死亡:中野由惟さん〈28)
懲役9年:野村幹也(のむら・かんや)(22)
危険運転で泣く過失 逃走中事故の男に懲役9年
裁判員が出した結論は、「危険運転」ではなく「過失による」というものでした。
警察からの逃走中に事故を起こし、巻き添えで女性を死亡させた男の裁判員裁判で、広島地方裁判所は、「危険運転致死傷罪」ではなく検察が追加した「自動車運転過失致死傷罪」を適用し、男に、懲役9年の判決を言い渡しました。
判決を受けたのは、当初危険運転致死傷などの罪で起訴された、広島市の無職 野村幹也被告です。
野村被告は、去年7月広島市で無免許運転中に警察の追跡を受け逃走。
高速で交差点に進入しパトカーと衝突。
はずみで歩道に乗り上げ、たまたま通りがかった中野由惟さんをはねて死なせるなどしました。
先週月曜日に始まった裁判の最大の争点は、野村被告の運転が「危険運転」にあたるかどうかというものでした。
弁護側は、「逃走中は高速で走っていたが、交差点を曲がる際には減速し安全確認もしていて、車を制御できている」として、一貫して、より刑が軽い「自動車運転過失致死傷罪」の適用を求めていました。
検察側は「高速で交差点に突入するなど道路の状況に応じた進行ができていなかった」として危険運転致死傷罪を主張。
一方で、危険運転が認定されない場合に備えて弁護側が主張する自動車運転過失致死傷罪を起訴罪名に追加し、7日の判決を迎えました。
広島地裁の伊藤寿裁判長は、「野村被告は高速で走行しているものの車の進行を制御するのが困難なほどの高速だとは認められない。危険運転ではなく過失にとどまる」と認定し、自動車運転過失致死傷罪を適用しました。
そのうえで、「野村被告が無免許かつ無謀な運転で被害者をはねたうえ、救護することなく逃走している」と指摘。
「人の生命を軽視していて刑事責任は重い」として、懲役9年を言い渡しました。
判決後、被告側の弁護人は「当然の判決だ」とした上で、「自動車運転過失致死傷罪のなかでも、9年の判決は重い。検察官の顔をたてる判決ではないか」と話しました。
一方、広島地検の山口幹生次席検事は、「判決内容を十分に検討したうえで、上級庁とも協議し適切に対応したい」とコメントしています。
死亡した中野さんの遺族は代理人を通じて、「遺族としては納得できるものではなく、妻にどう報告していいかもわかりません」と心境を語っています。
[2013.11.7 19:13]
危険運転めぐる裁判員裁判 検察が異例の罪名追加
逃走中の事故で女性を死亡させた男の裁判員裁判です。
検察側が異例の対応をとりました。
検察が男を起訴したときの罪名は、「危険運転致死傷罪」でしたが、5日新たに、より罪が軽い「自動車運転過失致死傷罪」を加えました。
背景には、「危険運転」の適用が極めて困難な現実があります。
広島市の無職・野村幹也被告は、去年7月、広島市西区で乗用車を無免許で運転中に職務質問しようとした警察官から逃走。
パトカーと衝突事故を起こし、はずみでたまたま通りがかった当時28歳の女性をはねて死なせるなどしたとして、「危険運転致死傷」などの罪に問われています。
先月から始まった裁判は、野村被告の運転が「危険運転」にあたるかどうかが、最大の争点になっていました。
そして5日の公判で検察側は異例の対応をとりました。
起訴罪名に「危険運転」よりも罪が軽い「自動車運転過失致死傷罪」を加えたのです。
これは、裁判で「危険運転」が認定されなければ、女性を死なせたことなどについて罪に問われなくなる可能性があるためです。
検察側はその上で「高速で交差点に突入するなど道路の状況に応じた進行ができなかった」と指摘。
あくまでも「危険運転致死傷罪」の認定を求め、懲役17年を求刑しました。(「自動車運転過失致死傷罪」の方は懲役10年を求刑)
弁護側は、検察が追加した、より罪が軽い「自動車運転過失致死傷罪」の適用を求めて、裁判は結審。
判決は7日言い渡されます。
ここからは取材にあたった増田記者に加わってもらいます。
この裁判の概要をもう一度おさらいしてください。
[2013.11.5 19:14]
危険運転か否か 検察・弁護双方が真っ向対立
去年広島市で起こした事故に女性を巻き込み死亡させた男の裁判員裁判が、28日から始まりました。
男は、危険運転致死傷などの罪に問われています。
初公判では、男の運転が「危険運転」にあたるのかどうか、検察側と弁護側の主張が真っ向から対立しました。
起訴状によりますと、広島市の無職 野村幹也被告は、去年7月広島市西区で乗用車を無免許運転中に職務質問しようとした警察官から逃走。
車を制御することが困難なほどの高速で交差点に進入して、パトカーと衝突し乗っていた警察官3人に重軽傷を負わせたうえ、はずみで歩道に乗り上げ、自転車で通りがかった中野由惟さんをはねて死亡させたなどとされています。
問われたのは、「危険運転致死傷」などの罪です。
スーツ姿で初公判に臨んだ野村被告は、「事故を起こしたことは間違いないが自分なりにスピードを落とし左右を確認した」などと起訴内容を一部否認しました。
検察側は冒頭陳述で、「度重なる交通違反で免許を取り消された野村被告は、仮免許中だったにも関わらず自動車学校に自動車で通学していた」と指摘。
また、「事故の当日には警察に職務質問されそうになり、『無免許運転で捕まれば刑務所行きだ』と考え逃走した」と主張しました。
(増田記者)「事故の現場にやってきました。こわれた植え込みはきれいに修理されていて、ここから色が変わっています。花も手向けられています。きょうの初公判では、野村被告の運転が危険運転にあたるのかどうか、
検察側と弁護側の主張が真っ向からぶつかり合いました」
検察側は、「野村被告は制限時速20キロの道路を100キロ以上で走行し、交差点には80キロで進入するなどコントロールが困難なほどの高速だった」としています。
これに対し、弁護側は「交差点進入時に減速するなどしていて制御困難な速度だったとは言えない。事故は、▽被告が十分な確認を怠った過失や▽パトカーの追跡方法などが原因」だとして、
危険運転致死傷罪ではなくより罪が軽い「自動車運転過失致死傷罪」で裁かれるべきと主張しました。
「検察側と弁護側の双方の主張について裁判員がどのような判断を下すのか。判決は来月7日に言い渡されます」
[2013.10.28 19:12]
中野由惟 中野 由惟 野村幹也 野村 幹也 広島市 西区 広島 西 伊藤寿 裁判長 伊藤 寿 裁判