「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.168 ★ 中国のGDP統計、信じてはいけない データの異常は昨年の成長率が当局発表よりも低いことを示唆

2024年03月09日 | 日記

DIAMOND online (The Wall Street Journal)

2024年3月8日

Photo:Future Publishing/gettyimages

 中国を一党支配する共産党は5日、今年の経済成長率の目標を5%前後に設定すると発表した。この目標の達成は容易ではないと、李強首相は認めた。しかし李首相は、中国が昨年「数々の問題が混在する状況」に直面しながらも5.2%の成長を示し、「世界の主要国・地域で最も急成長を遂げた国の一つになった」ことを誇った。

 不動産投資の破綻から人口減少まで、それほど多くの逆風に見舞われたにもかかわらず、中国はどうやって5%の成長を実現しているのか。本当は実現できていない可能性が高い。実際の成長率は恐らくこれより低く、もしかすると大幅に低いだろう。

 西側諸国のアナリストに加え、一部の中国当局者でさえ中国の国内総生産(GDP)統計を長年、うのみにはしてこなかった。しかし、データの食い違いや矛盾、欠落が目立ってきていることから、統計の信頼性に対する懐疑的な見方も強まっている。

過去の食い違いは、一部の経済活動については実際より良く見せる一方、一部については実際より悪く見せており、差し引きでバランスが取れていたが、最近はほとんどが成長率を実際より高く見せている。その結果として、こうした食い違いは中国の政治・経済モデルの優位性を自国民や世界に示すという、習近平国家主席の大きな目的に貢献している。



 ニューヨークに本社を置くコンサルティング会社ロジウム・グループは長年、中国の統計を研究しており、最近の成長率は大幅に誇張されていると結論付けている。同社の推計では、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が最も広範に実施されていた2022年、中国のGDP成長率は公式統計で示されたプラス3%ではなく、マイナスだった。昨年の成長率については、公式統計の5.2%ではなく1.5%前後にとどまったと同社はみる。同社は今年に入って成長が加速しているとみているが、特に新たな財政刺激策が取られない状況では最新の成長率目標は「非現実的だ」との見方を示した。

 他のアナリストも、実際の成長率が公式のデータよりも低いとみているが、そこまでの差があるとは考えていない。フィンランドの中央銀行が示す別の推計では、中国の成長率が2022年は1.3%、昨年は4.3%とされている。

 彼らの懐疑的な見方は、データに幅広く異常が存在することで強まっている。中国国家統計局(NBS)は、昨年の小売売上高の伸びが(インフレ調整後の)実質ベースで約7%だったと報告した。小売売上高は家計と政府の消費を幅広く計測するための要素の一つだ。

 しかし、ロジウムの中国市場調査責任者を務めるローガン・ライト氏によると、NBSの別のデータは実質ベースの消費の伸びが11%だったことを示唆している。同氏によると、この数字はネット通販大手アリババグループのオンライン販売の減少、家計の貯蓄増加、地方政府の財政圧迫といった、その他の多くの証拠と大きく食い違っている。

 中国はしばしば過去何年間かの指標を下方修正して、現行の年の成長率がより高く見えるようにしているが、過去の成長率の下方修正はしていない。NBSは昨年12月、2022年の名目GDPを0.5%下方修正して、2023年の成長率を押し上げる格好となったが、2022年の成長率はそのまま3%に維持した。

 中国経済を追跡・調査する米チャイナ・ベージュブックのチーフエコノミスト、デレク・シザーズ氏は今年1月に、「NBSは現在や将来の結果を押し上げるような修正を好むが、過去の結果は決して変えない」と書いている。



 中国で最も注目されている指標の一つである固定資産投資には、そうした修正が多い。NBSはある報告書で、2022年の固定資産投資が57兆元(約1200兆円)、2023年が50兆元だと述べていた。しかし、NBSは別の報告書で、2023年の固定資産投資が前年から12%減ったとは言わずに、3%増えたと述べていた。

 どうすれば、そんな数字が出てくるのだろうか。チャイナ・ベージュブックのシェザード・カジ氏は、NBSが2022年の投資額を、改定したとは言わないまま、改定したに違いないとの見方を示した。NBSは近年、こうした対応を繰り返している。

 NBSは、統計の脚注の中で、伸び率を計算する際に年ごとの水準を基準に使うべきではないとし、その理由の一例として、年ごとにサンプルのプロジェクトが異なる可能性を挙げた。他国の統計局は、過去のデータとの比較を可能にしている。

 おかしな統計は他にもある。NBSは2023年の不動産投資が10%減少したと発表する一方で、建設分野を含む全投資額が経済成長に大きく貢献したとしている。

 ロジウムのライト氏は、この二つの発表内容がともに正しいとすれば、不動産分野以外の投資が著しく伸びていなければならないと指摘する。しかし、利益は圧迫され、海外からの投資は減少し、銀行融資は細っている。同氏は「民間投資が急増していると言うなら、それは一体どの分野のものなのか。その資金はどこから調達したのか」との疑問を示した。

中国経済はデフレに陥るかどうかの瀬戸際に立たされている。日本の「失われた10年」を例に、中国経済が苦境に立たされている理由と、世界経済にとっての意味を説明する(英語音声、英語字幕あり)Photo illustration: Ryan Trefes

 これまでの常として、中国の名目GDP(インフレ調整前のGDP)は、実質GDPよりも変動が激しい。これは、成長率を安定させるためにインフレ率が操作されていることを示唆している。中国は昨年、2023年の名目成長率が約7%、実質成長率が約5%になると予想した。名目成長率は予想と異なって約4%となったが、それでも実質成長率は予想に沿って5.2%となった。つじつまを合わせるには、プラス2%と見込まれていたインフレ率がマイナス1%になったと解釈するしかない。ライト氏は、中国の発表よりもインフレ率が高く、実質成長率が低かった可能性が高いとしている。

 在ワシントン中国大使館の報道官は昨年の成長率データについて、発電量6.9%増、エネルギー消費量5.7%増、貨物輸送量8.1%増といった具体的な指標によって裏付けられたものだと主張した。報道官によれば、個人消費が中国経済の回復をけん引しており、不動産分野の落ち込みが鈍化する中でサービス分野の小売売上高は20%増えたという。

 中国のデータに対する疑念は、何十年も前からある。ある時期には、各省が報告したGDPの合計と全国のGDPが合っていないこともあったが、そのような傾向はかなり改善されている。

 とはいえ、中国のデータの質はまだ標準以下だ。国際通貨基金(IMF)で世界経済見通しの監督業務を行い、現在はブルッキングス研究所に所属するジャン・マリア・ミレシフェレッティ氏は、中国のGDPは他の国々と比べて異例の速さで発表され、しかも改定されることがほとんどなく、四半期の個人・企業・政府支出などの基本的な情報が欠けていると指摘する。同氏によると、「統計の基準はあるべきレベルに達していない」という。

 中国の法令は統計局職員の独立性を保証し、データの捏造(ねつぞう)や改ざんを禁じている。だが、他国の統計局が政治的中立性を保つよう努めているのに対し、中国の統計局は、「習近平同志を核心とする」共産党を称賛するのが常となっている。

 ライト氏は、データの質を巡る議論はどの国にもあるが、「中国でなければ、そうした議論が政府の正当性に対する攻撃と考えられることはない。中国では成長率について批判や議論が起きれば、より大きな政治的対立にエスカレートする」と述べる。

 すべてのアナリストが、中国のデータ異常が政治的な理由によるものだと考えているわけではない。その理由の一つは、過去の異常が両方向に出ているからだ。だが、中国政府が政治的に必要とする成長と現実的に達成可能な成長とのギャップをいかに埋めるかという点で、こうしたデータ異常がカギを握っているかもしれないとの見方が強まっている。

 フィンランド中銀のエコノミスト、リッカ・ヌーティライネン氏によると、「過去数年間に中国が設定してきた成長率目標は高過ぎて、そのままでは達成できないものだった」。同氏は「中国当局者は、もっとバランスの取れた成長率になるまで成長目標を下げることは、あまりに怖くてできないのかもしれない」と述べた。

 中国の今年の目標について、同氏は「かなり野心的なものであり、過去2~3年に見られたような、データをならす操作が必要になるかもしれない」と指摘した。

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

(The Wall Street Journal/Greg Ip)

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No.167 ★ 中国の5%成長目標、市場は追加刺激策が必須との見方

2024年03月09日 | 日記

ロイター (Anisha Sircar)

2024年3月8日

 3月7日、中国の李強首相は、全国人民代表大会(全人代)における政府活動報告で2024年の国内総生産(GDP)成長率目標を昨年と同じ「5%前後」に設定した。写真は1月15日、電車の近くを歩く人。北京で撮影(2024年 ロイター/Florence Lo)

[7日 ロイター] - 中国の李強首相は、全国人民代表大会(全人代)における政府活動報告で2024年の国内総生産(GDP)成長率目標を昨年と同じ「5%前後」に設定した。市場関係者からは、この目標が野心的な水準で、金融や財政、規制面での追加的な刺激策が打ち出されることが達成の必要条件だとの見方が出ている。

イーストスプリング・インベストメンツを率いるビル・マルドナド氏はロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで、目標実現には追加策が発表されることが不可欠だと語った。

華泰資産管理のシュヤン・フェン氏は、李強氏の政府活動報告で示された幾つかの措置が期待に届かなかったと指摘。外国人投資家はこの報告のどこにも明るい材料を見出せなかったと述べた。

フェン氏によると、中国の財政政策と政権の情報発信のスタイルには不安があり、特に待望されている不動産セクターの救済策に関して新たな内容が出てこない点に落胆しているという。

キャピタル・ドット・コムのシニア市場アナリスト、カイル・ロッダ氏も、政府活動報告からは、短期的でカウンターシクリカルな政策運営へ切り替えようとする姿勢がうかがえなかったと説明した。

こうした中でイーストスプリングのマルドナド氏は、現在の環境に対応して中国投資をする場合は、電気自動車(EV)のサプライチェーン(供給網)、環境技術、半導体といった政策面で重視されるセクターに資金を集中する戦略的なアプローチがふさわしいと主張した。

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No.166 ★ 米中衝突の新たな火ダネになるか? 2024年「AIスマホ元年」も日本は出遅れ

2024年03月09日 | 日記

日刊ゲンダイ

2024/03/08

ファーウェイの折りたたみスマホ(C)共同通信社

 米調査会社IDCによると中国の2023年第4四半期の折りたたみスマートフォン(以下スマホ)出荷台数は前年同期比2.5倍の約277万台だった。

 世界最大の通信基地局メーカーでもある華為技術(ファーウェイ)、OPPO(オッポ)、栄耀(Honor)の新機種が寄与した。23年の同出荷台数は前年比2.1倍の約700万台。中国市場は、世界で初めて折りたたみスマホが発売された19年から4年連続で100%以上の伸びを維持している。

 米エヌビディアがAI(人工知能)関連株として人気を集めている。同社はAIに使用される画像処理半導体(GPU)の世界シェア8割前後とみられている。

 中国政府は、17年7月に「次世代AI発展計画『AI2030』」を発表。30年にAI産業を世界トップ水準にするとした。

 30年までにAI理論・技術・応用の全てで世界トップ水準とし、産業規模10兆元にする計画である。

 分野ごとにリードする企業を選定し、テンセントは医療分野、アリババはスマートシティー、百度(バイドゥ)は自動運転。米国は、このころから中国を警戒し始め、「安全保障」を錦の御旗に同盟国も含めて中国ハイテク企業の市場排除を推進している。

エヌビディアは、2月21日に米証券取引委員会(SEC)に提出した書類で、AI向け半導体を含むいくつかのカテゴリーにおいて、中国のファーウェイを最大の競合企業として初めて認定した。エヌビディアによると、ファーウェイは画像処理半導体、中央演算処理装置、ネットワーキング半導体などAI向け半導体の供給で競合している。

■アップルも次世代アイフォーンに生成AIを搭載
 韓国のサムスン電子は1月にGalaxyAIを搭載したスマホを発売。米アップルも次世代のアイフォーンに生成AIを搭載する。中国ではファーウェイ、シャオミ、OPPOなどがスマホに生成AI機能を搭載し始めている。

 OPPO創業者の陳明永氏は、「24年はAIスマホ元年」と断言。AIスマホとは、生成AIが持つファイルや画像・映像の編集処理能力に加えて、自らの演算能力による通話時のリアルタイム翻訳や通話内容の要約、音声と文字のリアルタイムの変換などの実用的な機能を保有するスマホのこと。

AIスマホも米中対立の舞台だが、わが国では電車やバスの車内やレストラン、カフェで、スマホを見ていない人はほぼ皆無。ただ、そのスマホはもう陳腐化、ガラケー化する。日本のスマホメーカーは、シャープ(鴻海精密工業傘下)とソニーグループだけとなった。AIがインストールされた次世代スマホへの買い替えが予想されるが、問題はパソコン並みの価格となろう。

中西文行

「ロータス投資研究所」代表。法政大学卒業後、岡三証券入社。システム開発部などを経て、岡三経済研究所チャーチスト、企業アナリスト業務に従事。岡三インターナショナル出向。東京大学先端技術研究所社会人聴講生、インド政府ITプロジェクト委員。SMBCフレンド証券投資情報部長を経て13年に独立。現在は「ロータス投資研究所」代表。

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No.165 ★ 中国への半導体の輸出規制「新たな措置予定せず」経産相

2024年03月09日 | 日記

日本経済新聞

2024年3月8日

記者会見する斎藤経産相(8日午前、経産省)

斎藤健経済産業相は8日の閣議後の記者会見で、米政府が中国への半導体輸出の規制強化を日本側に求めたとの報道を問われ「外交上のやりとりのため回答を差し控えたい」と述べた。日本が2023年7月に始めた輸出管理について「現時点で新しい措置をとることは予定していない」と語った。

米国は人工知能(AI)などに使う先端半導体の製造装置などで中国向けの輸出を厳しく制限し、技術を持つ日本やオランダにも同様の措置をかねて求めてきた。日本も足並みをそろえる形で、23年7月に先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に加えた。

米国は今回新たに先端品以外の半導体製造装置や材料にも対象を広げ、監視を強めるよう求めているもようだ。経産相は「(23年7月に始まった)当該措置の着実な実施を進めているところだ」と話した。

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