「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.213 ★ 中国 インド隣国へ接近加速 防衛協力強化、切り崩し図る

2024年03月25日 | 日記

時事通信

2024年03月24日

中国の習近平国家主席=5日、北京(AFP時事)

 【北京時事】中国の習近平政権は今月、インド隣国の3カ国との防衛協力を強化する方針を示した。中印は国境問題を巡る対立が続く。中国は軍事面や経済面での支援をてこに、伝統的なインド勢力圏の切り崩しを図る考えだ。

 中国国防省は13日、軍代表団が4~13日にモルディブ、スリランカ、ネパールを歴訪し、各国で「2国間の防衛協力推進」について協議したと発表した。3カ国はいずれもインドの影響が色濃い地域。ただ近年は、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた重要インフラ整備などを各地で進め、浸透を図ってきた。

 このうちインド洋の島しょ国モルディブでは、ムイズ大統領が代表団と会見。中国が無償でモルディブに軍事援助する協定が結ばれた。

 モルディブはアジアと中東、アフリカを結ぶシーレーン(海上交通路)の要衝だ。昨年11月に親中路線のムイズ大統領が就任すると、習政権は両国関係の格上げを宣言。インドからの「引きはがし」を加速させた。協定の内容は不明だが、モルディブでは駐留インド軍部隊の5月までの撤収が決まっており、中国が安全保障の空白を埋める格好となりそうだ。

 今月25日からは、スリランカのグナワルダナ首相とネパールの外相が訪中する。中国側の招待で、習国家主席や王毅共産党政治局員兼外相らと関係強化について話し合う見通しだ。

 中国はスリランカの最大債権国。ネパールでは今月、親中政党の連立が決定し、中国への傾斜が進むとの指摘も出ている。中国外務省報道官は22日の記者会見で「(両国と)政治的相互信頼を深め、戦略的協力パートナーシップを発展させる」と説明した。

 中印関係は2020年、インド北部の係争地で両軍が衝突し20人以上の死者が出たことで急速に悪化した。

 中印は先月、国境問題解決に向けた軍高官協議を実施。「国境地域の平和維持で合意した」(中国国防省)が、今月にはインドによる係争地のトンネル開通を巡って非難の応酬となった。習政権は、インドが武器調達などで米国への接近を強めていることにも神経をとがらせており、関係修復の道筋は見えていない。

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No.212 ★ 「中国経済は終わり」は本当か?安心していると痛い目にあう日本  あと数年の最悪期を経て、中国が最先端テクノロジーで世界を制す

2024年03月25日 | 日記

MONEY VOICE (高島康司:コンサルタント、世界情勢アナリスト)

2024323

中国経済の悪いニュースが多い。たしかに状況はよくないが、背後では大きな変化が進行している。中国経済は構造的な転換期にあり、それを乗り越えると、新たな飛躍の時期が来ると思われる。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

※毎週土曜日or日曜日16:00からLIVE配信予定「私たちの未来がどうなるか考える!メルマガ内容の深堀りと視聴者からの質問に答えるQ&A」世界中から情報を収集、分析し、激変する私たちの未来を鋭く予測する『ヤスの備忘録』でおなじみ、ヤスこと高島康司さんのライブ配信が大人気。世界の未来を、政治経済の裏表だけでなく、歴史、予言、AI、陰謀、スピリチュアルなどあらゆる角度から見通します。

中国経済の背後で起こる構造的な転換

停滞する中国の背後で起こっている経済の構造的な転換について解説したい。

この数年ほど、中国経済の悪化を伝えるニュースが連日のようの報道されている。これまで中国の高い経済成長をけん引してきた不動産バブルが崩壊し、ひどい状況になっている。不動産市場の暴落による不動産会社の倒産ラッシュは他の産業分野にも波及し、経済の減速が顕著になっている。

最近開催された「全人代」で李強首相は、5%前後の成長目標を掲げたが、達成は容易ではないことを認めた。賃金の未払いへの抗議は全国で見られるようになり、また中国からアメリカに亡命する中国の不法移民もここ数年で激増している。

日本のメディアでは、中国は終わったとの報道が多くなっている。

たしかに中国経済の現状は厳しい。すでに周知だろうが、なぜ中国経済が失速しているのか、簡単に振り返って見よう。

中国不動産バブル崩壊の経緯

2013年に就任した習近平政権は、2002年から2012年まで続いた胡錦涛政権から、不動産投資の拡大で成長する中国経済の成長モデルを引き継いだ。

周知のように中国では、土地の所有権は地方政府に属し、私有は認められていない。国有地である。一方、土地の使用権の売買は認められているので、マンションや住宅の販売が活発になると、その使用権販売の収入は地方政府に入る仕組みになっている。

このため、不動産開発が盛んになればなるほど、地方政府の財政も豊かになる構造になっている。

地方政府は毎年8%程度の高成長に後押しされた不動産開発投資の波に乗り、「地方融資平台」という投資会社を作り、債権の発行や銀行からの融資などで資金を集め、不動産開発を行った。

このため不動産開発は活況を呈し、中国のGDPの約40%も占める巨大産業に成長した。また一般の不動産会社も銀行からの低利の融資を受け、積極的に開発を行った。

しかし、投資目的の不動産購入が増えたため、マンションや住宅価格は急騰し、一般の国民は買える水準よりもはるかに高くなった。また、不動産投資で大儲けする富裕層も生まれ、社会格差はさらに拡大する結果になった。

2019年、不動産バブルのコントロールの効かない崩壊を懸念し、また社会格差の拡大に脅威を感じて「共同富裕」を理念に掲げた習近平政権は、不動産部門に対する大規模な規制に乗り出した。

銀行の利子率を引き上げ、また「3つのレッドライン」を定めて「地方融資平台」を含めた不動産産業に総量規制を実施し、金融機関からの資金の流入を止めた。また、住宅ローンに必要な頭金の最低額も引き上げ、以前のように簡単に不動産を買えないように規制した。

この効果はすぐに現れた。中国の大都市を中心に不動産バブルは崩壊し、不動産市場は暴落した。また「地方融資平台」の破綻も相次ぎ、これの実質的な融資の保証先であった地方政府の財政状況も悪化した。不動産開発で得られる土地使用権の収入が激減したからである。地方政府の債務残高は1,100兆円にもなり、返済が不可能でデフォルトする政府も出る始末だ。

さらに、不動産部門に融資をしていた銀行は大量の不良債権を抱えて経営が悪化したので、他の産業への融資も困難になった。また、不動産部門は中国のGDPの40%も占めるので、その崩壊による負の波及効果は絶大だった。

不況下の中国経済の背後で進む構造転換

こうした状況がいまの中国経済だ。不動産バブルの崩壊は市場の動きの結果、自然に起こったものではない。習近平政権が導入した総量規制(不動産部門に流れる資金の規制)による人為的な崩壊である。

このため、いまの不況は習近平不況と呼ばれている。そして日本のメディアでは、格差の少ない「共同富裕」の社会の実現を自らの功績にしたい習近平個人の野心が引き起こした状況だとして、中国を揶揄する報道がほとんどだ。

しかしこれは、現在中国が大規模な構造転換の過程にあり、この転換が終了すると中国は新たな成長の軌道に乗る可能性が高いことを示す事実も実は多い。

このメルマガでは第774回の記事で、「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の報告書、「重要技術競争をリードするのは誰か」の衝撃の調査結果を紹介した。それによると、中国は、重要な最先端技術分野の大半において圧倒的に進んでおり、世界最先端の科学技術大国となるための基盤を構築している。

44の最先端分野のうちアメリカが首位なのは7分野だけで、それ以外の37分野では中国が首位だった。ちなみに、日本がリードしている分野はゼロである。特に10の分野では中国の科学技術が他国の追随を許さず、この分野の製品の供給は、すべて中国が独占していた。

これを支えているのが、中国政府の科学技術への支援方針である。昨年9月、習近平は初めて「新しい生産力」の構築という考えを提起した。「新生産力」という言葉は、科学技術のイノベーションを活用して新産業を創出し、国の経済発展を加速させるという中国の計画を指す。習近平は今年2月1日、「新生産力とは、伝統的な経済成長モードや生産性発展路線から解放され、ハイテク、高効率、高品質を特徴とし、新たな発展理念に沿った高度な生産性を意味する」と述べた。

「国家情報センター」の上級エコノミスト、余鳳霞は、政府のサイトで新たな生産力を実現する唯一の方法は、中国の国民全体の努力でコア技術をブレークスルーさせることだとした。基礎的な部品、材料、ソフトウェア、ハイエンド半導体、産業用ソフトウェアを生産する国内の部門、特に外国の抑圧に直面している産業を更新するために、先端技術への投資を増やすべきだと言う。

中国は人工知能、インターネットのメタバースと、ヒューマノイド・ロボットやブレイン・コンピューター・インターフェイスの製造に従事する自国のテクノロジー企業や研究機関を育成すべきだともした。さらに中国は、AI、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータを活用して、先進製造業の競争力を高めるべきだと付け加えた。

すでに中国は、44の最先端分野のうち37分野で世界をリードする圧倒的な優位性を示しているが、さらに中国は、「新生産力」の開発を柱にした成長のモデルに転換しようとしていると見て間違いないだろう。

いま中国経済は厳しい時期にある。それは習近平による不動産バブルの意図的な破壊の結果であるが、それを行ったのは習近平の個人的な野心なのではなく、新しい成長モデルへの大規模は構造転換を目標にしたからだろう。GDPの40%が不動産部門に依存する経済は明らかに健全ではない。

この不健全は構造を、最先端テクノロジーの開発と、それによる新製品の生産という方向に舵を切るためには、相当な犠牲を覚悟したのだと思う。

中国の貿易構造の変化

こうした構造転換の効果はすでにいくつかの分野に顕著に現れている。その1つが、貿易である。

まずは以下の表を見てもらいたい。2024年1月から2月の中国の先進国への輸出入の前年同月比である。単位は%だ。

   輸出  輸入 
合計 10.30  6.70 
EU  1.60  -6.80
米国  8.10  -7.00
日本 -7.00 -2.50
豪州 -4.80  2.20
韓国 -6.80 12.30
台湾  7.70 12.00

これを見るとわかるが、台湾を除くと、中国の先進国への輸出入は相対的に減少する傾向にある。これが中国経済が減速している証左だとする意見もあるが、実はそうではない。

次はBRICSとグローバルサウスの国々だ。

     輸出  輸入
アセアン  9.20  6.60
ロシア   15.50  9.90
インド   16.20 39.30
中南米   24.10 11.30
ブラジル  37.70 37.10
アフリカ  24.40  7.90
南ア   -10.90 14.80
(出典:中国税関)

最大の伸びを記録したのは、BRICSメンバーのインド(16%増)、ブラジル(37.1%増)、南アフリカ(14.8%増)、そしてベトナム(28.4%増)とインドネシア(22.2%増)であった。

2022年後半から2023年にかけて、中国のグローバルサウスに対する輸出は、すべての先進国市場向け輸出を上回った。1-2月期の速報データは、この傾向が加速していることを示している。中国の「一帯一路」構想や民間チャネルを通じたグローバルサウスへの対外投資は、この成功の一端を説明している。アジア太平洋地域への中国の対外投資は、2023年中に37%増の200億ドルに急増した。

この増加の背景にあるのは、電気通信機器、ソーラーパネル、とりわけエレクトロニクスを含む最先端の主要産業のサプライチェーンを中国が実質的に支配していることだ。「再シェアリング」と「友好的シェアリング」というスローガンを合言葉にして、メキシコ、インド、ベトナムをはじめとする第三国を経由する中国貿易が増加しているのだ。

「IMF」のエコノミストや「世界銀行」、「ピーターソン研究所」、「国際決済銀行(BIS)」の研究者らによる最近の研究でも、この結果は確認されている。「国際決済銀行(BIS)」のレポートには次のようにある。

「中国から米国へのサプライチェーンには、他の管轄地域の企業が介在している。このように介在している企業の正体は、2021年12月よりもアジア太平洋地域の企業が米国の顧客に対するサプライヤーの大部分を占めており、また中国のサプライヤーの顧客の大部分を占めているという事実から読み取ることができる」。

つまり中国は、半完成品や部品を第三国に出荷し、最終的に組み立てて第三国経由で先進国に再輸出しているのだ。また、「世界銀行」のエコノミストは次のように言っている。

「米国の中国からの輸入は、発展途上国からの輸入に取って代わられている。しかし、中国に取って代わる国々は、中国のサプライチェーンに深く組み込まれている傾向があり、特に発展途上国では、最先端の戦略的産業において、中国からの輸入の伸びが加速している。別の言い方をすれば、輸出面で中国に取って代わるためには、各国が中国のサプライチェーンを受け入れる必要があるということだ」。

つまり、これはどういうことかというと、中国企業は戦略的に重要な最先端の産業では、BRICSやアセアン、そしてグローバルサウスの国々に組み立て工場などの生産拠点などを設置し、世界的なサプライチェーンを構築しているということだ。このグローバルなサプライチェーンは、先端的なテクノロジー分野、再生可能エネルギー、グリーンエネルギー、電気自動車、あらゆるタイプのデジタル産業を対象にしている。

このようなグローバルなサプライチェーンの構築の動きは、中国の対外投資の急増として現れている。2023年だけでも、中国からアジア太平洋地域への対外直接投資は37%急増し、200億ドル近くに達した。この投資は、海外での成長を目指す中国企業が、アジアから欧米、ラテンアメリカに至るまで、いかにグローバルなサプライチェーンを変化させているかを物語っている。

香港の大手銀行、「HSBC」の調査によると、中国企業の対外投資は、年間フローは50%以上増加し、現在から2028年の間に少なくとも1兆4,000億ドルが海外に投資される可能性があるとしている。

先端的テクノロジーの優位性が基盤の成長構造

さて、これらの動きを見るとはっきりするが、中国は不動産部門のバブル的な拡大に依存した不健全なモデルから、中国が技術的に優位性がある先端的テクノロジーを基盤にした産業分野のグローバルなサプライチェーンを新たに構築し、開放的な世界経済のネットワークを形成することで成長するモデルを追求しているようだ。

中国経済は厳しい状況にある。この厳しさは、経済の大規模な構造転換を実現するためには避けて通ることのできない道だ。ただ、この困難な状況を乗り越えると、その先には先端技術を基盤にしたさまざまな産業のグローバルなサプライチェーンがけん引する新たな成長モデルがあるに違いない。

整理と刷新の期間はあと3年は続くと思われる。その後には、新たなモデルで成長する中国が出現する可能性が高い。

残念ながら日本のメディアと中国専門家は、過去30年の間、中国崩壊論を主張し、すべての予測と観測を外してきた歴史がある。今回も、中国の不動産バブルの崩壊と、それがもたらしているマイナスの余波に目を奪われ、その背後で展開しているダイナミックな構造転換を見失うと、また同じ間違いを繰り返すことになるだろう。

これがメディアとそこに出演する専門家だけであればよい。だが、意思決定を行う政治家が同じような見方をしていると、日本が大変なしっぺ返しを受けることにもなる。こうしたミスだけは避けなければならない。

高島康司

コンサルタント、世界情勢アナリスト。早稲田大学卒業。 在学中、リベラルアーツの名門であるアメリカのノックス大学に公費留学。 卒業後は大手語学学校で教材、コース開発、講師研修、企業研修等を担当。 その後独立し、企業の語学研修、IT関連研修、企業関連セミナー、コンサルティング等をおこなっていた。

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