2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

今日の化石賞

2005-12-04 03:58:23 | 国際交渉
今日の化石賞というのは、気候変動問題に取り組む世界の約360の環境NGOの連合体である気候行動ネットワーク(CAN)が、その日の交渉で最も後ろ向きの発言や行動をした国に対して贈る賞です。
12月1日、日本が化石賞の第3位に選出されました。第1位から第3位の化石賞と授賞理由は以下のとおりです。

1位 アメリカ、オーストラリア、ロシア

昨日、適応対策の会議中、アメリカ、オーストラリアとロシアは、「適応5ヵ年計画」の目的について議論した際、気候変動の影響への適応策について、後発開発途上国と島嶼国連合へ特別の配慮を行うという文章を挿入することに反対した。しかし、条約でも議定書でもこれらの国々の適応策を優先させることになっており、また、影響がより深刻になる前に、最も脆弱な国々への緊急の支援が必要だ。

2位 オーストラリア、カナダ、アメリカ

 途上国の森林伐採の問題に関する会議中、オーストラリア、カナダ、アメリカは、途上国の森林伐採による排出の削減を提案したパプアニューギニア案の議論の幅を限定しようとした。アメリカは、この議題については、国内対策や科学・技術的な問題に絞って議論し、協力できることがあればやっていこうという態度だった。カナダは、この議題を科学・技術的な問題に絞り、条約の下で議論させようとしたが、これでは、議定書の下でパプアニューギニアが求めている炭素取引はできない。オーストラリアは、この議題は科学と技術問題に絞るべきだとした。

3位 日本
 昨日のMOPの総会において、他の先進国と同じくらいならやってもよいとし、まるでブシュ政権を模範としたい!と言っているようだった。これは、アメリカ抜きでは前に進まないと言っているのと同じであり、2013年以降の議論のリーダーシップを見せていない。

 

遵守制度の採択問題はコンタクトグループでの討議に

2005-12-04 03:55:59 | 国際交渉
遵守制度についてのマラケシュ合意の部分は、ほかの合意と切り離されて議題にあがっていました。その理由は、サウジアラビアがCOP/MOP1決定ではなく、議定書を改正して不遵守の措置(帰結)に法的拘束力を与えるべきだと主張し、この改正提案を正式の議題として提出していたためです。
議題としては、?マラケシュ合意の遵守制度をCOP/MOP1決定として採択する、?サウジアラビアの議定書の改正提案、?遵守委員会の人選、の3つがあがっており、議長はまず、?と?を一括して議論することを提案し、各国から意見が出されました。
ほとんどの国は、遵守委員会を直ちに立ち上げることがCDMなどの京都メカニズムの運用に必要なことから、このCOP/MOP1で決定として採択することを主張しました。また、サウジアラビアの議定書の改正提案については、継続して論議をしていこうとする意見が多くだされました。
日本は、COP/MOP1決定には賛成しましたが、不遵守の措置に法的拘束力を与える改正には反対し、ロシアが日本を支持しました。
日本が不遵守の措置に法的拘束力を与えることに反対する理由は、強い不遵守の措置を決めると京都議定書の約束に参加するインセンティブが弱くなること、こうした条約は強制ではなく調整や援助を通じて履行を促すことが一般的だというものです。しかし、ほとんどの国が法的拘束力に賛成し、法的拘束力を与えることに反対しているのは日本、ロシアだけという現状では、日本の反対理由は説得力をもっていないように思われます。
この議論はコンタクトグループに回され、11月30日夜に開催されたコンタクトグループでは、アフリカグループなどから、まず法的拘束力のない遵守制度をCOP/MOP1決定として採択し、その後、サウジアラビアの提案している措置に法的拘束力を与える議定書の改正についての議論を開始する、との考えが示され、コンタクトグループの議長もこれに賛意を示しました。これに対し、サウジアラビアは、COP/MOP1決定には反対しませんでしたが、同時にこのCOP/MOP1で改正もすべきだと主張し、日本は、改正について議論を開始することも嫌なのかこの決定案に反対しました。
この遵守制度についての議論は、12月2日にインフォーマル(非公開)の調整が行われることになっています。

2013年以降、次期枠組み交渉開始

2005-12-04 03:55:06 | 国際交渉
2013年以降の削減目標と制度設計の問題は、このモントリオールで議定書3条9項に基づいて議論を開始するとともに、いつまでにその議論を終了するかに合意する必要があります。
この合意をどのような形でするかについては、議定書の締約国会合であるCOP/MOPの決定、条約の締約国会議であるCOPの決定、決定ではなく宣言の形などが考えられます。決定の場合はコンセンサスが必要ですが、宣言の場合は必ずしもコンセンサスである必要はありません。1995年のCOP1で採択されたベルリンマンデートはCOP決定ですが、1996年のCOP2で採択されたジュネーブ宣言は、「法的拘束力を持った議定書に合意する」との内容にオーストラリアが強硬に反対したため、決定ではなく宣言になりました。
今回は、こうした形式だけではなく、議定書のもとでのCOP/MOP決定なら、議定書を批准していないアメリカは議決権をもたず、条約のもとで採択されるCOP決定ならアメリカも議決権を持つことや、先進国がこの議論を通じて途上国の削減目標も議論しようとしていることへの途上国側の反発なども、問題を複雑にしています。
また、議定書3条9項は、先進国の削減目標についての条項ですが、議定書9条は「入手可能な最良の科学的情報及び評価並びに関連する技術上、社会上及び経済上の情報に照らして、この議定書を定期的に検討する」とし、その第1回の検討を来年のCOP/MOP2で行うことを明記しています。この9条の検討は、途上国も含めた検討が可能な規定だと考えられています。
11月30日のCOP/MOPの総会では、この問題についての各締約国の見解が表明され、この問題もコンタクトグループで討議されることになりました。

始動する京都議定書・・・マラケシュ合意を採択!

2005-12-04 03:53:28 | 国際交渉
11月30日午前に開催されたCOP/MOP1の総会で、遵守制度に関する部分を除き、マラケシュ合意(Marrakesh Accord)を採択しました。マラケシュ合意が採択されたことで、京都議定書は実質的な実行段階に入ることになります。同時に、日本などの先進国にとっては、京都議定書の削減目標が法的拘束力をもった義務として現実化したことを意味します。
採択の瞬間、会場には大きな拍手が鳴り響き、COP/MOP1の議長であるディオン・カナダ環境大臣は、各国政府代表団に対し、7年にわたる厳しい交渉の結果到達した「画期的な成果(landmark achievement)」を称え、「明確なルールブック(clear rule book)」が作成できたことに感謝の意を表しました。
このマラケシュ合意は、COP4から3年かかってCOP7で合意され、その後も残された課題についてCOP8、COP9、COP10と議論されてきたものです。