2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

日本が化石賞1位を連続授賞

2005-12-07 17:40:41 | 国際交渉
 12月1日、日本が今回初めての化石賞<Fossil of the Day>を受賞したのに引き続き、12月2日(金)と12月5日(月)と週をまたいで連続して第1位に選出されました。

◆ 12月2日(金)の化石賞

1位 日本

 授賞理由は、土地利用、土地利用の変化と林業(LULUCF)に関するコンタクトグループで、日本が提案した森林などの吸収に関する目録の不履行の基準が、すべての国に自動的に適用され、京都議定書の下におけるすべての吸収活動の妥当性が損なわれる可能性があるというもの。

* マラケシュ合意では、各国が条約事務局に報告する年次排出・吸収目録が正確であることが、京都メカニズムの参加の適格性要件になっています。マラケシュ合意で、吸収源を除く温室効果ガスの排出・吸収については、審査した結果、訂正された排出量が提出された排出量を7%以上超過している場合は、正確性を欠くとして京都メカニズムに参加できなくなるとされています。吸収源については、この基準が決められず、宿題として残されていたものです。今回の日本の提案は、吸収源の不履行の基準の計算方法について、訂正率を計算する分母に吸収源以外の化石燃料などすべての排出量を入れることにより、訂正率を大幅に少なく計算できる方法で、これが通ってしまうと、実際の吸収量より大幅に多い吸収量を報告できることになってしまいます。

2位 カナダ

 日本の提案をサポートしたこと。

3位 アメリカ

SBSTAの総会などで、島嶼国への特別なニーズに対する認識を促す議題に対して反対し、そのような議論は「適応5ヵ年計画」の中でやればよいと発言したこと。


◆ 12月5日の化石賞

1位 日本とEU

 次期約束期間の議論で、いつまでに合意するかの期限を提案していないこと。

2位 オーストラリア

 環境大臣が「京都議定書の問題は、世界のほとんどの国々、特に急激に排出量を増やしている開発途上国が含まれていないこと」であり、「参加している先進諸国は目標を10、20、25、30%にでも増やせばよい」と発言したこと。


(写真:12月2日の今日の化石賞の授賞の様子。プレゼンテーターはCASAの大久保ゆり)

HFC23破壊のCDM事業をめぐって

2005-12-07 17:38:21 | 国際交渉
(1)問題の背景
 COP10において、他の環境条約の目標達成に影響を与えるようなCDM事業をどうするかということについての議論がありました。今回の会議では、モントリオール議定書との関係で、新規に建設されたHCFC22 製造工場でのHFC23 破壊事業(以下、新規フロン事業)がCDMとして認められるべきかどうかが議論されています。HCFC22を製造する際に副産物として発生するHFC23は温暖化係数が非常に大きく、その回収・破壊を行うことによって非常に効率的に認証排出削減量(CER)を得ることができるため、CDMビジネスとして注目を浴びています。しかし、HFC23破壊のCDM事業を行うことを目的に、途上国でHCFC22製造工場が新たに建設され、結果としてオゾン層破壊物質の増加を招くのではないかという懸念や、価格の安いこれらのプロジェクトからのCERが市場に蔓延することで、実施費用のかかる再生可能エネルギーなどのプロジェクトがさらに実施しにくくなる状況になること、また、このようなプロジェクトがCDMで期待されている技術移転を促さないなどの懸念が示されています。

(2)各国の意見
 この新規フロン事業をどうするかということに関する締約国からの意見には、主に以下の3つがあります。1)新規フロン事業はCDMとして認めない、2)新規フロン事業はCDMではなくGEFや二国間または多国間資金援助などのメカニズムによって支援されるべきである、3)新規フロン事業による悪影響が的確に対処される方法論が承認されるならばCDMとして認める。
 日本は、あらゆる技術はCDMの枠組みから排除されるべきではなく、新規に建設されたHCFC22製造工場が市場からの需要を反映した結果であることを証明できるならば、新規フロン事業をCDMとして認めるべきだとして、オプション3を支持しました。
 アメリカは、新規フロン事業は途上国でのHCFC22の排出量増加につながりモントリオール議定書の目標達成に悪影響を及ぼすとして、オプション2を支持しました。この背景には、最近、アメリカ国内の化学産業がHFC23の排出を抑えたHCFC22製造技術の開発に成功し、新規フロン事業がCDMとして認められた場合、その技術の競争力が損なわれるという懸念があるようです。
 中国は、途上国にとってHCFC22はCFCに代わる物質として非常に重要であり、市場からの需要がある限り、HCFC22の使用は妨げられるべきではないと主張しました。中国は、新規フロン事業から発生するCERの65%を持続可能な発展のための資金確保を目的として徴収することを決めており、方法論に同様の規定(ホスト国がCERの50%以上を徴収し、温暖化対策や持続可能な発展のための資金とすること)が加えられるならばCDMとして認めるべきだとしてオプション3を支持しました。

(3)今回の決定草案
 現在の段階での決定草案は以下のようになっています。まず、新規HCFC22製造工場の定義は、
1)2000年から2004年の間に操業を開始し、現在までに少なくとも3年間の操業実績があり、さらに最新のHCFC22生産量が過去最大の生産量よりも多い工場
または、
2)2000年から2004年の間に操業を開始し、操業実績が3年未満の工場
のいずれかとなっています。
 また、新規フロン事業からのCERを認めることによってHCFC22やHFC23の排出量を増加させてしまうため、CDMがそのような排出量増加を招くことがないように求められています。そして、先進諸国(附属書I国)であり、多国間資金援助を行う機関に入っている国が、CDM以外のメカニズムを用いて開発途上国(非附属書I国)のHFC23破壊事業への資金援助を行うことが奨励されています。
 新規フロン事業の議論は、CDM理事会のガイダンスの下、SBSTAで行うこととし、COP/MOP2まで決定が先送りにされました。
以上の決定草案が、今回のCOP/MOP1で採択される予定です。

 新規のフロン事業は、決定内容によってはオゾン層破壊物質を増加させる可能性を否定できないという点、また、持続可能な発展に繋がる事業であるかどうかという点においても疑問の残る事業であり、CDMで進めるべき事業とは思えません。新規フロン事業が認められることなく先送りにされたことで、このモントリオールで、オゾン層破壊物質を規制したモントリオール議定書を否めるようなことにならなかったことに、とりあえず安心した国が多かったのではないかと思います。

遵守、適応、資金問題

2005-12-07 17:36:48 | 国際交渉
◆ 遵守制度の採択問題

 遵守制度の採択問題は、12月2日(金)に非公開での政府間の調整が行われ、そこでコンタクトグループの議長の案が出され、これをもとに協議が続いているようです。
 現在、遵守制度についてのマラケシュ合意を法的拘束力のないCOP/MOP決定として、このCOP/MOP1で採択することに反対している国はありません。対立している点は、1)サウジアラビアのようにこのCOP/MOP1での改正までしてしまうのか、2)改正についてはこのCOP/MOP1で検討を開始し、来年のCOP/MOP2で改正を決議するか、3)いつ改正するかまでは決めないか、です。日本は、COP/MOP1で検討を開始することには反対しないが、改正をいつするかを決めるのには反対しているようです。ほとんどの国は、改正についてはこのCOP/MOP1で検討を開始し、来年のCOP/MOP2で改正を決議することを支持していると見られます。
 いずれにせよ、このCOP/MOP1で決定をして遵守委員会を立ち上げないと、京都メカニズムの参加資格の審査が遅れることになり、クリーン開発メカニズムなどの京都メカニズムの運用に支障を来しかねません。日本も、もし遵守制度の不遵守の措置に法的拘束力を与えることにあくまで反対するというなら、改正がされても、この部分は批准しないという選択肢があります。日本があくまで、改正の時期を決めることに反対しつづければ、COP/MOP1決定まで失いかねません。

◆ 適応計画

 COP10で採択された「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」の中の「5ヵ年計画」に関しては、途上国はこの計画が実質的な適応策の「実施」につながることを主張する一方で、先進諸国は、まずそれぞれの地域の脆弱性や影響のデータ収集など、適応策への理解を深めることの重要性を指摘しています。また、途上国は適応策を実施するためのネックになっているのは、資金確保であり、特にツバルはこの5ヵ年計画をSBIの下でも議論すべきだと主張しています。カナダは、この5ヵ年計画をSBIの下で議論されている適応に関する基金と合わせて「適応パッケージ」としてまとめるように提案しましたが、どのように進めようとしているのかというのは未だに見えてきません。
 現在コンタクトグループでは、議長が、5ヵ年計画の目的、最終的にこの計画として求められる結果、計画で扱う範囲、プロセス、計画の詳細に関する決定草案をまとめ、その内容について議論がなされています。
 この中で注意したいのは、5ヵ年計画の中でも石油消費減に対する補償を含める対応措置を求めるサウジアラビアの発言です。昨年のCOP10においてまとめられた「適応と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」においては、サウジアラビアをはじめとする産油国が求める対応措置は、5ヵ年計画とは別に議論されることになっていましたが、ここにきてあらゆる場面で対応措置の問題を取り上げるように主張しています。
 この問題に対する日本の姿勢は、適応策は、途上国と先進国双方を含めた全体の問題であり、脆弱性や影響の評価をまず行う必要があるというもので、途上国への支援要請を回避するような姿勢を見せています。

◆ 資金問題

 資金問題については、最初の総会から、基金を運営する地球環境ファシリティ(GEF)に対する途上国の不満が多く出ていました。特にGEFの運用措置が適応支援を実質的に難しいものにしていること、また今回初めて議論される適応基金に関して、COPからのガイダンスを待たずして、適応基金の運用に関して世界銀行との覚書が結ばれたことに対する懸念が示されました。適応基金に関しては、EUと途上国グループから運用に関するドラフトが出ていますが、EUの提案は途上国にとって資金へのアクセスを難しくする内容になっており、現在非公開の会合で途上国グループとの調整が進んでいます。
 適応策は資金問題が鍵になっていますが、日本政府は、資金のことはお金がないの一点張りで、対策についても交渉態度を見る限り、充分な戦略を持ち合わせていません。しかし、適応策に関する議論は、2013年以降の次期枠組みの構築に関わる重要な課題であり、この問題に対してもっと前向きな姿勢を表明していくべきです。

2013年以降の次期枠組みの交渉と米国の参加

2005-12-07 17:18:29 | 国際交渉
 先進国と途上国の参加だけでなく、アメリカをどう参加させるかも隠れた大きな論点です。日本政府は、一環して「すべての締約国の参加」を主張し、アメリカも含めた交渉を開始すべきだとしています。
アメリカを参加させようとすれば、アメリカが参加していない京都議定書ではなく、アメリカが参加している気候変動枠組条約のもとでの交渉が必要になります。
 ディオン議長は、この議定書3条9項のもとでの交渉とともに、条約のもとでアメリカも含めた2013年以降の削減目標と制度設計についての議論を開始するCOP決議をすべく、水面下の交渉を続けていると言われています。
 しかし、現在のブッシュ政権が議定書交渉にすぐに戻ってくる可能性は極めて低いことも事実です。アメリカの環境NGOは連名で下記のような手紙を各国政府に送っています。
 いずれにせよ、2013年以降の次期枠組みの交渉をどう開始し、いつまでに終わるかの交渉は、明日12月7日から始まるハイレベルの閣僚級交渉に委ねられることになります。


アメリカの環境NGO から各国政府への手紙(eco 11/29 抄訳)

 アメリカの環境NGO は、明確な次期枠組みに関する交渉プロセスに合意しなければ、会議は成功とはいえないと考えている。その障害は、アメリカ政府が排出削減義務を伴う気候変動対策に強固に反対していることである。しかし、我々は、アメリカを今すぐ参加させると、今会議で開始させようとしている次期枠組みのプロセスを弱めるため、戦略的に間違いであるという内容の手紙を、各国政府に送付した。
 特に、条約の下のみで次期枠組みの交渉プロセスに関する決定を行うことは、アメリカのために、このプロセスを崩壊の危険にさらすことになり、世論は、国際社会がこの問題に対する政治的な姿勢が弱まったと見るだろう。我々は、議定書を放棄するのではなく、議定書を土台に次期枠組みの交渉を積み上げるべきで、アメリカの議会が効果的な国内対策を採択し、国際的にも次期枠組みに見合うタイミングで戻ってくると予測している。

水面下に潜る交渉

2005-12-07 17:13:20 | 国際交渉

 今回のCOP11、COP/MOP1は、コンタクトグループが多くつくられ、しかもそこでの議論がNGOなどのオブザーバーを排除して行われていることが大きな特徴です。コンタクトグループというのは、意見の分かれるテーマや問題について議論する小グループのことで、通常はこうしたコンタクトグループの議論もNGOなどのオブザーバーが傍聴できます。これまでのCOPでは、最終的な摺り合せの段階に入ると傍聴を制限されますが、コンタクトグループの議論も原則としてNGOなどのオブザーバーに開かれています。
 ところが、今回のCOP11、COP/MOP1では、最初は傍聴が可能ですが、2回目くらいからは傍聴が制限されることが多くなっています。
遵守制度の採択問題は、11月30日にコンタクトグループが設置され、その夜に開催されたコンタクトグループでの討議は公開されましたが、すぐに非公開になってしまいました。
 2013年以降の次期枠組みの交渉も、「議定書3条9項」のコンタクトグループが設置されましたが、これもすぐに非公開になっています。12月5日夜9時から、「議定書3条9項」のコンタクトグループが予定されていましたが、直前になってキャンセルされてしまいました。
 資金問題についてのコンタクトグループなどは、毎日の会議の案内(デイリー・プログラム)では公開になっていても、行くとすぐ非公開になってしまうということが続いています。


◆ 2013年以降の次期枠組みの交渉

 前述のように、2013年以降の削減目標と制度設計の問題は、「議定書3条9項」というコンタクトグループで討議されています。
 京都議定書3条9項は、2013年以降の先進国の削減目標の検討を、「第1約束期間が満了する少なくとも7年前に開始する」と規定しています。第1約束期間が満了するのは2012年なので、その7年前は2005年、すなわち今年になるため、このCOP/MOP1で2013年以降の削減目標と制度設計についての議論がされることになりました。
 しかし、地球温暖化の原因をつくったのは先進国であり、まず先進国が削減すべきだと主張し、3条9項に基づく2013年以降の削減目標の検討を、先進国の削減目標に限って直ちに議論を開始すべきであると主張する途上国と、2013年以降は一部の排出量の多い途上国にも何らかの目標が設定されるべきである主張し、途上国も含めた検討を開始したい先進国の思惑がぶつかり合っています。
 11月30日夜に開催された最初のコンタクトグループでは、途上国グループ(G77+中国)、日本とEUから提案がなされました。途上国グループ(G77+中国)は、このCOP/MOP1で先進国の削減義務の検討を開始し、2008年までに検討を終了すべきだと主張し、EUや日本は、議定書3条9項だけでなく、9条での検討も合わせてすべきだとの提案になっています。この議定書9条というのは、通信2にも書きましたが、「最良の科学的情報及び評価並びに関連する技術上、社会上及び経済上の情報に照らして、この議定書を定期的に検討する」とされ、その第1回の検討を来年のCOP/MOP2で行うことを明記しています。
 この9条は検討を開始すべき締約国を先進国に限定しておらず、途上国を含むすべての締約国が参加して議論をすることになっているため、この9条に基づく検討を先進国側が主張するとの構造になっています。日本とEU提案は、いつまでに検討を終えるとの記載がないことも一致していますが、EU提案にはこの問題を検討する特別作業グループを設置して、年2回の会合を開催するとの具体的なプロセスが提案されている点が異なっています。

4万人が気候変動へのさらなる行動を訴えてパレード

2005-12-07 17:01:29 | 国際交渉
 12月3日(土)正午から、モントリオールの繁華街から会場近くまで、3万人とも4万人とも言われる人々が、COP11、COP/MOP1に参加している各国政府代表団に、将来の子どもたちのために、気候変動に対するさらなる行動を求めてパレードをしました。
 パレードが行われた約2キロの道路は、車は完全に締め出され、民族衣装のような扮装をした鼓笛隊を先頭に、歩行者天国のようになった道路いっぱいに拡がってパレードをしました。
 昼間とはいえ、マイナス10℃を越す厳寒で、手袋をとって写真をとるだけで手が痛くなってくるような寒さのなか、北極熊のぬいぐるみを着たり、様々なメッセージや絵が書かれたプラカードを掲げて、約2時間かけてパレードが行われました。


◆ 会議場から

 今回のCOP/MOP1は、アメリカに直近のカナダで開催されるせいか、警備がとりわけ厳重で、チェックも厳しくなっています。会場に入るのに空港にあるような金属探知器でチェックを受けるのは通常のことですが、個人パスのバーコードをチェックしてテレビ画面の顔写真と照合するだけでなく、今回はパソコンやカメラなどをバッグから出させて、いちいち起動させられます。鞄のなかに何か金属が入っていると金属探知器にひっかかり、鞄を開けさせられることになります。
 12月5日の月曜日からはいっきに参加者が増え、朝は会場に入場するのに長蛇の列が出来ています。いったん会場を出ると、またこのセキュリティチャックを受けることになるので、どうしても一日中会場にこもっていることになり、少し運動不足気味です。