2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

会議場でパフォーマンス!

2005-12-09 19:07:42 | 国際交渉

 今回の会議には、世界各国の環境NGOが多数参加しています。気候行動ネットワーク(CAN)のメンバーも多く、毎日の会議も部屋からあふれるほど参加しています。会議場の中や隣のビルの一部も、COP、MOP関係の展示場になっており、様々なNGOや企業、ユースグループがパフォーマンスなどを行っています。

◆ 小池大臣、「京都メーター」にチャレンジ(WWF)
 温暖化の影響で絶滅が危惧されるシロクマを前に、どれくらい真剣に温暖化対策をやろうとしているかを図る「京都メーター」にチャレンジ!【写真左】

◆ 「化石燃料恐竜」出現(FOEジャパン)
 よく見ると頭が車、脇が飛行機になっていて、おなかに高速道路が走っている、こわーい恐竜です。(実は、この恐竜、日本からここに着くまでにいろいろ大変な目にあっています。)【写真中央】

◆ 「ベッドの中から温暖化対策を叫ぶジョン・レノン」(ユースグループ)
 今回は世界から18才~26才までのユースが集まり、様々なアクションを行っています。今日は、各国から到着した大臣との会合などももっていましたが、注目を集めていたのは、会議場の真ん中でのアクション。エレベーターの前を陣取って布団をかぶり、温暖化対策への行動を訴えました。【写真右】

二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書

2005-12-09 19:02:10 | 国際交渉

 SBSTAの総会で、IPCCから、今年9月にとりまとめた二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する特別報告書の概要についての報告があり、この報告書の内容を検討するためのコンタクトグループが設置されました。今回の会議では、炭素回収・貯留技術に関する問題が、資金、緩和対策やCDMの議論の中でも争点になっています。

 CCSとは、工場や発電所などから排出された二酸化炭素を回収して貯留し、長期間大気中から隔離するシステムのことです。代表的な方法として、海洋貯蔵と地中貯蔵の2つがあります。CCSによって、二酸化炭素の大気中濃度の増加を緩和することができると考えられていますが、排出削減ではなく先送りの対策であるなど多くの問題点も指摘されています。

 今回の会合でも、多くの国はCCSの有用性を指摘する一方で、その実用化に向けて時間とコストがかかることや技術の特性について多くの未解決な問題があることを指摘しています。とくに海洋貯留について、ノルウェー、EU、G77・中国は技術開発の検討が時期尚早であることや小島嶼国連合は技術上のリスクに懸念を表明しています。12月3日のコンタクトグループでは、「二酸化炭素回収・貯留のIPCCの評価に留意し、締約国および民間部門がこの技術の研究、開発、展開、普及を支援することを推奨し、ワークショップの目的および報告書作成を規定し、GEF に対して二酸化炭素回収・貯留への支援、特にキャパシティビルディングを通しての支援が、その目的と一致しているかどうかを検討するよう要請する」(Earth Negotiation Bulletin, vol.12 No.286, December 5, 2005.)と合意されました。

 特別報告書は、「政策決定者向け要約及び技術要約(SPM)」(53ページ)と本編(約360ページ)で構成されています。SPMでは、9つの主要な論点についてQ&A方式で紹介されています。

1) CCSとは何か。どのように気候変動の緩和へ貢献できるのか。
2) CCSの特徴とは何か。
3) CCS技術の現状とはどのようなものか。
4) CO2の注入と貯留時の地質学的関係はどのようなものか。
5) CCSのコストと技術的・経済的可能性はどのようなものか。
6) CCSによる地域での健康面、安全性、環境リスクとはどのようなものか。
7) 貯留されたCO2の物的な漏れは気候変動緩和オプションとしてのCCSを危うくしないのか。
8) CO2貯留を実施する上での法的・規制上の問題は何か。
9) 知見での相違とは何か。
 
 とりわけ重要な論点は、5)CCSの技術的・経済的可能性と 7)貯留された二酸化炭素の漏れの可能性です。

 まず、現時点の技術的可能性については、二酸化炭素の回収と輸送、地中貯留は条件次第で経済的に実現可能ですが、海洋貯留は実験段階と評価されています。地中貯留の場合、2兆トンもの炭素貯留が可能と推測されています。経済性については、火力発電所を事例に天然ガスや微粉炭などの燃料別と技術構成別に評価がされていますが、環境影響や炭素漏れの危険性などにより不確実性が大きくなると指摘されています。

 次に、炭素の漏れについては、地中貯留の場合、100年又は1000年後でもほとんど危険性はないと評価されています。しかし、海洋貯留の場合、場所や深さによって異なりますが、100年後で65~100%維持可能、500年後には30~85%の維持可能にとどまります。

 特別報告書は現実のデータが存在しないことを重視し、知見不足の解消に向けて生態系や環境への影響について慎重に検討するように求めています。しかし、地球環境基金(GEF)などのいくつかの機関は、すでにCCSをプロジェクトとして認めています。これに対して、気候行動ネットワーク(CAN)は、「CCSが温室効果ガス・インベントリー・ガイドラインと計測ルールに適合するのかを検討すべき」(ECO, December 7, 2005.)と指摘し、締約国に対してCCSへの慎重な対応を求めています。

遵守制度は決着、次期枠組みは対立

2005-12-09 18:59:23 | 国際交渉

◆ 遵守制度の採択問題が決着

 コンタクトグループで議論していた遵守制度の採択問題は、12月7日に最終合意が成立しました。これで、京都議定書の運用ルールはすべて採択され、遵守制度も含めて京都議定書は完全に始動することになります。
 合意では、COP/MOP決定として、不遵守の措置(帰結)に法的拘束力のない遵守制度を採択し、サウジアラビアの提案していた不遵守の措置(帰結)に法的拘束力を与える改正については、COP/MOP3で改正することを目指して、検討を開始することになっています。
 また、遵守委員会をこのCOP/MOP1で立ち上げ、2006年の早い時期にドイツのボンで第1回委員会を開催することになっています。


◆2013年以降の次期枠組みの交渉

 残された問題は、2013年以降の次期枠組みの交渉です。既報のとおり、京都議定書3条9項は、2013年以降の先進国の削減目標の検討を、「第1約束期間が満了する少なくとも7年前に開始する」と規定しており、この規定に従って「議定書3条9項」というコンタクトグループでこの問題が討議されています。
 この議定書3条9項の討議とは別に、12月6日に条約の締約国会合(COP)での「長期の共同行動の議論のためのプロセスについての決定」についての議長案が配布されました。
 この議長案は、COPのガイダンスのもとで「長期の共同行動」の議論を始め、先進国と途上国から選ばれる2人の共同議長の下で、すべての締約国に開かれたワークショップを設置し、2007年12月のCOP13までに結論を出すとの提案になっています。また、各締約国は、「長期の共同行動」についての提案を2006年3月15日までに提出することを提案しています。
 2013年以降の次期枠組みにつての交渉を、議定書の締約国会合であるMOPで議論するか、議定書を批准していないアメリカやオーストラリアも参加する条約のもと(COP)で議論するか、それとも両方で議論するかなどを巡って意見が分かれています。
 また、議定書のもとでの議論についても、議定書3条9項に基づく先進国の次期約束期間の削減目標の議論を直ちに始め、2008年末までに合意することを求める途上国グループと、すべての締約国が「京都議定書の第1回目の検討を2006年のCOP/MOP2で行う」と規定する議定書9条にも言及することを求める先進国が対立しています。
 すでに会議も残るところ2日を切り、2013年以降の次期枠組みについての決定をどのような内容、形式にするかは各国の閣僚の判断に委ねられることになります。

閣僚級会合始まる

2005-12-09 18:55:52 | 国際交渉
 12月7日から閣僚級会合が始まり、各国の閣僚が演説を行っています。ホスト国カナダのマーティン首相は、地球温暖化による悪影響はすでに始まっており、早急に対応が必要であると述べ、温暖化による被害を受けるのは途上国であり、先進国は更なる対策の推進が必要であるとの認識を示しました。また、今回の会合において、京都議定書の将来の約束を検討することが長期的な温暖化対策の解決に向けた明確な信号となるとし、2013年以降の枠組みについて実質的な議論の進展を求めました。さらに、気候変動の脅威への努力に依然として抵抗したり、その重要性を軽視している国があると次のように批判しました。

 「問題に背を向けることで快適さを得ている時代は終わりました。地球共同体から孤立して、どのような国も成り立たつことはできません。なぜならば、地球は一つしかなく、私たちはそれを分かち合っているからです。どのような国のどのような島や都市でどのように繁栄していようと、対策を何もしなければ、温暖化の影響から逃れることはできないのです。」

 ステートメントの後の記者会見で、マーティン首相は、「気候変動の脅威への努力に依然として抵抗したり、その重要性を軽視している国」とはどこかと聞かれ、アメリカだと答えたそうです。京都議定書への復帰や将来枠組みについてどのような発言をするか注目されていたアメリカは、ブッシュ政権の独善的なPRにとどまり、意味のある発言は何もありませんでした。
 12月8日午前には、日本の小池環境大臣が演説を行い、温暖化対策のあり方についての4つの要素について行うべきだとしました。第1に長期的な視点で対策を行うべきであること、第2に温暖化対策を実施する上で貧困や経済成長に焦点をあわせる必要があること、第3に温暖化対策の技術の開発に向けて投資を増やすこと、第4に全ての国が参加する枠組みが必要である指摘しました。しかし、多くの国や環境NGOが望んでいたのは、2013年以降の枠組みに向け、確実な歩みをこのCOP/MOP1で歩み始めることに日本が明確な意思を示すことでしたが、残念ながらこうした明確な意思は示されませんでした。