃大町駅×『おねがい☆ティーチャー』(第2次発売・2010年12月)
それから2年余を経て、こちらも第2次の発売と相成りました。
名称は『アニメのなかの大糸線入場券~second~』、発売開始はつい先週の2010年12月1日からです(*8)。

 ▼体裁: 2つ折台紙1枚中に切符4枚綴り
 ▼券種: 入場券
 ▼発売額: 560円
 ▼発売数: 2,000枚
 ▼発売期間: 6ヶ月間
 ▼有効期間: 発売開始日から6ヶ月内の1回限り有効
 ▼購入数制限: なし
 ▼通信販売: なし




今回も都会から離れた地のこの1駅のみでの販売で、半年内に2,000枚を売り切るつもりです。
前回と違って作品関連の現地イベントもなく、観光閑散期でしかもこれから寒冷となる時期の発売ですから、発売期間が晩春まであるとはいえ、なかなか強気にも見えます。
ところが前回実績を考えれば決して冒険な枚数などではなく、春が来る前に売り切ることができそうなのが恐ろしいところです。なんたるコンテンツ力。

実際、今回も縁川商店ブログさんによると発売初日の14時半頃までに300枚超が売れたとのことです。出足の勢いは前回を上回っているじゃありませんか!
木崎湖キャンプ場さんのブログの同日付エントリにも同様の情報が。10枚とか20枚とか買われる方も何人もおられたようです)
その後の推移は、3日現在で450番台、4日午後現在で550番辺り。
このペースだと、もしかして年内ないし松が明けるまでに2,000枚が完売するかもしれません。


(続く)
(1)近江鉄道 (3~)西武鉄道

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(*f) = 信濃大町駅自体は劇中に登場せず。
(*g) = 見ての通り『けいおん!』の中野梓。絵はアニメ1期版の版権絵(原画: 堀口悠紀子、仕上げ: 津田幸恵)で、初出は「メガミマガジン」2009年9月号(通巻112号、2009年7月30日発売。発行: 学研パブリッシング)の折込ピンナップ。

(*6) = アニメの舞台を絵柄に 大糸線無人駅の入場券9月1日発売 - 信州Liveon(記事提供: 信濃毎日新聞)、2008年8月31日
(*7) = アニメの舞台をファン向け駅入場券に 長野のJR大糸線 - asahi.com、2008年8月31日
(*8) = 「アニメのなかの大糸線入場券~second~」を発売します (PDF) - JR東日本長野支社、2010年11月15日

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東日本旅客鉄道株式会社 長野支社
http://www.jreast.co.jp/nagano/
東日本旅客鉄道株式会社 長野支社
木崎湖のおそば屋さん...縁川商店ブログ
http://kizakiko.269g.net/

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Summary of images:
Description = アニメのなかの大糸線入場券
Source of pictures = 有限会社草薙
Source of image = http://www.asahi.com/showbiz/manga/TKY200808300032.html
Date = 2008-08-31
Author = (c) Please!/バンダイビジュアル / (c) JR EAST NAGANO
Permission = 日本国著作権法32条1項に基づく引用

Description = 特急「あずさ」と中野梓
Date = before 2009-11
Source of picture = 堀口悠紀子
Author of picture = (c) かきふらい・芳文社/桜高軽音部
Source/Author of photograph = unknown
License of photograph = unsure

Description = アニメのなかの大糸線入場券~second~
Source of pictures = 有限会社草薙
Source of images = http://www.jreast.co.jp/nagano/pdf/101115_1.pdf
Date = 2010-11-15
Author = (c) Please!/バンダイビジュアル / (c) JR EAST NAGANO
Permission = 日本国著作権法32条1項に基づく引用


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