葡萄舎だより

海峡の街・下関の、葡萄舎の住人・洒人 (しゃじん) が身の周りの些事片々を書き綴ります。
本人は日記のつもりです。

九州の灯台めぐり 4

2006年06月01日 09時41分49秒 | 燈台めぐりノート
photo ; 朝5時の都井岬灯台

都井岬では「岬馬」を放牧している。 馬が逃走しないようにゲートが設けられているが、夜間は無人だ。 
で、車から降りて開閉し、岬に乗り入れなければならない。
都井岬灯台には、夜8時半を過ぎてたどり着いた。
途中、日南市を通過した。
道中でコンビニの一軒くらいはあるだろう、と車を走らせたら、ついに都井岬まで店はなかった。
一旦灯台前の駐車場について、串間市までビールと食べ物を買いに走った。
往復の40㎞ は苦痛だったが、空腹には代えられないし、
何よりも、灯台を眺めながらの一泊には代えられない。

再度、灯台前の駐車場に戻った。
駐車場には車がなく、ラインを無視して、フロントガラスを灯台の正面に向けて車を停めた。
一般公開されている都井岬燈台だが、夜間は門扉で閉ざされ、灯台の敷地には入れない。
開門は朝9時だ。 それまで待てないから、チョットばかり失礼した。
隣接する土産物屋の壁に脚立が立てかけてあったもので‥‥。スイマセン。

狭い運転席で、缶ビールとかっぱえびせん、裂きイカ、おむすび3個の晩餐は惨めだけど、
なに、どんな役者にも勝る 灯台の、規則正しい燈光の旋回がある。
最高のディナーショーを特等席で独り占めできる.。
さあ、灯台の前で晩餐(?)だ。
呑みながら眼を上げれば、夢に描いた都井岬灯台の閃光が
 (正確には30秒で1回転だが、レンズが2個あるから) 15秒ごとに回転する。
なんという満足感だ!
かっぱえびせん と 裂きイカをかじりながら眼を上げれば、尊い灯光が15秒ごとに回転する。
なんという至福だ!
夜中に目覚めてフロントガラスを見れば、
船と船人の命と財産を守る灯が15秒ごとに回転を続けている。
しかも、100mの至近距離で。
灯台ファンにとって、こんな贅沢はない。 私が最高に感激する盛大な晩餐で、嬉しい寝床だ。

5月22日(月)
朝6時起床が私の日常だから、5時に目覚まし時計をセットするのは いと易いことだ。
北緯31度付近の夜は、寝袋を必要としないほどだったが、
ガラスで囲まれた車の中は夜明けの明るさで目覚まし時計も必要としなかった。
灯台の灯りは、まだ旋回を続けている。
勿論、人影はない。 昨夜お借りした土産物屋の脚立をまた拝借して塀を乗り越えた。
不法侵入者を歓迎するかのように、
蜂の一種だろうか、図体の大きいのが8匹、私の周りから離れない。
思い通りの写真が撮れなかったのは、蜂のせいだ。
蜂が怖くて退散したら灯台ファンの沽券にかかわるから、果敢にシャッターを押し続けた。
都井岬灯台は、全国に14基ある 「のぼれる灯台」 の一つだから見学者も多かろうが、
この、蜂の歓迎には大騒ぎをするだろう。
期待していた朝日は、雲に覆われてどこから昇るのかも分からなかったが、
一瞬間だけ顔をのぞかせた。
シャッターを押し続けたがいい写真にはならなかった。
この厚い雲は佐多岬まで続いた。

都井岬から佐多岬まで、どのルートを選ぶかは判断に迷うところだ。
内之浦町には宇宙空間観測所があることは知っていたが、
火崎の先端に 火埼灯台があると知れば、ロケットよりも灯台に立ち寄るために、
ルートはおのずから決まってくる。
これまでに訪れた 岬の灯台 のほとんど全てがそうだったが、
内之浦の町から火崎の先端まで、地図の上ではでは簡単だが、
実際に走ってみると距離は想像を超えて長い。
前日、その日のうちに都井岬までたどり着きたい一心から、
日南海岸のいくつかの灯台を素通りしてきたので、
小さい灯台だが、火埼灯台訪問は欠かしたくなかった。
かなりの時間を費やし、車幅すれすれの道を心細くたどった、としても。
蘇鉄の自生地には鳥居と祠があって、小さな灯台が立っていた。
都井岬灯台と佐多岬燈台という、スター級の灯台を訪問しながら立ち寄れば、
そのかわいらしさはいよいよ際立つのだが、
灯台に規模や、灯質の差はあっても、灯台の重要さに差はない。
足元が軟らかい斜面を滑らないように気をつけてたどり着いた瞬間の喜びは、また格別だ。

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