葡萄舎だより

海峡の街・下関の、葡萄舎の住人・洒人 (しゃじん) が身の周りの些事片々を書き綴ります。
本人は日記のつもりです。

灯台への鎮魂歌

2006年05月12日 10時40分34秒 | 燈台めぐりノート
「梅雨の中休み」 は聞くけど、「梅雨のはしりの中休み」 なんてあるのだろうか。
あってもなくても昨日はそんな一日だった。
昼前から雲が切れ始め、青空の下でのドライブにいざなった。
時間的には市域の外は無理だろう。 彦島へ。

かつて、関門海峡沿いの海岸にはいくつもの灯台が並んでいた(という)。
海峡の北西の入口 ・ 六連島に始まり、台場鼻、山底ノ鼻、金ノ弦岬、大山ノ鼻、
巌流島、火ノ山下、東南の入口に満珠島、ざっと8基。
対岸の北九州市側にも数基あるから、さしずめ灯台銀座だったが、その多くが廃れた。
おびただしい数の灯浮標を設置することで燈台の存在理由がなくなった、
これが直接の理由だ。
現役で船の航行を見守っているのは、六連島、台場鼻、満珠島の3基だけになった。

灯標として海中に設置され、陸に上がって灯台となり、廃止の決定を下され、
文化財として生きながらえている 金ノ弦岬灯台 は当ブログで取り上げた。
灯塔が撤去され、跡地が潮流信号所に転用された 火ノ山下灯台 は
親サイトで取り上げている。
この2基はいい。
文化財として保存されるのも、時代の要請に応えて形を変え船の航行に貢献するのも。

巌流島灯台が数年前に撤去されたのは知っていた。
撤去と前後して島が整備され、市民に開放されたイベントとの島として再開発するなら
赤白に塗り分けられた灯塔は格好のシンボルになったろうに‥‥。
大体において長州人は、いとも簡単に建造物を撤去するのが好きだ。
萩城の天守閣など、他藩に先駆けて率先して解体撤去してしまった。
保存し、現存していれば、萩市の観光収入はもっと多かったろうに。

あと2基、私が確認していない灯台がある。
大山ノ鼻灯台、山底ノ鼻灯台。 共に彦島にある。
現存しているという人も居れば、撤去されたという人も居る。 一見にしかず。

採石場の傍らに大山ノ鼻灯台はあった(という)。
採石場の管理人(らしき人)が、海面を指差して、
「ここに3年前まで燈台があった。 業者が撤去して行った」
打ち寄せる波間に、基礎部分だったのだろうコンクリート片が転がっていた。
やはり、無くなっていたか‥‥!

造船で栄え、造船業の衰退と共に不況に陥った下関を象徴するように、
無様にドックの形骸をさらした造船所跡地に隣接して山底ノ鼻灯台はあった(という)。
その海岸に初老の男性が携帯用の椅子に腰掛けている。
聞けば、「謡いの練習をしているのだ」 と言う。
ひと気の無いところで、薫風に吹かれ、
聞こえるのは波の音と、海峡を行きかう船のエンジン音。 ここなら迷惑はかかるまい。
謡いのおじさんも、海面を指差して、在りし日の山底ノ鼻灯台を語ってくれた。

結局、私が灯台めぐりに立ち上がるのが、3年遅かった!
今は、礎石が海岸に散乱して波に洗われているだけだった。
2基の灯台は無念だろうが、波の下を照らしている、と思うことにしよう。
ここは壇ノ浦に連なる大瀬戸だ。
平知盛に敗戦を告げられた二位の尼が、孫である安徳天皇を抱いて入水している。
数え年8歳の安徳天皇が 「尼御前、私をどこに連れていくのか」 と問うと、
二位の尼は 「波の下にも都はございましょう」 と答えた場所だ。
波の下を照らしてやればいい。

当ブログの親サイト 「葡萄舎彩々」 へもお越しください。
http://members.jcom.home.ne.jp/budohsha/


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
金ノ弦岬灯台! (とも~る)
2006-05-13 03:44:21
どーも♪

金ノ弦岬灯台の形が珍しくて好きなんですよ~。でももう現役では使われていないのですね。燈光も見れないのかな……。



掲示板やはり文字化けしちゃうので、IEではなくsafariというMacに搭載されているブラウザで今度書き込み試してみますね☆



あっ、玉助さんだ!(^O^)
返信する
Unknown (葡萄舎人)
2006-05-13 07:54:28
とも~るさん、こんにちは。



金ノ弦岬灯台、いいでしょう !?

話に聞く古武士みたいで、明治の気骨や頑健さを感じます。

前身は灯標ですから小ぶりですが、現代の灯台であの規模なら、灯塔のてっぺんに光源電球がチョコンと乗っかっているだけです。

立派なガラス張りの灯火室が備わって風格があります。

送電線を切断して、手すりにくくりつけてあるのがなんとも侘しいのですが。



昨日は角島灯台に行ってきました。 月一のペースです。

灯台が一般公開されるまで、隣接する土地を持っていた、と言う方と小一時間話をしました。



玉助さんにもお越しいただいて、私の 「灯台フィールド」 が少しずつ広がっていきます♪
返信する