「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.190 ★ 中国・習近平が全人代でずっと不機嫌だったワケ、台湾武力統一に備えAIドローン兵器に期待…でも人・技術はポンコツ

2024年03月15日 | 日記

JBpress (福島香織:ジャーナリスト)

2024年3月15日

全人代に出席した習近平国家主席(写真:AP/アフロ)

  • 3月11日、全国人民代表大会(全人代、国の立法機関のようなもの)が閉幕した。閉幕後の首相記者会見もなく、会期もわずか7日と短い、そして盛り上がりの少ない全人代だった。
  • そして、中国中央電視台(CCTV)のテレビ画面で全人代の様子をよくよくみると参加者の表情がじつに暗い。こんな陰鬱な全人代は珍しい。
  • 習近平も、独裁権力を完全掌握し、この世の春を謳歌しているはずなのに、主席台の中央に座るその様子は不機嫌そのもの。その理由とは?(JBpress)

 3月8日の全体会議では、最高法院院長の張軍、最高検察院長の応勇の報告に何か不満があるようで、全人代常務委員長の趙楽際に対し、報告書を指さして、テーブルをたたきながら厳しい表情で叱責している様子が、内外記者に目撃されていた。

  習近平は首相の李強の記者会見を取り消させ、1988年の制定以来はじめて国務院組織法を改正させた。国務院の権限は大幅に低下し、首相は習近平と国務院閣僚の間をつなぐ伝書鳩程度の権力しかないことが明確になった。

全人代は3月11日に閉幕した(写真:新華社/アフロ)

 さらに全人代最高位にある常務委員長の趙楽際を人民代表や国内外メディアの面前で子どもに対するように叱責してみせたことは、全人代の権威もさらに低く貶められたということになる。

 国務院、全人代すべて、習近平一人に従う権限のない小機関に過ぎなくなった。そういう状況を内外に知らしめたことが、今全人代の一番のニュース、意義といえよう。

 だが、そこまで個人独裁を極めてなお習近平は不機嫌極まりない。その理由は、習近平が国務院も全人代も含め中国の党政軍民学、東西南北中をすべて支配しても、中国の未来は一向に良くなる兆しがないからだ。

台湾問題で「平和統一」の文言が消えた

 習近平が独裁を強化すれば強化するほど、中国の未来は暗く、その責任を誰に押し付けることもできない状況に習近平はますますいらだつ。そういう状況で、今、さらに陰鬱なムードになっているのは、中国が確実に戦争に近づいているという予感に他ならない。

 今回の全人代の李強の政府活動報告で、台湾問題に関して「平和統一」の四文字がなかったことがちょっと話題になった。さらに、7日の全人代解放軍武警代表団分科会議のときに習近平が打ち出した「新クオリティ戦闘力」発言がこれとリンクして、非常にきな臭い感じが広がっている。

「中国は『新クオリティ戦闘力』を発展させ、包括的な海上軍事闘争の準備をせよ」「新クオリティ生産力と新クオリティ戦闘力の効果的な融合を推進し、双方向に牽引し、新クオリティ生産力と新クオリティ戦闘力の成長を極めていこう」と習近平は解放軍・武装警察代表たちに訴えたのだ。

「新クオリティ生産力」というのは、習近平が今年の全人代でも強く打ち出した経済政策のスローガンだ。これは、中国のハイテク産業が米国ら西側の制裁を受けて苦境に陥っている状況への対策として、習近平が2023年9月に習近平が黒竜江省を視察したときに言及した。

 2024年1月31日の中央政治局集団学習会のとき、さらに言葉の概念について説明していた。新華社による解説では、「伝統的な経済成長方式から脱却し、ハイテク、高効率、高品質の特徴を備えた新たな発展理念に合致した先進的生産力」を指す。

台湾総統選で勝利した民進党の頼清徳氏(写真:ロイター/アフロ)

「技術革新の突破性、生産要素のイノベーション的配置によって、産業の深さをレベルアップに転換して、労働者、労働資源、労働対象およびその最適な組み合わせによって飛躍することが基本的な意味合いであり、全要素の生産力を大幅にレベルアップさせることを核心的シンボルとするもの」という。

「新クオリティ戦闘力」とは?

 抽象的すぎてピンと来ないかもしれないが、私たちメディアレベルの理解でいえば、ハイテク製品をつくれる新しい労働者・ワーカーを育成しなさい、エンジニアを育成しなさい、という指示だ。ポイントは、ハイテク分野を研究する開発者ら知識分子の育成とはいわず、あくまで労働者、ワーカー(生産力)育成に焦点を当てている点で、これが改革開放逆走路線の習近平らしさといえよう。

 では『新クオリティ戦闘力』とは何を意味するのか。

習近平はドローンを重視?=写真はイメージ(写真:weapons_photograph/イメージマート)

 たいていのアナリストたちは、新クオリティ戦闘力とは、ハイテク・スマート化作戦を指すと解釈している。将来的に海洋交通、シーレーンを支配できるかどうかが中国が大国として覇権を握れるかどうかの鍵とみなされているが、これには大量の無人兵器、ドローン運用による海上作戦が必要だとされている。

 習近平的な発想でいえば、新クオリティ生産と新クオリティ戦力の融合というのは、ドローン兵器を製造する技術力のワーカーを育成すること、これが米国らにハイテク分野の制裁を受けている中国産業界の苦境を救い、大卒若者の就職難を解決するという習近平なりの経済処方箋であり、同時に国家安全、国防向上、中国の強軍戦略を支える政策とも合致する、ということだろう。

 首相、国務院軽視が今回の全人代ではっきりし、国務院トップの首相が主導する経済政策に対する軽視路線がはっきりしたかわりに、習近平が打ち出した戦略がこれなのだ。つまりハイテク軍事生産力による経済牽引である。

習近平は軍需経済路線に舵を切った

 だが、それはハイレベル研究開発者の育成ではなく、あくまで技術力を持つワーカー育成に焦点が置かれる。こういう発想は、鉄鍋など屑鉄を寄せ集めて溶かせば、鉄道でもミサイルでも作れて工業化が実現する、という毛沢東時代の大躍進的ニセ科学に近いものを感じないか。

 共産党は農民・労働者の党だとして、資本家や知識分子を軽んじる習近平ならではの発想だ。また、もう少し深読みすると、習近平は軍需経済路線に舵を切ったともいえる。

 鄧小平以降、経済成長することで国防予算を押し上げ、結果的に強軍化がすすめられたが、習近平は強軍化によって経済をけん引しようと転換しつつある。これが習近平の経済軽視による強軍化路線なのだ。

「新クオリティ戦闘力」という言葉はもともと習近平の造語ではない。2015年末の人民日報・国防知識コラムに新クオリティ戦闘力という言葉はすでに出ていた。

 このときの定義は、情報システムに基づく系統的な戦闘力を意味し、包括的な感知、リアルタイム司令、精密攻撃、全方位的防御、セキュリティに集中した一体型情報化条件で行われる戦闘力の基本形態を指すそうだ。

 解放軍報が2017年4月19日に「新クオリティ戦闘力はどこからくるのか」という記事を掲載。「軍事科学技術進歩と軍隊の任務の変化に伴い、かつて新クオリティ戦闘力と呼ばれたものが徐々に一般戦闘力に進化していき、新クオリティ戦闘力が主流にとって変わることになるだろう」と予言している。

AIめぐる倫理問題、習近平は関心なし

 ただ軍事専門家が使うこの言葉と、習近平が今回打ち出したものは若干意味が違うらしい。ボイスオブアメリカに対して、台北国家政策研究基金会副研究員の揭仲がこう説明している。

「習近平のいう新クオリティ戦闘力とはスマート化作戦能力を指しているだろう」「2019年10月の第19回党大会の政治活動報告で、習近平はスマート化戦闘力を強く打ち出し、2020年7月の中央政治局集団学習会議では『機械化、情報化、スマート化の融合発展』を解放軍の建軍目標として打ち出している。これの狙いは、人工知能による作戦のスピード化である」

 もう少しかみ砕いてみよう。

 人工知能(AI)が目標を発見し攻撃するというドローン兵器はすでに世界各地で使用されている。だが、習近平が目指しているのは、AIによる目標発見から攻撃までのプロセスの短縮だ。

 敵の命を絶つ攻撃司令までAI判断に任せていいのかというテーマは西側軍事大国にとって深い倫理的テーマでもある。ところが中国にこうした倫理的葛藤はほとんどなく、新しい形態の作戦モデルをいち早く掌握したものが、戦争の風上にたてる、という考えから、AI兵器開発を急げ、ということらしい。

海上ドローンを多用し台湾を武力統一?

 さて李強の政府活動報告で「平和統一」という言葉が文面から消えたことに話題を戻そう。それは、5月からスタートする頼清徳・台湾新政権とは話し合いによる平和統一の選択肢はない、という中国側の姿勢を示すものだろう。「祖国統一の大事業は揺るがず推進」とは言っているのだから、残される選択肢は武力統一しかない。

 こういう前提のもと、習近平の「新クオリティ戦闘力」についての言及を考えると、台湾に対するハイテク戦争準備の指示という風にも受け取られよう。習近平は台湾武力統一について海上ドローンを多用した精密攻撃作戦をイメージしているのかもしれない。

 ただ習近平のスローガンはいつも抽象的概念の表明で終わっており、具体的にどのように進めるかは現場に丸投げだ。制海権を奪える大量の自律的攻撃も可能なドローンをつくれ、それによって中国経済をけん引せよ、と言うは簡単だが、そのような技術力をどう育成するのかまでは、習近平は考えつかない。

 習近平は人材(ワーカーや兵士)のレベルアップが核心的要素とするが、優れた人材の育成に必要なのは、学問、思想、表現の自由と先達から学び教えを乞う素直さだ。習近平に最も欠落している要素ではないか。

AI兵器、ポンコツゆえの恐ろしさ

 国務院内でも解放軍内でも全人代内でも、知的レベルの高い人たちは、この矛盾に気づいている。だが習近平は今日も不機嫌なので、粛清が怖くて誰も進言できない。

 ならば、かつての大躍進政策と同じく、大号令に黙々としたがって、鉄くずをかき集めて、溶かしてポンコツを作り上げたように、適当に寄せ集めて作り上げた人材や技術で、あまり性能のよくないAIドローン部隊を作り上げることになるのだろうか。

 だが、そんなポンコツAI兵器であっても、いやポンコツだからこそ、私は恐ろしい。

 人間の理性や制御をこえて、人を攻撃するようなポンコツAI兵器を中国が作り出してしまう、あるいはそれが台湾海峡で暴走するなんて悪夢もあるかもしれない。そう思わせるほどに憂鬱な全人代で、習近平は明日も不機嫌だろう。

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト。大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。

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No.189 ★ 「日本化」する中国経済 不況下の勝機は「失われた30年」にある

2024年03月15日 | 日記

日本経済新聞 (By Naoki Fujii)

2024年3月15日

この記事の3つのポイント

  1. 景気低迷から中国経済の「日本化」を指摘する声が増加
  2. 中国で長続きするトレンドには、日本の「失われた30年」と類似点
  3. ペットやゆるキャラブームの先に、新たな商機をつかめる可能性も

 この1年ほど中国で自国経済が話題に上がる時、最頻出のキーワードは「経済の日本化」だった。明確な定義があるわけではないが、「バブル崩壊後に『失われた30年』を過ごした日本と同じ道をたどるのでは」「未経験の非成長時代をどのように生き抜けばいいか分からない」という漠然とした不安を表す言葉として、市井の人々の井戸端会議から高級官僚が参加する国際会議のパネルディスカッションまで、本当によく耳にした言葉だ。

 とはいえ、バブル崩壊後の日本が破産し滅び去ったわけではないことは読者の多くもご存じの通りだ。爆発的な経済成長がなくなったのは確かだが、経済・社会構造の変化を捉えて成長した企業も多い。例えば、カジュアル衣料品店「ユニクロ」のように2000年代から本格的に海外進出を果たし、今では海外で1600店舗以上を展開するようなブランドも存在する。

 中国でも同じで、全体としての伸びが低調であることは事実であるが、実質GDP(国内総生産)の前年比での伸び率は日本の約2.7倍もあり、業種や地域によって良しあしがあるというのが実態に近い。身の回りで「転職先が見つからない」「テナントが埋まらない」という話をよく聞くのは確かだが、それ自体は今に始まったことではない。多様かつ巨大な中国では、景気動向も業種や地域によって大きく異なる上、その落差も非常に激しい。

 様々な要因から同一化が激しく競争市場が1カ所に過集中しがちな中国では、大都市がもっとも競争が激しく、行き詰まり感も強い。だから多くの企業が「下沈(シャアチェン、すそ野)市場」として2級・3級都市、あるいは地理的には大都市内でも細分化されたニッチ市場への拡大を志向している。

 ただ、多くは日本企業の駐在員の生活空間とはあらゆる意味で異なるため、現地にいても理解が難しい。しかも「渉外調査管理弁法」という法律によって、外資系企業は原則として直接市場調査を実施できない。ユーザーのビッグデータは入手できるが、今まで既知の成長市場の余白をいかに「先食い」するかの探索に使ってきたデータを、未知の市場を把握するために使うには分析の発想を大きく変えなければならない。

 そんな難しさを乗り越え、いち早く自社にとって有利な市場セグメントをどう見つけるかがこれからの勝負の鍵だと言える。市場の多様化・複雑化が進み、従来のように今ある流行を追いかけ続けるコストは日増しに高まっている。また様々な不確実性がある中で、中国という巨大市場を独占できるほどの資金を投じて王座を目指す戦略を取るという決断ができる企業も限られる。だから多くの日本企業にとって、これからは見定めたセグメントに効率的に投資し、自らのアイデンティティーを確立して「追われる」存在になるために取り組むことが必要だろう。

 では、どうすればいいのか。万能の解決策など存在しないことは重々承知ながら、本稿では顕在化する前の消費ニーズを先読みする上で、日本企業が共通して持つ若干の優位性についての仮説を提示してみたい。

経済が鈍化する中、日本的なモノ・コトが流行

 中国の流行の入れ替わりは目まぐるしく、毎日違うものが「これが流行」と紹介され、次の週には忘れられている、という状況が続く。しかしその中でも比較的長続きしたトレンドを見ると、実はある一定の年齢層以上の日本人にとってはむしろ「懐かしい」ものも多いことに気づく。日本のバブル期前後、10年ほどの間に流行したモノやコトと似たものが流行する傾向にあるのだ。奇妙に感じるかもしれないが、経済が日本の「失われた30年」と同じ状態に陥るのであれば、社会全体を覆う雰囲気、その反映としての流行が日本のその時期に近くなるのは、ある種の必然と言えるかもしれない。

代表例がペットブームだ。北京や上海で休日を過ごしていると、様々な犬種の犬を散歩している姿をよく見かける。日本でも1980年代後半のレトリバーから始まり、シベリアンハスキーなどを経てチワワやミニチュアダックスフントなど、幅広い犬種にブームが広がっていったことが思い起こされる。

上海市のカフェではペット連れの客も多い(写真:筆者撮影)

 ペットブームの広がりと原因は複合的だ。よく原因として挙げられるのが、就職氷河期や経済成長の行き詰まりなどを背景にしたストレス増への反動から、「癒やし」への渇望が高まるというものだ。

 より深い理由として、住空間や生活文化の変化に伴う位置づけの変化も見逃せない。犬を例として挙げると、昭和期までの日本では主に番犬として室外で飼われており、飼い主と生活空間が分かれていることが多かった。そこに裕福な家庭を中心に欧米風のステータスシンボルとして愛玩用の大型犬を飼う文化が輸入された。さらに時間の経過に伴いペット飼育という行為がさらに一般層にまで広がると同時に、都市化の進行によって集合住宅居住者が増加、ペットはその限られた住空間で生活を共にするパートナーとしての地位を獲得するに至った。

 また都市化と並行して進む核家族化や婚姻率の低下によって生まれる独居者の増加や、希薄な人間関係を埋め合わせたいという気持ちなども、パートナーとしてのペットを求める気持ちに作用している。私の身の回りでも、少なからぬ中国人が人間のパートナー探しには興味を持たず、犬や猫との「二人暮らし」を選んでいる。

 こうした変化は必然的かつ普遍的なもので、時期や詳細(上の例で言えばどの犬種が流行するかなど)は違ったとしても、大筋は同じような順番で起こっていく。となれば、今後起こりそうなことについても、同じように過去の日本の例が参考になる可能性が高い。特に文化的な距離が近い中国においては、もともと様々な日本の情報が流入し参考にされがちという点から見ても近似する可能性がある。

 例えば、「たまごっち」のような電子ペットブームの訪れを予見することは難しくはないだろう。96年に発売された、たまごっちのブームは、実際のペットを飼うよりもはるかに手軽でありながら疑似的なペット飼育体験ができることに加え、室内空間を割く必要がなく隣人トラブルの原因にもならないこと、友人とのコミュニケーションの触媒としての共通の話題となっていたことなどが挙げられている。ちなみにその後のたまごっちは赤外線や無線LANなど通信機能を強化し、「Tamaverse(たまバース)」というメタバースへの接続など、コミュニケーションのためのデジタルガジェットとしての位置づけを強化している。

 同じようにして負の面、例えばペットの虐待や遺棄が社会問題となることも想像がつく。市場の裾野が広がれば副作用としての問題の規模も大きくなり、そしてそれに対する解決策の提案も新たな商機になるだろう。上海市郊外には通称「猫島」と呼ばれる130エーカー(東京ドーム約11個分)にも及ぶ広大な区画があってNPO(非営利団体)が400匹以上の野良猫の世話を引き受けており、希望者は一定のコースを受講し資格ありと認められれば、引き取って育てることもできる。半公共的なNPOだけでなく、市内の猫カフェなどが引き取りの仲介を行うケースもある。これもまたビジネスチャンスの一つだと言える。

暴れまわる「ゆるキャラ」たちの祭典

 ペットと同じ「癒やし」の少し変わった切り口としては、「ゆるキャラ」の存在感が挙げられる。中国IT(情報技術)大手のアリババ集団傘下のブランドが、いずれも動物のキャラクターをマスコットにしていることから「動物園」と呼ばれている。日本ほどではないが、中国発のブランドもマスコットキャラクターを擁している。ほかにもアプリとしては使用不可にもかかわらず、なぜか日本のSNSである「LINE」 のキャラクターである「BROWN」や「CONY」 も人気が高いし、企業・ブランド以外にも、中国のSNS「微信(ウィーチャット)」のスタンプから生まれて人気に火がついたキャラクターも数多い。

アリババ集団傘下ブランドのキャラクター(2021年時点、写真は同社の公式微博=ウェイボから)

 毎年11月11日にアリババ系のEC(電子商取引)サイト「天猫(Tモール)」が主催するセール「双11」が開催され、その流通取引総額や傾向が中国の消費動向を占うものとして話題になる。実は2023年、その双11に関連して「淘宝金桃之夜」と呼ばれるイベントが開かれたことをご存じだろうか。

一応は「セール期間中に100万個以上売り上げた商品に『金桃賞』を与えて表彰する」という名目ではあったのだが、その趣旨というよりはイベント前から公式アカウント同士のSNS上での「絡み」のネタとして存分に使われ、このイベント参加権を単なる自慢のために9999元(約20万円)でオークションにかけてすぐ撤回するキャラクターや、米ニューヨークのタイムズスクエアに屋外広告を出すブランドなども現れ、公式SNSも「ダフ屋では参加権は買えません」などとあおり、現場でも賞そっちのけで違うブランドのキャラクターがペアになって踊ったり、逆に暴れるキャラクターを警備員に扮(ふん)した別のキャラクターがつまみ出したり、キャラクターたちの一挙手一投足がメインになった相当カオスなイベントとなっていた。今までも単独では知名度があった面々ではあるが、こうして複数が企業・ブランドをまたいで一同に会するのはおそらく初めてだろう。

「淘宝金桃之夜」の参加キャラクターの一部(写真は同社の公式微博=ウェイボから)

 もはや説明するまでもなく日本は多くのキャラクターを擁する大国だ。「ゆるキャラグランプリ(現・ゆるバース) 」「ご当地キャラ博 」のようなイベントも長きにわたって開催されている。こうした蓄積もまた、中国でのビジネスの切り口として利活用できるはずだ。

ご覧になっていただいて分かる通り、まずキャラクター造形のレベルにおいて日本には圧倒的な優位性がある。また長く愛されるキャラクターとするためには外見のかわいさだけではなく、細かい設定をつくり込み、動作や発言などのルールにまで落とし込んだ上でそれを順守する運用、魅力を最大限表現できるアクターの養成も必要だ。まだ黎明(れいめい)期の中国のキャラクタービジネスでは、そうした細部の専門性には課題も多い。日本企業にとってのチャンスにもなるだろう。

 もう一つ、ゆるキャラ方面で今後中国での広がりが期待できるのが、地方自治体との取り組みだ。くまモンやふなっしーなど、日本のゆるキャラの発展は「ご当地」との密接な関わりを持ってきた。中国もまた近年特に観光やビジネス・投資誘致を目的に、各地方の特色文化をアピールしようという機運が高い。現段階ではロゴやプロモーションムービーの制作やご当地魅力体験イベントなどが中心で、寡聞にして独自のマスコットキャラクターを作った成功例は聞いたことがない。しかし今後かならずこうした例は増えていくだろう。

日本のまま持っていけばいいわけではない

 ここまで紹介した通り、「癒やしの渇望」から発生したトレンドが中国にも存在し、日本での広がり方と類似点があるということをご理解いただけたと思う。とはいえ、それは日本で昔流行(はや)ったものを持ってくれば売れるという甘い話ではないという点は、強調してもし過ぎることはないだろう。

政治を背景にした日本に関わることへのリスク意識だけでなく、中国も自身が持つ文化要素への自信を深めている中で、外国人が「30年前に自国で流行ったもの」を持ち出しても、受け入れがたい気持ちになるのも当たり前の話。よく「トレンドXX年周期」という言い方をされるが、同じ国でさえ循環してまったく同じ場所に戻ることはない。国が違えばなおさらだ。

 それでもなお、「次に何が起こるか」を、解像度を高めて予想できることは、「失われた30年」で我々が学んだ低成長経済下でのビジネスのつくり方・守り方と併せて、日本人が持つ隠れた優位性であると言える。特に中国現地法人で意思決定層となる40代、50代は、実際に日本で自らその時代を体験している。「外国のことだからわからない、現地スタッフに任せればよい」一辺倒ではなく、ご自身の豊富な体験を現地のインサイトと組み合わせて新しい面白さを創発することに、どんどん挑戦していただきたいと願う。

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No.188 ★ 折り畳みスマホ世界シェア、華為が初首位か

2024年03月15日 | 日記

NNA ASIA

2024年3月15日

米調査会社DSCCは、折り畳みスマートフォンのブランド別世界シェアで、2024年第1四半期(1~3月)に華為技術(ファーウェイ)が韓国サムスン電子を抜いて初めてトップに立つとの予測を示した。ファーウェイは新機種を相次いで投入し、シェアを広げている。

ファーウェイは「Mate」シリーズの「X5」や「Pocket2」といった新機種が好調で、新製品の投入が少ないサムスンを追い抜く見通しだ。ファーウェイの販売好調を背景に、世界の24年1~3月の折り畳みスマホ市場は前年同期比2倍に伸びるとの見方を示した。

第2四半期(4~6月)も同様に、ファーウェイが世界首位になるとみている。

24年はファーウェイととともに、低価格ブランドの栄耀終端(オナー)が折り畳みスマホの世界シェアを伸ばすとも予測した。

24年1~3月に出荷される折り畳みスマホは25種類となり、通年では27種類となる見通しだ。ファーウェイは24年に少なくとも2種類の新機種を発表し、オナーや聯想集団(レノボ・グループ)傘下の米モトローラ・モビリティ(MOTO)、サムスンの各社も機種を刷新する見通しだ。

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No.187 ★ 「中国EV大ピンチ」のウラに、習近平の「経済大粛清」があった…! 中国「虎の子EV」を壊滅させる習近平思想の「恐ろしい中身」

2024年03月15日 | 日記

現代ビジネス (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティングフェロー)

2024年3月14日

中国EVが大ピンチ

photo by gettyimages

 アメリカで電気自動車(EV)が売れずにトヨタのハイブリッドにシフトする動きが見られるという。中国では、そもそもEVをはじめ自動車への需要が後退している。中国のEV業界は、いま大きな過渡期にさしかかっているようだ。

  前編『「EV」がアメリだけでなく中国でも絶不調に…トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで「中国EV大ピンチ」の深刻すぎる実態』で紹介したように、中国は折からの景気減速と不動産バブルの崩壊による資産効果の剥落から、極端な需要不足に陥っている。  

さらに、中国のEV業界は現在、電池メーカーも含めて供給が過剰になっている。  需要が小さいのに供給が多ければデフレを引き起こす。価格競争の激化によって中国EV関係企業の大量倒産は時間の問題だろう。

全人代で語られた「経済“無策”」

全人代に出席した習近平国家主席(左)と李強首相 Photo/gettyimages

 3月5~11日まで開催された中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、李強首相の政府活動報告に世界の注目が集まった。

 各国の関係者・専門家たちは、改革開放以来、最悪の状況となっている経済を中国政府がどのように立て直そうとしているのかを知りたかったからだ。

 世界は中国経済の行方を固唾をのんで見守っている。内需を盛り上げてくれなければ、世界経済の足かせとなるばかりか、大きな経済ショックの要因となりかねないからだ。  

それだけに、李強首相の演説で何が語られるのかが最大の関心事であり、そこでは大型の景気刺激策が行われることを期待していた。しかし、李氏が語った「バズーカ砲」は空砲に過ぎなかった。「経済成長率は5%前後」と高い目標が設定されたのとは裏腹に、その達成への道筋は示されなかったのだ。

現実味のない「質の高い発展」

 李氏は政府活動報告で、習近平国家主席が好んで使う「質の高い発展」というフレーズを25回も用い、技術革新を成長の新たな牽引役にすることを強調した。  

中国政府は今後も供給サイドへのテコ入れを通じて経済を活性化しようとする意志を表明した形だが、これが奏功する可能性は極めて低いだろう。  

なぜなら、これまで指摘してきたように中国経済は供給過剰なのであり、刺激すべきは需要不足の方だからだ。中国経済にとって真に必要な対策は、バブル崩壊後の需要不足をいかに埋めるかであるのに、そのことがまったく理解されていないようなのだ。  

それは、すでに日本が犯した失策と同じ轍を踏む行為だ。1980年代バブルが崩壊した後、日本は「構造改革」と称する供給サイドのアプローチを進めた。しかし、その結果「需要不足」がさらに進むという皮肉な結果を招いたのだ。  おそらく、中国も日本の「二の舞」となるだろう。

弱すぎる「消費喚起策」

具体的な消費刺激策は述べられなかった…Photo/gettyimages

 バブル崩壊後の日本政府の取り組みは不十分だったが、それでも景気下支えのための刺激策を打ち続けた。政府の下支えがなければ、中国経済が不況から抜け出すことは困難だが、中国政府は需要を喚起する政策は見られない。  

中国の長期金利(10年債利回り)は22年ぶりの低水準となっている。金利の低下は経済活動にとってプラスのはずだが、「金利を下げても経済が活発化しないのではないか」との指摘が出ている(3月1日付ブルームバーグ)。 バブル崩壊後の日本が経験した「流動性の罠」に中国も陥りつつあるようだ。  

昨年の1人当たり名目国民総所得が約1万2600ドル(約190万円)となった中国は、かつてのような貧困国ではない。  消費主導型成長への転換が急務となっており、家計部門の消費拡大が喫緊の課題だ。政府は国民に対して消費の拡大を奨励しているが、前述の政府活動報告でそのための具体的な刺激策は述べられなかった。  

経済対策で中心的な役割を果たしてきた地方政府は財政が「火の車」で身動きがとれないことから、「中央政府が主体となって経済対策を実施すべきだ」との声が出ているが、中央政府は慎重な姿勢を崩そうとしていない。  その原因として挙げられるのが、「習近平国家主席は、2008年に実施された4兆元規模の景気刺激策を苦々しく思っている」との見立てだ。

経済状況を見誤る習近平

 習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずにカネを得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだ。  

習氏の考え方は中国の伝統的な統治思考に基づいている可能性がある。  「中国政府は西洋由来の共産主義イデオロギーを正統な思想としているが、実際の統治は秦以降の歴代王朝の支配を支えた法家の考え(法と称する厳罰中心の支配)に基づいている」との指摘がある(3月1日付日本経済新聞)。  

法家的統治に基づく政策では、国家や国有企業の優先順位が高い。「民から生活に必要な分を超える余剰財産を奪う」ことを良しとしており、この考えに従えば、個人消費に対して冷淡になるのは当然だ。

習近平政権下で「中国経済の復活」は難しい

習近平は、民を軽視しているのか…Photo/gettyimages

 中国でも少子高齢化が急速に進んでいる。本来、政府は少子化を防ぐ政策が求められるときだが、習氏は「中国は福祉主義の罠に陥ってはならない」との主張を繰り返している。習氏は法家の考え(民軽視)の忠実な信奉者であることの証左なのかもしれない。

 この見方が正しいとすれば、中国が消費主導型の成長モデルに転換することは不可能だ。  一強体制が確立した現在、習氏を国のリーダーの座から引きずり下ろさない限り、中国経済の復活を期待することはできないのではないだろうか。

 さらに連載記事『「EVはガソリン車よりも環境負荷が小さいとは言えない」…! 中国に使い捨てられた「EV墓場」が次々と生まれる「深刻なワケ」』でも、中国のEVと経済事情について詳しく解説しているので参考にしてほしい。https://gendai.media/articles/-/124563

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No.186 ★ 米アップル、中国で投資拡大=開発強化

2024年03月15日 | 日記

NNA ASIA

2024年3月14日

米アップルは12日、中国で研究開発(R&D)能力の強化に向けた投資を拡大すると発表した。スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」やタブレット端末「iPad(アイパッド)」、ゴーグル型端末「Vision Pro(ビジョンプロ)」の開発能力を強化する。

上海市にある既存の研究開発センターの能力を高め、全製品の信頼性、品質、材料分析をサポートする。広東省深セン市では年内に応用研究実験室(ラボ)を新設し、現地のサプライチェーン(供給網)との連携を深める。iPhoneやiPad、Vision Proなどの製品のテストや研究能力を増強する。

アップルは現在、北京市、上海市、江蘇省蘇州市、深セン市に研究開発センターを持つ。過去5年で中国の研究チームの規模は2倍に増えたという。これまでに先端応用研究ラボへの投資額は10億元(約208億円)を超えた。

ラボは生産・組み立て拠点に隣接して設置され、世界中のエンジニア・設計チームにリソースを提供し、プロトタイプのテストや全てのデバイスがアップルの品質・性能基準を満たしているかどうかなどを確認している。

第一財経日報(電子版)によると、アップルの研究開発向け投資は年間数百億米ドル(1米ドル=約147円)の規模で、2023年は約300億米ドルだった。アップルは製品の95%を中国で生産、組み立てており、JPモルガン・チェースは中国のアップルサプライヤーが全体に占める比率は25年に24%と、22年の7%から大幅に上昇するとみている。

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